すんません!!
「ただいまっと」
開は唯を説得後無事家に帰宅した。
と言っても開と唯が別分かれたところからたった100m程の所に家がある。
祖母が昔から住んでいるこの家は決して広くもないが、どこかホッとするような場所なのである。
「おかえりなさい!」
玄関をくぐると女手ひとつで自分を育ててくれた母が来てくれた。
髪は昔に比べだいぶ白くなり、顔にもシワが増えている。
年齢より歳をとっていそうに見えるが十分綺麗だと開は思っている。
「今日は学校どうだった?」
「いつもどうりだよ、婆ちゃんは畑にいるの?」
「いるけど.....まさかあなたまた勉強すっぽかして手伝おうとしてるの?」
「別にすっぽかしてないよ。飯食い終わった後いつもしてるよ。」
そう言って開は自分の部屋に戻った。
やや反抗的な態度だがこれ以上話していると、
それから制服を脱ぎ、汚れても大丈夫な格好に着替えて裏にある畑に向かった。
「婆ちゃん!ただいま!」
「おぉ、開くんお帰り」
母同様に昔から自分を育ててくれた祖母が優しく迎えてくれた。
母が働いてあまり家にいなかったときに、母に代わってよく開と遊んでくれたのだった。
幼い頃に、父親を失ってから開は誰よりも家族を大事にした。
まだ祖母の家に住む前に働き詰めだった母を少しでも楽にしてあげたいが為に、僅か7歳で掃除に洗濯、食事を作るなどの家事を習得した。
祖母の家に移行後もたまに食事を作ったりもしている。
「婆ちゃん、何か手伝う事あるか?」
「そうさね〜季節も変わったからもう一度畑を耕そうかねぇ」
婆ちゃんの作る野菜や果物は美味い。
余った分をご近所さんに渡したりもしていたがなかなか好評である。なんでも、みずみずしくて鮮度もよくて料理に使いやすいからだ。
そんな美味しい野菜を作るためには、色々手間をかけねばならない。
いい土、化学肥料ではない肥料など.....昔ならまだしも今年80になる婆ちゃんには正直しんどいと思う。
だから、俺が手伝って少しでも楽になって貰いたいと思っている。
「今日はこのぐらいさにしとこうかねぇ〜」
「あぁ。婆ちゃんお疲れ様」
畑を鍬で耕して2時間、もう真っ暗である。2人はさっさと畑から出て土を払い、普段着に戻り家に戻った。
「あら、お疲れ様もうご飯出来てるからさっさと食べちゃいなさい。」
「うん、分かった。」
「あとそれから」
「うん?」
「食後に私の部屋に来なさい。」
「.........わかった」
この時点で開は母親から何を言われるかわかったのである。
「来たわね」
30分後開は母親の部屋で正座をしていた。
だが、気になることが一つあった。
「なんで、婆ちゃん居るの?」
「おや、居ちゃいかんのかい?」
「そういうわけじゃないが.....」
「お婆ちゃんは私が呼んだの。あんたの現状を教える為にね。」
それから母親は開の現状を祖母に話した。行く高校が決まっていないこと。農業を手伝っているので勉強も疎かになっていることを.....。
「ふむ、今の話は本当かえ?」
全てを聞いた婆ちゃんは無表情でそう言った。
怒っているわけでもなく、かといって笑っているわけでもなく、ただ無表情に。
「.....あぁ、概ねあってるよ。こんなこと言いたくねぇけど婆ちゃんもう歳だろ?そんな婆ちゃんを一人で農業なんてとてもじゃないが見てられないんだよ。」
「.....わしは、まだまだ動けるぞ。」
「そういうことじゃあないんだ。これから夏も来る。俺や母さんがいない間倒れたりしたら誰が助けを呼ぶんだ?怪我をしたら誰が病院に連れてくんだ?」
でるわでるわ今まで溜まっていたこと。
「不謹慎だとは思うがもしそれで婆ちゃんが死んだら、誰が責任取るんだ?それにショックで母さんが寝込んだらどうする?もう俺の家族は母さんと婆ちゃんしかいないんだ!」
「開くん....」
「何より高校進学の金、誰が用意するんだ?母さんが働いてくれてる金で仮に入学できたとしよう。でもそこから3年間毎月お金がいるんだよ?それを稼ごうとして母さんが仕事の量を増やして倒れたら元も子もないんだよ!」
「開.....」
「それに勉強が疎かになってるだって?いつも食後から寝るまでしっかりしてるよ!げんに今まで赤点とってないだろう!」
これが開の本音だった。
開は優しく正義感が溢れる少年だったし、家族を大切にする子だった。
故に開は自分の本音を言わず、弱音を吐かず家族の為に尽くして来た。
友人関係も心配されないように築いて来た。小大唯も3年間見守ってきた。
だが、開も人間である。
苛つく事があれば怒るし、ストレスも溜まる。
かといってそれが嫌で逃げれば、また誰かに心配させて迷惑をかけてしまう。
だから耐えた。必死に耐えた。
「塵も積もれば山となる」と言うことわざがあるように、勉強と農業の疲労で開も最近限界だった。
必死に押さえつけていたものの、ついに溢れかえってしまったのである。
「.....開くん、そんな事があったのに手伝ってくれたんだね...」
「開.....ごめんね....あんたの事も知らずに怒ってごめんね」
やってしまった。
開が最も恐れていたこと、家族を泣かしてしまった。
「いや、俺も言い過ぎた.....」
「でもね開、あんたも1つ間違ってるの」
「何が?」
「この家、実は結構お金持ちなの」
「.....は?」
信じられない、母は汗水垂らして必死に働いていたのを開は知っている。
「あんたが生まれる前に、お父さんとお母さんはバリバリ働いていたわ。でも母さん達ね、将来の子供のために全部貯金してたの」
「十分お金も溜まったわ、でも心配だったの。子供が怪我でもしたらどうしよう、とかね」
「母さん.....」
「そんな心配もあって今に至るの」
「わしもなぁ〜爺さんが遺した大金があってのぉ。使うこともないから残しといたんじゃよ。」
「婆ちゃん.....」
「だからお金の事は心配しなくていいのよ」
「あぁ、それに農業は今年で終わりにしようと思ってたんじゃ。開くんの言う通り、しんどいからの」
「.....」
「だから、開」
「.....うん?」
「今からでも遅くないから、真剣に進路のこと考えて!開、あんた昔言ってたじゃない!」
『俺、ヒーローになりたい!』
「母さん、婆ちゃん.....」
「うん?」
「どうしたんじゃ?」
「俺..........雄英に行ってヒーローになりたい」
「「頑張りなさい」」
俺はたった今、夢に向かってエンジンをかけた
〜to be continue〜
閲覧ありがとうございます!
この1ヶ月埋めるために出来るだけ早くに投稿しようと思います。
次回やっと入試編に入れそうです。
これからもよろしくお願いします。