ブラック・ナイフ(黒い刀身)   作:茄子林檎柘榴

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第一夜 四節

向日はガストレアの存在を肯定し呪われた子ども達をプロモーターから奪取、保護している危険思想のカルト集団の戦闘能力を削ぐ為のスパイ活動を義弟にして東京エリアの大権力者である向日 総司に依頼されていた。

 

しかし、向日は恒例の反抗癖で総司の依頼を受けるが自ずと「徹底的な撃破」をする旨を表明しそれに準じた報酬を貰わんとしていた。

年齢にして高校生になったばかりの彼はそんな自分の行動の根幹にあるのは義弟へのコンプレックスの払拭、己の能力の証明つまるところ一種の愛情表現の叫びだとはまるで気付かなかった。

 

「ふぅ〜、一回ボロボロに壊滅した日本にまだこんな綺麗な場所があるなんてな。」

向日は碧のカーテンがさざめく山で大きく深呼吸をする。

 

「全く、なんであんたは保証のないことを声高に宣言さるのよ。私まで巻き添えで死んだらどーするのよ?」

言っているのは先程の先程の会話にて身に付けていた華美な令嬢風の装いとは打って変わってショートパンツと白のカットソー、運動に適した服装だ。

 

「とか言いながら着いてきてくれるのが七美さんの好きなとこなのよん。バリツンデレポイント高め!俺歓喜カンゲキコンゴトモヨロシク!!」

言うと思春期真っ盛り可愛い女の子大好き少年はツンツン少女のバックに周り右に左へヤンヤヤンヤという様子。

「同じようなこと何人にも言ってるからか言葉の効果が薄くなってるわよ、まるで響かないから。」

七美はそんな彼を軽く肘打ちし3mほど吹き飛ばすとむすん、として行ってしまった。

 

「ふぐぅ…可愛いものは可愛いだろうが!」

なんて誰の耳にも届かない文句を呟くように吐き捨てる。

 

イニシエーターの少女はそんな光景を量の細く白い手で口を塞ぎながら傍観している。

 

「それにしても、ほんとにこんな山奥にカルト集団いるんでせうかねーこんなん行き来だけで一苦労じゃねえかよーって向日くんの懐疑タイム」

 

「そう、こんな山を超えて人の足ならとんだ苦労ね。けどガストレアウイルスの保菌者なら?伏せて」

 

言って━━━━━━

 

三人の上を幾十という数の人影が“飛躍“する。

 

「な━━━━━━」

 

ガストレアウイルスを保菌し限定的な範囲で御する少女達は感染源のガストレアの身体的特徴を継承し行使する。

ならば、あれらは全て飛躍能力の持ったガストレアウイルス保菌者ということだ、集団はそれだけの子どもたちを既に所持している。

「飛躍」の性質を持っている者だけであれだけ、またはそれ以上はいるということだ向日は顔を驚愕の色に染める。

 

「こんなの…ふざけてる。」

岩陰に隠れ音を殺しながらしかし確かに向日は声を零した。

 

しかし、その言葉は依頼の受託を後悔するものではない。

瞳から光の消えた少女達を強引に馬のように扱っている人間達に対する怒りのそれであった。

 

少年はおそらく最後の一組と思われる少女の飛躍を見届けるとそのシルエットに向けナイフを投擲し従者に突き刺した。

痛みと突然の事で慌てふためく男はバランスを崩し少女から落ちる。

 

向日はその男に近づいて行く、自然に溶け込むかのようにフラフラと揺れながら、少しでも仲間を収集されるリスクを回避する為だ。。

けど確かに一歩一歩は怒りの色を帯びていた。

 

「よお、おっさん。場所案内頼むわ、拒否したら次はその汚ねえ首にナイフ差し込んで殺すよ。」

そう言った少年の両の眼にはどこまで黒く光の映らない漆黒に染まっていた。


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