ただレオナがデレるところを見たいだけ
リノウチ大空襲。数ある空戦の中でも一際、有名な出来事。かつての大都市《リノウチ》に空族の連合軍が宣戦布告。一攫千金を狙った大博打に対してリノウチも自警団を含め、多くの用心棒などを雇って迎え撃った大空戦。
参加機は未確認であるが敵味方合わせて500機近くが参加したという。
この戦いの生き残りは後に多くのエースパイロットとして名を馳せたという。
この戦いに当時、駆け出しだった一年目のレオナも参戦していた。
「よし、これで3機!」
自身の育った孤児院を維持するために用心棒稼業を始めた彼女は比較的に名の知れた組織に入りその腕前を振るっていた。たった一年という経歴を思わせない才能と肝の太さであっという間に昇格した。
「くそっ!あの小娘、なんて動きしてやがる!」
「ついていけねぇ!」
組んでいた随伴機を引き離し一人で暴れまくる彼女に仲間も辟易としていた。
「あんなん一人で飛ばしてやれ!」
「そうだな、こっちが落ちちまう!」
随伴機が居なくなろうとも彼女は止まらない。赤い零戦五二型に乗り込んだ彼女を止めるものはいない。
「5!」
リノウチの空で大暴れしていたレオナの後ろに迫る影。容赦なく彼女を狙ってきたのは緑色の隼の1型/丙。だが調子に乗った彼女は止められない。一気に加速して上昇すると引き離す。
(隼ごときで零戦に勝てるか!)
「くそっ!やるしかねぁ!」
すぐさま後ろを取った彼女は隼を狙うがチョロチョロと動き回られ当たらない。レオナの僚機も攻撃に参加するが当たらずに翻弄されている。
「くそっ!」
3対1にも関わらずに勝てる道筋が見つからない。すると味方の一機が後ろに着かれてしまう。レオナと僚機で隼とヘッドオンになるが射線が追われている味方と重なって撃てない。
「何してる!早く撃て!」
「くっ…撃てない」
「くそが!」
何も出来ずにすれ違うと盾になっていた零戦が落とされる。相手の技量に素直に驚かされる。これは駄目な奴だ。
「ちょこまかと!」
「雑魚は引っ込んでろ…」
すぐに僚機も落とされついにレオナ一人となる。この状態でも状況はかなり不利だというのに一対一なんて冗談じゃない。障害物の多い都市部に入り相手を撒こうとする。
「良いパイロットだな…だが……」
逃げる零戦を見ていた隼のパイロットは覆われた顔にわずかな笑みを浮かべると一気に動き出す。残念ながら複雑な地形と視界の悪い市街地の空戦では隼に分がある。
「貰ったぞ!」
性能の差で引き離して後ろに着ける。
「どうかな?」
「なに!?」
レオナが背中を取った瞬間。太陽を背にしたストールターンであっという間に後ろに回られると攻撃を加えられ被弾する。まさかの零戦の十八番でやられ少し煙を吹く。
「ぐっ!そんな、隼に!?」
性能で言えば零戦の方がやや有利のはずだ。それなにのこの一方的なやられ方。そんなことがあり得ないと彼女は思うが現にやられているのは自分だ。
「やられる…」
死を覚悟したその時、二人の間に割り込む一機の戦闘機。流星は隼に牽制を仕掛けると一気に隼との巴戦に入る。
「すごい…」
流星も人間とは思えぬ機動を見せているがレオナが目を奪われたのは先程まで襲ってきた隼の方だった。翼を縦にしてビルの隙間に入り込むと流星の背後に回り込む。
流星も後ろからの攻撃をバレルロールでかわすとそのまま隼に追い抜かさせる。そのバレルロール状態中に機銃の短連射、隼も高速でバレルロール回避を行うと上昇。
お互いに建物の間でバレルロールを行うという鬼機動を見せると今度は背の低い住宅街に流れていく。
「やるな…」
そのまま隼と流星は互いにもつれ合いながら姿を消していく。レオナはその様子をただ唖然と見つめることしかできなかった。
「あんなのがいるのか…」
そらには化け物がいるただその事実だけがレオナの中に残ったのだった。
「うわっ!」
すると一発もらったエンジンが火を吹き始め機体が落ちていく。街のど真ん中に落ちた後もただ唖然とするだけだった。