明日ありと思う心の仇桜   作:ぴぽ

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第6話

「…はぁ~。」

明日香は香澄の部屋の前でため息をついた。かれこれ数時間、ノックをしようとしては止めを繰り返していた。香澄に謝ろうと、こうして部屋の前まで訪れていた明日香だったが、なかなかその一歩が踏み出せずにいた。

「…なんて謝れば良いんだろ…。」

ボソッと呟くとノックをする為に挙げていた手を下ろした。しかし、その瞬間、目の前のドアをガチャッと開いた。

「あっ…。」

「わあああ!び、びっくりした…。あ、あっちゃん?ど、どうしたの?」

持っていた本をびっくりしたと同時に高く放り上げ、腰を抜かした香澄は叫びながら言った。

「お、お姉ちゃん。ご、ごめん。」

急に部屋から出てきた香澄に明日香も驚き、そう言いながら部屋に戻ろうとしが「あっちゃん!待って!」と香澄が叫んだ為、その足を止めた。

「…何?」

「何って…。私に用があったんじゃないの?」

「そ、それは…。」

明日香が口をつぐみ、下を向く。素直に仲直りしたいと言うだけが言えない自分に怒りや情けなさを感じていた。

「…あっちゃん。ごめんね。」

明日香が顔を挙げると、眉を八の字に下げ、困ったように笑う香澄がいた。

「な、なんで、お姉ちゃんが謝る…の?」

「え?だって、昨日、私、言い過ぎちゃったし、態度悪かったよね?だから謝ったよ?」

「そんなことない。始めに突っかかったのは…

。私…だよ?」

明日香は視界がだんだんと潤んでいくのが分かった。

「あっちゃん…。部屋で話そう?」

そんな明日香を見ながら、香澄は手招きをし、部屋に通した。明日香は頷くと、香澄の部屋に入った。香澄がドアを閉め、振り向いた瞬間、明日香から香澄に抱きついた。

「お姉ちゃん…。」

「あっちゃん…。おーよしよし。」

香澄は自分の胸で静かに泣く妹の頭をポンポンと軽く叩いた。香澄の姉らしい行動に、明日香も安心するのであった。

 

─────────────────────

それから数十分、香澄に甘えた明日香は「ごめん…。」と呟き、ベットに腰掛けた。

「あっちゃんは謝らなくて大丈夫だよ。…謝るために部屋の前にいたの?」

先程とは違い、ニコッといつもの明るい笑みを香澄は浮かべた。

「…うん。お姉ちゃんに謝りたくて…。」

「そっか。ありがとうね!あっちゃん!」

香澄が明日香の腕を取り、ギュッと抱き締めながら言う。弱い所、つまりは泣いた姿を見られた直後の事だった為、明日香はいつも見たいに拒否する事なく、抱き締められるのであった。ちなみに、恥ずかしいのは変わらず、頬は赤く染まっていた。

「…お姉ちゃん。お姉ちゃんは…その…。飛川さんの事、好き…なんだよね?」

「う、うん。ま、前に会った時に、もっくんの変わらない姿を見て、なんか安心しちゃって…。改めて好きだなぁ~って…。」

恥ずかしがりながら香澄は言ったが、その表情はどこか嬉しさも含まれていた。

「…そっか。」

「でもね。あっちゃん。多分、もっくんはあっちゃんの事が好きなんじゃないかな?」

「…やっぱり…。そうなのかな…。」

明日香は「はぁ。」とため息をつきながら困った表情を浮かべた。

「多分!普通、あんなにLINE送らないよ?」

「で、でも!まだそれだけだし。わ、分からないよね?」

「まぁね。だから多分って言ったんだよ~!ところで、あっちゃんはもっくんになんて返信したの?」

香澄が首を傾げながら言った。先程の恋をしている乙女の表情から妹を心配する姉の表情に変わっていた。

「…まだ返信してないんだ。」

「え?そうなの?」

「…六花に話した時も、そんなに嫌ならなんで断らないの?って言われた。実は好きなんじゃないって…。」

「そうなの!?」

明日香が昼間に六花に言われた言葉をそのまま香澄に伝えた。明日香自身、その言葉にしっくりとは来なかったが、「確かになんでだろ?」と、目を見開いて驚いていた。そのお陰で、昼からの授業も手に着かなかったのは言うまでもない…。

「…嫌いと思ってたんだけど…分からなくなっちゃってて…。」

明日香が苦笑いを浮かべる。

「悩むならもっくんに会うべきだよ!もし、会わなくて、後から会っておけば良かったって思う可能性があるなら会うべきだよ!」

香澄は明日香の肩を両手で掴み、目を真っ直ぐ見て言った。

「お、お姉ちゃん?落ち着いて…。ねぇ、お姉ちゃんはさ、自分の好きな人が、妹の事好きかも知れないのに、なんで、私の応援ができるの?」

「だって、好きな人には幸せになって欲しいもん!もっくんもあっちゃんも大好きだからかな?それに、もっくんなら絶対にあっちゃんを幸せにしてくれるもん!」

香澄はそう語ると、満面の笑みを明日香に向けた。香澄の笑顔を見た明日香は「(自分の夢に出てくる桜とは大違いだなぁ。)」と思っていた。明日香の夢に出てくる桜は色が薄く、簡単に散ってしまう弱い物。対して香澄の笑顔は、太陽のように明るくて、ポカポカと安心感を与えてくれる物だった。

「やっぱり…。お姉ちゃんは凄いよ。」

「ん?あっちゃんなんて?」

「ううん。何でも無いよ。」

ボソッと呟いた明日香の発言を香澄は聞き取る事が出来ずに首を傾げた。明日香はそんな姉を見て微笑んだ。少しだけ、ほんの少しだけ、心が軽くなったような気がしていた。

 

─────────────────────

「また…この夢か…。」

香澄と和解した後、安心して布団入った明日香だったが、また暗い気持ちになっていた。そう、あの桜の夢を見ていたのだ。3回目となれば、慣れたもので、明日香は「はぁ。」とため息をつくと、歩き始めたのであった。

「さて、次はどんな桜なのかな?お姉ちゃんと仲直り出来たから綺麗な桜だといいな。」

明日香は独り言を言いながら歩いた。どうせ、夢だ。誰も聞いちゃいないと思った結果だった。そんな事を考えながら歩いていたが、明日香は不意に立ち止まった。

「桜…まだ?」

夢なので、何処に桜があるなど、分かるはずも無いのだが、明日香は首を傾げた。

「随分…歩いた…よね?」

何度も言うが、ここは夢の中。いつもそうなのだが、明日香がどれだけ歩いたかと言うのはあくまで感覚なのだが、明日香には凄く歩いた感覚が残っていた。

「おかしいなぁ…。迷ったのかな?」

いくら夢の中でも、「迷った」と思えば、人間誰しも不安になるのではないだろうか。明日香も例外には当てはまる事が無く、辺りをキョロキョロと見た。しかし、相変わらず靄がかかっているだけであった。

「前の時もそうだけど、この靄はなに?何も見えない。」

明日香はそう呟くと、遠くを見ようと眉間に皺を寄せた。そして、よく周りを見た結果、明日香は気付いてしまった。

「あれ?靄が段々、濃くなってる?」

そう気付いた時は既に遅く、靄が濃くなるスピードがどんどん速くなっていた。そのスピードに明日香は付いて行けずに、靄に包まれてしまった。

「な、なに!?この靄…。全然…。見えない。」

バタバタと手を振ってみるが、何も変わらない状況に明日香は焦った。

「ちょ、ちょっと!ま、待ってよ!」

自分の目の前でさえ、見えなくなり、明日香はどんどんと闇の中に包まれていってしまった。

 

─────────────────────

ぱちっと目を覚ました明日香は日差しの眩しさに目を細めた。しかし、靄に包まれる夢を見た直後に日差しを見た明日香は、光がある状況にホッと一安心した。

「はぁ~。なんか新しい夢だった…なぁ。」 

明日香は身体を起こすと、汗でびしょ濡れになっていることに気付いた。明日香は顔を顰めるると、パジャマを脱ぎだした。

「はぁ…最悪…。」

悪い夢を見る度に、汗で気持ち悪いくらいびしょ濡れになる事を思い出し、また顔を顰めた。パジャマを全て脱ぎ、下着姿のままシーツを剥いだ。

「朝から面倒くさい…。」

シーツを剥ぎ終わると、明日香はふと目の前にあった姿鏡に目が止まった。姿鏡に映った姿を凝視する。元々、水泳をしていたので、締まった体つきであり、手足がスラッと伸びていた。1度、自分の姿が気になると、腰を捻ったり、手を前に伸ばしてみたり、屈んでみたりと色々なポーズを取った。

「もう少し…。胸があったらなぁ。」 

先程の夢は何処へやら、明日香は「う~ん。」と唸りながら自分の姿を見ていた。

「あっちゃ~ん!朝だよ!」

「きゃ!」

ノックも無しに、自室のドアが開き、香澄が元気よく入ってきた。いつもなら「もう。お姉ちゃん。」くらいで済むのだが、今は恥ずかしい姿、しかも、鏡の前でポージングをしている最中であった為、明日香は顔を真っ赤にした。

「…えっと…。ごめんね?」

「おおおおおお姉ちゃん!?」

「だ、誰にも言わないからね?」

香澄も頬を赤く染めながら明日香の部屋をそっと出た。明日香はその場にペタリと座ると「最悪だ…。」と呟くのであった。しばらく、気持ちが復活するまでその場に留まっていた明日香だっだか、いつまでもそうしている訳にも行かず、ゆっくりと立ち上がり、制服に袖を通していた。

「そう言えば…。」

明日香は思い出したかのように呟くと、スマホに手を伸ばした。そして、検索サイトをタップした。

「えっと…。靄…。夢占い…っと。」

文字を打ち終わり、検索を押すと、検索結果がすぐに並んだ。

「へぇ…。靄の夢占いってこんなに沢山…。」

明日香は感心しながら、慣れた手つきで画面をスクロールしていたが、自分が見た夢にぴったりの内容が表示されていた為、指を止めた。内容を読んだ明日香は盛大にため息をついた。

 

“霧が次第に濃くなっていく夢は、トラブルの深刻化や、問題が複雑化する予兆。

 

これまでよりも大変な状況が待ち受けていることを意味しています。”

 

「これ以上、深刻になるの…。それに複雑に?」

明日香は頭を抱えたが、すぐに顔を上げた。

「ただの夢じゃん。何を気にしているんだろ。バカみたい。」

考える事を放棄した明日香は朝食を食べるために、リビングに向かった。

 

─────────────────────

その後、明日香は授業を終え、カバンに教科書やらノートやらを詰め込んでいた。

「(今日は六花はバイトだから…。一人で帰りますか…。)」

そう考えながらスマホを見ると、LINEが届いている事に気付いた。明日香は眉間に皺を寄せながらタップした。そこには案の定、素生からのLINEが表示されていた。

 

“暇?暇だよね?遊ばない?”

 

短いLINEを読み終わった明日香は盛大にため息をついた。

「(もういいや。知らない。)」

そう考えた明日香は返信を打つために、スマホを握り直した。そして文章を作成し始めた。

 

“暇じゃないです。”

 

これで大丈夫であろうと考え、立ち上がり、カバンを持つ。しかし、そんな思いとは裏腹に、再び、明日香のLINEは通知を知らせた。

 

“窓から見える明日香ちゃんは暇そうだよ?”

 

文章を読んだ明日香は焦りながら後ろを向き、下を見た。ちなみにだが、明日香の教室は3階で、明日香の席は窓際である。そして、下をジーッと見ると、校門のど真ん中から明日香に向かって手を振る素生を発見した。相変わらずの不良の服装だった。

「…はぁ?どんだけ目が良いの?」

明日香の機嫌がMAXで悪くなり、慌てて、階段を駆け下り、校門に向かった。

 

「ち、ちちち違うんです!」

「良いから。君、学校はどこ?」

明日香が息を切らしながら走って校門につくと、素生が警察官に職務質問を受けていた。

「…私が来るまでの間に…。何があったの?」

膝に手をつき、息を整えながら、明日香は呟いた。

「と、友達と待ち合わせをしてて。」

「待ち合わせ?君が?」

「は、はい!もう少しで来るはずです。…いた!あの人です。」

素生は安堵の表情で、明日香を見た。その姿を見た警察官は明日香に近づき、声をかけた。

「君、あの人と待ち合わせしてたの?本当に?」

「え?…まぁ。はい。」

明日香は苦笑いを浮かべながら答えた。本当は「知らない人です。」と答えたかったが流石に洒落にならないと思い、止めていた。

「一応…。名前いいかな?」

明日香と素生はそれから数十分、警察官に捕まるのであった。

 

─────────────────────

「信じられない!」

「ご、ゴメンって。」

明日香と素生は2人で商店街に向けて歩いていた。

「てか、そんな服装しているから、警察官に声を掛けられるんです!それに、女子高の前で堂々と手を振るなんてあり得ない!あぁ…もぅ。明日からどんな顔して登校すれば…。」

明日香は頭を抱えながら言った。

「明日香ちゃん?明日は土曜日だから学校ないよ?だから大丈夫。」

「はぁ?」

「ご、ごめんなさい。」

明日香に睨まれた素生は身体を小さくしながら謝った。

「本当にあり得ない!てか、どんだけ目が良いんですか!普通、見つけれないでしょ!」

怒りが収まらない明日香は素生の胸ぐらを掴もうとする勢いで迫った。

「み、見つけれるよ。」

「なんでですか!?」

「だって好きだもん。」

「はぁ?」

素生の発言に明日香は眉間の皺を最大限に寄せ、不快な表情をした。

「…マジ…だよ?」

「私がOKだすと思ったの?」

「ワンチャンあるかなぁと。」

「あるわけないです!」

大声をずっと出していた明日香は肩で息をした。

「何処がダメなの?」

「全部!バカな所も、飄々とした性格も嫌!それに、1番嫌なのは、その服装です!今も隣にいるだけで嫌です!」

「そ、そこまで!?まぁ、服装以外は直すからさ…。そこをなんとか…。」

素生は手を合わすと、「お願いっ!」と叫んだ。

「…諦め悪すぎでしょ…。私なんかの何処が良いのよ。」

「え?可愛いじゃん?」

「はぁ?」

明日香に再び、睨まれた素生だったが、今度は折れる事なく、また「お願いっ!」と叫ぶのであった。

 




頭と、腰と、膝と、背中と、肋骨が痛い。

ども!今日も元気なぴぽです!
実は交通事故に遭いました。話題の高齢者ドライバーってやつに巻きこまれ…。
まぁ、元気なので心配しないで下さいね?笑

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