個性 鉄血艦隊司令官 をもつ少年の話。
チート気味
個性と呼ばれる超能力が常識と化してしまったこのご時世。多種多様の個性が存在し中には何かしらに特化した個性を発動させる人間も発生した。
そんな希少性を持つ個性を持った人間はそれを活用し学校に《ヒーロー》と呼ばれる職業に憧れを抱いて進んでいくものだ。
特異な個性が多く存在するこの世界でもさらに特異な個性を持つ人物が存在する。
特にこの話の主人公である
鉄血の個性は《鉄血艦隊司令官》。これは自分自身が勝手に決めた個性名であり"彼女たち"の言葉を聞いて決めた名前でもある。
両親ともバリバリのエリートだった鉄血は両親との記憶はあまり持っていない。その代わりに5人の姉たちに育てられた。厳密には俺は一人っ子だったが少なくともご飯って5人の姉らしき人物たちが俺を育ててくれた。
「ふふふ…さすがは我が選んだもの……いい飲みっぷりだ。たくさん飲んで理想の指揮官になるがいい」
赤子の頃の大半…と言うより九割ぐらいは長い銀髪を持った女性の膝の上に乗せられていた。ミルクも子守唄も散歩も彼女に引っ付いて過ごしていたらしい。
その彼女の名前はグラーフ・ツェッペリン。これが一人目の姉であった。そのせいで最初に発した言葉は
「にくむ…」
であったのはかなりの黒歴史である。
そして次に抱いていてくれたのは金髪の女性。グラーフに負けず劣らずの包容力(物理)を持ちときたま俺を強奪して外に言っていたのはローン。
「ふふふっ…私の私のかわいい指揮官♪」
散歩以外、基本的に家から出ようとしないグラーフの代わりに動いていたのが彼女であった。彼女はこう見えてファッションヤンデレである。
赤子の頃、特にスキンシップが激しかったのはこの二人であった。
「ふぅん…えらいえらい」
「えらいぞ、よくやったな」
幼稚園や小学校ごろに上がって様々な世話をしてくれたのはこの二人。プリンツ・オイゲンとティルピッツであった。
ティルピッツはその見た目を利用して授業参観などの行事に参加。プリンツはその高いコミュニケーション能力で様々な人たちとのネットワークを築いていた。
「…………」
そして忘れてはいけない。我が家の実質的な家長《ビスマルク》彼女は基本的に黙して語らず。俺を厳しくしつけてくれた父親のような存在であった。
そんな彼女たちを現実世界に呼び出して使役する力。まさに《鉄血艦隊司令官》の個性こそが俺の能力であった。
戦艦たちの魂の投影がこの個性ならばこの個性は時間制限がない個性と言うことになる。生まれてから今日まで彼女たちが消えることはなくむしろ増加の一途を辿っている。
「はぁ…」
「どうしたの…指揮官?」
「いや、少し昔の事を思い出しただけだよ」
「そう…」
魅惑的に絡んでくるプリンツを無視しながらも目の前に繰り広げられている光景を静かに見つめる。
「機械が相手だと楽でいいね」
「本当に大したことないわねぇ…説明で構えてた私が馬鹿みたいだわ!」
緑色のボディーに数字が書かれたロボットたちの残骸が山のように積み重なり山になる。その上でふんぞり返っていたドイチュランドは高らかに笑う。
その山の麓にアドミラル・グラーフ・シュペーは巨大な手で新たなロボットを握りつぶす。
「でもさぁ、俺が立ってるだけって言うのはどうかな?」
「指揮官は見ているだけでも良い。姉さんは文句を言わずに送り出してくれた…つまり、そう言うことだ。ここで手を出す必要はない」
「そうか…」
ティルピッツの言葉に鉄血は少し落ち着きを取り戻した。鉄血艦隊が駆逐しつつあるロボットたちは国立雄英高校、入試試験の評価機。
一見すれば異端である人を産み出す個性。その所有者《船 鉄血》は入試実技1位を手に入れたのだった。
ーーーー
ワンシーンチラ見せ
「ちっ!堂々と戦いやがれこの陰キャ野郎が!」
「悪いが個性全開のお前と戦う気はない。これが俺の個性なんでね…それに」
「よそ見の暇があるのか?」
「クソが!」
ティルピッツの一撃をかろうじて避ける爆轟。ティルピッツの至近距離で高威力の爆発を叩き込むが彼女は何事もないようにピンピンしている。
「無駄だ。私には効かん…」
戦艦同士の殴りあいを前提に設計された戦艦に爆発ごときでは効かない。彼とティルピッツたちは絶望的に相性が悪かった。
「ふっ!」
「くっ!」
ティルピッツは持っていた旗で鋭い斬檄を繰り出すと彼を追い詰めていく。ただ坦々とマシーンのように正確無比の攻撃に爆轟は防戦一方だった。
(なんとか虚を突いて…)
「スタングレネード!」
ティルピッツの攻撃と同時に放たれた眩い閃光。それによってティルピッツに少しだけ隙が出来る。それを見逃さずに彼女を突破、鉄血に肉薄する。
「死ねやおらぁ!」
「そんな…バカな……」
目を見開く鉄血、それと同時に爆轟の一撃が炸裂する。巨大な爆発に巻き込まれて姿が見えなくなる二人。危機的状況からの一発逆転。観衆がざわめく中、姿を表した二人は観客の思い浮かべていた表情とは全く違った表情をしていた。
「てめぇ、まだ隠してたのか」
「とでも…言うと思ったかい?この程度は想定の範囲だよ!」
二人の間に割り込んでいたのは竜のような鋼鉄のマシーン。巨大な砲を持つ竜の前に立っていたのはローン。
「ふふっ…若いわね。若い子は大好きよぉ」
「年齢なら俺と同じだけどな」
「それは言わない約束でしょ、指揮官!」
のんびりとした口調に反してローンの手は爆轟の首と利き腕をしっかりと掴んでガッチリと拘束している。
「なめんな!」
ゼロ距離による爆発、だがそれはローンにも通じない。その上、ローンの圧倒的馬力に対して爆轟はその手を振り払えずにいた。
「悪い子にはおしよきですよぉ」
爆轟を高く掲げたローンはそのまま地面に彼を叩きつける。その見た目から想像できないパワーでコンクリートに叩きつけられた爆轟は苦悶の声をあげるが間髪いれずにローンの足元に爆発を叩きつける。
「あら」
足場を崩された彼女は体勢を崩す。そんな彼女にすかさず顎にむけて蹴りを入れようとするが受け止められる。
「見た目より考える…危険な子ね……」
「がぁ!?」
「でも私だけ見つめられても困るわね」
ローンの言葉と共にティルピッツは大きく振り上げていた拳で爆轟の意識を刈り取るのだった。