【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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グラーフファイル(山南修)
銃オタに堕ちたグラーフ


「Admiral、失礼する」

 

私は執務室のドアをノックし入室する。目の前の立派な机には土曜の昼間ではあるが提督が、左手には補佐官こと通称参謀長が、右手には今日の秘書艦の陽炎とその手伝いであろう不知火がいた。私は提督の前まで行き、敬礼をする。

 

「グラーフ、おかえり。報告を」

 

答礼し状況報告を求めた提督に私は

 

「第三哨戒艦隊は艦娘母艦〈やまつつじ〉と共に第二哨戒ルートを哨戒し、先程帰投した。道中屋久島南東百kmで通商破壊中と思わしき深海棲艦潜水艦を撃沈した以外は何も無かった」

 

と答えた。左手に抱えていたファイルを手渡す。

 

「グラーフ、ありがとう。しっかり休んでね」

 

これだ。提督の控えめな殺人光線(笑顔)が私に突き刺さる。私はどちらかと言うと男が好きだかこの笑顔は辛い。一体何人の艦娘をこの笑みで落としてきたのだろうと考えながら頑張ってポーカーフェイスを保つ。

 

「Vielen Dank, Admiral。明日一杯までの休みを満喫するよ」

「グラーフ、ちょっといいか」

 

参謀長が拒否を許さないと言う目で見てくる。いつも通りとはいえちょっと怖い。

 

「最近個人的にこの件を調査しているんだが何か知らないか?」

 

紙の資料を渡してくる。どれどれ、二年前に本土近海航路で消息を絶った陸軍部隊を乗せた輸送船の件か。写真付きでかなり詳しく載っている。

 

「確か前に報告書を読んだが、深海棲艦によって沈められたが最終結論じゃなかったか? 油膜も確認されたんだし。それ以上のことは知らないな」

「ありがとう。輸送船護衛の見直しを最近やっていて殆ど情報がないこの件を探っていたところだ。何かあったら言ってくれ」

 

再度敬礼して執務室から退出する。一瞬だけ目に入った陽炎が微妙に笑っていたような気がしたが、何かあったのだろうか。

私は階段を降りて鎮守府本館正面玄関から出た。うー、と腕を組んで背を伸ばし息を深く吸う。深海棲艦侵攻を受け壊滅した太平洋側地方都市跡に作られたこの鎮守府の空気は綺麗な方だ。一日船に揺られ、その後に哨戒するのは少々骨が折れる。このことを随分前に酔ったビスマルクに愚痴ったら、艦載機の操作だけで済む分マシと言われた。解せぬ。

提督にはゆっくりと休むといったが私にはやる事がある。工廠に行って新型機を眺めたり、試験飛行させたりするのもいいが土曜の午後はするべきではない。意気揚々と鎮守府の外れ、室内射撃場に向かった。使われなくなった大型倉庫を改造して作られた室内射撃場はガンロッカーを併設していて警備兵の訓練の他、艦娘の息抜きとしても使われている。そんな建物の入口を目指すと徐々に銃声が聞こえてきた。

 

Hi, wie geht es dir(やあ、調子はどうかな)? どのくらい集まっているかな?」

 

射撃場入口を警備している顔馴染みの警備兵に許可証とIDカードを見せつつ語りかける。

 

「いつも面子と鈴谷さんと熊野さん。それに矢矧さんと雪風さんが来ています」

 

となると哨戒中のビスマルクとマックス、レーベ、U-511以外の海外艦、アクィラ、サラトガ、アイオワ、ガングート、タシュケント、ヴェールヌイ、リシュリュー、ウォースパイトは居るってことか。素晴らしい。

 

「今日も楽しくなりそうだ。君達も任務後にどうかな。最近アイオワがSCAR-Hを取り寄せたらしいし見たくないか?」

「はい、見たいです! 三時間後には終わるのでそれまで待ってて下さい」

 

片方は大のガンマニアで反応したがもう片方は遠慮がちだ。まあ、いい。一人でも同志(共産的な意味合いではない)が増えるのは嬉しい。

確認が終わった私は室内射撃場内にある私のガンロッカーからHK417、P90、少し迷ってFiveseveNを取り出した。P38でも良かったが、気分的にはこっちがいい。HK417のスリングベルトを肩に掛けて背中に吊るし、P90のスリングベルトを首に掛けて前に吊るした。FiveseveNはレッグポーチに突っ込んで最後にタクティカルベストとウエストポーチを身につけ準備は整った。射撃場への扉を開けていざ向かわんと踏み込んだ。

 

「調子は」

 

大きな射撃音で私の言葉は遮られ、かなり驚いた。音の方向に目をやると矢矧が、確か……ああ、そうだ。九七式自動砲を使っていた。的は頭が綺麗に吹っ飛んで銃弾を受け止める砂山からは砂煙が盛大にあがっている。

 

「ハハハ、グラーフったら……。Like a duck in thunder……HAHAHA」

「それってどういう意味だっけ?」

「鳩が豆鉄砲を食らったようの英語版ですのよ、鈴谷」

「ちょっと、忘れてくれないか。割と真面目に恥ずかしい」

 

大笑いするアイオワに向かって文句を言うが、この様子だとしばらくネタにされて弄られるかもしれない。それにしても……。

 

「矢矧、これはもしかして九七式自動砲か? いったいこんな珍しいのをどこから……」

「グラーフ? 来たのね。まあ入手先は言えないけど、状態はかなりいいものよ。明石に頼んで整備して今試射しているところなの」

「雪風は、スポットマン役です!」

「ふむ、私は前にゾロターン S-18/100とラハティを見たことがあるんだが個人的に九七式自動砲も見たかったんだ。ほー、ここがこうで、ああなって、銃身がこんな感じで……」

 

素晴らしい。タイに行かないと実物は見れないかと思ったがここで見れるとは。やはりこの鎮守府や艦娘の銃入手経路はかなりいいものなんだろう。

 

「グラーフ、矢矧が困ってますよ〜」

「え?」

 

顔を向けると少々困った顔の矢矧が見えた。

 

「グラーフ、後で明石と一緒に整備をやるといいんじゃないかしら?」

「おっと。ああ、そうだな。試射を邪魔して悪かった」

 

またアイオワが爆笑しているのが癪に障るが、こればかりは私が悪いので何も言えない。矢矧が試射を再開したので私は弾を取りに弾薬庫に入った。マガジンローダーを使って7.62x51mm弾をマグ五つに装弾し、FiveseveNは適当に三マグ、P90は面倒臭いが手作業で一発ずつ装弾していく。弾の威力がちょっと低いことと装弾が面倒かつ偶にジャムること以外は好きな銃なんだが。

10分ほどかけて四マグに装弾する。

弾をマグに入れたところでHK417のアタッチメントを確認した。バイポットとフォアグリップはしっかり固定できているな。ACOGは、ゼロイン調整やるのはあっちでいいかな。固定はできているし。レーザーサイトも、光るな。よし。

P90のドットサイト(標準装備のドットサイトは使いずらくてリフレックスドットサイトを積んだ)のバッテリー、レーザーサイトのバッテリーを確認して射撃場内に戻った。

 

「お、グラッちじゃん。ちっす」

「グラーフさんですか。報告はどうでした?」

 

空いていたブースの入ると隣にいた鈴谷がベネリM3をぶっぱなしながら、熊野がSG510を調整しながら話しかけて来た。因みにもう一つブースが空いていたのだが、隣でサラトガが笑顔でM1928を連射していて怖かったからこっちに来た。同じ第三哨戒艦隊の同僚達は時間的に真っ直ぐこっちに来たのかな?

 

「特に変わりはなかった。いや、一つあった。報告した後に陽炎が笑っていたようだが何かあったのか?」

「あー、うん。彼女にも色々あるんだよ」

 

鈴谷はやれやれと言いたげに手を振り困った表情をした。なるほど、なにか抱えているようだな。

 

「この鈍さ……」

 

熊野は呆れ顔でなにか呟き首を振っていた。鈴谷も苦笑しているが問題ないと告げてきた。P90を机に一度置き、HK417を構えマグを入れる。セレクターをセミに切り替えAR-15系列独特のチャージングハンドルを引いた。バイポットを立て最大距離で的を出現させて4x32mmのACOGで狙いを付ける。人間の上半身を模した的の脳天のど真ん中に照準を合わせ……バン。

弾は銃口とサイトの距離を考えても少し下にズレていた。

 

「ちょい上げるか……」

 

エレベーションノブを回し調整する。

 

「とぉぉぉお」

 

熊野がSG510でフルオート射撃しているのが聞こえる。気になって目を向けると艦娘のスペックをフルに使い反動を抑え込みそこそこ正確に当てていた。扱い自体は正しいんだが、なぜバイポットを使わず膝射で撃っているんだ。

 

「やっぱり熊野って……」

「なんかねえ……」

 

優秀なんだけどなあと言う鈴谷のボヤきが聞こえ苦笑してしまった。プリンツ曰く彼女はポンコツお嬢様らしい。

何度か射撃して調整を繰り返しようやく納得が行く調整ができた。

HK417を肩に掛けて、P90を掴み近距離向けの射撃場に移った。鈴谷がショットガンで中距離向け射撃場にいたのは予算の関係であそこにしかクレー発射機がないからである。あと地味に的も多い。

隣の小さい射撃場に行くと艦娘がごった返していた。

 

「ウォースパイト、隣失礼するぞ」

「Oh,グラーフ。そこはさっきまでリシュリューが使ってたけど……コミーの連中が引っ張って行ったしまあ、大丈夫だと思うわ。調子はどうかしら?」

「HK417の方はなかなかいい。今からP90とFiveseveNの方で試すところさ」

 

ふうん、と答えるウォースパイトは慣れた手つきで彼女の愛銃H&Hのロイヤルダブルライフルの薬莢を取り出すとマグナム弾を装填し銃身を元に戻した。的を出現させると間髪入れず二発放ち、的の頭部を吹き飛ばす。

 

「さっき隣で矢矧が九七式自動砲を撃っていたがこれはまた違った迫力があるな」

「なんでしたっけ……対戦車ライフル?」

「そうだ。二十ミリのライフルは今のご時世あまり見ないからとても興奮した」

 

相変わらずウォースパイトは興味なさげに返事をしサブのC96を取り出してクリップ毎にボディショット、ヘッドショットをやっていた。本当にこのお嬢様は好きな銃以外興味ないな。仕方ない。

 

「そういえばウォースパイト、そのロイヤルダブルライフルはどこで手に入れたんだ? 艦娘の給料じゃとても買えるものでは無いが?」

 

彼女の顔がパァーっと輝いたかと思うと

 

「私がイギリスから来た初期ロッドの一人ってのは周知の通りだけどこっちに来る前に女王陛下からこのライフルを餞別としても頂いたのよ。製造元のH&Hは王室お抱えだから、弾もあっちで作って送って貰おうかと思ってたけど明石の技術でマグナム弾からフレシェット弾、果ては対戦車弾まで出来ちゃったからそっちを使っているわ。最近調整したお陰で調子もいいわ」

 

水を得た魚か何か? そして明石は相変わらずなんてものを作っているんだ……。

 

「そうなのか」

 

それでね、とお嬢様はまだまだ続けるらしく誰か代わりに来てくれないかと切に願っていると

 

「おっじゃましまーす」

 

伊401、U-511、アクィラが入ってくる、助かった。

 

「おや? どうしたんだ」

「ゆーちゃんが射撃場行きたいって言ってたから着いてきてよ! アクィラさんは試射したい拳銃あるからって言ってた」

 

しおいの威勢のいい声の後にアクィラの間延びした声を聞くとなんか……眠気が誘われる

 

「グラーフ、見てくださいこの銃ー」

「アクィラ、一体……おもちゃか?」

 

プラスチックと思わし素材で作られた銃のようなもの……いやまてよ?

 

「もしかしてリベレーターか?」

「そうです、最近こっちの友人から貰いました〜」

 

こっちの友人と言うワードが気になるがリベレーターか。FP-45の方は形状が嫌いだがこっち若干好意が持てる。

 

「うちに3Dプリンターは無いから、この銃と薬室数個だけですけど言えば作ってくれるって言ってくれました」

「一応聞くが誰なんだその人は?」

 

秘密、と満面の笑みではぐらかされた。いやほんと不安になるのだが。

 

「兎も角、品は確かですよ? 使う弾は.45APCなのでそれなりに威力はありますし」

「そうじゃないんだが、まあいい」

 

どうせ追求しても答えてくれないだろう。しおいはレイジングブルを、ゆーはモシン・ナガンを背負ってスオミを取り出した。アクィラはカルカノM1895を持って逃げようとしたがウォースパイトに捕まった、哀れ。私はFiveseveNを引き抜き射撃する。私のもう一つのサブ、P38より反動は小さく貫徹力が高く、装弾数が多いが形状がP38よりは好きじゃない。やはりあの独特な形と信頼性は魅力的だ。FiveseveNのマグを一つ撃ち切ったのでP90を構えドットサイトを覗いく。的が素早く出るように設定し指切り射撃で胴体を狙う。一、二、三……四、五、六。六つの的を殺ったところで時間制限で終わった。本当はもう一つぐらい殺りたかったが……。今度、レイルハンドガードとアングルフォアグリップでもつけて試して見るのもいいかもしれないな。

サイトから目を離すとレイジングブルの.454カスール弾の反動に疲れたのかしおいが手をブラブラさせながらよってきた。

 

「FiveseveNは反動少なくて面白そうだけど、威力がなぁ」

「.454カスール弾の威力と比べるとそれこそ.500S&W弾や.460S&W弾とかになってしまうよ」

 

反動はカスール弾より大きいが。もしくはライフル弾。コンテンダーでもいいかもしれない。あれは単発だけどライフル弾も撃てるし。

 

「そういえばグラーフさん。最近妙な事があったんですよ」

「妙な事? 比叡の料理が美味かったとか④計画の新型空母か?」

「そうなじゃなくて参謀長の件なんですよ」

 

としおいは言う。その表情は迷ってる。

 

「私が遠征帰りで当直室に報告に行った時なんですけど、丁度執務室の前を通ったら何か聞こえてきたんですよ。あ、その時は深夜でした、長距離遠征だったので。いつもなら誰も居ないのに音がするから覗き込んだら……怖い顔した参謀長が呟きながら作業してたんですよ」

「参謀長が? あの始業時間と終業時間をもしっかり守る彼がか?」

 

仕事は早いし、作戦時以外は残業はほぼしないはずなんだが……。

 

「それだけならいいんですが、陽炎さんも最近よく何処かと連絡してるってボヤいてたんですいね。何にをしてるんでしょうか」

「案外同人活動かもしれない。彼なら締切を守るし早割りを手に入れるために努力を惜しまないだろう」

「どこかの人と違って……はいいとして、誰だっけなあ。あ、さっき要望で執務室行ったら参謀長が退出して言ったんですよ。今日って何かありましたっけ?」

 

今日? えー、と。

 

「確か南方からの輸送船がくるらしい。工廠で使う資源と南方の閉鎖された泊地から人員が回されてくるって。それの迎えに言ったんじゃないかな」

「なるほどー。いつ来るんですかね?」

「さあ、そろそろじゃないかな」

 

しおいが戻って行ったのでP90を構えてもう一度やろうよと思っていたが。

 

「いたいた、グラーフ。ゆーと一緒に外の射撃場行きましょう」

「オイゲン、私はまだP90の射撃を……」

 

ゆーが近づいてきて服の裾を引っ張り上目遣いで、

 

「一緒に行こう」

 

私を殺す気か。未だにウォースパイトに捕まっているアクィラに別れを告げ三人で外の長距離向け射撃場に向かう。

 

 

野外射撃場は古い埠頭から海に浮かんだ的を狙うだけの簡素なものだがその分、かなり狙いにくい。今日のような海が穏やか日でも四百メートル先にある一メートル四方の的を狙うのは至難の技である。

 

「Fuck、当たらないわ。M2HB-CQB使っちゃだめ?」

「駄目だアイオワ。SCAR-Hに三倍ドットサイトにマグニファイアだろ? 私のより倍率高いんだからせめて一発ぐらい当てて欲しい」

 

こうなるなら挑むんじゃなかったと言う呟きが聞こえるが私は聞こえん。

 

「グラーフ、ちょっと失礼するよ」

「ん、ああ、ヴェールヌイ。先にどうぞ」

 

SVDを構えたヴェールヌイが私の横に伏せ特長の一つとも言えるPSOスコープを覗き込んだ。彼女は三発一気に放ちどれも的に当たった。

 

「どうかなブルジョワジー。貴様らが言うコミーは的確に弾を当てられる。資本主義の用に贅沢に使う余裕はないからね」

「fuckin’Commie!」

「ワハハ、負け犬の遠吠えは気持ちいいな」

 

ヴェールヌイが煽り、アイオワが噛みつき、ガングートが更に煽る。ここではよく見る光景だ。タシュケントは大体苦笑いか薄笑いしている。

 

「まあ、アイオワはまだ練度も戦歴も少ないから仕方ないと思うわよ。ヴェールヌイなんかここの最古参の一人なんだし」

 

ヴェルの後ろに移ってきたリシュリューがフォローを出す。だいたいガングートに引っ張られてここに来る彼女は、ショーシャ軽機関銃を持っているから次にやるつもりなんだろう。

 

「そうよ、私の練度が上がれば一発必中だってやってやるのよ!」

「そのためには練習だな。熊野が7.62x51mm弾での一発必中の道から制圧射撃の道に進んでしまった以上、君がこの道の貴重な後輩なんだ」

 

最近NATO弾を使う連中は5.56mm弾ばかり使うため7.62x51弾枠は非常に重要だ。この適度な反動、5.56mm弾より強いストッピングパワー、長い射程、重さ。Alles ist großartig(全てが素晴らしい)。だから一発で敵を斃すこの道に進むんだ。ただ短距離では5.7x19mmの方が好きだがな!

 

「お、おう……まあ、頑張るわ」

 

何故かアイオワが引き気味だが、頑張ってもらおう。

さて、私はここを後ろに来たガングートに譲りオイゲンと雑談と洒落こもうじゃないかな。

 

「オイゲン、タシュケントとは何を話していたんだ?」

「7.62mmか5.56mm──あっちだと5.45mmですが──どっちがいいかなっていう議論です。私はストッピングパワーが強い反面、反動が強い7.62mmより反動が小さくバラ撒けて狙いやすい5.56mmを四肢に当てた方がいいって思ってます。タシュケントも同意見です」

「私は7.62mm派だが……近距離では同意する。と言っても使うのは5.7mmだけどな。やっぱりHK417の銃身20inchモデルは振り回すのが大変でな、12inchの銃身も買うべきだったかなあ」

 

機関銃や狙撃銃を室内で振り回すよりはマシだが選抜射手に渡されるマークスマンライフルに片足突っ込んでいるこの銃は本当に近距離が辛い。全長一メートルもあるんだぞ。P90の二倍だ。

 

「今度、銃身を短くしたカービンモデルを買うことにしたので、私はAKS-74MをタシュケントはG36Cを買うんですよ。楽しみです!」

 

私もカービンモデルを……いや、私にはP90がある。世界中の特殊部隊や様々な作品に登場しているこの名銃(とあまり売れなかったFiveseveN)があれば近距離は大丈夫なはずだ。でも、5.56mmのHK416CかM16の9mmバージョンであるRO635またはそのコンパクトモデルRO633は欲しい。非常に悩ましい問題だ。全ての銃が魅力的過ぎるのが悪い。またビスマルクや提督に怒られても知らない、私はどれか買うぞ!

 

「ワハハ、今日は調子がいいな!」

 

私の思考は運良く先程まで雨のように連射していたガングートの笑い声で途切れた。いかんいかん。このままだと衝動買いしそうだった。

 

「明石に整備して貰ったから割と調子いいんだけど……PKPはやっぱり優秀ね」

 

リシュリューがショーシャ軽機関銃のバイポッドを畳みガングートに話しかける。

 

「ああ。DP28軽機関銃もよかったが母国の新鋭汎用機関銃だけあって非常に使いやすい。整備が若干面倒だが、まあそれぐらいなら許容する」

 

ガングートはPKPのベルトマガジンを取り外しながら言う。ああ。M249ことMINIMI軽機関銃もいいな。基地警備隊も装備しているがあのフォルムは個人的に好きだ。

 

「グラーフ」

「どうしたんだヴェル」

 

彼女はトカレフをチラつかせつつまっすぐ私の側に来ると上目遣いでこう言った。

 

「さっきリシュリューや同志ガングートと話していたんだが君と拳銃や短機関銃で勝負したいって話題になってね。やらないか?」

「やろう」

 

こうして私はまた──何故かここにいた全員で──

近距離射撃場に戻るのでった。途中入港しようとする輸送船の汽笛が聞こえたが誰も気に留めもしなかった。

 

土曜午後の私たちは、やって来た輸送船の中身も知らずに、近距離射撃場へと歩を進めていったのであった。

 

 

 




二作目です。四月の終わりから書き始めていつの間にか七月になりました。まだ完結してませぇん(あとがき執筆時五万字ほど推定完結文字数六万)。正直予想以上に文字数増えて困惑してます。最初期では二万字の予定だったんだぞ。

では今回の作品説明をします。転職先(指揮官)のドールズフロントライン二次書こうとしていいネタが降りてこなかったので腹いせで書きました。艦娘×銃っていいよね。個人的にはP90推しです。丸っこくてかわいい。作中内の銃の採用理由はおいおいするとして主人公をグラーフにしたのは最近アクグラ熱が再燃したからです。アクグラはいいぞ最高だ。個人的には某ヒモっぽいらしいアクグラ描いてる人のが一番好きです。射撃場は最近機関銃が追加され始めたゲームと写真を参考にしました。

それで銃の組み合わせですが

響 SVD(20発マガジン) トカレフ
ガングート PKP M1985
タシュケント AK-47(74) マカロフ
グラーフ HK417(20インチモデル:バイポット:ACOG) P90 FiveseveN
アクィラ M1891(Moschetto Mod. 91:銃剣付きモデル) マテバオートリボルバー リベレーター
サラトガ トンプソン(M1928:50発マガジン) M1911A1
アイオワ M2HBQCB SCAR-H
プリンツ・オイゲン G36 USP
熊野 SG510-1 P226R
鈴谷 ベネリM3
陽炎 89式 9ミリ拳銃(P220)
不知火 89式(折曲銃床) PM-9
伊401 レイジングブル
矢矧 九七式自動砲 一〇〇式機関短銃
リシュリュー ショーシャ軽機関銃 ブリスカヴィカ
ウォースパイト ロイヤルダブルライフル C96
U-511 モシン・ナガン スミオ
雪風 三八式歩兵銃 南部大型自動拳銃(小型)

こんな感じです。最初の六人以外は知り合いや友人に艦娘に持たせたい銃を聞いて適当に割り振りました。海外艦娘が多いのは……まあ仕方ないね。

次回以降はほかの人達が間に合えば私個人の方で公開します。なかなかグr素晴らしいものになりつつあるので……。

長くなりましたが、続きもよろしくお願いします。


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