それでも風見幽香は仮面を付け続ける   作:ていん?が〜

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毎度見てくれる方々ありがとうございます。
もう少ししたら登場人物紹介を投稿しようと思います。


第4話「黒谷診療所」

幻想郷某所、霞のかかる山の頂上にある中華風屋敷。屋敷の玄関にて烏の刺繍が幾重にも入った民族衣装を着た黒髪短髪の少女がため息をつきながら箒で掃いていた。

 

「はぁ〜…紫様もとんでもないことをしてくれるなぁ……。地底に封印された風見?っていうめちゃくちゃ危険な妖怪を地上に出そうだなんて。お陰で『()()』はかんかん。未だに機嫌が悪いものだから下手に刺激しようものならどんなとばっちりを食らうか分からないわ……」

 

少女は再び大きなため息をつき、近くの大きな岩に腰かける。

すると上空より一匹の大鷲が少女の隣に降り立った。

 

「あっ、久米(くめ)!そうか…毎日師匠にいじめられる可愛そうな私を慰めてくれるんだねぇ…」

 

少女は久米と呼ばれた大鷲の腹に顔をうずめる。羽毛に覆われた腹はモフモフとしておりとても気持ち良い。しかし久米はうっとおしいのか、羽で少女を押しのけながらキュイキュイ、と鳴く。

 

「もう!いけずぅ…!もうちょっとモフらせてくれてもいいじゃない、って……えっ、師匠が?」

 

少女は久米の言葉が分かるのか、うんうんと久米の鳴き声に耳を傾ける。

 

「え~っと、つまり師匠は急用が出来たから地底に行った。戻ってくるまで私に留守番するように伝えろと言われた、と…………いやったあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

少女は喜びのあまり飛び跳ねた。

 

「鬼の居ぬ間になんちゃらってやつね!!よーっし!思う存分自由を満喫しちゃうぞーっ!!!」

 

歓喜する少女に慌てた様子で止めようとする久米。師匠と呼ばれる人物からは少女が留守番中の修行をさぼろうとしたら止めるようにとも言われていた。

 

「な~によぉ~!久米~!そんな固いこと言わないでよぉ~~!!」

 

「………あっ、そうだ。ねぇ久米、あんたさ、ここ最近質素なものしか食べさせてもらえなかったよねぇ?師匠は健康がどーたらこーたらとか言ってたけどやっぱ私達若者は好きなもの好きなだけ食べたいじゃん………師匠に何も言わないなら美味しいものいっぱい食べさせてあげるよ?」

 

少女はとても悪い顔で久米に囁く。悪魔の誘惑に久米は揺れ動く。が、なかなか決めきれないのかキュイキュイと鳴きながら羽をばたつかせるばかりだ。

 

「あっ、嫌なら別にいいんだよ?真面目な久米は師匠の言いつけを破るのが怖いもんねー。だけどさぁ、こんなチャンスもう二度と無いよ?毎日毎日松の実だけじゃあ飽きるっしょ?」

 

栄養満点だからと、食事として与えられる松の実。朝も松の実。夜も松の実。翌日も松の実。その次の日も松の実。次の次の日も松の実。松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実松の実―――――――――――――――

 

「クエーーッ!!」

 

やってられるか!と、怒りを爆発させる久米。その様子を見た少女はニヤリと笑う。

 

「おーおー、久米さんもずいぶん溜まってらっしゃいますなー。大丈夫大丈夫……バレなきゃいいんだからさ♪」

 

少女の言葉を皮切りに、久米は少女を背中に乗せて大空に飛び立つ。目指すは人里。1人と1匹のグルメツアーが今、始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイクソガキ、出かけるぞ」

 

自宅の居間で胡坐(あぐら)をかいていた風見が唐突に幽香に呼びかける。

 

「え…う、うん……」

 

幽香はビクッと体を震わせる。先日、首を絞められたようにまた虐められるのではないかと恐怖が募る。

その様子を察した風見は舌打ちをする。

 

「……別にテメエを叩きのめすために外に出すわけじゃねえよ。テメエを置いて出かけてる間に、どっかの阿呆妖怪がテメエを殺しちまったらかなわねえからな。今日一日、知り合いのところにテメエを預けるだけだ」

 

知り合い…?幽香は不思議に思った。こんな凶悪妖怪の頼みを聞く物好きがいるのだろうか?もしかしたら脅迫して言うことを聞かせて―――――――

 

「……オイ、何か失礼なこと考えてるんじゃねえだろうな?」

 

風見は仮面のレンズ越しにギロリと幽香を睨む。幽香は慌ててブンブン、と首を横に振る。

 

「チッ、まぁいい。とにかく行くぞ」

 

風見は幽香を抱えると、荒々しく玄関を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧都の外れ通り、人気の無い路地を幽香を脇に抱えた風見が歩く。ふとある場所で歩を止める。

見ればそこは、「黒谷診療所(くろだにしんりょうしょ)」と書かれた古ぼけた看板を掲げた小さな診療所だった。

風見は診療所の扉を乱暴に開けた。

 

「おーおー、誘拐犯が立てこもりに来たかぁー?」

 

診療所内部の受付席で金髪ポニーテールの少女が新聞を広げたままカラカラ笑う。

 

「……………………………」

 

「ハハハじょーだんだって!そんな怖い顔しないでよー!いつもの薬だろ?」

 

「ばあちゃーん!風見にいつもの薬渡してやってーー!!」

 

少女は診療所の奥に向かって大声を上げる。すると奥から幽香よりも更に小さい背の曲がった老婆が風呂敷包みを持って現れた。

 

「おやまぁいらっしゃい…そろそろ来る頃だと思ったよ……」

 

老婆は朗らかな笑顔で2人を出迎える。老婆が風見の前まで来ると風見は老婆の目線までしゃがみ、風呂敷包みを受け取りその際にいくらか代金を支払う。

 

「ババア」

 

そう言って風見は幽香を地面に下ろす。

 

「俺が帰ってくるまでこのクソガキを預かっといてくれ」

 

ぶっきらぼうに告げる風見に対し、少女は受付席から身を乗り出しながら、ぶーぶー不満を垂れる。

 

「ちょっとちょっとー、ウチは託児所じゃないんですけどー?」

 

「金なら払う、文句は無えだろ?」

 

「まいどー♪」

 

ニシシ、と笑いながらあっさり了承する少女。

 

「それじゃあ頼んだ」

 

オロオロと困惑する幽香だが、それに構わず風見は診療所から出て行った。

 

 

「お嬢ちゃん」

 

不意に老婆から呼ばれビクッと体をこわばらせる幽香。

 

「そんなに怖がらんでもええよ…お嬢ちゃん、お名前は?」

 

「ゆ…幽香……」

 

「そう…幽香ちゃん。ええお名前やねぇ…」

 

そう言いながら老婆は幽香の頭をやさしく撫でる。拍子抜けしたのか幽香の肩から力が抜ける。

 

「私は黒谷チユ…ここの診療所を経営してるわ…。そこにいるのは孫のヤマメちゃんよ」

 

「黒谷診療所の看板娘のヤマメだよー!よろピクねー♪」

 

「よ…よろしく、お願いします……」

 

しどろもどろになりながらもあいさつを返す幽香。そんな幽香の背中をバシバシ叩きながらヤマメは笑う。

 

「アッハハ、そんなに緊張すんなってー!あっ、まだ昼飯食ってないだろ?育ち盛りなんだからいっぱい食いな♪」

 

「遠慮はせんでええよ、幽香ちゃん…たーんとおあがりんしゃい…」

 

黒谷一家のペースについていけない幽香だったが、岩鬼とは異なるタイプの優しそうな彼女達に出会えて再び安堵を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧都の外れ通りから少し進んだ先にある路地裏。風見は風呂敷包みを持って歩いていた。

歩きながら風見はここ数日のことを思い返していた。

 

(数日前じゃ想像もつかねえな…アバズレから外に出してやると言われたと思ったらクソガキを育てることになるなんてよぉ……)

 

風見には紫の提言の真意が読めなかった。100年前に自身が起こしたことはよく分かっている。死んで当然、または死ぬまで地底に閉じ込められてもおかしくない。なのに条件を満たせば地上に出してやるなんて虫が良すぎる。なによりその条件として弱そうな妖怪の少女を育てることというのは理解が出来ない。

 

「………あの時、死んでしまえばよかったかもな」

 

路地裏を歩きながら、ポツリと風見はこぼす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、まったくもってその通りだ」

 

 

不意に風見の後ろから声が聞こえる。振り向こうとする風見だが、瞬間、声の主に首を掴まれそのまま地面に叩きつけられた。

 

「驚いたな、地底ではこんな危険な妖怪が野放しになってるのか」

 

ギリギリと首を絞められる風見はその手を振りほどこうとするがまるでビクともしない。

 

「初めましてだ風見。そして……死ね」

 

シニョンキャップを付けた桃色髪に紫同様、黒目と白目が逆転した瞳を持つ妖怪の賢者が1人、

茨木華扇はそう言い放つ。




次回、戦闘回です。
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