命の意味~Per connetterti con te~ 作:Anmary
「フォルトゥナでは、人が死んだ時記録が残るのか」
移動事務所Devil May Cryの中で、息子との間に流れる沈黙を切り払うようにバージルは唐突にそう問うた。
言われた相手の方は、それまでしかめっ面で様子を見ていた義手をテーブルに戻し父親の方に向き直る。
「たぶんね。昔は葬式をする時に教団騎士が同行してたんだ、冥土への露払いとか……そういう意味合いで。だから教団の資料に"教団騎士のだれそれが、どこそこの葬式に同行した"って程度なら残ってると思う」
「そうか」
自分から聞いたというのにバージルの相槌はあまりに素っ気なく、ネロは少しばかり機嫌を損ねかけた。
「なんだよ、フォルトゥナに住んでるどなたかの生死でも気になるってか?」
「……ビアンカという、女のな」
適当に煽ってやったつもりだったというのに、まともな返事が来たことでネロは目を瞬かせる。
聞いたことも無い名前だ、魔剣教団の一件以来フォルトゥナの住人にはできるだけ気を配ってきたつもりで、なおかつフォルトゥナの顔役にまでなった自分が聞き覚えのない名前と感じるのはつまり。
「俺が知る限り、フォルトゥナにそんな名前の女はいねぇな」
「……そうか」
少なくとも偽神の事件が収束するより前に死亡したか、どこかへ出ていったのだろうと考えられる。そう告げてもバージルの横顔に変化はない。細めた目、その視線の先にあるのは恐らくこの世のものでは無いのだろう。
「……まさかと思うけど」
ネロはもう少しだけ話を広げようとした。そのビアンカという女性の正体に何となく察しをつけたからだ。そしてバージルもまた、それを否定しようとはしなかった。少しばかり暈しはしたが、『肉体関係があった』と仄めかす。
「
「ソイツが俺の、母親……?」
元々、ネロは自分の実親に興味がなかった。捨て子だということは望まれて生まれたのではないと分かっていたからだ。だから自分にとっての両親は育ての養い親だし、家族はその両親の実子であるキリエとクレドだけ。そう信じていたし、そう思い込んでいた。
──
バージ
今更、どう受け止めていいかわからなかったのだ。
キリエと恋人になり、家族になった。ネロにはもうネロ自身の作り上げた家庭がある。今更、自分と直接血の繋がっている家族の存在を聞かされたくなどなかった。
でも今のネロはそれを知ってしまっている。知ることを諦めた父親が(たとえソイツが邂逅1番にこちらの右腕を引きちぎってくるというとんでもクソ野郎だとしても)生きていたということを。
「聞きたいのか、その女の話を」
「……わかんねぇ。今だってアンタを親父として理解はしたけど、家族として受け入れられるかっていわれりゃわかんねぇ。だから同じように母親のことを聞かされてもどう感じるかなんて想像もつかねぇよ」
自分でそういうだけあって、ネロは気持ちの整理をつけきれずに居るようだった。何もかもが、今更にしか感じられなくて。でも、と多少時系列が前後しつつ彼はなんとか言葉にする。
「でも、知りたいとは……思う」
「……わかった」
バージルはネロに視線を向けないまま1つ深く息をした。
「俺がビアンカという存在を知った時、奴はフォルトゥナで情報屋を営んでいた」