明日ありと思う心の仇桜   作:ぴぽ

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第14話

太陽が顔を出しているかいないか、そんな時間に明日香は雀の「ちゅんちゅん」と言う鳴き声で目を覚ました。冷房が効いている部屋で寝ていた為、布団を頭まですっぽり被っていた。そのせいで、明日香は目が覚めたときに外の状況が分からかったが、雀の鳴き声を聞き「あぁ。今日も晴れなんだ。」と考えていた。そして亀が甲羅から首を出すようにモゾモゾと明日香も首を出すと、スマホの画面をタップした。

「5時…。まぁ、昨日、早く寝たから、早く目が覚めて当然だよね。」

たっぷり寝た為、頭はスッキリとしていたが布団から出たい訳ではなく、そのままぼーっとスマホを眺めながら過ごしていた。

「さて…。検索してみますか。」

小さく深呼吸をしながら呟いた明日香。そして「桜 夢占い」と慣れた手つきでタップし、お世話になっているサイトを開いた。昨日見た桜の夢が今までとは違い、かなり心地良いものであった為、内心ワクワクしながらサイトを読み進めていた。

「あっ。これで良いのかな?桜に登る夢…。え?」

明日香は自分が見た夢に近いものを探し当て、詳しく内容を読み始めた。その内容を読んだ明日香の表情は驚いた表情をしていた。

 

「桜の木に登ったり、触れたりしている夢なのでしたら、素敵な出会いから恋愛が始まる事を暗示しています。」

 

明日香は再度、文字を読んで見たが、何度読んでも恋愛の運気が上がると言う説明しか書いていなかった。

「いやいや。ないない。」

明日香は自分に言い聞かすように呟いたが、冷房に当たって弱冠冷えていた身体がだんだん暑くなってきており、顔もニヤけている自分に気付いた。それと同時に、素生の顔も浮かんでいた。

「違う違う違う!な、な、な、なんであの変態の顔が浮かぶの?そ、そうだ!私の周りに男があいつしかいないからだ。そうだ!そうに違いない!」

明日香は起き上がりながら最早、呟く事を忘れ大きい声で独り言を言っていた。そして、違うと言った際に頭をブンブンと振った。寝起きだった為、まだ血圧が低く、急に頭を振ったので、頭がクラクラし、再び、明日香はベットにパタリと倒れてしまった。

「なんなのよ…。」

頭に腕を置き、クラクラする頭で明日香はため息をついた。

 

─────────────────────

「明日香ちゃん…。」

学校に着いた早々、六花は目を潤ませながら明日香の席までやってきた。

「ど、どうしたの?泣きそうじゃん!」

「明日香ちゃんが悪いんだよ!」

心配そうにする明日香に六花は胸の前でギュッと握りこぶしを作りながら言った。

「え?私?何かしたっけ?」

明日香は自分の行動を思い返すが、全く思い浮かばなかった。

「ポピパさんのライブ…。」

六花は明日香が思い出すまで少しだけ待ってみたが、明日香から答えが出る雰囲気が無かった為、呟くように答えを告げた。

「あっ!忘れてた…。」

明日香は昨日、六花が一生懸命ライブに誘おうとしていた事を思い出すと、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「明日香ちゃん!?本当に忘れてたの!?」

「ご、ごめん!ライブは絶対一緒に行くから許して!」

「一緒に行ってくれるの!?ありがとう!」

六花は先程の今にも泣きそうな顔は何処へやら、明日香の返答を聞いて、パァと明るくなっていた。

「いや。昨日、話聞けれなかったお詫びだよ。それに、私もポピパのライブ見たいしね。」

「本当にありがとうね!また詳しい事はLINEするかね。…明日香ちゃん?昨日は慌てて帰っちゃったけど、どうしたの?」

六花は昨日の放課後を思い出すように言った。

「う、うん。飛川さんの妹さんと遊ぶ約束をしてたから。」

「飛川さん?あぁ!明日香ちゃんと香澄さんが取り合ってる男性だっけ?」

「六花!言い方!それに取り合ってない!」

六花がとんでもない事を口走ったせいで周りにいたクラスメイト達は一斉に明日香と六花の方を見た。そして、明日香の否定を無視するかのように質問の嵐が飛んでいた。明日香は六花を睨むと六花は小さくなり、申し訳なさそうな表情をしていた。

その後、質問の嵐はホームルームが始まったお陰で、なんとか収まったが、明日香と六花は休憩時間になる度に、質問の嵐から逃げ惑う1日になっていた。そして、なんとか1日の授業を終えると明日香と六花は一目散に学校から出た。

「はぁはぁ。…六花!?」

「ほ、ほ、ホントにごめんなさい!」

2人は走ってある程度の距離まで逃げた為、肩で息をしていた。

「まぁ…。良いけどさ。次からは言葉に気を付けてよ?」

「ごめんなさい…。と、ところで、結局、なんで昨日は慌てて帰ったの?」

「話の途中だったね。実は…。」

明日香は昨日の放課後からの話を六花にした。六花はさくらの話を聞くと「私も会いたい!」とニコニコしながら言った。ちなみに、明日香が素生に芽生えたかもしれない気持ちについては伏せたままであった。もちろん、桜の夢についても。

「なるほど。飛川さん、優しい人なんだね。」

「…なんでそう思うの?」

「だって5才の妹さんの送り迎えをしたり、お世話をしたりしてるんでしょ?優しくないと出来ないよ。」

「…まぁ。…そう、だよね。」

六花の発言に煮え切らない態度を明日香はとった。そんな明日香に不思議そうな表情を六花は浮かべた。

「明日香ちゃん?何かあったの?」

「な、な、なんで?」

「へ?だって、顔、真っ赤だよ?」

六花は明日香を指しながら言うと明日香は慌てたように顔をペタペタと触った。

「え、えっと。ほら!走ったから!走ったから顔が暑いの!」

明日香が慌てて言うも、六花はニコッと笑って「そっかぁ。」と言った。その笑顔には色々物が含まれているような気がして明日香は言い返そうとしたが、これ以上、口を開くと墓穴を掘りそうな気がした為、口を噤むのであった。

 

─────────────────────

「はぁ。疲れた…。」

明日香はため息交じりで呟いた。あの後、Poppin`Partyのライブについて、集合場所や時間など詳しく決めた2人は日が暮れている事に気付き、慌てて帰路についたのである。しかし、早く帰らなきゃと思えば思うほど、学校で精神的に疲弊した明日香の足を重たくするのであった。

「はぁ。私、本当にどうしちゃったんだろ…。」

明日香がそう呟けば脳裏にあの大嫌いだったはずの変態の顔が思い浮かんでしまう。

「だからなんで出てくるのよ。しっしっ。」

手を顔の前でブンブンと振り、思考から飛ばそうとしていた。

「何やってるの?」

「きゃぁ!」

後ろから急に声を掛けられ、明日香は驚きのあまり悲鳴をあげた。

「わぁ!び、ビックリした。そんなに驚かなくても。」

その言葉を聞き、明日香はゆっくりと後ろを振り返ると、ビニール袋を下げた素生が立っていた。1度家に帰ったのか、服装は私服で、ツンツンヘヤーも降ろしている状態だった。

「あっ…。」

急に後ろから声を掛けられれば、驚くのも無理はない。明日香はそう思い、文句の1つでも言うつもりだったが、口が上手く動かず、その場で固まってしまった。

「明日香ちゃん、今帰り?遅かったんだね。」

「は、はい…。」

そんな明日香の心情なぞ知るはずもない素生は気にせず質問を続けた。

「勉強してたの?そうだ!さくらに沢山ひらがなとか教えて貰ってありがとうね。教えなきゃって思ってたから助かったよ。」

「い、いえ。」

「ん?明日香ちゃんどうしたの?体調悪かったりする?」

質問をいくつか繰り返すうちに、素生はやっと明日香がいつもと違う事に気付いた。

「だ、だ、大丈夫…。」

「本当に?顔、真っ赤だよ?」

素生はそう言うと、明日香の額に手を置いた。その瞬間、明日香は自分の鼓動がかなり早くなるのを感じていた。

「だ、だから…だ、だ、大丈夫…です。」

「いや。かなり熱いけど?」

「わ、わ、私が大丈夫って言っているから大丈夫です!」

明日香はそう言うと、踵を返して、さっきまでトボトボと重たい足を引きずるように歩いていたとは信じられないくらい全力疾走で家に向かうのであった。

 

─────────────────────

家の近くまで来た明日香は電柱に背中を預けて、乱れた呼吸を整えていた。

「なんで…いるのよ…。」

先程から同じ事ばかり呟いている明日香。別に何処を歩いていたって素生の自由なのだが…。

「とにかく、早く帰ろう…。」

電柱から背中を離すと、まだ呼吸は整っていなかったが、明日香はトボトボと歩き出した。だいぶ走ったお陰か、家まで目と鼻の先だった。

「ただいま。」

「あっちゃん!大丈夫!?熱があるんだって!早く上がって!わ、わ、私、薬と、飲み物買ってくるから!あっ!何かいるものある!?って、先に病院に行った方が良いかな!?」

明日香が玄関に入ると、香澄が物凄い勢いで明日香に近づき、矢継ぎ早に質問した。その際、香澄は明日香の肩を掴み、ブンブンと前後に激しく揺らしていた。

「お、お姉ちゃん!待って!お、落ち着いて!私、元気だから!」

「嘘!顔も赤いし、呼吸も荒いじゃん!無理しなくて良いから!」

明日香が気を使って、元気に見せていると勘違いした香澄は明日香の手を持ち、病院に連れて行こうとしていた。

「お姉ちゃん!話を聞いて!お願いだから!」

明日香はそう叫ぶと、やっと香澄は止まり、明日香の顔をまじまじと見るのであった。

「本当に熱ないの?」

「うん。大丈夫。元気だから。」

「はぁ~。良かったぁ~。もっくんからあっちゃんの調子が悪そうってLINEが来たから居ても立ってもいれなくて…。」

香澄はそう言うと、明日香を抱き締めた。目にはうっすら涙が浮かんでいた。

「お姉ちゃん。大袈裟だよ。」

明日香は苦笑いしながら答えるが、心配してくれる姉に嬉しさも覚えていた。その証拠に香澄をギュッと抱き締め返していた。

「そういえば、もっくんに会ったの?」

「う、うん。ばったり会ったよ。ビニール袋を持っていたから買い物じゃない?」

「…あっちゃん。もっくんが心配して、おでこに手を置いたら、逃げちゃったんだって?」

香澄がそう言うと明日香は「そこまで話しやがったのか」と心の中で思っていた。

「今度会ったら、ちゃんと謝ろう?」

「…うん。」

今回の事に関しては、明日香自身も悪いことをしたと思っていた為、素直に頷いた。

「それで、なんで逃げちゃったの?そんなに嫌だったの?」

香澄は明日香がそんな失礼過ぎる態度をするとは到底信じられなかった為、疑問に感じていた。

「いや…。そうじゃなくて…。」

明日香は香澄から視線を外し、俯いた。

「…まぁ、とりあえず、リビングで話そう?」

香澄が静かにそう言うと、明日香は再び、素直に頷くのであった。

 

─────────────────────

リビングにあるソファーに明日香は座ると、香澄は台所に向かい、コップにジュースを注ぎ、明日香の元に持っていった。

「ありがとう。」

「ううん。…あっちゃん、もっくんの事、好きになったの?」

昨日の夜、弄るように聞いてきた時とは違い、静かなトーンで口を開いた香澄。心なしか、頭にある2つの耳も、垂れているように見えた。

「…違う…と思う。」

明日香も香澄に釣られたのか、静かに言うと、香澄の眉が八の字に下がった。いきなり香澄に単刀直入に聞かれ、ドキッとしていた。

「でも、もっくんに会って恥ずかしくなって逃げたんじゃないの?」

「…そう、だけど…。」

伊達に何年も明日香の姉をやって来ている香澄にとって、明日香の心情を的確に理解していた。始めは本当に体調が悪いと勘違いしていたが…。

「私も恋愛がどうとかよく分からないけど…。私も初めてもっくんが好きって気付いた時は、もっくんに会うと、ドキドキして恥ずかしかったよ?ドキドキしなかった?」

香澄にそう言われ、明日香は図星であった。体調不良の方がマシなくらい心臓は高鳴り、苦しくてしょうがなかった。

「…ドキドキしたみたい…だね…。」

「っ!ち、違うの!わ、私が飛川さんを意識してるのは桜の夢のせいなの!」

明日香は自分の心情を香澄に当てられ、焦るように言った。

「桜の…夢?」

「そう。あの桜の木に登ってたの。夢の世界にに行ったと思ったら桜の木に座ってたの!それで、夢占いを調べたら恋が始まる予感だって書いてて、それを意識しちゃってるだけなの!」

明日香が身を乗り出すように喋った。それに合わせて、手に持っていたジュースの水面も揺れていた。

「あっちゃんって、占いとか影響される方だっけ?」

「と、時と場合によるの!」

「あっちゃん…。無理がある…よ?」

明日香の言い分に香澄は苦笑いを浮かべた。

「と、と、とにかく!私は飛川さんの事なんて好き…じゃない…多分…。」

「あっちゃん…。」

「っ!もう、この話は終わり!部屋に行くからね!」

明日香はそう言い切ると、持っていたコップを荒々しく机の上に置き、その変わりに、自分のカバンを持って、リビングから出て行った。そして、逃げるように自室に入ると、ベットに飛び込んだ。

「…うぅ…。」

枕に顔を埋めると、止め処なく涙が溢れていた。明日香がリビングから出る前に最後に見た香澄の心配そうな表情を思い出していた。きっと、自分が泣きそうな表情だったに違いない。

「なんで…。なんでなの?私、全然クールなんかじゃ無い!素直になれないただの意地っ張りじゃん…。皆に心配掛けて、バカみたい!」

明日香は気付いてしまった。香澄と話している時に口にした

 

「好きじゃない。」

 

この言葉を言った瞬間に、明日香の心臓は思いっ切り誰かに握られたような痛みを感じてしまっていた。

「私…好きになっちゃったんだ…。」

ごろっと転がり、天井を見つめた。涙のせいなのか、夜が近づいているせいか分からなかったが、見慣れている天井がいつもとは違って見えた。

 

 

 




仕事が落ち着いているうちに投稿出来て良かった…。

今年も後、僅かです。
1年間が年々早くなっている気がします。

とうとう、明日香ちゃんが恋心に気付きました。
恋をすると、緊張して喋れなくなる人がいたり、その逆でどんどんアピール出来る人もいたりしますよね?
恋愛をすると本当に十人十色な反応が見れて面白いなぁと思います。

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