image   作:小麦 こな

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夕焼けとの出会い、そして夜に知る②

「ひーちゃんのせいでばれちゃったね~」

「ううっ、反論できない……」

 

どうやら僕が感じ取っていた視線は彼女たちから受けていたものだったらしい。巴ちゃんを嫌な目で見ている男子大学生では無かったことに安堵の表情をするとともに、どうして4人と言う複数人で僕たちを監視していたんだろうと言う今の僕では解決できない疑問が公園の真ん中に堂々と存在する噴水のようにピューッと湧いて来た。

 

「どうしてひまりがここにいるんだ?」

「ええっ!?どうして私だけっ!?」

 

巴ちゃんは、さっき口を塞がれて引っ張られていったピンク色の髪の女の子とやり取りをしている。なんだか巴ちゃんは圧をかけて聞き込んでるなぁ……。

 

僕は巴ちゃんの後ろから見守っていたけど、巴ちゃんとピンク色の髪の女の子の間に入った。止めなくちゃいけないって本能的に思ったから。

 

「巴ちゃん、ちょっと落ち着いて……その、ほら。場所も場所だから他の人も注目しちゃってるし……場所変えて落ち着いて話さない?」

「……あたしもその意見、賛成」

 

僕の意見に巴ちゃんの幼馴染の一人であろう、黒髪に左に赤色でメッシュを作っている女の子が同意してくれた。

巴ちゃんも「それもそうだな……」と言って僕の意見を受け入れてくれた。

 

他の人から注目を浴びているのも理由にあるけど、僕が仲裁に入った理由は他にもあって、それが僕のとった行動の大部分を占めていた。

その理由は、巴ちゃんの行動。

 

黙って自分の行動を見られていた、なんて思ったらいい気分にはならないのは誰だってそうだ。

だけど、強い口調で言い寄って欲しくないんだ。巴ちゃんには。

その行動によって恐怖心に身体全体が覆われてしまう可能性だってあるんだ。僕みたいに。

 

「じゃあ、正博の大学で訳を聞くか!……どういう事かしっかり聞かせてもらうからな~ひまりー」

「本当にどうして私だけっ!?」

 

 

 

 

 

羽丘経済大学は単科大学の為、敷地面積がどうしても複数学部を抱えている大学には負けてしまう。大学側も生徒の入学者が減ってしまっては運営も滞ってしまう。

恐らく生徒に快適に過ごしてもらい、入学者数を増やそうと言う目的で羽丘経済大学の学舎の屋上は全てテラス席で開放してあるって風のウワサで聞いた。

 

ウワサの真偽なんて今はどうでも良いよね。

白色の丸型テーブルや椅子など、清潔感の溢れる空間に僕たちはやって来た。ここなら6人で座れると言う僕の判断でやって来た。

 

……ちょっと肌寒いのは勘弁してほしい。

 

「ねぇ巴ちゃん……この子たちみんな巴ちゃんの幼馴染なの?」

「ん……ああ、そうだな。正博にも紹介するよ」

 

僕の右隣に座っている子から順番に、時計回りに巴ちゃんから紹介してもらう事になったんだけど……4人とも表情がバラバラで、僕の事をどう思っているんだろうって不安になってきた。

 

「どーもー。青葉モカでーす。よろしく~」

「……美竹蘭。よろしく」

「上原ひまりでーす!甘いものが好きです!……はあ、甘いもの、食べたいなあ」

「え、えっと……羽沢つぐみです。よろしくね!」

 

「ぼ、僕は佐東正博って言います……」

 

 

僕の右隣に座っている青葉(あおば)モカさんは無気力そうな雰囲気で、例えるなら風船のようにフワフワしているような銀髪の女の子。

 

黒髪に左前髪の一部に赤いメッシュを入れている美竹蘭(みたけらん)さんは口数が少なく、ジーッと僕の様子を伺っている。僕が悪い人かどうか見定めているって感じがする……。

 

ピンク色の髪の毛のした上原(うえはら)ひまりさんは甘いものが食べたいらしいけど、先に巴ちゃんと和解してね……。

 

茶髪で真面目そうな雰囲気の羽沢(はざわ)つぐみさんは僕と同じく少し緊張していそう。

 

 

「それで、どうしてアタシ達の行動を見ていたのか説明してくれよ」

「えっと、巴がたまに大学の外で時間を過ごしている事があるから……もしかして良い男の子とデートしてるんじゃないかって話になって、巴を追いかけてみたら案の定……」

 

上原さんが僕の方を上目遣いで見つめながらそう答えたんだけど……なんだかこの場に僕が居辛くなってきた。他の3人も僕の方を見ながらウンウン、とうなづいている。

青葉さんはニヤーッとしながらだけどね。

 

ちょっと肌寒いどころか、背中が一気に冷たくなったように感じた。周りの生徒も僕を見ているような気がしてムズムズする。

巴ちゃんは想定もしていなかった事だったのだろう、ポカンとしながら上原さんの話を聞いていた。

 

「べ、別にアタシと正博はそういう関係じゃないぞ?な?」

「え、うん。僕が巴ちゃんと付き合ってる訳じゃあないから……」

 

巴ちゃんは僕にも確認を取りながら弁明しているんだけど、僕はちょっと寂しいような気持ちになった。

付き合ってないのは事実なんだけど、なんでこんな気持ちになるんだろう。裏を返せば付き合ってるように見えるほど仲が良い、って言われているようなものなのに。

 

「それじゃあ、まーくんとともちんの馴れ初めが知りたいな~」

「確かに、私も気になる……」

 

青葉さんがニヤーッとしながら巴ちゃんに質問して、その質問に羽沢さんも乗って来た。

僕と巴ちゃんの馴れ初めって……僕が女子大に侵入してばったり会った、なんて言ったら普通の女の子なら勘違いしちゃうよね。

 

僕は巴ちゃんに僕との出会いはオブラートに包んで、って目で訴えた。

巴ちゃんは僕の方を見て不思議そうな顔をしていたけど、「分かった」って目で伝えているような気がしたから大丈夫……。

 

「正博がアタシらの大学にいたのを偶然見つけたのが馴れ初めだな」

「ちょっ、ちょっと巴ちゃん!」

 

僕のアイコンタクトはまったく巴ちゃんには伝わっていなかった。この想い、森のイノシシの如く一方通行だ!なんて言っている場合ではない。

巴ちゃん、見てよ!美竹さんの目が鋭くなって僕を睨みっぱなしなんだよ?

 

「ほほ~。ともちん、だいたん~」

「あ、はは……」

 

青葉さんはフワッとした雰囲気でフォローしてくれているのかもしれないけど、羽沢さんは乾いた笑い声を辛うじて出せるぐらい引いている。

上原さんは元から大きな目をさらに大きくして固まっていた。

 

巴ちゃんも笑顔で話していたら「冗談は良いから~」とかなりそうなのに、真面目な顔で言っちゃったからみんな信じてるよ!真実だから言い返せない僕は弱者。

 

「……ねぇ巴」

「どうした?蘭」

「あたしにはこいつが下心満載の男にしか見えないんだけど」

 

話だけ聞いていたらその解釈、決して間違えていない。

美竹さんの鋭い言葉が僕の心に突き刺さる。

 

「え、えっと……僕が女子大にいたのには理由が……」

「あたしは巴に聞いてるんだけど」

「す、すみません」

 

声色が低く、攻撃性のある言葉に僕は屈した。

それと同時に美竹さんが怖くなった。頭の中では美竹さんは友達思いで素敵な人だって分かっている。だけど本能がそんな考えを遠くに飛ばしてしまう。

 

僕の手がガクガクと震える。その震えをみんなに悟られないように咄嗟に机の下に震えている手を隠した。

 

「アタシも最初はそう思った。けど違ったんだよ」

「何が違うの?」

「正博、携帯出してよ」

 

巴ちゃんが僕の方を見ながら手を出して催促している。

僕の携帯は連絡先が巴ちゃんしかいない。そんな黒歴史をみんなの前で公開するなんて本当の意味で公開処刑なんですけど。

 

僕は手の震えを隠しながら巴ちゃんに携帯を渡した。

 

「ほら、画像フォルダとか見てみろよ。携帯を買った時にある初期画像しかないんだぜ」

「あ、ほんとだ」

 

僕の携帯の画像フォルダを見る女の子5人。僕はどんな表情で座っていたらいいのか分からず、曇りがちの空を見つめた。

青葉さんが「このパン、おいしそ~」って初期画像に入っていたパンをみて幸せそうな顔をしていた。

 

「それに連絡先が登録してあるのはアタシだけでさ、その携帯を女子大で落としていったんだ。そんな奴が盗撮とかナンパをすると思うか?」

「さっすが、ともちん~」

「はは、だろ?」

 

僕は褒められているんだろうか、貶されているんだろうか。

後、美竹さん以外ちょっと懐かしい物を見ているような目をしながら僕の携帯を眺めていた。幼馴染同士にしか分からない事があるって思うと、少し羨ましい。

 

「巴が正博君と仲良くしてる理由、分かった気がする」

 

上原さんがその言葉を発して巴ちゃんを含む4人がニコニコしながら頷く。美竹さんは分かっていなさそうで、頭にクエスチョンマークを浮かべているのが見える。

 

実は僕も気になっていた。盗撮犯と言う第一印象をきれいさっぱり洗い流して、僕を友達だと言ってくれた理由が。

僕自身はとても嬉しかった。僕にも友達が出来たんだって。

でも、理由は知りたい。

 

 

「この携帯、中学生の頃の蘭を思い出すなー」

「はあ!?あたしはこいつより登録してた連絡先多かったし」

「蘭~ちょっと認めちゃったね~」

「……知らない」

 

美竹さんはプイッとそっぽを向いてしまった。顔をちょっと赤くしながらそっぽを向く美竹さんはちょっとかわいい。

話を聞く限り中学生の時、美竹さんは僕と似たような境遇だったのかなと推測する。だけど深堀はしない。僕が美竹さんの立場なら深堀して聞いて欲しくないから。

 

「はは、もうみんなには言わなくても分かると思うけどさ。言葉にするとな」

 

巴ちゃんは僕の方をニッコリしながら向いてきた。巴ちゃんは普段はクールなんだけどニッコリ笑うと女の子らしいかわいさが出て来る。

僕は巴ちゃんのかわいらしい顔に釘付けになった。

 

「正博の居場所を作ってあげたいって思ったのもある。だけどこっちの方が理由として大きい。正博が良い人だって言うのをみんなに知ってほしいし、アタシも一緒に正博の良い部分をもっと見つけていきたいからだよ」

 

 

僕の心臓がドキン、ドキンと激しく震える。

だってそんな嬉しい事を言ってくれたの、人生で巴ちゃんが初めてだよ?

 

この心臓のむず痒さ、何なんだろう。

このチクチクするけど、心地の良いこの痛み。僕が初めて経験する痛み。

 

僕の視界には、巴ちゃんしか見えなかった。

 

 




@komugikonana

次話は5月7日(火)の22:00に公開します。
この作品は今のところ毎週火曜日と金曜日に連載する予定でいます。

新しくこの小説をお気に入りにして頂いた方々、ありがとうございます!
Twitterもやっています。良かったら覗いてあげてください。作者ページからもサクッと飛べますよ!

~高評価を付けて頂いた方々をご紹介~
評価10と言う最高評価を付けて頂きました ヨコリョーさん!
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同じく評価9と言う高評価を付けて頂きました セトセトさん!
同じく評価9と言う高評価を付けて頂きました よもぎ丸さん!

この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとう!
始まってばかりのこの小説ですが、これからも応援、よろしくお願いします!

~次回予告~
僕にとってとっても嬉しい事があった日の夜。僕は巴ちゃんに言ってもらった言葉が頭から離れないまま家に居た。
すると僕の携帯から2件の新着メッセージが来た。
1件は巴ちゃんから。そしてもう1件は……!?

話したいことがあるから今から会えない?

~ファンアート~

【挿絵表示】

ミノワールさんからファンアートを頂きました!今回は色付きで巴ちゃんを描いていただきました!いつも素敵な絵、ありがとうございます!
ファンアートは随時募集しております。DMにて受け付けています!

では、次話までまったり待ってあげてください。
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