駄菓子屋でガムと飴を箱買いしていくあの人   作:アヴァランチ

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最近駄菓子屋でお菓子を箱買いしたので投稿します。

ヤングドーナツはチョコ味よりも通常の味が好きです。


売れているのはガムと飴

駄菓子屋。それは小さな子供が遠足とかのおやつを買いに来たりする場所というのが一般的な認識だ。あとは安くて懐かしいお菓子を売っている場所だろうか。

 

客層は大体が小さな子供か、懐かしがって気まぐれに訪れる大人だろう。後者は中々珍しいが、其なりにまとまった金額を店に落としてくれるのでありがたいお客さんだ。

 

逆に客層の中で1番数が少ないのは中高生だろう。今ではコンビニでも多少の駄菓子も売っている為、わざわざ駄菓子屋まで来て買いに来るなんて事は無い。無い筈なのだが。

 

「毎回コーラのガムと棒付きの飴をまとめて駄菓子屋に買いに来る高校生は貴女くらいではないかね?“氷川さん”よ」

「何か問題でも?」

「無いけどさ、どうしても珍しくてね。じいちゃんとばあちゃんの代わりに店番とかを始めて、かなり経つけどさ、定期的に店に来てガムと飴を箱で買いに来るのは貴女だけだよ。定期的に来る人すら稀だからね」

「……経営は厳しいんですか?」

「まぁ安い駄菓子だと1つ辺りの利益が1円か2円とかだからねぇ。1番利益あるのが店の前に置いてある自販機なくらいだし。あとは、ばあちゃんが居る時に作るお好み焼きとかの鉄板焼き系統かな。たぬきの置物が置いてある店には負けるけど」

「このお店が潰れてしまっては困ります」

 

氷川さんは若干伏し目がちに言った。こう言う物を大量に買っているのは秘密にしてるんだっけか。コンビニとかで買うと噂が広まる可能性があるからな。噂とか広まらない駄菓子屋が潰れたら困るか。うちのばあちゃんってお喋り好きの割には秘密は守るし。それに何だかんだで小さな頃からの顔見知りだし。

 

「少なくともじいちゃんとばあちゃんが元気な間は潰れない様にはするから安心してくれ」

「お店を継ぐ気は無いんですか?」

「あると言えばあるけど、現実的には難しいかもね。さっきも言った通り、経営は中々難しいし、需要も少ないからね。外国人が来る観光地から近いって訳でも無いから。商店街の端にあるここは結構立地が悪いよ」

「そうですか……長々とすみません。では、私はこれで。失礼しますね」

「お客さん他に居ないから気にしないで。それと毎度ありがとうございます。帰り道に気を付けてね」

 

氷川さんは帰って行った。両手にガムと飴が大量に入った袋をぶら下げて。昔はそれぞれ2個か3個ずつくらいしか買わなかったのに、大きくなったんだなと思った。同い年だけど。そんな事を考えていると、店の奥にある居間に居たじいちゃんが声をかけてきた。

 

「今のは氷川さんの所の……」

「紗夜さん。お姉さんの方だよ」

「紗夜ちゃんか。妹さんは日菜ちゃんだったか。最近来るのはお姉さんの方ばかりだな。昔はよく2人で仲良く来てたのだが……」

「色々あるんでしょ。向こうから話して来ないなら詮索する必要は無いよ。ほらじいちゃん、まだ腰が痛むんでしょ。休んでなよ」

「すまんな……それで、お前はどっちと結婚するんだい?」

「ん?何の話?」

「紗夜ちゃんと日菜ちゃん、どっちと結婚するのかと聞いているんだ」

「……今時流行らないよ、そういうのは」

「年寄りに流行り廃りは関係無いな。お前も高校に入ってからは店の手伝いばかりで同い年の友達とも遊ぶ事も出来ないで、色恋沙汰も無いだろう」

「今は誰かを好きになってる余裕は無いよ。じいちゃんもばあちゃんも段々と調子が悪くなってるんだから。じいちゃんとばあちゃんが居なくなったら恋愛するよ」

「意外と毒吐くよなお前」

 

両親が死んでから引き取ってくれた2人には感謝してるんだけど、デリカシーみたいなのが皆無なのが悲しい所だ。

 

「昔は“2人ともお嫁さんにする”と息巻いていたのに」

「えっ、本当に?ヤバイ……記憶に無いよ」

「ごめん嘘」

「居間に戻りましょうねおじいちゃん?」

「在宅介護みたいな言い方やめてくれ!謝るから!」

「実際じいちゃん、冗談抜きにあとどれくらいの自信ある?」

「……」

 

じいちゃんは目を瞑って考え始めた。真剣に考えている。

 

「少なくともお前が成人……いや、大学を出るくらいまでは大丈夫だとは思うが」

「ばあちゃんは?」

「ばあさんは難しい所だな。何とも言えん」

「そっか。まぁ精々長生きしてよ?」

「分かってる」

 

そう言って、じいちゃんは奥の居間に戻って行った。それと同時にお客さんが来た。

 

「こんにちは!ジェリービーンズってありますか~?」

 

何か凄く元気な女の子が来た。ん?あれはあこちゃんか?

 

宇田川あこちゃん。商店街の人気者である宇田川巴ちゃんの妹さんだ。無邪気な性格だけど、ちょっぴりダークな感じを目指してる女の子だ。

 

「ジェリービーンズはそこの棚の真ん中の段にあるよ。3種くらいしか無いけどね」

「あ、あった!これ下さい!」

 

あこちゃんが買ったのはポイ◯ル3つ。王道ゼリーグミだ。実際の所、日本のイメージのジェリービーンズはこれのイメージだろうけど、海外のジェリービーンズは……滅茶苦茶ネチョネチョしてるのが多い。

 

「3つで300円だね」

「はーい!やっぱりこういうお店の方がちょっぴり安いね!」

「あぁ、コンビニだと少し高いのか。節約上手だね」

「えへへ~。今日はキャンディばあちゃん……おばあちゃんは居ないの?」

 

キャンディばあちゃん。うちのばあちゃんの商店街での通り名。話が長い代わりに飴のお菓子をおまけするから付いた通り名だ。あの甘くてクリーミーなキャンディのおばあちゃんバージョンでは無い。

 

因みにうちの苗字は天宮なのだが、ばあちゃんの影響でで飴宮と言われる事も。

 

「今日は老人会の集まりだよ。じいちゃんは腰が痛いから休んでるけど」

「そうなんだ!っと、バンドの練習に遅れちゃう!また来るね!バイバイ!」

「車とかに気を付けてね」

 

あこちゃんは元気に去って行った。しかしバンドか。確かお姉さんの巴ちゃんもバンドでドラムをやってるって話だし、本当に仲が良い姉妹だ。

 

あの姉妹ももう少しだけで良いから蟠りが取れると良いな。

 

「詮索しないと言った手前、考えてる僕も僕か。さて、日も傾いて来たし、そろそろ店を閉めよう」

 

今日も1日が終わった。ガムと飴を多めに発注しておこう。




多分不定期になるので気長にお待ち下さい。

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