戦姫絶唱シンフォギア X Decade   作:詠読書物

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『閉ざされた可能性』その1

私、立花響。

17歳になりたてホヤホヤの女子高生。好きなものはごはん&ごはん。

サンジェルマンさん達錬金術師との戦いが終わってから1ヶ月程が経った。

この1ヶ月は比較的平和だったような気がする。いやあ平和っていいなあ。

そんな私は木漏れ日が溢れる森の中を走っている。

こんな素敵な森にいるんだからピクニック気分なのかというとそうでもない。

でもいいなあピクニック。ピクニックといえばお弁当だよね。

まあこんなに弾幕が張られてる森だとお弁当食べてる余裕なんてなさそうだけど。

飛んでくる弾丸は容赦なく正確に攻め立ててくる。危ない。

 

「わわッ!」

 

慌てて茂みに転がり込む。

が、当然バレているようでどんどん弾丸が飛んでくる。一息つく暇さえない。

木を盾にして弾丸の雨をやり過ごすしかないか。急いで死角になりそうな木の陰に隠れて息を整える。

さて、どうしたものか。作戦を練らなきゃどうしようもない。

木の繊維が軋む音が凄い。削られていっているのが振動でも伝わってくる。これじゃ30秒も持たない。

 

「なんとか懐に潜り込まないと…でも場所がわからないしなあ」

 

一生懸命思案しているといい考えが浮かんできた。というか思い出した。

これはいけるのでは?自分でも名案だと思う。

木を抉る音がピタリと止むと木が軋みを立てて倒れ始める。

大きな音と共に土煙が盛大に舞う。今だ。

私は隠れるのをやめ、木の陰から身を出して自然体を取った。

集中。集中するんだ。

目を瞑り周りの空気、そして気配を感じ取る。

────── 。

そこだッ。

 

「はッ!はッ!」

 

土煙の中にいる私へと飛んできたのは弾丸ではなく8本の矢。少しびっくりはしたが問題はない。

それらを全て弾き弾道から方向を割り出した私は地面を思い切り蹴り、茂みその向こうの木の陰へと突撃する。

 

「はァァァァッッ!!」

 

私の意思に呼応するようにシンフォギアが変化していく。腰のブースターが燃える。構えた拳にエネルギーが溜まっていく。

風になった感覚。凄い速さで相手へと向かっているのがわかる。

全身の力を乗せながら右の拳を突き出す。決まったッ。

 

「ちょせぇ!」

 

私の全力は籠手で受け流された。

 

「ええええええええェェッ!?」

 

次の瞬間私の身体は宙を舞っていた。

 

○○○

 

「はあぁ〜〜〜もうクッタクタだよぉ〜〜〜〜〜」

 

変身解除して呻きにも似た叫びを上げながら床に倒れると、周りの森が白い壁に変わった。

倒れ込んだ時に感じた土の感触が景色と共に冷たい金属のものに変わって行く。ひんやりとして気持ちがいい。

ここは私達、シンフォギアの奏者が所属するS.O.N.G.のトレーニングルーム。

なんかよくわからないけど景色とかが変わる凄い施設だ。ノイズとかも出せるしほんと凄い。

大概の特訓はここでできるし、新しい敵が来ても情報を入れてくれるらしくてすぐに対策ができる。

でも基本は奏者同士でも模擬戦だ。やはり本物相手だと気合が入る気がする。

 

「あの見切りみたいな動きといい、どんどんおっさんに近づいてきてるのはなんなんだよお前……」

 

手を腰に当てて近づいてくるのはクリスちゃん。相変わらずかわいい。

聖遺物イチイバルのシンフォギア奏者で銃や弓、ミサイルまでなんでもござれ。中遠距離戦を得意としていてさっきもあの弾幕に苦しめられた。

 

「クリスちゃんだって受け流してた癖に〜」

 

ジト目でクリスちゃんを見つめながら不満をこぼす。まさか返されるとは思わなかった。

 

「ふん、あんな妙ちきりんなことし始めた時に想像ついたからな」

 

するとクリスちゃんはドヤ顔でそう返してくる。

なんだ、身を出した時から見破られてたわけか。もうちょっと工夫しなきゃ。

 

「クリスちゃん私のことよく分かってるんだなあ」

 

「ま、まあ?お前とも結構な付き合いになるわけだからな」

 

と反らした顔は照れ臭いのか赤くなる。全然変わらないなあ。

 

「お疲れ様です、スポーツドリンク持ってきました。」

 

「先輩方お疲れ様デース!」

 

トレーニングルームの扉が開き入ってきたのは調ちゃんと切歌ちゃん。

私が通う私立リディアン音楽院の後輩。因みにクリスちゃんは一応先輩だ。

調ちゃんはシュルシャガナのシンフォギア奏者。鋸で敵を寄せ付けない中距離戦を得意としている。

切歌ちゃんはイガリマのシンフォギア奏者。鎌を使ったアグレッシブな近距離戦が得意。

 

「生き返ったー!ありがとう!」

 

私は調ちゃんからペットボトルを受け取り中身を飲み干す。

正直喉がカラカラだったから助かった。

 

「よっぽど疲れてたんデスね、一気飲みデス!」

 

「いやあクリスちゃんにたくさん走らされてさ、最後はしてやられたなあ」

 

「でも惜しかったですよ。あの最後の一撃はクリス先輩も受け流しきれてませんから」

 

「えッ!?ほんとッ!?」

 

じゃああれ効いてたんだ!

 

「ホントもホントデス。クリス先輩ったら追撃した後によろよろしたかと思ったら盛大にムググッ」

 

いつのまにかクリスちゃんが後ろに回り込んで調ちゃんと切歌ちゃんの口を抑えていた。

 

「うるせーッ!余計な事言うんじゃねー!」

 

「ねえ!盛大にどうなったのッ!?」

 

とっても気になった私はクリスちゃんに詰め寄る。

抜け出そうとする調ちゃんと切歌ちゃんを必死に抑えるクリスちゃん目をジッと見つめた。問いただす刑事の気分。

 

「この馬鹿!か、顔がちけーんだよ!」

 

顔を押しのけてくるがここは引けない。

だって全力を込めた渾身の一発が効いてないとか傷つくし。

 

「ぬぇえ〜どぉうなったぬぉ〜」

 

「これは撤退のチャンスなのデス…」

 

「こっそりと退散しよう切ちゃん」

 

後ろでコソコソと声がしているけど私もクリスちゃんも互いに夢中で気づかない。

 

『ビーーー!!ビーーー!!』

 

すると突然トレーニングルームに警報が鳴り響いた。

室内のランプもそれに合わせて赤く輝く。

 

「ににに逃げようだなんてそんなことしてないのデス!!」

 

「落ち着いて切ちゃんこれは…」

 

そう、この警報は…

 

「ギャラルホルン!」


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