異世界転移したけど世界がクソすぎてまじ神恨む。   作:ガタオガタ

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オリジナル作品です。
完全にオリキャラとかって難しいですね


創、転移する。

転生、または転移。

世の中には数多くの創作物語が存在する。

アニメ、ラノベ、漫画。沢山の物語がある中、急激に数増やしたジャンル。それが転生、転移モノだ。

不慮の事故で死んだ、前世で納得いかないから来世に賭けた。転生、転移する理由は様々だが、総じて言えるのは、転生、転移したキャラクター達は新しい環境でも普通に生きているということだ。

確かに戸惑いや、試練などはあるが元の世界に帰りたい気持ちはあっても試さない。言語が通じる事に疑問を抱かない。疑問を抱いたとしても、何故か納得してその先かにすることはない。

私は思う。そんな事ありえないだろうと。

転生、転移モノを沢山見てきたが、常に思う。順応しすぎだと。

いや、もしかしたらそういう人達だからこそ転生、転移したのかもしれない。所謂、神に選ばれた人達なのかもしれない。

そして、そういう人達は皆、神に感謝するのだろう。

だが、私は言わせてもらう。もし本当に神なる存在がいるのだとしたら、どうか死んでくれ。

いきなり知らない世界に連れてこられた私の気持ち、苦労を知り、死んでくれと。

これは、知らない世界へと飛ばされた、哀れな一人の男の物語だ。

転生、転移モノだからと期待するのだけは止めるように。私の知らない世界での出来事は何も楽しくなんかない。最悪な転移人生を歩む事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、ここ」

 

視界に映る景色に、私は見覚えがない。

街並みも、人種も、服装も。全てが知らない世界が広がっていた。

どれだけその場に立っていたのかも分からないが、 私は唯々戸惑っていた。

というか、戸惑うだろう。先程まで私は、普通に会社で働いていたのだ。新作のゲームのプログラムを組んでいたのだ。それが目が疲れたからと少し目を揉んで見ればコレだ。

なんだこれ。本当に意味がわからない。

だが、1つ、頭に過ぎったことがある。

そう、転移。ラノベやアニメでよくある転移モノだ。

全く嬉しくない事に、私は転移したのだ。

だが、転移したのだと理解したその時から、冷静さを取り戻す。

アニメ等を見ていた時は転移したキャラクター達が冷静にことにあたる様見て、何を馬鹿なと思っていたが、なるほど。これは冷静にならざるを得ないだけだ。

今後の事を考えている私に、影が架かった。

前を向くと、そこには黒いフードを被った人が一人。

私がただ立っていただけなのを気にしてくれたのだろうか?とりあえず、私は話しかけてみることにした。

 

「あのーすみません。地図とかって見せて貰えますか?迷子になっちゃって」

 

軽く笑みを浮かべてそう聞いた。第一印象は大事なのだ。

「きるまほあふまろたる」

 

「は?」

 

返ってきた言葉を、私は理解出来なかった。

声の低さからして男性だと言うことは分かった。

別にこの男性が滑舌が悪いとか、早口だったからとか、そういう事では全くない。

単純に、本当に単純に、私の知らない言語だったのだ。

 

もしかしたら、この世界の言語は、私の知らない言語で成り立っているのかもしれない。しかし、私はそんな事を信じたくはなかった。

ただでさえ急に転移してきて戸惑っているにも関わらず、言葉まで通じないとか、それはどんな無理ゲーだ。

唯々口を開け、呆然とする。

その態度がいけなかったのか、目に前の男性は、急に怒鳴り始めた。

 

「あらなさたらわあ!!!」

 

「からまはたらなさたはあ!!!!」

 

嫌に通る声で怒鳴り散らかす男性。

私は耳を抑えて周りを見渡す。周りに人達は、みなみているたけだ。

 

「あらまさたはやーー!!!」

最後に大きく叫ぶ男性。

その声に反応してか、男性の近くに同じ黒いフードを被った人達が集まりだし、最終的には六人程に増えた。

その中の一人が、私を指差し、笑ったのが見えた。

 

その時、その場の空気の温度が下がった気がした。

元の世界でも、言語の通じない人達はいた。そしてその人達とは、その場の雰囲気だけでも何とか、意思疎通は出来るものだ。相手が怒っているのか、笑っているのか、表情からも読み取れる。

そして現在、笑っているの黒いフードの人達の雰囲気は悪事を働く者達の雰囲気に酷似していた。

それに気づいた瞬間、私は逃亡する。

どこに行けばいいのか分からないが、とりあえず逃げるべきだと、脳内で結論が出た。

一気に反転し、全力で駆ける。人混みをかき分け、ぶつかった人には通じないだろうが謝り、ひたすら逃げる。後ろから複数人の足音、怒声が聞こえるが、気にしている暇なんてない。そもそもなんて言っているかわからない。

どれほど走ったかは定かではないが、人気のない路地裏に逃げ込むことが出来た。

呼吸を整えるために壁に寄りかかり、座り込む。

 

「くそっ。なんなんだあの人達。明らかに危ない雰囲気だしてたぞ」

 

全力疾走したせいか、疲労が溜まり、体内の酸素が不足している。思考能力も低下し、口から零れるのは愚痴ばかり。

だからだろうか、私は、黒いフードの集団に追いつかれたことに気付いていなかった。

気付いた時には時すでに遅し。無理やり立たされ、後ろから身体を固定され、腹を、顔を殴られる。

ただでさえ思考能力が低下していたのだ、突然のリンチに理解が追いつかない。だが、そんな事は関係なくひたすらに殴られる。

リンチにあった私は、痛覚が麻痺し、眠るように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

突如照らされた光で目を覚ます。しかし、光が明るすぎて視界は白一色だ。

幾分かすると、目が慣れてきた。そして、遅れて自身の状態に驚愕する。四肢は固定され、口には猿轡が着いていた。そして複数人の人間。

いや、人間にしては耳が長すぎる。肌も白く、皆美形であった。初めて見たが、あれがエルフなる人種もなのだろう。

なせこの様な状態なのか理解出来ない。だかふと思い出した。私は転移してきたのだ。そして、リンチにあったのだ。考えろ、考えろ、今から起こる出来事を。全力で脳を加速させる。その時、一人のエルフが持ってきた、ペンチ、ナイフ、注射器などの道具を目視して悟った。

四肢を固定された人間に向かってペンチなどを持ち、いやらしく嗤うエルフ達。

そう、私は今から拷問されるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「がぁぁぁああああああ!!!!!!」

 

痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

ひたすらな拷問される。指を切断され、爪の間に棒を刺され、睾丸を潰され、眼球を抉り取られ、耳を切り取られ、性器を切り落とされた。

 

痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

ただひたすらに痛い。全身が焼けるようだ。

耳は切り取られたが、鼓膜はある。そしてその鼓膜に伝わる音は、エルフの笑い声だった。

シャキンと音がする。その音は、刃物を抜いた音。その音を聞いた次の瞬間、私の心臓に刃は何食わぬ顔で侵入してきた。そして一瞬私を犯し、私の生命活動は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャガチャ!

 

全身の痙攣で目を覚ます。

嫌な夢を見た。エルフ達に拷問され、殺される夢。嫌にリアルな夢だった。夢だった証拠に、私は四肢を固定されてもいなければ、視界も良好。何故か服を着ておらず、ココがどこなのかも分からないが、身体に関しては五体満足でしっかりも生きていた。ただ、夢のせいで、全身汗で濡れていたが。

 

薄暗い部屋を見渡す。扉は一つ。天井には鉄格子で囲われた天窓があった。日差しが射し込んでいないということは、夜ということだろう。

そばに置いてあった椅子に腰を下ろすべく、歩を進める。何となく椅子を眺める。真っ黒な椅子で、漆黒という言葉の方が合いそうだ。手で、椅子の感触を確かめる。全体的に固く、金属で出来ているようでヒンヤリとした冷たさが伝わってくる。座る場所は、ふかふかで、深さもあり、椅子にも関わらず高級ソファーのように感じた。とても心地よい感触だ。

ひとしきり感触を楽しんだ私は腰を下ろす。これからの事を考えなければならないのだ。なるべく良い状態で考えたこうが良い考えが浮かびそうだという安易な考えだ。

 

「ふぅー」

 

触ったとおり、身体は深く沈み、気持ちが安らぐ。背もたれに背を預け、肘掛に腕を置く。全体的に後ろに体重をかけた時、音が聞こえた。

 

カチッ

 

その音に反応して、肘掛から、背もたれから、足元から、金属板が飛び出す。

一瞬だった。全く反応することが出来ずに全身を拘束された。助けを求めるように叫ぶ。大声で叫ぶ。

 

少しするとこの部屋唯一の扉が開かれた。

安堵の息がこぼれる。

扉から現れたのは4、5人程のエルフ。カートには様々な道具を載せ、口元をイヤらしく歪めていた。

夢で見たエルフそっくりの者もいた。だが、あれは夢のはずだ。カートの上の道具の中にはドライバーらしきものや、極太のハサミもある。

恐らくこの椅子から飛び出て金属板を剥がすためのものだろう。

期待を込めた声で私は言う。助けてくれ。早くこの金属板を取ってくれ。自由にしてくれ。

私の声は聞こえているはずなのに、エルフ達は嗤うだけで助けてくれない。それが頭にきて思わず私は、怒鳴ってしまった。

 

「人が大変な目にあっているんだぞっ!早く助けろよ!おい!」

 

なんて自分勝手な発言なのだろう。いくら向こうの対応が酷いからと言って、助けに来た人に向けるべき言葉ではないではないか。しかし、自分の発した言葉は取り消せない。

 

エルフ達が口を開く。

 

「あらまばはたら」

 

「はたはまさたらまはまらなへ!」

 

「たばさあまはたば、たはまさたはま」

 

知らない言語だった。しかし、聞いた事のある言語だった。いつ聞いたのか、そう。この世界に転移してきた時だ。

前にも思ったが、言語が通じなくても、表情や、雰囲気などである程度コミュニケーションは取れるものだ。

エルフ達は私の怒気を感じ取ったのだろう。喋っている時から苛立っている雰囲気を醸し出していた。嘲笑っているかのような表情をしている者もいた。

そしてエルフ達はカート上のものに手を伸ばす。

手に取った物はナイフだった。私が座っている椅子のように、漆黒のナイフだった。

エルフはそのナイフを横に一閃振るった。

瞬間、私の視覚情報は消えた。ブツリと、突如消されたテレビのように色をなくした。そして現れる痛み。頬を伝う熱い液体。それを理解出来た瞬間、私は叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みからの情報では、夢の再現が行われていた。耳の切断、指の切断、性器の切断、睾丸の粉砕、何もかもが同じだった。夢と違うことと言えば、私は叫び声を序盤で上げなくなったことだろう。叫んではいる。ただ、喉な振るわない。振動しない。その為、音が出ないのだ。理由はわからない。だが、それが行けなかったのだろう。

夢とは違い、今回の拷問は作業のように行われ、あっさりと心臓を貫かれ、私は再び死んだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背中のヒンヤリとした冷たさで目を覚ます。

目を覚ますが、起き上がる気力がない。あれが夢だとか、そんな現実逃避はしない。いや、出来ない。

思い出すだけで身体中に痛みが奔る。

涙が溢れる。何故こんな目に合うのか分からない。悪い事なんて何もしてない。社会にはちゃんと貢献してきたのに。何故こんなに目に。

そう、簡単な事しか考えることができないほど、私の精神はすり減っていた。

いまそこの扉からエルフが現れることがあれば、私は確実に発狂するだろう。

私は思う。もう死にたい。平和な日本で暮らしていた私が、この様な体験をして平常でいられる訳がないだろう。もう、死にたいのだ。

その時、扉が開く音が聞こえた。その瞬間、私の全身には鳥肌が立ち、生存本能ゆえか、息子が自立する。扉に目を向け、絶望する。

そこから現れたのは、黒いフードを被った人物。私をリンチしたもの達と、同じものを被ったものだった。

 

 

「よう、生きてるか?」

 

そう、男性の声が聞こえてきた。

そして私は、その男性の言葉を理解していた。というか、日本語を喋っていた。

 

 

「エルフの拷問を受けてたんだってな」

 

ハハッと笑いながら男性は言う。全く笑えない内容だが、私は言葉が通じるというだけで、希望の光が射し込んで来ているかのように錯覚していた。

 

「生きてんなら返事くらいしろよ、おい」

 

若干の怒気を孕ませ、男性は再度話しかけてくる。私は慌てて、返事を返した。

 

「い、生きてます!た、助けてください!」

 

気づいた時には助けを求めていた。

 

「はっ。エルフはもういねーから安心しな」

 

その男性は、そう告げる。その言葉に私は、再度涙を流す。

あんな目に合うなら死にたいと願っていたのにも関わらず、救いの手が伸ばされればそれに縋り付く。実に人間は単純なものだと思った。

 

「あんた、人間だろ?エルフは人間が嫌いだからな。街で人間なんか見かけたら集団で攫ってくんだぜ?どうせ、あんたもその被害者なんだろ?今時珍しくもないからな」

 

男性は私の足元に腰を下ろしながら話しかけてくる。

私は慌てて飛び起き、姿勢を正す。話によると、エルフの拷問は珍しくないそうだ。自分の中のエルフ像が崩れていくのが分かる。いや、拷問された時点で崩れていたな。

 

「あ、あの、なんで日本語を?」

 

私は疑問に思っていたことを聞いた。

この男性によると、この世界には転移者が私の他にもいたようで、その者達が使っていた言語が日本語らしい。そして私に日本語で喋りかけたのは、転移者達特有の特徴を私が持っているかららしい。その特徴が、黒髪に幼い外見らしい。

それだけかよって思ったが、どうもこの世界の人間は、黒髪の人間など存在しないらしい。黒は悪人の色とされていて、黒を扱うのは犯罪組織だけなんだとか。

 

 

「そういえば、あんた名前は?」

 

聞いた内容を整理していると、そう聞かれた。確かに、私が質問ばかりしていてお礼も自己紹介もしていなかった。

 

黄泉川(よみかわ)(はじめ)です。質問ばかりしてすみませんでした。助けてくれてありがとうございます!!」

 

自己紹介するには不適切だが、感謝の気持ちを込めて土下座しながら言った。

ハハッと笑い声がした。

 

「俺の名前は、パンプ・W・ウルフだ。日本語で言ったら、だがな。パンプでいいぜ。それと、お礼がしたいってんならあとで返してくれ。因みに、俺は獣人ってやつで、日本語で言うと、狼人間だったか?」

 

その男性、パンプはそう言い、フードを脱ぎ去った。そこから現れたのは獣の耳。ツンと尖り、綺麗な銀色だった。

私も創でいいと返す。

 

あ、とパンプは何か思い出したのか、ニヤニヤしながら私に向かって言う。

 

「なんでもお前、不死身なんだって?エルフの奴らが言ってたぜ。どれだけ拷問しても生き返るってな。ま、転移者ってものは皆異常な能力を持ってたが、お前のは別格だな」

 

その発言に、私は固まった。私が不死身?生き返った?なら、あの拷問で私はやはり死んでいたのか?

考えないようにしていた内容に、絶望を感じた。だが同時に安堵した。能力の使い方なんてものは知らないが、要するに私は死なないのだ。これは朗報ではないだろうか。まずは、能力の使い方でも聞いてみるか。

 

「その能力ってどうやって使えるんですか?」

 

「敬語はいらねーぜ。んー、不死身の能力者なんて初めて見たから分からんが、普通能力ってのは、魔力をもって発動するんだ」

 

どうやらパンプは随分とフランクな人物のようだ。敬語に関して了承の意を示しておく。

それに、魔力?この世界には魔力まであるのか。能力というくらいだからスキル的なものかとおもっていたが。

 

「ああ、それと。能力は個人特有のものじゃあないぜ?個人特有の能力者ってのはお前みたいな転移者だけだ。基本的に能力ってのは種族で決まるのさ。こんな風にな」

 

パンプはそう言うと、コートの袖をまくり、腕を上げた。

パンプの腕に魔方陣らしき物が浮き上がり、指先の方から腕のつけてにかけて魔法陣が腕を覆うようにして流れる。最後に青く光ったかと思うと、パンプの腕は倍ほどになっており、耳と同じ銀色の毛に覆われていた。更には爪までも伸びている。鋭く、鋭利な爪だった。

 

「これを俺達は獣化ってよんでるぜ」

 

「これが、能力……パンプは狼人間だから、狼人間は皆腕の獣化ができるのか……」

 

単純に、驚きの感情でポロポロで言葉が出る。

 

「チッチッチッ。見た方がはえーと思って腕だけにしたが、全身変身することも出来るぜ?」

 

なんと。腕だけじゃないのか。いや、らのべなんかでも大体みな全身変身出来たから、それと一緒なんだろう。

ここで私は一つ疑問が生まれたので、パンプに質問する。

 

「その獣化ってのは、狼人間人間なら皆最初から出来るのか?」

 

「ハッ。なわけねーだろ?最初は、身体の一部を変身させるのにも苦労するんだ。ここには魔物も沢山いる。そいつらを狩って、実力を上げていくんだよ」

パンプはそういうと、獣化した腕をふるい、能力を解除したようだ。

しかし、なるほど。魔物までいるのはまぁ、想定内だ。そして魔物狩り。この世界には経験値の概念が存在しているのだろう。そして、それを理解できるのは恐らく私のような転移者だけ。

そして、全身変身させることが出来るというパンプは、基準が分からないが、かなりの実力者だと思っていた方がいいだろう。

そんな人に救われるとは、私の運もまだまだ悪くないようだ。拷問にあったからそう思うだけかもしれないが。

 

 

パンプの能力は分かった。種族からして如何にもな能力だ。それなら、私を拷問していたエルフ達はどんな能力なのだろうか。想像して思いつくのは、弓に関する能力。敵の位置を把握出来るや、視野が広がるなど。他には魔法の扱いが早熟するなどだろうか?

考えた所で正解がわかる訳では無いので、とりあえずパンプに聞く。

 

「パンプ。私を拷問したエルフ達はどんな能力なんだ?」

 

「あーあいつらのは少し特殊でな。そもそも、能力には大まかに分けて二種類あってな?」

 

私は頷き、続きを促す。

 

「俺みたいな獣人や魔族、天使なんかは任意で発動する能力なんだわ。獣人だったら獣化、魔族と天使は羽を生やす羽翼化。因みに羽翼化は個人個人でまたちとかやってくるんだ」

 

なるほど。また新しい情報だが、魔族や天使なんかもいるのか。それに能力が羽翼化、羽をはやすってことは空を飛べるようになる。そして普段は生えていない。もしかしたら人間との区別がつかないかもしれないな。

 

「んで、お前の知りたいエルフ達なんだが、常に能力が発動してるんだ。んで、エルフってのはすげー綺麗好きでよ?それが関係してるのかは知らんが常に身体を完璧な状態に保とうとするだよ。ま、簡単に言うと再生だな。他にもドワーフやサキュバスなんかも常時能力発動してるぜ」

 

再生……これは、私の不死身と関係性が強いんじゃないか?いや、パンプには確かに不死身と言われはしたが、自覚がない。死んだ気もするが、その辺は記憶が曖昧だ。

それに、また新しい種族が出てきた。ドワーフにサキュバス。ドワーフはまだいいが、サキュバスなんかは危ない気がする。

だが、パンプのおかげで、この世界の種族や能力に関してはある程度学べた。勿論、知らないことの方が多いのだが、今はまだ大丈夫だろう。

 

「貴重な情報をありがとう、パンプ。とても助かったよ」

 

「なぁに、気にすんな。俺が好きでしたことなんだ」

 

パンプはそう言うと、笑顔を浮かべた。

この世界にもこんな人がいるんだ。日本も見習って欲しいものだ。

 

「なぁ創、一つ協力してくんねーか?」

 

「これだけ情報を頂いたんだ。それに此処から出してくれるんだろう?喜んで協力するよ」

 

申し訳なさそうに頼み込んでくるパンプに、快く返事をする。世話になったのも本当であり、日本人の頼まれたら断れないという性質が出たことも否めない。が、別に問題は無いだろう。

 

「おお、ありがてぇ!」

 

パンプが手を差し出しながら言ってきた。

 

「それで私は何をするばいいんだ?」

 

「ああ、それなんだが、その前にとりあえず俺のコートを着とけ」

 

そういえば私は裸だった。有難くコートを受け取りボタンまでしっかりと閉じる。

私がコートを着たのを確認して、パンプは続けて言う。

 

「協力して欲しいのは、俺の部族の子供に血を分けて欲しいんだ。エルフが拷問していると聞いた時はまたかと思ったが、相手が不死身なら話は別だとエルフを金で追い払って来たんだよ」

 

「その理由は?」

 

「ああ、まず、その子供ってのが重い病気でよ。エルフの血じゃないと治らないんだよ。さっき言った通りエルフは再生の能力持ちだ。だからエルフの血にはどんな病をも治す力があると言われてんだ。が、エルフはプライドが高ぇ。自分たちが1番だと思ってて、ほかの種族は見下してやがる。だから絶対に血をわけたりしねぇんだ。そんな所にお前さんの登場だ。創には、エルフに高い金を払ってでも助ける価値があったのさ」

 

そう語るパンプの表情は真剣だった。子供達の話をする時は哀しそうに、エルフの話をする時は怒ったように、コロコロと変わる表情ではあったが、真剣だった。

どうやらこの世界には重い病があるらしい。いや、多分どの世界でもあるだろう。そして、エルフからの情報というだけで私を買う程、危ない状況なのだろう。私が不死身であるという確証も無いのに。

だが、まぁ。私の答えは決まっている。

 

 

「分かった。それなら時は一刻を争う。早く私をパンプの部族の所まで連れて行ってくれ!」

 

「ああ、そうだな。なら創は俺が乗せていくぜ」

 

 

そう言うと、パンプの身体を足元に現れた魔法陣が覆っていく。最後に発光し現れたのは、狼だった。かなり大きい狼だった。

 

「何ボケっとしてやがる!早く乗れ!」

 

ハッとして私は急いでパンプの上に飛び乗った。

これは所謂半獣化と言うやつなのだろうか?そんな私の疑問を他所に、パンプは発信した。

 

 

 

 

 

 

 

景色がグングンと変わっていく。パンプの脚の速さは相当なものだった。

体感的には車と大して変わらない。時速60キロは軽く出ていたと思う。

 

そして私がいた場所は、どうやら廃墟と化した研究室のような場所だったようで、パンプの上からちらっと見た時は、外壁が全て蔦で覆われていた。

 

そしてそこから5分程で森へと入り、今現在、森の中を一直線にかれこれ20分はパンプは走っている。

それから程なくして、パンクの速力が低下しだした。最初は体力的な問題かと思ったが、前の世界で言う標識のようなものがあたりにチラホラと見え始めたのでもうすぐ着くのだろう。

 

 

 

 

 

 

「着いたぜ」

 

パンプにそう言われ、私はいそいそとパンプの上から降りる。森の中で裸足は怖いと思ったが、地面は思いのほかサラサラとしていて、しっかりと整備されているようだった。

 

キョロキョロもしていると、目端でパッと発光した。目を向けると首をコキコキと鳴らしているパンプ。

今の発光はどうやら、半獣化を解いた際の光のようだ。そう考えると、獣人の獣化は少し不便だと思った。変身する度に発光するなど、自身の場所を周りに示しているのと同じだ。

 

「ああ、疲れた。創、こっちだ」

 

クイッと顎で行先を示される。

私は頷き、パンプの後ろをついて行く。

 

着いた先の光景に、私は驚いた。

右も左も前も、至る所にパンプと似た耳をした人間がいた。毛色はどうやら個人差があるようで様々だ。しかし、驚くべき事に皆顔が整っている。パンプはどちらかと言えば強面だが、顔立ちは整っていた。狼人間達は美形の集まりなのかもしれない。

 

パンプは後ろを振り返り、私に寄ってくる。そしてそのまま私の肩に手を回してきて、その状態のまま話し始めた。

 

「おいみんな、こいつがエルフの所から連れてきた不死身の人間だ。これで俺達の生活も安泰だぞ!喜べお前ら!」

 

パンプの声に合わせ、部族の人達がみな大声を上げて喜んでいる。

ここまで喜んでくれていると、私は血をあげるだけだが、嬉しくなってくる。

そんな気持ちから自然と笑みが零れる。

 

「よし。それじゃあ順番を決めるから、みんな集まってくれ」

 

創はそこで待ってな。そういうパンプ達は何やら話し始めた。

暫くたって、話し合いが終わったのか、一人の可愛らしい女の子が私の前に出てくる。

 

「私は君に血をあげればいいのかな?」

 

「うん!私がジャンケンで勝ったんだからね!」

 

元気に返事をする、明るい女の子のようだ。その毛色もその子に性格に沿ったように明るいオレンジ色をしていた。

 

私は尋ねる。どうやって血をあげればいいのかと。

少女は答えた。右手を私に向けて伸ばしてほしいと。

言われた通りに右手を伸ばし、目を閉じる。恐らく、犬歯で傷をつけるか、爪で傷をつけるのだろう。私は痛みに慣れていないので自身の怪我をする瞬間は見たくない。視覚情報で怪我をしたと理解すると、痛みも増すと私は思っているためだ。

 

深呼吸をする音がする。よしという声とともに、女の子は元気に告げた。

 

「それじゃあ、頂きます!」

 

バクンッ

 

 

 

 

 

「ああぁああああ!」

 

あまりの痛さにその場で叫びだす私。慌てて目を開けば爛々と目を輝かせる女の子の口には、私の右手が覗いていた。そのあまりにグロテスクな光景に、私は腰がぬけた。

 

なぜ、何故何故何故何故なぜなぜ!

理解できない、血だけではなかったのか!

 

恐怖で顔が引き攣るのが分かる。

助けを求めるべくパンプへと顔を向けた。パンプは、笑っていた。いや、嗤っていた。

 

「な、なん……で、どういう……?」

 

「クックック。嫌なに、俺達の部族はちょいとばかし強くてな。ここら辺の魔物を借り尽くしたせいで食糧難に陥ってた訳だ。そんな所に不死身の者がいるっていう情報。しかも肉体は自然と再生するときた。俺はピンときたぜ?ああ、こりゃいい食料庫になるってよぉ?」

 

絶望する。あの親切だったパンプは嘘だったのか。子供達の話は嘘だったのか。あれら全てが嘘だったなんて、パンプとんでもない役者だった。

 

「安心しな。死には死ねえからよ。お前も不死身って聞いた時安心した顔してたろ?良かったな?死ななくて。安心して喰われてくれや」

 

馬鹿にしたような発言。いや、実際馬鹿にしてるのだろう。その仕草、声、表情に、私の怒りは爆発した。

 

「くそがあぁぁぁ!!!!!」

 

パンプ目掛けて走り出す、身体の中から力が湧いて出てくる感覚があった。それに合わせて喰われた右手が再生していく。

ヒューっとパンプが口笛を吹く。しかも左手をいつの間にか獣化させていた。

 

「ああああああ!!!」

 

再生した右手でパンプの顔目掛けて拳を振るう。人生で一番早いパンチを、私は繰り出すことが出来た。

 

しかし

 

ペチッ

 

その右手は、パンプの左手で受け止められた。そう、実にあっさり、簡単に。

そして私の謎の自信と一緒に、私の右手は砕かれた。

 

 

「残念だったな。創。まぁどっちにしろお前はこの世界では暮らしていけないさ。人間にも、天使にも、俺達獣人にも。あらゆる種族が転移者は目の敵にする世界だからな。とりあえず、精神こころだけ死んどけや」

 

「パ……ン、プ」

 

その言葉を最後に、先程の女の子が私に飛びかかり、身体を貪り始める。

 

私が最後に聞いたのは、自身の叫び声だった。

 

 

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