「………すいませーん、すいませーん!!」
………声が、聞こえる。どこかで聞いた、とても親しい声。
「あ、あのう………生きてますよね?起きてくださーい!!」
起きてください………ということは、僕は寝ているのか?
実際視界も真っ暗だし。
目を開けて、なんとか起き上がる。
「あっ、気がついたんですね!大丈夫ですか?」
そういって僕を起こしてくれたのは………
「………ああ、沙苗ちゃん?何かトラブルでも起きたの?」
「………ほえ?あのー。私初めて会う人だと思うんですけど………どうして私の名前を知ってるんですか?」
「………ん?やだなー沙苗ちゃん。僕の事忘れた?」
「ぼ、僕?………え?え?え?え?え?」
あらら。なんかすっごい混乱してるなあ。とりあえず手を叩けば正気に戻るかなと思って手を視界に写して………
不思議に思った。なんだか手が普段より細い。気がする。
それになんだか胸の辺りが少し重いような………何かついてるのかな?
むにょん。
………は?
むにぃ。
………ちょっと待ってよ?この胸の柔らかい感覚………あれじゃないですか。
母性の象徴じゃないですか。
「さ、沙苗ちゃん!?ぼ、僕なんに見える!?」
焦りが募って思わず沙苗ちゃんをつかんで上下に振る。
「ふぁ、ふぁー!?お、教えますから振らないでくださーい!?どこからどうみてもお姉さんですー!!」
………嘘………だよね?
顔を触る。なんだか普段よりスラッとしてる。
手足を触る。同じように少し細くなってる。
髪を触る。少し長くなってる。
胸をもう一度確認する。どう考えても男にはない感触。
股間は………流石に止めた。
………間違いない。
「なんで………なんで僕は女の子になってるのーー!?」
そして僕………八意 晴の声は、普段より少し高くて、女性的だった。
「………ほー。とりあえず晴さんが晴ちゃんになっちゃたって事で理解しましたけど………なんで二人ともびしょびしょなの?」
そういって休憩所で僕らを出迎えてくれたエリカさんは言ってくれた。
ちなみにもう商人一行は旅に出てしまったようだ。
「この現実を認めたくなくて川に飛び込めば覚める夢かと思ったら………覚めませんでした」
「私はそれに巻き添えをくらいましたー………晴お兄さん。これからは晴お姉さんですねー………」
「嫌だぁぁぁぁ!!!」
本当に冗談じゃないよ!!なんで僕女の子になっちゃったの………?
昨日の記憶も曖昧だし………散歩に出たのは覚えてるけど、そこから先は思い出せない………
今日の記憶も森の中に倒れていたのを沙苗ちゃんに見つけてもらったってことしか………
『あらら………後遺症って残っちゃうんだね………』
とっさにエリカさんが持っていた万年筆を奪い取って叫ぶ。
「ま、まさか………この原因って夜なの!?」
『あたりー。いい勘してるねー』
「ふ、ふざけないでよ!?すぐに僕を元に戻してよっ!!」
『えーっと………すぐには無理かな。私化した効果は多分まだ続くだろうし………』
「………私化?どういうこと?」
よくわからないことを夜は言っているけど………
僕が、夜になるってこと………?それが私化ってこと?
『とりあえず何処から説明しようかな………私って今体が無いでしょ?』
「うん………でも、それと僕の体になんの関係があるの?」
『慌てずに最後まで聞いてよ………そこで私がどうすれば体が手に入るかって考えて、思いついたのが晴の体を私の体に作り替えるって方法なの』
「………あのー、晴お兄さん。さっきから話してる言葉は私にはちんぷんかんぷんなのです」
「私も………というか気になっていたんですけど夜さんって一体なんなんですか?」
『うーん私は………晴の………生まれた時期からすると双子の妹で、昔死んじゃったんだ………だけど魂だけ晴に宿ってるって感じかな。万年筆は単純に声を出すための物で、私が万年筆に宿ってるってことはないよ?』
「なるほど、要するに夜さんは夜お姉さんだったのですね!」
『「「今ごろ!?」」』
………さすがに声で性別くらいはわかると思うんだけど………
エリカさんも気づいてたみたいだし。
『とりあえず話を戻すよ?晴の体を私化………面倒だから夜化ってことにするけど、夜化させるにはひとつの鍵が必要なの。それは………晴が死ぬこと』
ぞわっ、という感覚が僕らを襲った。さりげなく恐ろしい事を言ってるよ夜………!?待ってよ?
「そ、それじゃあ………晴さんは女の子になってますから………晴さんは一回死んだって事ですか!?」
「は、晴お姉さんが妖怪になっちゃったあぁぁぁ!!!」
あ、沙苗ちゃんが壊れた。
『え………?晴は一応不老不死だから死んでも大丈夫だけど?』
「ふろーふしって何ですかー!?」
『そこから!?えっと、どう説明したらいいんだろう………』
「………不老不死っていうのは「老化」と「死」がないってことなんですよ、沙苗ちゃん。「老化」っていうのは要するに身長がのびたり声が変わったりしないとか。おじいちゃんやおばあちゃんにならないってことです。「死」がないってことは………まあ何をしても怪我はするけどすぐ治るとか………そんな感じなんですかね?」
「わあ、晴お姉さんってすごいですねー!!」
エリカさんが丁寧に沙苗ちゃんに説明してくれると、エリカさんは僕に近づいて小さな声で言ってくれた。
「本当は違うんでしょうけど………とりあえずはごまかしてあげました。見返りはよろしくお願いしますねー………」
………考えておきます。
『と、とりあえず話を進めるよ?晴が一回死にかけたあとで体は不老不死だから少しずつ治っていくんだけど………その怪我が完全に治った状態は晴の持っている自分の姿のイメージでできているんじゃないかって、思って試してみたの。晴が死にかけた時を見計らって晴の体をのっとれば、私の持っているイメージが元になって………体が治った時には私の体になってるんじゃないかなーって思って試してみたら………見事に成功したって訳。それで晴は今女の子………というか、私の体になってるって訳だよ。ただやっぱり外見が変わっただけであって本質は晴の体だから、長い時間は私が動かすことはできなくて………だから、中身は晴だけど見た目は私………っていうことになっちゃったってわけ』
「なるほど………じゃあ………炎の中とかに飛び込めば怪我をしたことになって、元に戻るってことだよね?」
『理論上は………って。せっかく私の体になったんだからすぐには戻らないでよ………』
絶対ヤダ………ん?なんか沙苗ちゃんからなんか変な感じの視線が………
「あ、あの………あと一日だけでいいですから、晴お姉さんでいてくれませんか?」
「………え?なんで?」
「え、えーっと………なんといったらいいんでしょうか………晴お姉さんがとっても綺麗で………もっと見ていたいんです」
え………そう言われても………と思っていたらいつの間にか僕の後ろからエリカさんが抱きついてきた。
「私も晴ちゃんでいてほしいですねー。可愛いじゃないですか」
「か、可愛いと実用性とかは別だよ!?というか離れてくださいよエリカさん!!」
「ふふふ………離れてほしかったら今日一日は晴ちゃんでいると約束して!」
えええ………
『私もいろいろ調べたりしたいし………ね?お願い!!』
えええええ………
結論。押し切られた。今日一日僕は女の子です。だけどさあ………
「うーん………なんだかその格好だとSっぽい口調の方が………」
僕の格好はなぜかあった白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートとベストだ。しかもサイズは合っていない。ぶかぶかだ。これはなぜかバックに入っていて、あの軍服はサイズが合わなかった。
この格好昨日どこかで見たような………
「あ、晴お姉さん、この日傘持ってみてください!昨日商人さんからもらったんです!」
「二人共………僕は着せ替え人形じゃなぁぁい!!」
しばらく大変な目に会いそうだ………とほほ。
はっちゃけた。
以上。
むしろはっちゃけてない話が最近ない………