ニーアオートマタ 〜機械仕掛けの神〜   作:River vilege

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2話

 

 状況は非常に絶望的だった。

 

 後方には瀕死状態の女が一人。

 

 前方には殺意を露わにした女が一人。

 

 この女は恐らく先程言っていた"追手"で間違いないだろう。現に彼女は肯定するかのように小刻みに震えていた。

 

 この場をどう切り抜けるか、ユウは必死で考えていた。

 

 一つ、彼女を盾にして隙をついて逃げるという選択肢が浮かんだが、すぐに止めた。

 

 女はユウ諸共この場で殺すつもりらしい。

 

「貴様はレジスタンスか?」

 

 ふいに無表情で女は問う。

 

「ただの通りすがりの者だ。‥‥できれば、見逃して頂きたいのだが」

 

 慎重に言葉を選び、彼は時間を稼ぐ努力をしていたが。

 

「そうか、ならば死ね」

 

 女はそう言うと大太刀を握り、一直線に突きを繰り出した。

 

 話す時間など彼女には必要がないようだ。

 

「くっ!!」

 

 女の剣先がユウの胸部すれすれを通った。

 

 いくら戦闘技術を記憶操作によって体に叩き込んでいるとは言え、彼女の速度は普通の人間では到底反応することは出来ない。

 

「死ね」

 

 突きからの斬撃は無慈悲にユウの首筋へ向かっていた。

 

 ユウは咄嗟の判断で銃の照準を合わせようとしたが、彼女の速度には追いつく事は出来なかった。

 

 彼は目を瞑り、顔を背け殺されるのを待ったが突如鉄と鉄がぶつかるような鈍い音が響いた。

 

「死に損ないがッ!」

 

「くぅッ!」

 

 ユウが目を開けると目の前で自分を庇うように瀕死の女が刀で女の大太刀を防いでいる姿が見えた。

 

 相当な負荷が掛かっているのだろうか、刀を押さえている腕はガタガタと揺れていた。

 

「この人は関係ナいッ! 狙うならこのワタシを狙エッ!!」

 

 彼女の必死の叫びだった。

 

 ユウは我に返り黒髪の女に向けて魔素銃を放つ。

 

 大口径のマグナム並の反動が彼の片腕に響く。

 

 弾は高速で女の腕に直撃し、彼女の腕を文字通り吹き飛ばした。

 

「ぐああああ!!」

 

 苦痛の叫びが室内中に響き渡る。

 

 女はフラつきながら大きく後方まで距離を取った。

 

 女の腕からは電気がパチパチと発光し、それに伴って赤い血のような物が辺りに散乱していた。

 

「お前らッ! 絶対に殺すッ!」

 

「死ぬのはお前の方だッ!」

 

 ユウは両手を添え、再び引金に手を掛ける。

 

 魔素によって生成された弾丸は一直線に女の頭部に向けて跳んだ。

 

 徹甲弾にも等しいそれはいとも容易く、女の頭部に直撃し、吹き飛ばす。

 

 女は血飛沫を上げながら崩れ落ちた。

 

 正に一瞬の出来事だった。

 

「大丈夫か!?」

 

 ユウは即座に彼女の側まで駆け足で向かった。

 

 女は安堵の表情を浮かべ、ばたりとその場に崩れ落ちた。

 

「無事で、よかっタ。 助けてくれてありがトう」

 

「礼を言うのは俺の方だ‥‥。 庇ってくれてありがとう」

 

 二人は互いに微笑み合う。

 

11B(イレブンビー)。 そレが私の名前」

 

「11B、か」

 

 ユウは彼女を見て改めて思った。

 

 最初に会った時から薄々気付いてはいたが、彼女はアンドロイドなのではないかと思っていたが、先程の戦闘と彼女の名前を聞いて確信した。

 

「宜しく11B。 立てるか?」

 

 そう言いながら、ユウは11Bに手を差し伸べた。

 

 しかし、彼女は困ったような顔を浮かべていた。

 

 ユウが不思議に思っていると彼女が口を開いた。

 

「えっト‥‥ワたし、凄く重いから、ニンゲンの、ユウに持てるかなって」

 

 そんなに重たいのか、と彼は試しに彼女の片腕を自分の首に回して起こそうと力を入れた。

 

「くッ‥‥! なんて、重さだッ」

 

 何とか、立つ事が出来たがユウの呼吸は少し荒くなっていた。

 

 多少なりとも彼女も立つ力を入れているのだろうか、それでも十分過ぎるぐらい重かったようだ。

 

「ごめんネ‥‥。 私、148kgだかラ」

 

「まじかよ‥‥」

 

 ユウは苦笑いを浮かべた。

 

 しかしながら、歩くのに物凄く支障が出ている訳ではないので、これならばあの場所に戻る事は問題無さそうだった。

 

「どこに向かってるノ‥‥?」

 

「君を、俺の住処に連れて行こうと思ってな。 そこなら修復も可能だと思う」

 

 アンドロイドを作った者が修復や損傷に備えて修復装置を作っていないはずがない。しかし、半ば賭けではあるが大丈夫だろう。現にあそこには大量の装置が置かれていたのをユウは思い出した。

 

 加えて、そういった知識も備えているようだ。

 

「えッ‥‥? 気付いてたノ‥‥?」

 

「語尾が、変だと思ったから。 何処かしらに不調が出てるんだろ? このまま見捨てる事なんて、出来る訳ないだろ」

 

 彼女は目を大きく見開いた。

 

「‥‥あり、がとウっ」

 

 グスッと鼻をすする音が隣から聞こえた。

 

「泣くのは後だ。 もう少しかかるから頑張れよ」

 

「‥‥ウん」

 

 一先ずだが、彼等に安息の時間が訪れた。

 

 二人はゆっくりと階段を降りて行った。

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