【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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不意打ち

その日もいつも通り、今週の残った仕事を片付け時間があったら射撃場に行こうと思っていた。そう考えた陽炎は書類作成が一通り済んで一息つこうと席を立ち窓の傍で背伸びをしていた。同僚の不知火はお茶を一服し提督は趣味であるゲームの後方支援(遠征)を回している。この窓からなら鎮守府の港湾設備を一望でき先程着いた輸送船や艦娘母艦、今や浮き砲台レベルの旧式護衛駆逐艦が停泊していた。

輸送船に参謀長と基地警備隊が近づいているのを見つけ気になり目を細める。あの輸送船は一昨日急にこちらに回航させると知らされ気になっていたが、南方の古い泊地や警備隊の引き上げだと知らせれてみんな興味を無くした。まあ、一応この鎮守府にも軍用の線路や道路があるから適任だとは思うがこんな何もない所で降ろすのかあ、と提督が愚痴っていた。迎えの車や列車も到着してないし何をしているんだろう。

輸送船のタラップが降ろされ埠頭と繋がる引き上げ部隊の上級士官らしく人が部下とともに降りて来ると参謀長がやや大袈裟な身振りで迎えた。古知かなにかかな? 二人は握手をすると……上級士官らしき人が参謀長の頭を殴った。

 

「なっ!?」

 

基地警備隊が銃を構えたが連れてきた部下や輸送船からの銃撃であっという間に斃れた。

 

「どうしました陽炎、そんなに驚いて……」

「敵襲! 輸送船から敵が」

 

振り向いて不知火と提督に伝えると同時に窓から銃弾が飛び込んできた。咄嗟に提督を倒し込んで伏せる。

 

「鎮守府総員へ、輸送船より敵襲。基地警備隊は防衛を、DEの戦闘員は武装し周辺防衛を、基地業務隊は所定の退避を実施せよ」

 

不知火がヘッドセットを付け警報を鳴らした。

 

「っち、基地警備隊は?」

「提督、これ」

 

データパッドを提督に投げつけ89式小銃と9ミリ拳銃を机の下から取り出す。上手く提督が取ったかも確認せず、不知火の折曲銃床89式と9ミリ機関拳銃も取り出した。

 

「不知火、これ」

「基地警備隊は……入口と工廠周辺のが生体反応無し!」

 

不知火は受け取って頷いたが、予想より悪い状況が提督から伝わる。一部の基地警備隊のライフモニターはもう何も出てない。

 

「ならどこにいても不思議じゃ」

 

轟音が鳴り響き、扉が破壊された気がしたから机の片側を勢いよく持ち上げて影に隠れた。銃弾が壁や机に突き刺さる。

 

「ちっ!」

 

89式のハンドガードとストックを握り横に構え机の上から出し薙ぎ払った。銃だけならまだ安全だし反動は艦娘パワーで抑え込む。

 

「グラーフ! 執務室に敵襲! 射撃場にいるんでしょ、救援を」

 

この鎮守府でも二番目に優秀な彼女に通信し、机の裏に張り付いているもう一つの銃を取った。

 

「提督、この銃なら簡単に扱えるから使って! ここで装填、ここでマガジン排出ね」

 

横にしたの影で怯えている提督にイングラムM11を渡す。.380APC弾なら反動も比較的少ないからバラ撒くぐらいは……。

 

「ちょ、私は射撃の技能赤点ぎりぎりだったんだよ? 扱えるわけ……」

「提督、やって! このままじゃジリ貧だからここをでないと行けないの。だから、殺って」

 

ノロノロと提督は銃を片手で構え、マガジンより上を出して撃ったが……反動で倒れる。

 

「危ない!」

 

提督の腕が机の影から出て慌てて引き込む。少し離れた不知火が舌打ちをし9ミリ機関拳銃で入口に制圧射撃を行い、

 

「グレネード!」

 

相手に殺られる前に攻撃手榴弾を投げた。ドンというか音と爆風が収まると射撃は止んでいた。殺ったか少なくとも戦闘不能にできたのかもしれない。

 

「移動します」

 

不知火が機関拳銃を構え入口にフラッシュバンを投げた上で飛び出した。フルオート射撃音が聞こえ生き残りを吹き飛ばしす。

 

「クリア!」

 

入口付近は制圧できたらしい。陽炎は提督の手を引き9ミリ拳銃を取り出した。

 

「グラーフ、このメッセージを聞いてたら地下シェルターM2に来て。事態をひっくり返す用意をしているわ」

「陽炎、駄目よ。妨害電波が出されているから無線は使えないわ」

 

提督がデータが一向に読み込まれない、データパッドの画面を見せてくる。

 

「ここに伝言を残しておいた方がいいわ。彼女なら必ず来るから」

 

提督はそういうと適当な紙に文を書き、デスクの裏に貼り付けた。

 

「提督、陽炎。行きますよ」

 

89式の折曲銃床のを展開した不知火が言ってくる。提督は頷き、艦娘二人で提督を挟み込むように混乱と銃声に満ちた鎮守府内に消えていった。

 

 

「なにか聞こえなかったか?」

 

弾薬庫に来て弾を補充しているとヴェールヌイがそう言って来た。

 

「私は何も聞こえなかった。駆逐艦の身体は聴力がいいから聞こえたんじゃないかな」

「そうなるとろーとしおい、オイゲンも聞こえたか。なんだか嫌な予感がする」

 

そうか?と思っていたが、艦娘に付けられている無線で意識を切り替えた。

 

「鎮守府総員へ、輸送船より敵襲。基地警備隊は防衛を、DEの戦闘員は武装し周辺防衛を、基地業務隊は所定の退避を実施せよ」

「どうやら、ヴェールヌイ。予感が当たったようだ」

「どうせならポーカーとかで当たって欲しかった 」

 

SDVのマグに弾を詰めながらヴェールヌイは応えた。ここも直ぐに混むからさっさと弾込めしておいた方がいいだろう。普段は使わない手榴弾系統も私の哨戒艦隊旗艦及び秘書艦代理の権限とヴェールヌイの最古参駆逐艦の権限を使い、ラックのロックを解除した。適当に破片手榴弾と攻撃手榴弾、閃光手榴弾や発煙手榴弾を持てるだけ持ってタクティカルベルトに装着した。マグもベストに詰めて弾薬庫を後にする。

 

「みんな、弾は大丈夫か?」

「ねえ、ちょっと待って。なんでグラッちそんなに落ち着いているの? ヤクでも決めた?」

 

あれ、なんでみんなそんなに慌ててるんだ? 私が思ってた以上に現状を把握できてないらしい。

 

「インドシナにいた時はよくあったぞ。それに白兵戦慣れしてない浮き砲台(DE)の戦闘員まで繰り出されているんだ。状況は良くないと見る。私たちも兵士の端くれだ。最悪の事態を想定して──」

 

違うそうじゃないと鈴谷が天を仰ぐが時間が勿体ないとここにいる十四人の艦娘を急かす。

 

「私とヴェールヌイは状況確認のため外に出る。弾をしっかり補充してくんだ。私の直感がそう告げている。さあ!」

 

どのみちここにいる艦娘の中では私が一番権限を持っている。艤装が置いてある工廠に丸腰で向かうよりは絶対いい。艤装がない艦娘は人間よりはスペックがいいとはいえ、ライフル弾を耐えるのは辛い。む、陽炎から最優先メッセージか?

 

「グラーフ! 執務室に敵襲! 射撃場にいるんでしょ、救」

 

ち、妨害電波か。再度接続を試みるが繋がらない。まあ、メッセージの受信が中断されてしまったが重要な部分は聞けた。……最初から陽炎に繋げばもっと状況が知れたかもしれないと今更後悔する。

射撃場屋上へ上がる途中に銃声がかなり近くから聞こえた。私は一気に階段を駆け上がり鍵を開ける間も惜しんで屋上への扉を蹴り破り、外に出た。銃声の方向──射撃場入口──を見ると四人がここの正面入口に銃弾を放っているのを確認し、躊躇い無く銃を構え、発砲する。銃弾は上手く襲撃者の胸に命中し血を撒き散らしながら吹き飛んだ。仲間の突然死に驚いた連中の頭を狙い、一、二……。三人目はヴェールヌイが取って行った。久々のキルスコア追加だが喜んでいる暇も無く途切れ途切れの通信が聞こえる。

 

「グ、……こ……セージを……たら……M……に……態をひっ……す」

 

おそらく増幅器を使った陽炎の声だが、何がなんだがさっぱり分からない。こちらかも呼びかけるが反応は無い。

 

「思ったより状況は……悪そうだな」

「グラーフ、下の警備兵は駄目だったよ。周辺を確認する。五分内に帰ってこなかったらMAIにしてくれ」

 

下にいたヴェールヌイが部隊無線で話しかけてきた。この距離ならまだ使えるのか。ガンマニア警備兵は死んでしまったか……惜しいやつを無くした。

 

「ヴェールヌイ。調べるのはいいが、せめて生きて帰って来てくれないか? ガングートとタシュケントに殺される」

「そしたら、アクィラやビスマルクがタシュケントやガングートを殺して鎮守府内戦になりそうだ。見れないのが残念だよ。じゃあ、行ってくる」

 

ヴェールヌイの小柄な体に身長よりちょっと小さいSVDを持って建物の角に消えていった。

鎮守府入口付近や工廠、輸送船周辺で銃火が見える。 艦娘宿舎にいるみんなが心配だが無事を……ん? DEの高性能20mm機関砲(CIWS)が稼働しているのが目に入った。ここからDEまでの距離は近く、後部甲板に置かれているCIWSはよく見える。既に輸送船から少し離れたDEでは銃火は見えず、誰か動いている様子もない。CIWSが射角を調整すると20mm機関砲を艦娘宿舎に対して掃射した。

 

「な!?」

 

あまりの出来事に思考が停止したが、CIWSの音が途切れた際に復活する。なんてことを……止めろ! ここからDEまで約1km、このスコープでは狙えないが一応有効射程である。二度目の射撃を開始したタイミングでHK417のバイポッドを立てスコープを覗かず角度を付け射撃した。最初の一発目からDEの後部構造に命中し火花が見えた。少しだけ角度を低くしめいっぱい反動を殺して射撃をする。CIWSのレードームや銃身に火花が飛び散るが射撃は止まらない。一マグを撃ち切り、再度装填して全弾叩き込んだが、まるで効果はなかった。やがてもう充分と判断したのかCIWSは射撃をやめ静止する。1000発近い高速徹甲弾を喰らった鉄筋コンクリート造り艦娘宿舎は見るも無惨な程破壊されていて崩れていく。

 

「Ficken!」

 

拳を握りしめ屋上に叩き付ける。ちくしょう、何もできなかった……何も。友人が目の前で殺されたというのに……。私は膝を抑え屋上の塔屋の壁を支えによろよろと立ち上がった。そうだ、私はまだやる事があった。提督を守らなければ、この悪逆非道を行った連中を始末しなければ。

復讐は何も産まないとよく言われるが、そんなことはなかった。私の中に行動力が産まれた。

 

「こちらヴェールヌイ。射撃が止まったのを見て警備兵の一部と基地業務隊が救助に向かっているけど……どうする?」

「20mm機関砲のAPDSだ。あれだけ蜂の巣にされれば……クソ……ってやる」

「なんだって?」

「やってやる。私が無力だから死んだ友人の為にも」

 

 

 

下に降りて屋上で見た出来事を話すと皆悲しんだり、激しい憎悪心が渦巻いたりしていたが復讐するという点では同意見だった。上級士官の誰とも連絡が取れないため秘書艦代理権限で私が提督救援、工廠確保、支援の為にここのメンツを三つに分けた。提督救援はともかく工廠確保は誰か一人でも艤装を手に入れればこっちのものだと、志願者がいたため許可した。支援は重機関銃と自動砲を抱えてはまともに動けないのと、屋上にスナイパーが湧かれたら困るので残って貰った。結果、私がアクィラ、サラトガ、ガングート、タシュケント、ヴェールヌイを連れて救援を。リシュリューが鈴谷、熊野、オイゲン、ゆーにしおいを率い工廠を。アイオワと矢矧は重機関銃で支援、ウォースパイトと雪風が護衛に着いた。

全員で簡単なブリーフィングをしてから私が率いる面子で寄りあった。

 

「私は別に今回死ぬなとは言わないが、提督の救援を最優先に行え。それだけだ」

「グラーフ、少し待て」

 

ガングートに肩を掴まれ振り返る。手で払い除けてもよかったが、何か言いたいなら今のうちに聞いておくべきかと判断した。

 

「怒りに飲まれるな。私から見ても今のお前は突っ込んで野垂れ死にそうだ。せめて我々を頼ってくれ」

「怒りに飲まれるなだと!? あれを直で見た私に言うのか! 私の目の前でみんなが虐殺されたんだ! それなのに」

「それは全部お前の責任じゃあ──」

「ガングート、ちょっと待って。グラーフ、なんでも貴方の責任ではないと思うのよ。今回の件だって誰も防ぎようがなかった。そう思って」

 

ガングートが押しのけられ、アクィラにそう懇願される。彼女の目は潤んでいた。

 

「アクィラ……分かった。CIWSの件はそう考えるよ」

「グラーフ」

 

そうじゃないと言いたげにアクィラは顔を俯かせ私の手を握ってきた。ああ、言いたいことは分かっている。

 

「分かっている。分かってはいるんだ……だが提督まで失いたくない! 私からの我儘だと思って聞いてくれ。できる事はこの身が朽ちてでもする。それだけだ」

 

アクィラは手を握ったまま、肩を落とし俯いた。そのまま何かを呟くと顔を上げ彼女の──珍しい──キリッとした表情が目に入った。

 

「なら、アクィラはグラーフを支えるわ。貴方が朽ち果てない為にも」

「アクィラ……」

 

願う事なら彼女と一緒に──。

 

「ん、ん」

 

サラトガが咳払いをしてそっちを見ると若干怒っている彼女と、困った顔をしているロシア組──タシュケントは笑顔だったが──が居た。あ……恥ずかしい。

 

「アクグラタイムはそこまでにしてそろそろちゃんと最終確認しましょう?」

 

サラトガは手を何度か叩きながら言ってきた。アクグラタイムについて突っ込みたいが正直、かなり恥ずかしい。帽子のつばを握り……まだアクィラが手を離してくれないことに気が付いた。

 

「その……アクィラ、手を離してくれないか? 恥ずかしくて……」

「グラーフ、死なないでね」

 

潤んだ目で上目遣いされた。彼女の為にも生きなければ……腕や脚がもげても生きてやる。

 

「グラーフ、さっさと準備して」

 

サラトガに頭掴まれ強制的に彼女の方に向かされる。あ、これは怒っているな。本当に済まないと謝っていたら、アクィラはガングート達の方に行っていた。

正直、恥ずかしかったら行ってくれたことは嬉しいが……。まあ、切り替えよう。再度私の得物、HK417とP90、FiveseveNの調子を確認する。7.62x51mm弾があと八マグだが……5.7mm弾の方があるから充分か。HK417とP90は少々危険だが、コッキングレバーを引いて装填した状態で安全装備をかけた。どちらかというとシングルアクションの武器に向いたテクニックだが、直ぐに撃てるという点はいい。

準備が整った我々は円陣を組み互いの顔を見合った。

 

「グラーフ・ツェッペリン、準備よし。いつでも行けるぞ」

「ライフルも手榴弾(OTO M35型)もばっちりね。アクィラ準備よしです」

「サラトガ、出撃します。さて、死にたい奴はどこかしら」

「ガングート、出る。殲滅させようじゃないか」

「タシュケント、弾の用意はできているよ。行こうか」

「ヴェールヌイ、出撃する。頭をぶち抜いてやろうじゃないか」

 

各々が銃を掲げ、心が通じあった。他も同じような雰囲気でみんな決意に満ちていた。射撃場外での待ち伏せを考慮して布陣を整えていると支援隊のスポットマン役、雪風が射撃場屋上にこっそり出て外の状況を伝えてくる。

 

「えっと、正面道路に約一個小隊分の武装集団。警戒して進んでいますが、訓練がなってないのか散開しているだけです」

「そうか。なら、Iowa。矢矧と一緒に初撃を任せる。リシュリュー隊は裏口から先に出てくれ。私は正面から引きつける」

 

リシュリューが頷くと六人が裏口に回り外に出た。残りは予めカーテンをしていた正面を向いた窓に張り付いて射撃の機会を伺う。こっそりカーテンの隙間からACOGサイトを介して見ると服装がばらばらで艦娘登場直前に大量に作られた89式小銃の簡易生産型とゲリラ大好き途上国も大好きなAK-47の……56式小銃、中国で生産されたと思わしき物を持っていた。顔立ちはインドシナ系の顔、フィリピン系もいたが日本人が多い。正規軍でも、傭兵とも思えない感じから反艦娘組織か深海棲艦信仰の人間なのかもしれない。服装もばらばら、ただ殺したいと思っているような目、最低限しか訓練を受けていないと思える行動からそう判断する。

しかし、こんな連中にここまでこの鎮守府がやられるのか? そこそこ優秀な基地警備隊だって居た……いや銃声が聞こえるからまだ居るのか? まあ、そこはいい。ゲリラやテロリストに負ける程弱くは無いんだが……ここに有能なのが来てないだけかもしれない。敵を削れることはいいことだし考えても仕方ないか。

 

「こちらリシュリュー。配置完了」

「了解、敵先頭があと十メートル進んだら始めよう。各員、射撃用意」

 

既にここと敵との距離は110メートル程とかなり近い。いや、短機関銃にとってはちょっと遠いか。ショットガン勢はマグナム弾かスラッグ弾を装填しているから問題ない。まあ、リシュリューなら上手くやってくれるだろう。

 

「Iowa、矢矧、合図で撃て。射撃後各員自由射撃……撃て」

 

ブローニングM2重機関銃(M2HB-QBC)のやや重い連射音と九七式の重い射撃とともに敵が数名弾ける。直後に様々な銃の射撃が聞こえ私も負けじと撃つ。前方にいた敵は直ぐに建物の影に隠れるが、半分は既に死んでいた。私は隠れようと走っている奴の脚を撃ち、両手を潰した。これで捕虜に出来そうなのが一人。機関銃や自動砲といった近距離が苦手な連中に支援を任せると私はP90を構え捕虜を取るために射撃の割れた窓から飛び出した。

 

「突撃!」

 

アクィラ、タシュケント、サラトガが共に突撃し、ブリスカヴィカを構えたリシュリューとしおいが、G36を構えたオイゲンとゆーが両脇に回った。制圧射撃の効果は凄まじく頭を出した馬鹿な敵は即死する。敵は建物の影から銃だけを出して撃とうとしたが誰かの──おそらくヴェールヌイの──射撃によって銃を落とした。

艦娘の身体能力をフルに活用し銃弾を避けながら敵の真横に躍り出ると、愚かにもあんぐりと口を開けている敵がいたのでその口めがけて5.7x28mm弾をお見舞した。数発が口内や頬に命中し出血しながら口から上が切れる。続いてやってきたアクィラがカルカノM1891の銃剣を建物に張り付いていた敵に突き刺し、咄嗟にマテバオートリボルバーを取り出して.454カスール弾をさらに奥にいた敵に放った。私はP90を構り二人目の胴体に射撃を行い屠り、裏から回ってきたリシュリューとしおいが一人ずつ倒した。残った一人は銃を捨てて両手を上げようとしていたが。

 

「撃た、ギャアアアア」

 

アクィラが腕を、私が脚を撃ち行動不能にする。反対側の隠れた敵も制圧されたようで残念ながら全員死んだらしい。

 

「タシュケント、私がさっき止めた敵を尋問してくれ。口を割らなかったり所属を言わなかった場合は自由にしろ。どうせハーグ陸戦条約で定められている交戦者資格の四条件のうちの一つ、遠方より認識し得へき固著の特殊徽章を有することを満たしていないからどうやっても構わない」

「了解、グラーフ。ソ連仕込みの尋問をやろうじゃないか」

 

さて私はさっさとこいつの情報を取り出そうじゃないか。しおいが慣れた手つきで簡易的な止血を施し尋問に耐えられるよう壁にもたらせている。

 

「サラトガ、何かあったか?」

 

ポケットやらなんやらを弄っていたサラトガに聞く。アクィラも死体を漁っているが何も無いようだ。

 

「これだけよ。かなり精密な鎮守府の地図。身分証明書や命令書は無し」

 

手渡された地図を確認すると鎮守府職員、しかも上位のものではないと手に入らないような地下道まで書かれた地図だった。これはやばいかもしれないな。下の兵までここの地理を知っているとなるとホームグラウンドにも関わらず奇襲を受けそうだ。硝煙臭い手を口に当て考えているとサラトガが名前と所属を聞き出しメモを取っていた。質問の度にトンプソンのまだ熱い銃身を突きつけている。

 

「主は? 民兵でしょ?」

「ひっ、ホーチミンにいた時に雇われたんだ! 雇い主は知らねえ! 俺たちはいつも代理人を介していて、ギャアアアア」

 

サラトガが右足の銃創を蹴り上げた。おお、怖い怖い。私は痛みにのたうつ敵の頭を掴みこちらに向けさせる。

 

「知ってることは全部話せ。その方が楽だぞ」

「ここにいるお前達を殺れってしか言われていないんだ! ほんとだこれで全部」

「なら用は済んだ」

 

私はFiveseveNを取り出して脳天目掛けて一発放った。敵はこと切れ倒れただの物と化す。

FiveseveNをレッグポーチにしまい込み中長距離戦を考慮しHK417を背中から取り寄せてタシュケントに通信をした。

 

「タシュケント、そっちはどうだ?」

「駄目、何も知ってないね。かなり精密な地図はあったけど」

「それならこっちにもあった。……早急に救援に向かった方がいい気がする。急いで鎮守府司令官官舎に向かおう。ガングート、ヴェールヌイ。情報共有が済み次第提督救援に向かうぞ。来てくれ」

 

リシュリューも横で同じように招集をかけ情報を共有していた。私も時間削減の為通信で済ませるとロシア勢が集まった。

 

「全員集まったな。状況は思ったより悪いようだから直ぐに向かうぞ。ツーマンセルを組んで建物の影を進め」

 

ああ、そうだ忘れかけていた。

 

「アイオワ隊、官舎周辺と工廠方面をどちらかが狙えるように適当な建物に移ってくれ」

「OK、ツーマンセルで二つの建物に入るわ」

 

通信を終えタシュケントを先頭にガングート、サラトガ、ヴェールヌイ、アクィラ、私の順で進んでいく。ガングートが進み出したあたりでリシュリューから声をかけられた。

 

「ねえ、グラーフ。別に殺さなくても」

「あの男はどうせ放置すれば死んでただろう。私は早く楽にしてやっただけだ」

「そう……」

 

リシュリューは落胆した様子で彼女の隊とともに工廠に向かっていった。アクィラがこっちを見ていたが急かして先に行かせ私が彼女の後ろを警戒する。

鎮守府の中心にある官舎に向かうにつれ戦闘の跡や職員や敵の死体がよく見られるようになり基地警備隊と敵の銃声もよく聞こえるようになって来た。開けた場所、特に道路では奥の方にポツポツと敵らしき影が多数見えたが救援を優先して射撃はしない。誰もが報告以外は無言で進み、今隠れている建物の反対側に官舎があるので建物の中を通った。中にいたであろう職員は死んだがか逃げたようで死体はそんなになかったが資料や書類を漁った跡が見て取れた。割れた官舎側の窓からそっと様子を伺うと見える範囲で二十名程の敵が官舎の周囲を囲っていた。

 

「思ったより量が多いな。私と同志達を上に上がらせようと提案するがどうか?」

 

ガングートもこの状況を見て提案してくる。確かに機関銃やアサルトライフルの上からの掃射はかなり効果が出るしヴェールヌイの腕を考えれば狙いやすい上から撃つのもありか……。

 

「ガングート、行ってくれないか。こちらから手榴弾を投げるからその爆発と共に撃てばかなり有利になると思うんだ」

「ああ、我ら赤軍に期待していてくれ」

 

PKPを担ぎながらそういうとヴェールヌイ、タシュケントを引き連れ二階や三階に登って行った。私はアクィラ、サラトガを建物一階の両端に、自らを中央に配置して見えてる敵の多くを撃てるよう心がけた。腰に下げたM24柄付手榴弾(ポテトマッシャー)を取り出して、アクィラ、サラトガとともに投擲する。狙った通り敵のど真ん中かつ上半身の高さで炸裂したそれは衝撃で数名をなぎ倒し人体の破片が飛び散った。サラトガの投げたMk2破片手榴弾(パイナップル)は破片で敵一個分隊ほどを切り裂き死傷させた。一方アクィラのOTO M35手榴弾(赤い悪魔)は衝撃作動式信管を付けているが、地面に当たった瞬間ではなく一拍遅れて炸裂する。敵に気付かせるという恐怖心を煽った結果かどうかは知らないが死傷者以外に腰を抜かした者もいる。私が窓から身を乗り出して撃とうとすると、階上からロシア系の銃撃音が聞こえた。目の前の一番大きい敵集団でいくつもの血飛沫と砂煙が上がり当たった箇所を抑えて倒れ込む者がいた。私は確実に殺すために狙いをつけたがカルカノM1891を操るアクィラに先を越された。

サラトガは既に窓から飛び出して腰だめでトンプソンを連射している。仕方なく私はバイポッドを立て奥から爆音や銃声を聞いて駆けつけた兵に狙いを付け、引き金を引いた。ただただ真っ直ぐ向かってきた無能者の頭が弾けてピンクの霧ができた。その亡骸に躓いた敵を撃って後を追いながら、状況を確認する。既に敵は半壊し逃げ出している。なんだ、こんなものか。さっきの連中と大差がない。

 

「グラーフ、多分だけど今銃声がよく聞こえる工廠の方に精鋭が行ってると推測するわ」

「そうだな、サラトガ。私も同じことを考えていた。リシュリューには悪いが、提督を救援するには好機だ。急いで官舎の中に入るぞ」

「了解、同志、降りるぞ!」

 

私が官舎側の入り口から出ているとロシア勢が三階から飛び降りてきた。ガングートは身体の性能を使い膝と腰で踏ん張り、タシュケントは柔軟に受け身を取り、ヴェールヌイは音もなく降り立った。

 

「ニンジャか」

「グラーフ、これくらい古参艦娘にはできて当然さ。君も練習するといい」

 

TV-33(トカレフ)を取り出した彼女はそう受け答える。古参艦娘でもそんなのできるのはうちのヴェールヌイだけだと思うなというアクィラの呟きを無視して私はP90を構える。私のHK417、ヴェールヌイのSVD、ガングートのPKPはどれも一メートル以上の長さがあり室内での取り回しは悪い。だからP90、トカレフ、ナガンM1895を使う。拳銃やサブマシンガンなら室内では取り回しが良いため急な遭遇でもなんとかなりやすい。

 

「アクィラも、カルカノじゃなくてマテバオートリボルバーにします〜」

 

銃剣でも……いや、この話はやめておこう。ツーマンセルを再度組み直して私とアクィラは裏口から慎重に戦闘で変わり果てた官舎に入っていた……。

 

 

 




早くみんな原稿終わらせてー

銃撃BGMはこの作品のいいBGMになります。
殺したいけど幸せにしたい艦娘っていますよね。私は今回最後しか出番のない金剛でした。グラーフはちょっと違う。何かを失ったまま死んで欲しい。
416ちゃん可愛い。発注されたしM110A1は実装されませんか? 最推しはMG5だがな!

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