若干チートぎみ
「ウォールローゼ南区、ダウパー村出身。サシャ・ブラウスです!」
「サシャ・ブラウス。貴様が右手に持っているものはなんだ?」
「蒸かしたイモです」
ウォール・ローゼ南方面駐屯の訓練兵団の施設。そこでは104期となる訓練兵たちが列を成して教官であるキースの叱咤を受けていた。
「貴様、盗んだのか。なぜだ、なぜ今イモを食べ出した?」
「冷めてしまっては元も子もないので…今、食べるべきだと判断しました」
「いや、分からないな。なぜ貴様はイモを食べた?」
数多くいる訓練兵の中、そんな彼は立っていた。いや、正確には彼女と言うべきなのだろうか。
アイスブルーの瞳を持ち、髪は襟まですらりと伸びた美しい銀髪、その髪はうっすらと青みが入っておりその場に似合わない人物であった。
「………」
他の女性を凌駕する高い身長からその何も映さない死んだ眼で見つめられた人物は否応なく寒気に襲われる。美しさと恐ろしさを秘めたつららのような人間であった。
(まさか転生するとは…)
隣の人間から密かに恐れられている一方。本人は自身の立場を改めて思い出していた。
《貴方には使命を与える》
生きる目的。それは自称神からの使命を全うすることだった、本当にくだらないが目的があるのは良いことだ。しかも具体的な。
(運命を全うさせるか…)
彼女の使命は特定の人物の運命を全うさせること。だが期限は彼らが生涯を終えるまでではない。とある一定の運命を全うさせるまでに補助して見守る。それが使命と言う名の命令であった。
《どうやって期限を知るか?それなら大丈夫、嫌でも分かるようになってるから》
(嫌でも分かるねぇ…)
この話は知っている。《進撃の巨人》と呼ばれる大人気の漫画作品だ。だが残念ながらあんまり内容は知らない。主要キャラがある程度、分かるぐらいだ。
(にしても早く終わらないだろうか…)
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104期の訓練兵。後の世でその名を馳せる人物たちが共に寝食を共にして競いあった一種の伝説の一つとされる言葉であった。
その中で確かな存在感を持ちながらも決して目立たなかった人間がいた。大衆はその名を知らないが104期のメンバーたちは過去の話をする度に彼女の名前を口にする。そして口を揃えてこう言うのだ。
「アイツは凄い奴だった」と
…彼女は美しく、優秀で、信頼を集めていた。
だが彼女は決して目立たずに…そして劇的に死ねたわけではなかった。
たった数年間でのわずかな時間。彼女の命の煌めきを決して彼らは忘れないだろう。
そんな悲運の女兵士の物語
クラウ・ランシャール
身長 177cm
体重 63kg
出身 シガンシナ区
基本的に無口だがお人好しでお節介。同期の間ではミカサと同じく抑止力的な存在でもある。男女ともに距離感が近く仲良くなるとよく話すようになる。
同郷なだけあってなんだかんだエレンたちとつるんでいる。それが原因でたまにミカサに命を狙われそうになる。
個人の戦力としてはそこそこだが状況把握能力と指揮能力が高い。密かな逸材。