明日ありと思う心の仇桜   作:ぴぽ

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第11話

無事に水着を買い終わった3人は夜ご飯にさくらのリクエストであるハンバーガーを食べていた。ハンバーガーが食べたかったのか、おまけのおもちゃが欲しかったのか分からないが、さくらは満足そうにポテトを食べていた。

「水着、良いのがあって良かったな。」

「うん!明日香お姉ちゃんが見つけてくれたんだよー!」

「さくらちゃんに絶対に似合うよ。」

明日香はそう言うと、自分の席の横に置いてある店のロゴが入った袋を見た。中にはさくらのリクエストであ「ピンクの可愛い水着」が入っている。

「明日香ちゃん。本当にありがとう。」

素生は本当に助かったという表情を浮かべていた。

「いえ。さくらちゃんの為なので。」

「…そっか。で…話しって?」

素生は背筋を伸ばしながら言った。その表情は少し緊張感があり、いつものニヤニヤした表情はなりを潜めていた。

「そうでしたね。飛川さんは…お姉ちゃんの事、どう思ってます?」

明日香の口調はとても穏やかなものだったが、目線は鋭く、真面目に答えないと許さないと目線で訴えていた。

「…お姉ちゃんって…。戸山さん?」

「私も戸山です。」

「話しの内容から分かるだろ?俺はお宅のお姉ちゃんの香澄さんは戸山さんって呼んでるの。」

「分かりましたから。で、どうなんですか?」

明日香は素生の話しを興味なさそうに言うと、早く本題を話せと、話題を戻した。

「どう思ってるか…。元気で明るい人…かな。」

素生は腕を組んでう~んと考えると、呟くように言った。

「…それだけですか?」

「…うん。って、明日香ちゃんの聞きたい事ってそれだけ?」

「そうですけど、何があると思ったんですか?」

明日香は目を細めながら言うと、素生は「別に…。」と小さく呟いた。

「何のお話しをしてるのー!?さくらもお話ししたいー!」

明日香て素生が話している横で、ジッと聞いていたさくらだったが、話しの内容が理解出来ず、ムスッとした表情で言った。

「さくらちゃん。私ね、お姉ちゃんがいるんだよ。」

「お姉ちゃんのお姉ちゃん?」

「そうだよ。優しくて、元気なお姉ちゃんだよ!」

「さくらも会いたい!」

明日香が自分の姉を紹介すると、さくらはポテトを口の端につけながら満開の笑みを零した。

「うん!また今度ね!」

明日香もさくらの満開の笑みに釣られるように笑顔で言った。

ちなみに、となりのテーブルでは

「日菜!それ、私のポテトよ!?」

「え?いーじゃん!ねぇ?潤君?」

「紗夜姉さんも日菜姉さんも静かに食べれないんですか!?」

と会話が聞こえていた。

 

─────────────────────

いつもよりだいぶ帰宅が遅くなってしまった明日香。「(怒られるかな。)」と思いながら玄関の扉を開けると、仁王立ちをした香澄に出迎えられた。

「…ただいま。何してるの?」

「あっちゃんを待ってたの!言いたいことが沢山あるの!」

明日香が靴を脱ぎながらチラッと香澄を見ると、怒っている様子であった。

「…ごめん。帰りが遅かったから怒っているんだよね?」

「違うよ!」

香澄はそう言うと、明日香を自分の部屋まで引っ張って行った。

「ちょ、ちょっと!お姉ちゃん?」

「あっちゃん?これ、どういう事?」

香澄がスマホの画面を明日香に向けた。そこには素生からのLINEが映されていた。

 

“今日、明日香ちゃんからお姉ちゃんの事どう思ってますかって聞かれたんだけど、俺、戸山さんに何かした?”

 

明日香が読み終わり、香澄の方を見ると、香澄はまだ怒っている様子だった。

「…これがどうしたの?」

「なんでこんな事聞いたの?」

「え?だって、私、飛川さんにお姉ちゃんの事アピールするって言ったじゃん。」

何故、香澄が怒っているのか分からない明日香は前に二人の間で決められていた事を言った。

「そ、そうだけど…。」

「なに?お姉ちゃんどうしたの?」

「いや…。なんて言うか…。恥ずかしい…じゃん…。」

顔を赤らめ、目線を反らしながら香澄は言うと明日香は「はぁ。」とため息をついた。

「お姉ちゃん…小学生じゃないんだから、それくらいで…。」

「だ、だって!は、は、恥ずかしいものは恥ずかしいの!」

呆れながら言う明日香に、香澄は顔を真っ赤にした。

「こんなに恥ずかしがるならはっきり飛川さんにお姉ちゃんの事、好きですか?って聞けば良かった。」

「あ、あっちゃん!?」

「冗談だよ。」

明日香はニヤリと笑う。その瞬間「もぉ!」と香澄は言いながら明日香に抱きついた。

「…お姉ちゃん…本当に飛川さんの事が好きなんだね。」

「そうだよ。大好き…だよ。」

香澄は明日香から離れながら言った。香澄の表情はとても優しく微笑んでいた。そんな表情の香澄を明日香は見て

「面白くない。」

と小さく、小さく呟いた。

「さっ!次は私の番だよっ!もっくんの良いところ教えるからね!」

「…はいはい。分かったよ。とりあえず、着替えてくるから。」

明日香は帰ってきて、直ぐに香澄に連れられて行ったので制服のままだった。しかし、早く喋りたい香澄は明日香の部屋まで一緒に行ってしまった。

「ねぇ。着替えたいんだけど。」

「着替えたら良いじゃん?」

満面の笑みで言う香澄に明日香はまた「はぁ。」とため息をつき、後ろを向くのであった。そんな明日香の着替えなど、興味がないように香澄はどんどん素生の話しを始めるのであった。

 

─────────────────────

「一緒に行こっ!」

朝、登校した明日香は教室に入った瞬間に六花に腕を掴まれていた。

「ち、ちょっと!六花、落ち着いて!どこに行くの?」

明日香は腕に絡みつく六花を引き剥がしながら言った。

「ポピパさんのライブ!」

六花は目をキラキラと輝かせながら言うと、明日香の返事を聞く前に「あぁ。ポピパさん…。」と自分の世界に旅立ってしまった。

「六花?六花!はぁ。ダメだこりゃ…。」

そんな六花を放って、自分の席に座る。予鈴がなるまで時間がまだあった為、スマホを開くと不在着信があることに気付いた。

「…はぁ。朝から何?」

六花は眉間に皺を寄せた。着信を残していたのは素生だった。六花がかけ直そうか、どうしようか悩んでいるとスマホがブルッと震え、素生からLINEの着信を告げた。

 

“朝から電話ごめんね。

さくらがどうしても明日香ちゃんと喋りたいって言って…。

もし、良かったらうちに放課後来てくれない?

俺、いないけど…。”

 

明日香は素生からのLINEを見て、心底、着信に気付かなかった自分を恨んだ。さくらとの電話なら絶対にしたかったのだった。そして、明日香はすぐに返信の文を打ちだした。

 

“飛川さんいないんですか?

いないなら是非、行きます。

さくらちゃん、好きなお菓子とかありますか?”

 

明日香が送信をすると、予鈴が鳴り響いた。今から始まる長い授業にうんざりとした雰囲気が教室を包む。しかし、明日香は放課後に楽しみが出来た為、ニコニコしながら授業の準備を始めた。

「一時限は…。現代文か。」

「明日香ちゃん!ポピパさんのライブ、行くの行かないの!?」

自分の世界から帰ってきた六花は慌てながら明日香に問いただした。

「また、昼休みね。詳しく教えて。予鈴鳴っちゃったから席、付きなよ。」

「うぅ。絶対だよ!」

悔しそうに六花は言うと渋々、自分の席に着いた。

 

─────────────────────

「ひ~ちゃんの唐揚げも~らい。」

「あっ!モカっ!私の唐揚げ!」

「ひ~ちゃん、ダイエットしてるんだよね~?だから、変わりにモカちゃんが食べてしんぜよ~。」

賑やかな屋上の一角で明日香と六花は弁当を開いていた。六花は昼休みに明日香にPoppin`Partyのライブの話しをしようと息巻いていたが、今はそんな話しが出来る雰囲気ではなかった。

「明日香ちゃん…大丈夫?」

「…大丈夫じゃない。」

事件は3時間目の英語の時間に起きた。英語の授業の一環で自分の将来の夢を英語で書いて、提出するという明日香にとって難解な宿題が出たのだった。

「ま、まぁ、期限は2週間あるんだし…。」

「2週間で将来の夢を見つけろって六花は言ってるの?」

明日香はそう言うと、頭を抱えた。

「…将来の夢か…。私もギターで何かしかないから私もどうしよっかなぁ。」

六花は空を見上げながら言った。空は夏が近い事を表すように小さな入道雲が出来ていた。

「将来か…。やっぱり漠然でも将来の夢ってあった方が良いのかな…。」

「明日香ちゃんは本当にやりたい事とかないの?」

「無いからこんなに悩んでるの!はぁ。なんて書こうか…。」

「あんまり難しくしちゃうと今度は英文にするのが大変だもんね。」

「だね。はぁ。本当に嫌な宿題だよ。」

明日香は目の前にあるおかずから卵焼きを選んで口に運んだ。

「ところで、明日香ちゃん。…その…。」

「何?」

「と、飛川さんとはどうなったの?」

六花は頬を赤く染めながら言った。

「どうなったって。別に何も?」

「そ、そうなの?か、香澄さんとうちの銭湯で喋ってたよね?」

「…飛川さんの事が好きなのはお姉ちゃんで、飛川さんは私の事が好きらしいよ。で、お姉ちゃんは飛川さんと私が付き合えば私が幸せになれるから付き合って欲しいんだって。」

「あ、明日香ちゃんはどうなの?」

「大っ嫌い!」

明日香が眉間に皺を寄せながら言うと、六花は苦笑いを浮かべた。

「まぁ、何はともあれ、香澄さんと仲直り出来たなら良かったよ。…あんな香澄さん、もう見たくない…。」

「それは同感…。あんなのお姉ちゃんじゃない。」

明日香と六花は喋りながら、弁当を食べた。そして昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響くと、2人は腰を上げた。

「そう言えば六花?」

「何?」

「ポピパの話は良かったの?」

明日香がそう言うと「あぁ!」と叫んだ。

「また後でね。」

明日香はそう言うと、六花の手を引っ張って教室に向かったのだった。

 

─────────────────────

学生達が昼食後の眠気に耐えれたり耐えれなくなったりしながら、本日最後の授業を終えた明日香はダッシュで教室を出た。後ろから「明日香ちゃん!ポピパのライブの話は!?」と六花の声が聞こえたが、明日香は心の中で「ゴメン」と呟いた。そのままの勢いで校舎を後にし、コンビニに寄り、さくらが好きと言うチョコを買って素生の家に向かった。そして10分後、急いだ明日香は肩で息をしながら素生の家に到着した。呼吸を整えながらインターフォンを押すと、可愛らしい声で「はぁ~い。」と聞こえた。ガチャリと鍵が開くと、さくらが満面の笑みを浮かべて明日香に飛び込んだ。

「明日香お姉ちゃん!本当に来てくれた!」

「来るに決まってるよ!さくらちゃん!こんにちは。」

「こんにちは!…明日香お姉ちゃん!それって!」

「うん?これ?お兄ちゃんからこれが好きって聞いたから買ってきたよ?」

明日香がコンビニの袋からチョコを取り出すと、さくらの表情が更に明るくなった。

「ありがとう!」

「いえいえ。中に入っても良いかな?」

明日香はそう言うと、さくらは「どーぞ!」と言いながら明日香を招き入れた。

「さくらちゃん1人なの?」

前と同じリビングに通された明日香は部屋を見てさくらの他に人の気配がしない事を疑問に思い言った。

「うん!お母さんはお仕事で、お兄ちゃんはバイトだよ。」

「…お父さんは?」

「お父さんはお空の上にいるんだって。さくらが小さい時にお空に行っちゃったんだって。会って見たいなぁ。」

「え?」

明るく言うさくらだったが、内容はそれに反して重たいものであった。さくらのテンションの高さから見て、人の死と言うものをさくらは理解していないように感じた。

「そっか。1人でお留守番、偉いね。」

明日香はさくらの頭を撫でながら言うとさくらは気持ちよさそうに笑った。

「お兄ちゃんは何時頃帰ってくるの?」

「えっとね。短い針が7くらいだよ。」

さくらは時計を見ながら言うと明日香は「(7時か…。遅いな…。後2時間くらいあるなぁ。)」と考えていた。

「そっか。なら、お母さんは?」

「お母さんはさくらが寝てから帰ってくるよ!」

「へ?」

明日香がびっくりした表情を浮かべるとさくらは首を傾げた。5才の女の子が2時間という長時間、1人で留守番は辛くないのだろうかと考えた明日香だったが、当の本人はそれが当たり前のような表情を浮かべていた。

「さくらちゃんはよくお留守番してるの?」

「うん!さくら良い子だから!」

さくらはまた満面の笑みを浮かべるが、明日香は困ったように眉を八の字に下げた。

「…寂しくない?」

「…ちょっと寂しいけど…大丈夫!さくら良い子だからっ!」

一瞬、表情を曇らせたさくらだったが、またいつものように輝くような笑顔を見せた。

「…そっか。さくらちゃん。お菓子、食べようか?」

明日香がコンビニの袋を掲げながら言うと、「食べるー!」と言いながら明日香に抱きついた。

「ふふっ。じゃあ、テーブルの前に座って食べようね?さくらちゃんはいつも何処に座ってるのかな?」

「いつもはあそこだけど…。」

「うん?どうしたの?」

「今日は明日香お姉ちゃんの膝に座りたいっ!」

明日香を抱き締め、顔を胸に押し当てながらさくら言った。

「良いよ。よいしょっと。」

明日香はさくらを持ち上げ、自分の膝に明日香を乗せた。

「やったぁ!ありがとう!明日香お姉ちゃんも食べよう!」

チョコの袋を開けながらさくらは言うとチョコを1つ摘まんで明日香に渡した。

「ありがとう。」

明日香は微笑みながらチョコを口に運ぶ。子供向けのチョコの為、かなりの甘さが口の中に広がったが、不思議と嫌な気分にはならなかった。

「明日香お姉ちゃん、いつまでいるの?」

「ん?お兄ちゃんが帰ってくるまでいるよ。」

明日香はそう言うと、さくらはまた「やったぁ!」と言った。本当は素生が帰ってくる前に帰りたかった明日香だったが、さくらを1人にして置くわけにもいかず、さくらに聞こえないようにため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




暑いのか涼しいのかよく分からない気候が続いてますね。
皆さん体調を崩されていませんか?
僕も体調を崩さないように気を付けながら小説を書きたいと思います。

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