【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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4話 【√浜風】

 季節は梅雨の時期へと移り変わる。衣替えで夏服へと移行したある日、委員会の担当で図書室にいた。

 最近は図書館に来る人は少なく、ただ受付に座ってるときが多い。人がいないときは本を読んだりして暇を持て余すいるが、最近は少し事情が変わった。

 その原因は大方同じ時間に担当に入った浜風である。その雰囲気は優等生のそれであり、後輩でありながら和也の気は抜けないでいた。

 

「……浜風」

「……」

「雨、やまないな……」

「……」

 

 そして、このコミュニケーションの無さである。いや、どちらかといえば浜風がコミュニケーションを拒否している状態であろう。

 ここまで無言を貫かれると、逆に関心してしまう。何故彼女はそこまで無言を貫くのか。それを知るために、和也は彼女と関係を持つ人物に話を聞きに行った。

 まずは図書委員会の長である阿武隈に尋ねる。

 

「浜風さんですか?えっとぉ……、とにかく真面目って印象かな?それ以上は何もぉ……」

 

 結局は分からずじまいだった。

 和也が次に頼ったのは、浜風の同級生だ。特にクラスメイトである、潮に聞いてみる。

 

「浜風ちゃんのことが聞きたい、ですか?あまりしゃべったことないので……、よくわからないです。ごめんなさい」

 

 残念ながら、潮からも分からないと言われてしまう。代わりに有力と思われる情報を得ることができた。

 どうやら別のクラスから浜風の元に来る人がいるらしい。名前は浦風で、見たところ二つ隣の教室にいるそうだ。

 早速、その情報を頼りに訪ねてみる。和也にとって、全く接点のないクラスに突撃するわけだから、緊張度は半端ではない。どうにか呼び出すことに成功し、話を聞いた。

 

「浜風?うちと同じ中学だったから分かるけんど、あまりしゃべらん娘やね。今もそうやし、あんま変わらんねぇ」

 

 そう言われてしまえば、なんとなく納得してしまう。しかし、続けて話した内容に和也は耳を疑った。

 

「最近は忙しそうにしてたみたいやったんけど、どうも悪いことに首突っ込んでるようじゃね……。こないだも知らん人と一緒におったけん、嫌な予感がしよるよ」

 

 浜風の良くない噂がある……。それを聞いた和也は、胸の奥でモヤッとした何かを感じた。

 和也は浦風から浜風を目撃した場所を聞くと、その日の放課後にすぐ向かった。

 浜風が目撃された場所は、近所でも有名な繁華街だ。平日の夜なら、仕事帰りのサラリーマンが居酒屋で飲んだであろう姿がそこら辺で見られる。

 本当にこんなところに浜風がいるのだろうかと和也は考えてしまう。しかし、現に浦風が見ていると証言しているのだから、間違っていないはずだ。

 とにかく和也は、繁華街のある通りを何往復かしてみる。和也の心のどこかでは、ここに浜風がいないでほしいと願っていた。こんなところに浜風がいるのなら、いったい何が目的なのか。今はそれをはっきりとさせたかった。

 1時間ほどした時、それは突然やってくる。和也の横を須賀海高校の制服を着た、浜風に似た女子が通り過ぎていったのだ。和也は一瞬反射的に振り返る。もしかしたら見間違いかもしれない。いや、和也の心情としては見間違いを期待していた。

 だが、それは叶わない。10メートルほど先には浜風の後ろ姿があり、その隣を30代後半の男性が一緒になって歩いていたのだ。

 和也には周りの喧騒が入ってこなかった。それだけ、和也にとっては衝撃だったと言える。

 だが、ここであっけに取られているわけにはいかない。すぐに浜風のあとを追う。

 和也は二人の後方約5メートルの位置につくと、しばらく二人を追いかける。和也は追跡調査の刑事の気分を感じていた。

 二人が通りから路地裏に抜ける角を曲がったのを確認すると、建物の角に隠れるように移動する。

 和也は覗き込むように、様子を確認した。

 するとどうだろうか。浜風は壁際に寄せられ、男性に何かを言い寄られているではないか。和也から見ると暗くてよくわからないが、彼女の顔は少しばかり不安な表情をしていた。

 和也としては首を突っ込むような事ではないかもしれないが、ただ見ているだけにはいかない。そう考えた次の瞬間には、和也は行動に移していた。

 

「こんな所で何してんだ?」

「なんだ、君は?」

「堤先輩……?」

「もう遅い時間だろ、早く帰るぞ」

 

 和也は半ば無理やり浜風の手を取り、早々にその場を離れる。

 

「僕の話終わってないんだけど!」

「高校生にそんなこと言われても知ったこっちゃないです」

「ちょ、ちょっと先輩?」

「いいから、黙ってろ」

 

 問答無用で浜風を引っ張っていく。

 後ろから男が追いかけてこないように、とにかく無茶苦茶に歩き回った。

 10分ほど歩いただろうか。住宅街を徘徊するように動き回った和也は、周りの様子を確認してから浜風の手を離した。

 

「ここまで来れば大丈夫だろ……」

「堤先輩、なんのつもりですか?」

 

 和也が周囲を確認していると、浜風が遺憾の眼差しを向けてくる。

 

「なんのつもりって、明らかに悪いことしてただろ」

「悪いことだなんて……。あれは私が勝手にやったことです」

「あれが悪いことじゃないなら、なんだって言うんだ?」

 

 和也は少し怒鳴り気味で、浜風に問い詰める。

 

「あれは……」

「あれは?」

「……道案内です」

「……え?」

 

 彼女の言葉に、和也は一瞬理解が追い付かなかった。

 

「ですから、道案内です」

「いや、そんなに言われなくても分かるから」

 

 和也は冷静になって話を聞いてみる。それによると、浜風が男性に声をかけられたのは、通りの入り口あたりだったそうだ。そこで近くのビジネスホテルを聞かれ、駅前まで案内しようとしていたらしい。

 

「ただ、裏路地に連れていかれたのは想定外でした」

「なんだそりゃ……」

 

 和也は頭を抱えた。この場合、非があるのは完全に自分のほうなのだ。

 

「いや、待てよ?浦風に聞いた話だと、前に知らない人と一緒にいたって聞いたぞ?」

「それは、たぶん叔父だと思います。ちょうど父に会いに来ていたときに、駅まで迎えに行ってたんです」

「あっ……そうですか……」

 

 この瞬間、悪かったのは和也のほうであることが決まってしまった。それでも和也には疑問が残る。

 

「どうして繁華街なんかにいたんだ?学校から繁華街方向に行くことなんてないだろ?」

「あ、あの、それは……」

 

 浜風が言葉に詰まる。それは真実を隠すための裏返しだと和也は感じた。

 

「ちゃんと話してくれ。でないと誤解が解けない」

「……」

 

 浜風は少し嫌な顔をすると、仕方がないように話し出す。

 彼女は和也がこれまで感じていたように、優等生の振る舞いを行ってきた。時には窮屈に感じることもあったという。そのため、最近は真面目な自分が嫌に感じていた。そこで彼女の中で考えつく不真面目なことを考えていたところだそう。

 そこまで聞いた和也は、不覚にも笑ってしまった。

 

「何笑ってるんですか!」

「いや、そこまで考えてるなんて思ってなかったからさ」

「私は本気なんですよ!」

「それだよ。そんなことを真面目に考えるくらいなんだし、本当はいい人なんだろう?」

 

 ここまで不真面目なことを真剣に考えるのは、そうそう容易いことではない。正直で真面目だからこそ、そのような考えに至ったのだろう。

 

「とにかく、そういうのは止めておいたほうが身のためだ」

「いやです、私は一度決めたことはやりきるタイプなので」

 

 互いの意見が平行線になった。浜風の意思は堅そうだと和也は感じる。そうなれば取る行動は一つ。

 

「じゃあ、こうしよう。俺が相手になってやる」

「え?」

「俺が浜風の思う不真面目の手伝いをしてやるよ」

「本気……ですか?」

「本気だ」

 

 和也の強い意思に、浜風は若干視線を落とす。そして数秒の時間の後、顔を上げた浜風からは迷いが消えていた。

 

「では、堤先輩は私の不真面目に付き合ってください」

「あぁ」

「あとで後悔しても知りませんよ」

「分かってる」

 

 こうして浜風とともに、不真面目に過ごすことが決まる。

 この後、和也は浜風を家まで送っていった。

 


 

 翌日、和也は朝起きたあと、冷静になって考えた。不真面目の手伝いとはどういうことなのか。そもそもこんなことを真面目に悩んでどうするのか。考えれば考えるほど深みにはまっていく感じがした。

 そんな中、連絡先を交換した浜風から質問が来る。

 内容は、授業中の不真面目な態度についてだった。和也が思いつく限りでは、手っ取り早いもので寝るである。正直、この時の和也の思考は複雑な状態に陥っていたため、当たり障りのない回答をするのだった。

 その日の委員会で浜風と会った時に、実際に寝たときの様子を聞かされる。

 

「長門先生の授業だったんですが、居眠りなんてしたことなかったのでそれっぽいことしたんですよ。そしたら本気で心配されました」

「じゃあ何でやろうとしたんだよ」

「前にも言いましたが、私の意思は堅いんです」

 

 おそらく外野から見れば、くだらないような会話である。しかし、そんなくだらない話を浜風は楽しそうに話す。

 和也はなんだか目的を忘れそうになっているが、彼女が満足ならそれでいいだろうと思った。

 


 

 梅雨も終わりそうなある日。久々に晴れ間が差す夕方、委員会の担当で浜風と一緒になる。どうも暗黙の了解で、和也と浜風を一緒にしたほうがいいという風潮が流れているようだ。

 そんな二人は、この時間帯にはほとんどにとが来ないことをいいことに、菓子の類いを隠しながら食していた。

 

「いいんですか?図書室って飲食物の持ち込み禁止ですよね?」

「まぁ、バレなきゃセーフだ」

「先輩も悪いですね」

 

 浜風はそんなことを言いながら、器用に粒チョコを口に放り込んでいた。和也はそれを見ていると、ふと彼女の食べている姿が似合っていることに気づく。世間では、食べる姿が好みだという人もいることだろう。今の和也にはそのような感覚が芽生えていた。

 そこで和也は、思い切って浜風を誘ってみる。

 

「おごってくれるんですね?」

 

 和也のほうから誘ったのだが、すでに拒否権は消失していた。

 委員会が終わった後、学校の最寄りにあるハンバーガーファストフード店へ向かう。

 

「なんだか悪いことしてる感じがしますね」

 

 浜風は心なしかワクワクしているようだった。

 レジに並んだ浜風はメニュー表を眺めると、あまり迷うことなくサイズの大きいセットを躊躇なく頼んだ。最近固かった和也の財布の紐は、この時ばかりは緩まざるを得なかった。

 頼んだセットが出てくると、それを持っておくのテーブル席に座る。

 

「堤先輩は何も食べないんですか?」

「あぁ、訳ありでな……」

 

 和也は遠い目をする。浜風はそれを気にせずに、特大のハンバーガーを頬張った。満面の笑みでハンバーガーの美味しさを表現する浜風のことを、和也は頬杖をしながら見守る。こうしてみれば、彼女が食べる姿はどこか惹きつけられるものがあった。

 

「……なんですか?」

 

 和也があまりにも浜風のことを見ていたため、その視線に気が付いた彼女が直接聞いてきたのだ。

 

「いや、別に」

「……」

「なんだよ?」

 

 浜風がジト目で見つめてくる。ずっと無言でいるわけだから、和也は何かしたかと考えてしまう。

 すると浜風は何を思ったのか、ポテトを一本取り出し、それを和也の前に差し出した。

 

「一本だけなら……食べてもいいです」

「え?」

「ほら、おごってもらいましたし……」

 

 目をそらし、若干を赤く染めながら浜風はポテトを和也の口元に寄せる。

 

「いいのか?」

「はっ、恥ずかしいんですからっ、早くしてください!」

 

 それなら無理にすることないだろうと和也は思ったが、さすがに心の中で留めた。

 それに彼女がいいと言ってるのだから、遠慮はいらないだろう。

 

「……あー」

「んっ」

 

 和也が口を開けると、浜風はそこに躊躇なくポテトを突っ込んだ。

 危うくむせそうになるが、なんとか持ち直す。

 

「はいっ、もうあげませんっ」

「いや……別に取らないから」

 

 そのあとの浜風は黙々とハンバーガーを食べ進めた。和也は何か会話でもしようとしたが、ここにきて適切な話題が見当たらない。ただ、彼女が食事する様子を眺めているだけだった。

 

「……ごちそうさまです」

「あぁ」

 

 結局、浜風が食べ終わるまで互いに無言であった。

 店を出ると、二人は帰路につく。夕方と夜の間くらいの色が空を染めて、街全体を影絵のように映していた。

 和也の前を行く浜風。店を出る直前から浜風は意図的に目線を合わせないようにしていると和也は感じる。

 当の本人である浜風自身はというと、抑えきれない心臓の高鳴りをどうにかしようと必死だった。それと同時に、体の火照りが顔に出ていそうでなんとなく和也のほうを見れずにいたのだ。

 そんなことはつゆ知らず、和也は彼女に対して何かしてしまったのではないかと今日の行動を振り返りつつ、思考を巡らせていた。

 すると、前方を歩いていた浜風が急に歩みを止める。それに気づいた和也が考え事をやめて前を見てみると、どこかで見たことのある男が道を塞ぐように立っていた。

 

「やぁ、久しぶりだね」

「……なんですか?」

「つれないなぁ。この間道案内してくれた優しさはどこ行っちゃったんだい?」

「知りません」

「そっかぁ。じゃあもう一回道案内してくれないかな?そうすれば思い出すでしょ」

 

 会話しながらも、男は浜風に近づく。そのあとの行動を予想した和也は、浜風と男の間に割り込んだ。

 

「何だい、君は?邪魔しないでくれるかな?」

「それはできません。それよりも、この後彼女をどうするつもりだったんですか?」

「どうするも、また道案内してもらうのさ」

「今のご時世、わざわざ人に聞きますかね?スマホという便利な道具があるのに?」

「スマホだけでは分からないこともあるものだよ、少年」

 

 和也の質問に、のらりくらりと答えを返す男。その間にも、男はジリジリと間合いを詰めていた。

 二人の応答の応酬は、次第に言い争いとなる。

 正直、この状況はまずいと和也は思った。そもそも、この間知り合ったばかりであるはずの浜風の居場所なんてすぐにわかるようなものではないはずだろう。

 そうなると、考えられるのはストーカーの類いだ。もしそうだとするのなら、非常に面倒なことである。

 和也は前にもやったように、その場から全力で逃げようかと考えた。そう決めた和也は、男に分からないように、しかし着実に後ろへと下がっていく。

 数歩下がると、背中に浜風の体が触れる。この状況下では、浜風に和也が考えていることは分かるはずもない。また無理やり逃げ出すことも考えたが、二度も同じ手が通用するとは限らないだろう。

 

「堤先輩……」

 

 後ろにいる浜風が和也のすそを小さくつまむ。その手はわずかに震え、声も普段とは違う恐怖の感情を含んでいた。

 ダメだ。逃げ切れない。

 和也はそう判断する。おそらく簡単に追いつかれてしまう。和也はひたすら思考を張り巡らせた。

 だがそうしている間に、男の態度が少しづつ変わっていた。

 

「どうして君はそうも僕と彼女の関係を壊そうとするんだい?」

「赤の他人だからですよ」

「それは君もじゃないか。それに、これから関係を築いていくから他人ではないさ」

「明らかに不純な動機が混じっているのに、関係が築けないのでは?」

「そんなことはない。いい加減にしてくれないか」

「なら、彼女に付きまとうのは止めてくれませんか?」

「僕がストーカーだって言いたいのか?ふざけるのも大概にしろ」

「自覚があるならなおさらですよ」

「黙れ!青二才の分際で何が言える!」

 

 次第に男の様子がおかしくなっていく。怒号が混じり、言葉遣いが荒くなる。それに委縮した浜風が、和也を盾にするように隠れた。

 いよいよ逆上状態に入った男は、ポケットからカッターを取り出し、刃先を和也に向ける。

 

「ッ!」

「最初から穏便に済ませてれば良かったものをよぉ!」

「せ、先輩!」

「危ないですよ!とにかく落ち着いて、それを仕舞ってください!」

「うるさい!お前らが!お前らが悪いんだぁ!」

 

 男の怒号が通りに響く。それを聞いた通行人が一斉に三人へ視線を注いだ。そして男がカッターを和也に向けている状況を把握した誰かが、甲高く悲鳴を上げた。

 

「クソガキがぁ!」

 

 カッターを前に向けたまま、男は和也に突進する。和也一人なら咄嗟の判断で躱せただろう。しかし、実際には和也のすぐ後ろには浜風がいた。避けるのは容易ではない。

 結果として和也が出した答えは、浜風のことをかばうことだった。浜風のほうを振り返り、彼女のことを思いっきり抱きしめる。

 和也は強烈な痛みを覚悟した。それを体現するかのように、浜風を抱きしめる腕の力がより強くなる。

 だが、いつまで経っても背中に異常は起こらなかった。和也はゆっくりと後ろを振り向いた。

 

「う、うぅ……」

「うちの生徒に何をしている?」

 

 そこには、男の手首をガッチリとつかむ一人の女性。陰で「須賀海のボスゴリラ」の二つ名を持つ長門先生だ。

 

「なんだてめぇ!離せ!」

「これは立派な犯罪行為だ。このまま警察に突き出す」

 

 その光景に、和也は開いた口が塞がらない。状況が全くの見込めないのであった。

 

「あ、あの……先輩……」

 

 和也の腕の中で浜風が声を上げる。

 

「ん……なんだ、浜風?」

「ちょっと、苦しいです……」

 

 そう、今の今まで和也は浜風を強く抱きしめていた。苦しくて当然だろう。

 それを把握した和也は、すぐさま浜風を解放した。

 

「す、すまん」

「いえ、大丈夫です……」

 

 浜風は和也に背を向けてしまう。和也に強く抱かれていたことで、その顔を真っ赤に染め上げていたのだ。

 

「それより、先輩は大丈夫でしたか?」

「あぁ、なんとかな。とにかく浜風が無事でよかった」

「恥ずかしいこと言わないでください!」

 

 二人がお互いの安否を確認する。

 

「あー、お取り込み中のところ悪いんだが……」

 

 そこに、長門先生が申し訳なさそうに口をはさんだ。

 

「一応君たちは被害者だからな、一緒に警察に来てほしいのだが」

 

 長門先生の言葉通り、二人は一緒に近くの交番へと赴く。結局、二人は日付が変わる前に帰宅することができた。

 翌日、いつものように委員会の担当で受付に並ぶ二人。昨日の一件もあり、和也は何となく浜風に話しかねづらかった。

 

「堤先輩」

 

 その状況を壊したのは浜風だった。

 

「昨日は……ありがとうございました」

「あぁ……うん、そうだな」

「あと、その……」

「……なに?」

「いえ、なんでもありません」

「はっきり言ってくれよ。気になるだろ」

 

 浜風は小さく微笑む。和也に対して、さまざまな思いが浜風を包み込んでいたからだ。

 その感情が恋であることは、もう少ししてから知ることだろう。

 

 




 浜風はうすしお味(怪文書)
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