それでも風見幽香は仮面を付け続ける   作:ていん?が〜

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2話です。
前回と比べると短いですがご勘弁を。
オリジナル設定等が出てきますがご容赦ください。


第2話「怪物と少女」

厄滅異変(やくめついへん)

 

 

今より100年前、外の世界で言うところの平安時代終期頃に起きた異変を指す。

この異変を語るに避けれない点は3つある。

1つ目は、異変の規模・脅威の甚大さにより当時の博麗の巫女『博麗朱鯉(はくれいしゅり)』の手に負えず

妖怪の賢者である『天魔(てんま)』と『茨木華扇(いばらきかせん)』の2人がかりで何とか異変を収束出来たこと。

2つ目は、この異変により当時妖怪の山を支配していた鬼の8割が死滅並びにこれをきっかけに鬼は地底世界に逃れることとなったこと。

3つ目は、この異変は幻想郷に渡ってきたばかりの風見という妖怪が原因で起こったということ、

 

そして元妖怪の賢者であり、幻想郷が抱える最悪の爆弾『鍵山雛(かぎやまひな)』が封印から解き放たれたことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは旧都、とある3人の妖怪が旧地獄街道を歩いていた。

 

「紫様、本当にやるおつもりなのですね…」

 

青と白を基調とした道士服に身を包んだ9つの尾を持つ妖怪、『八雲藍(やくもらん)』が険しい顔でささやく。

 

「藍、何度も言ってるでしょ?賢者の話し合いでも決まったことだし、ここの元締めにも許可はもらったのだから私はそれを実行するだけ」

 

紫と白を基調とした道士服に身を包み、白目と黒目が逆転した瞳を持つ妖怪の賢者、『八雲紫(やくもゆかり)』は緑髪の小柄な妖怪の少女の手を握りながらそう言う。

 

「ごめんなさいね、もうすぐ着くから」

 

不安そうに紫を見上げる少女を紫は母が我が子にするように優しく言い聞かす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて一行は風見がいる洞穴まで辿り着く。途中で退魔札の領域に差し掛かるため、藍は洞穴に入る前に一行に退魔無効の術をかけようとするが、紫に制止される。

 

「紫様、どうかされたのですか?」

 

「藍…………来るわよ」

 

 

そう言ったのも束の間、洞穴から黒い影が隼にも勝る勢いで飛び出し、藍を突き飛ばす。

 

あまりの衝撃に藍はゴパァ、と血を吐くがタダでは転ばない。数多の妖怪を葬ってきた爪撃で目の前の黒い影を切り裂こうとする。が、すんでのところで影は藍から離れ距離を取る。

 

「久しぶりね、風見。藍をいじめないでくれないかしら?」

 

紫は突然の出来事にも動じず、目の前の影に言葉を投げかける。

 

「おい、アバズレェ…玩具の狐ちゃんと新鮮な飯引っさげて何の用だぁ?」

 

風見と呼ばれた妖怪は、藍に突進した際に付着した血を拭いながら返す。

ボロボロのローブに全身を包み、顔に当たる部分には鳥を模した仮面(外の世界のペストマスクに似ているものだ)を被っており、消毒液と血が混ざった独特の匂いに藍は眉をひそめる。

 

「今日はあなたにお願いがあって来たの」

 

「お願い?ハッ、こんな穴蔵に追いやったことを反省してるので、どうか地上に出てくだちゃ~~い、ってかぁ?」

 

「そうよ」

 

「……あ?」

 

風見の声色が変わる。

 

「でもタダでは地上に出さないわ」

 

「何が狙いだアバズレよぉ…?」

 

「この子よ」

 

紫は彼女の後ろで隠れている少女を指す。

 

「この子の名前は幽香(ゆうか)。少し前に両親が野良妖怪に殺され、身寄りの無くなった花妖怪の少女よ」

 

「だからどうしたよ?地上に出す代わりにそのクソガキを俺に喰わせようって腹積もりかぁ?」

 

ヒヒヒ、と仮面の中で嘲り笑う風見。その様子に幽香は更に怯え、紫の服をギュッと強く掴む。

 

「いいえ、あなたにはこの子を育ててもらいます」

 

「……ふざけてんのかテメェ」

 

「ふざけてないわ」

 

「イラつくなぁ、オイ…。天魔とかいうクソッタレ天狗にこんな穴蔵に閉じ込められたと思えば次はクソガキの世話だぁ…?この場で犯した後に八つ裂きにするぞアバズレ」

 

「貴様ぁ!!黙って聞いていれば紫様に何たる侮辱を!」

 

「藍、お止めなさい」

 

主を罵られた怒りのあまり飛び出しそうになる藍を紫が制止する。

 

「グッ……申し訳ございません、紫様」

 

「結構よ…話を戻すわね。幽香ちゃんと一緒に3年間この地底で暮らしなさい。無事終えれば地上に出ることを許可しましょう」

 

「もし出来なかったら?」

 

「妖怪の賢者総出であなたを討ちます」

 

「ほぉ…?」

 

ククク、と風見は笑う。

 

「馬鹿かテメエは?俺への損がデカい話を誰が引き受けるかよ」

 

「勘違いしないで、あなたに拒否権は無い。断ってもあなたの命を奪う」

 

「チッ…」

 

ここで初めて風見が黙る。紫は構わず説明を続ける。

 

「地底で暮らす間の住居は既に用意してありますわ。元締めにも許可はもらっているから協力して幽香ちゃんと暮らしなさい」

 

ひとしきりの説明を終えた紫は幽香の目線までしゃがむ。

 

「幽香ちゃん、私達はもう帰るけど大丈夫。風見があなたを守ってくれるから」

 

「でも………」

 

「……時々会いに来るわ。その時はまた一緒に遊びましょう、ね?」

 

グズる幽香の頭をなでながら優しく諭す。

幽香が泣き止んだのを確認すると紫は立ち上がる。

 

「風見、幽香ちゃんをよろしく頼んだわよ」

 

その言葉を皮切りに、紫はスキマを開き、藍とともに消え去る。

 

「クソが……」

 

その場には不満を漏らす風見と不安そうに風見を見上げる幽香だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマはとある家屋で開き、中から紫と藍が出てくる。そこは幻想郷のどこかにあるという紫の住居であった。

 

「紫様、やはり納得いきません。なぜあの少女をよりにもよって風見の元に?」

 

藍には紫の一連の行動の真意が分からなかった。周囲に害しかもたらさないあの妖怪に取り入ることに意味があるとは思えなかった。

 

「藍、私はね……風見も幻想郷の一員だと思っている。たとえ過去に甚大な被害をもたらしていても幸せに生きる権利はある。幽香ちゃんとの生活で彼が変わることを信じているわ」

 

「本当にあの風見が変われるとお思いで?」

 

「本気よ」

 

「……分かりました」

 

紫の言葉に藍は渋々と引き下がる。

 

(紫様はとてもお優しい方だ、しかし同時に甘くもある…。今回の賢者の話し合いだって紫様が強引に押し通したようなものだ。天魔様はまだしも華扇様が静観するはずが無い。それにあの人格破綻者である旧都の元締めが黙って見守るはずも無い。必ず何かをしかけてくることだろう)

 

(念のために旧都に『()()()』をたてておいたが、それでもどうなることか……)

 

 

藍の不安とは裏腹に幻想郷の空は気持ちの良い程の晴天だった。

 




以上です。
次も出来次第投稿します。

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