暴力表現が多くございますので、ご了承ください。
旧都の外れ、そこにポツンと質素な家屋があることを除けば周りに何もない荒野である。
そこにはガリガリに痩せ細った長身の妖怪と、その妖怪の半分以下の背丈の小柄な妖怪がいた。風見と幽香だ。
「おいクソガキ、ここで合ってるんだろうな?」
「う、うん………」
幽香は地図を見返しながら答える。地底に来る前に紫から手渡された地図が正しければ2人の目の前の家屋が今後住むことになる住居のはずである。
「まぁいい。間違ってようが住人を追い出せばいいだけだ」
風見は家屋の戸を乱暴に蹴飛ばした。
「あらあら…相変わらず乱暴ですわね、風見様」
外見同様、質素な家屋の中には絢爛な羽織を羽織った金髪緑眼の妖怪がひざまついた岩鬼に腰かけていた。
「……テメエ」
「賢者様がご用意されたお宅をお掃除させていただきましたの。あなた方がすぐにでも暮らせるように、さて……」
緑眼の妖怪は立ち上がると、ポカンと立ちすくむ幽香の前まで近づき
「初めまして、あなたが幽香様ですね。僭越ながらこの旧都の元締めを務めております
よろしくお願いしますわね、とペコリとお辞儀をするパルスィ。つられて幽香もお辞儀をする。
「賢者様からお話は伺っております。あなた様は過去に大罪を犯し、この地底に封じられた身。ですが、賢者様はあなた様が地上に出られる機会をお与えになられました。なれば私としてもあなた様が地上に出られるよう尽力させていただく次第ですわ」
「そして今日からの地底での暮らしが幸せなものとなりますように」
パルスィは右手を差し出し、友好のための握手を求める。
風見もまた幾重にも包帯で巻かれた骨ばった右手を差し出し、
そのままパルスィの顔面へ拳を叩きこんだ。
まともに顔への一撃を食らったパルスィは鼻血を吹き出しながら地面に転げ落ちた。
「よぉブス、ちったぁ見れたツラになったじゃねえか」
悪びれもせず、ヘラヘラ笑いながら風見は拳についた血を払う。
「テ、テメェ!元締めに何しやがーーーー」
「なんだ文句あんのかぁ…?」
「ヒィ…!」
風見に睨まれ縮こまる岩鬼。100年前の厄滅異変で大勢の同胞を殺した妖怪だ。機嫌を損ねたら自分まで標的になりかねないため、岩鬼は自らの口を塞ぐしかなかった。
「ブスよぉ、テメェのくっせぇ息を吐きかけるんじゃねえよ。ただでさえ気に食わねえのにぶっ殺したくなるだろうが」
風見は倒れているパルスィの髪を掴み上げる。
「よし、次はそのなげえ耳と鼻を千切り落とすか。良かったじゃねえかブス、ますます美人になるぜ」
そう言って風見はパルスィの顔に手を伸ばす。
が、その時である。
コツン
風見の後頭部に小石がぶつかる。
ゆっくりと風見は後ろを振り返り仮面越しに睨みつける。
「……どういうつもりだクソガキ」
そこにはガタガタと震えながら小石を手に持った幽香がいた。
「お、お姉ちゃんたちをいじめないで………!!!」
精一杯振り絞った声だった。自分が風見に敵わないことは分かってるし、初対面で恐怖を刷り込まれている。今すぐにでも逃げ出したいほど怖かったが、幽香は目の前でいたぶられようとするパルスィを放っておけなかった。
「ほぉ…正義ヅラのつもりかよ」
風見はパルスィの髪から手を離し、ゆっくりと幽香に向かって歩く。
「だが悪くない行動だ。そこで転がっているブスとデカブツは簡単に殺せるが、テメエを殺しちまったら逆に俺が賢者どもに殺されちまうからなぁ。知ってか知らずか俺にはテメエが殺せねえから、ある程度の要求は通せる」
「だけどよぉ……」
幽香の目の前まで来ると、風見は幽香の首を掴み、自身の目線まで引き上げた。
「テメエを殺せねえならいたぶって心を折るだけだ」
そう言って風見は幽香の首を徐々に絞めつける。
幽香は首を絞めあげる手から逃れようと抵抗するが、万力のような力に成す術は無く、やがて口から泡が漏れ出し痙攣を起こした。
それを確認すると、風見は首から手を離し、幽香は地面に倒れ落ちた。
「今回はこれぐらいで勘弁してやる、これ以上やって死なれると困るからなぁ。だがいつでも俺に突っかかってきてもいいぜ?俺は弱い者いじめは大好きだからよぉ」
「それとだ……」
風見は一連の出来事を見ていた岩鬼に視線を移す。
「俺はこれから出かける。俺が帰ってきた時もまだいたら殺す。そして万が一クソガキに何かあればテメエら楽には死なせねえぞ?」
そう言い残すと風見は戸の外れた玄関から外に出てどこかに行く。岩鬼はその後ろ姿を黙って見るしかできなかった。
「ぐああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あなた!!」
「お父さん!!」
ある森の中、緑髪の男の妖怪は巨大な狼のような妖怪に足を噛み付かれて倒れ悶える。
「
男は足を噛み砕かれる激痛に顔を歪めながらも妻と娘の事を案じ逃げるように諭す。
「いやだ!お父さんを今から助ける…!」
「幽香!早く逃げるわよ!!お父さんは後から追いつくわ!」
「いやだ!いやだ!!お父さん死んじゃう!!」
「幽香…お父さんは大丈夫だ。必ず合流する。だから泣かないでおくれ……葉香、あとは頼んだぞ…」
「あなた…分がぁっ――――――!!!」
直後、葉香は突如横の茂みから這い出た大サソリの妖怪の尻尾に頭を貫かれた。
「あ…あぁぁ…………」
「葉香…くっ!……幽香!!走れ!!このまま真っ直ぐ向かえば人里に辿り着く!!それまで決して振り返るな!!!早く行けぇ!!!!」
幽香は零れる涙とともに走り出す。振り向き際に見たのは、足を喰らいきった狼の妖怪が大口を開け、父の頭を噛み砕こうとする瞬間だった。
「おい嬢ちゃん、大丈夫か?」
幽香の目の前には古ぼけた天井と覗き込む岩鬼の顔があった。
「随分うなされてたぞ、悪い夢でも見ちまったか?」
周りを見回すと布団で寝そべった幽香と隣に岩鬼しかいない。
「……おじさん、あのお姉ちゃんはどこ?」
「おじっ!……元締めなら怪我の治療のために配下の妖怪どもに運ばれていったよ。俺は嬢ちゃんが心配だったからここに残った」
今風見が戻ってきたらやばいわなぁ、と頭を掻きながら岩鬼はつぶやく。
「嬢ちゃんも災難だな、よりにもよってあの残虐変態野郎風見に預けられるなんてよぉ。風見にいじめられた夢を見たんだろう?」
「いや、違うの…」
幽香は夢で見た内容を話す。父と母と自分が森の中で暮らしてる時に突如野良妖怪に襲われ、父と母は命を落とし、自分は命からがら人里まで逃げたことだ。そしてその流れから、人里に辿り着いた自分が妖怪の賢者の八雲紫にしばらくの間保護され、今日地底に連れてこられ風見に預けられたことも話した。
「おっ…ぐっ…うぐぅ……じょ、嬢ちゃん………た…大変だったんだな………」
話を最後まで聞いた岩鬼は滝のように涙を流し、号泣する。
「嬢ちゃん…いや、幽香ちゃん!困ったことがこの岩鬼様に何でも言ってくれ!俺が力になるからよぉ!!」
おーいおいと泣きながら力いっぱい抱きしめてくる岩鬼に対して窮屈さを感じる幽香だが、同時に紫以外に優しくしてくれた存在に少し安堵を感じたのだった。
旧都の外れ通り。華やかな大通りとは違い、寂れ、妖怪の姿もあまり無いこの道を風呂敷包みを手に持つ風見が歩いていた。
「……オイ、まだ何か用があんのかよ」
前方の曲がり角を見据える風見。直後、角からゆらりと1人の妖怪が姿を現す。
「ふふ…乙女の顔を殴っておいてその言い方はあんまりじゃないかしら」
風見の前に現れたのは水橋パルスィだった。数時間前に殴られた傷はすっかり治っていた。
「乙女だぁ…?勘違いも甚だしいブスだなぁオイ」
「あぁん…謝罪どころか変わらず罵倒してくるその精神……清々しくて…妬ましいわぁ」
紅潮させた頬を袖で隠すパルスィ。
「あなたの圧倒的なその暴力…弱者だろうが踏み潰すその残虐性……あぁ……もう………」
「私…あなたに殺されたい…♥」
外見相応の笑顔で告白するパルスィ。だがその瞳は沼のように濁りきっていた。
「そうかい、じゃあお望み通り殺してや」
「でもね」
「あっ?」
「あなたも惨たらしく殺されて欲しいな♥」
スタスタと風見に近づくパルスィ。
「四半刻後(30分後)に私が屋敷に戻らなかったら部下達に幽香ちゃんを殺しに行くようにいってあるの……このまま私を殺したらどうなるでしょうねぇ。あっ、でもまだ岩鬼も一緒にいるだろうけど構わず殺させようかしら?」
着る服の選定をするかのようにうんうん唸るパルスィ。会話内容としぐさはあまりにも剥離している。
「……このド腐れが」
「ふふ、冗談♪だけど賢者様も素敵な条件を残していってくれたわ」
「これからの3年間の中で、『
微笑みながら風見の仮面に触れそうな距離まで顔を寄せるパルスィ。
「私が死んで、あなたも死ぬ……そんな『
恋する少女のようにうっとりとした顔でそう告げたパルスィは風見の後ろをすり抜け、笑いながら外れ通りの路地の闇へと消えていく。
パルスィの笑い声が外れ通りに響き渡る。
パルスィファンの方々ごめんなさい。
それとルビってどう振ればいいんでしょうか?
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