【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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ここら辺からグラーフで書くのがすごい楽しかったです
※七話の前書き後書きを間違って入れていましたすみません(修正日9/1)



摩耗する心

日の傾きが大きくなってきた午後の一時。鈴熊の最後を通信で聞いていた、DEの最後を射撃場の屋上から見ていた私は膝から崩れ落ちた。

 

「こんなことが、あってたまるか……」

 

あまりにも生々しく、そして劇的に散っていった二人の最後に私は耐えきれない。心を支配する怒りと悲しみを出すために何度も、何度もコンクリートを右の拳で叩いた。しかし、やってすぐ後悔する。怒りはある程度出ていくが悲しみがその開いた場所を支配していった。一体何故、あの二人はDEの主砲を使おうと思ったんだ、何故逃げずにあそこで死ぬことを選んだんだ、何故あんなに幸せそうだったんだ……。

答えは出ないまま、私は顔を上げみんなを見た。アクィラは静かに泣き、ヴェルは懐から取り出したウォッカを呷っている。いつの間にか来ていたサラトガは燃えゆくDEを見つめ、ガングートは彼女の性格なら直ぐに復讐だと叫ぶところだが、パイプを吸い辛気臭い顔で煙を吐いた。その代わりかどうか知らないがタシュケントは逆に復讐に囚われている。

全員、今日の戦いで傷を負いすぎたのだ。深海棲艦相手ではなく、人類の内ゲバで仲間を失えばこうもなる。無駄なほど冷静になって考える頭に嫌気がさし、私は立ち上がりもう一度、大破したDEを見る。まるで墓だ。オルガン型の墓ように見える。鈴谷と熊野よ、安らかに眠れ(Ruhen in Frieden)。ん、熊野……。

 

「私は、まだやることがある……」

 

彼女の遺言を思い出した。提督の救援を彼女は望んでいた。こんなことをしている場合では無い。くそ、少しでもいいから休めれば……。

私はHK417の状況を確認する。コッキングしていなかったのでコッキングハンドルを引いて初弾を装填し、セレクターをセーフに切り替えた。表情を切り替えるため一度、硝煙臭い手を顔にあて拭う。

 

「みんな、辛いのはわかるが提督の救援に行かないとならない。悲しむのは提督を救ってからだ」

「……ああ、そうだね。落ち込みすぎるのは良くない。同志ガングート、同志タシュケント。終わったらいいウォッカでも取り寄せよう。傷を癒すのにウォッカはちょうどいい」

「同志ちっこいの……ありがたいが貴様がアルコール依存症とやらにならない事を祈る」

 

ガングートがヴェルからウォッカを受け取り一口含んでからそう言う。タシュケントは敵を殺せると思ったのか喜んでいるが、このままだと何も考えずに突っ込んで行きそうだ。どうしようか考えあぐねてるとガングートが近寄りその頭を叩いてから鷲掴みにし思いっきり撫でた。

 

「ちょ、同志ガングート。何するのさ!」

「同志タシュケント、そうかっかするな。そのままだと直ぐに突っ込んで死ぬ新兵と一緒だぞ」

「そんなこと無いよ。ちゃんと冷静に対処できる」

「本当か?」

 

ガングートが叩いた際に落ちたタシュケントのパパーハを拾い上げ手で回す。

 

「……そんなに酷かったの?」

「このままだと直ぐに死ぬなと思うぐらいには」

 

自分の予想以上だったのか、タシュケントは前髪を手で掬った。

 

「私もそう感じていた。ガングートもそうだが、復讐復讐と叫んでいるのが制御できているうちは一種の闘志になるが、呑まれてしまうと劇薬に様変わりする。呑まれて死んで行った艦娘は……結構な数になるだろうな」

 

南方にいた時も、果てはドイツにいた時もそういう風に死んで行った艦娘は見た。仲間が殺され、復讐に呑まれ死んでいく。深海棲艦ですらそのような行動を見せる。特に鬼姫級ではよく見られるという報告書を見た。双方が復讐に囚われて、まもなく深海棲艦側の敗戦で終わりそうなこの戦争の、一体どの時点で復讐は消えるのだろうか。

 

「はぁ……。ん、よし」

 

タシュケントが頭を振り、頬をペシペシと叩いた。パパーハをガングートから受け取り彼女の頭に収まる。

 

「もっと落ち着いて行かなきゃね。ありがとう、同志ガングート、同志グラーフ」

「その力を存分に発揮してくれ。何れは祖国の為に」

「うん。頑張るよ」

 

タシュケントは表面上は顔が良くなり、ヴェルとともに先に下に降りて行く。私は彼女を引き留めようとするがガングートに肩を捕まれ邪魔をされる。何故、という顔を向けると俯いた表情で頭を振っていた。二人が見えなくなると同時にガングートに向き合う。

 

「あのままでは突っ込んで死ぬぞ。何故引き止めなかったんだ」

「熊野が送ってきたレポートを見たろ? あの中にあったオイゲンの最後を見てタシュケントが正常でいられると思うか? 私は無理だと思うな」

「う……」

 

オイゲンとタシュケントは仲がよかった。友達以上に。それこそ、私で考えればアクィラを失ったようなものだ。……ああいう風に振舞っているだけ私より強いのかもしれない。

 

「そう心配しないでくれよ。私が見て引き止める。だからグラーフは空母組をなんとかしてくれ」

 

ガングートが指さした方を見るとまだ燃えているDEを見つめているサラトガと泣き止んでいるがどこか虚ろな表情をしたアクィラがいた。ガングートに目をやると彼女は頷き、私は頷き返した。彼女が階段を降りたのを見て私はサラトガとアクィラに話しかける。

 

「二人とも……大丈夫か?」

 

言葉が出ずこんなことしか掛けられなかった。そのことを悔やんでいるとサラトガがDEから目を離さず口を開いた。

 

「彼女達にとってあの最後は幸せだろうけど、私にとっては幸せでもなんでもないわ。私はハッピーエンドが好きなの」

 

サラトガはマグを抜いたトンプソンを構えDEに狙いをつけるフリをする。弾は抜いたのか入っていないがチャージングハンドルを引き、ボルトを後退させる。サラトガがトリガーを引くとボルトが前進し部品がぶつかり合う金属音が響いた。

 

「サラトガ、それは少々強引じゃないか?」

「サラはアメリカンよ。自分の正義を追い求めるわ。だから提督を救うと共に敵を殺す」

 

彼女の目は力強く、燃えていた。そんな目を見せなくでくれ。何も言えなくなってしまう。目を合わせ続けるのができなかった私は目を逸らし、帽子の唾を掴み目深に被るようにずらした。

 

「……わかった。私から言うことは何も無い」

「ふふ、サラの実力、とくとご覧あれ」

 

サラトガはこちらに迫ってくる。流れるように帽子を取り私より少しだけ高い身長を有効活用して額にキスをしてきた。

私が突然のことに唖然としたが、右後ろにいるアクィラに見られていることだけはわかった。サラトガは目を細めると帽子をアクィラに投げ渡す。

 

「Good bye.」

 

彼女はそのまま、下に降りていった。怖くて振り向くことができない。アクィラが動き背後に迫ってくるような気がする。意を決して振り返ろうとしたら、ポスンと帽子を被せられた。予想外の行動に目を開いてしまい振り込む。泣き止んだアクィラが微笑んでいるのが目に入った。彼女の顔には涙痕が濃く残っている。

 

「どうしたん……だ」

 

アクィラが背伸びをして一瞬だけキスをしてきた。私は無意識に呼吸を止め唇に左手を当ててしまう。左手手袋についていた血糊の感覚と匂いに顔を顰めアクィラに目をやる。

 

「嫉妬か?」

「ええ、ヘルキャットをよく載せてる彼女に盗られたくないから」

「サラトガはそこまで性悪女ではないだろう」

 

胸に飛び込んできたアクィラを抱きしめながら言う。心無しか彼女の体はさっきよりも冷たかった。

 

「まあ、そうですけど……」

 

一瞬、このままここからアクィラとともに逃げろという悪魔の囁きを耳にした。彼女を危険な目に合わせるな、共に逃げて生き残れ、と。甘くねっとりとした匂いを嗅いだ気がした。当然、次の瞬間にはそんな匂いは消えていた。

 

「グラーフ?」

 

怪訝な表情で覗き込むアクィラの目を見て、正気になった。甘い思考に傾きかけたがまだ提督を救っていない。軍はあの人を失う訳には行かないだうし、私も彼女を失うことに耐えれない。そして、熊野の遺言を蔑ろにする気はない。

 

「ああ、大丈夫だ。何も問題ない」

 

本当に? とアクィラが目で訴えてくる。その目を覗き込み大丈夫だと伝えると不満げな顔をしながら彼女は離れた。

屋上に立て掛けてあったカルカノM1895を彼女は手に取り、ボルトハンドルを起こして引いた。覗き込むと、空になったグリップを押して下から抜き出す。新たなグリップを取り出し弾倉に6.5 mm×52 マンリッヒャーカルカノ弾をグリップごと六発装填する。ボルトを押して倒すとこちらを見てまた微笑んだ。

 

「アクィラもちゃんと戦います。ついて行くだけじゃなくて、戦います。涙が枯れるまで悲しんだからもう大丈夫。今はただ、一緒に提督を救うだけです」

 

先程までとは違い、しっかりとした目で私を見てきた。サラトガのせいで何か吹っ切れたのかもしれない。

 

「……今度」

「繋がった! グラーフ!」

 

口を開いた瞬間、陽炎からの通信が突如繋がった。私は突然のことに一瞬固まるが、繋がったという事実の重要さに押され直ぐに返信する。

 

「陽炎、提督は無事か? 今までどうしていたんだ」

「無事! 不知火も大丈夫、……っとシェルターWには」

「ああ、さっき行ったぞ」

「なら伝言は見たね。今私達と提督は通信のため地下道を抜けてシェルターW2まで退避したけど追撃を受けている。まだなんとかなってるけど正直ジリ貧なの 。こっちに来れる?」

「ちょっと待て、それはどこだ」

「新設の代用設備! 」

「そこか」

「30分なら持つけどそれ以上はきつい。っく……」

 

響き渡る銃声を聞きつつ頭の中で必死に代用設備へ向かうルートを辿る。

それなりに離れている上、地下道を通らない限り線路を横断しないと行けないのが怖いところだ。地下道を通るか地上を通っていくか。私が知っている範囲だと地上を通った方が確実に早い。しかし地下道を通った方が安全だ。多少無理してでも速さを取るべきだと直感が囁いた。

 

「わかった。今射撃場にアクィラ、サラトガ、ロシア勢とともにいるから六人でそちらに向かう」

「りょーかい。なら……提督? わかった。少し提督に代わるわよ」

 

みんなに伝えるため階段を降り始めた私は足を止め少し戸惑う。確実に言い難いことを聞かれるそう思から。私は切ろうと考えた声に出そうとするが陽炎は返事を待たず提督に代わった。

 

「グラーフ、無事でいて嬉しいよ」

「提督……」

「一つ聞きたいんだけど、ほかのみんなは大丈夫?」

 

ドスンと深海棲艦機の急降下爆撃を喰らったような衝撃を心で感じる。やはり来てしまったか……。私達を人間と同じように扱ってくれる優しい提督なら聞いてくると覚悟していた。本当のことを言おうとも。しかし……。

 

「大丈夫だ。私の仲間を傷つける者は誰であれ許さない」

「はぁ、よかった。グラーフ、よろしくね」

「ああ、待っていてくれ」

 

じゃあね、といい提督は通信を陽炎と変わった。既に私のレポートを読んだであろう陽炎に言うことはないかと私は思考を巡らす。少しでも気を逸らさないと。

 

「グラーフ、期待して待っているからね」

「待って、一つ聞かせてくれ。ふと、思ったんだが提督以外の司令部要員はどうしたんだ」

「死体は見てないけど提督補佐官(参謀長)は多分死んだ。他は……」

「多分?」

「レポート読んで」

 

敵を殴られたのを遠くで見ただけか……残虐非道な敵に囚われては軍人とはいえ長くは持たないだろう。

 

「読んだ」

「質問は後で、ちょっとやばい。……提督に本当のこと後で言ってね。じゃあ」

 

陽炎の追い打ちで舌がもつれ返事はできない。心の中で後悔の念が渦巻いている。何故正直に言えなかった、何故後で苦しむとわかっていて言わなかった。失望されるのが怖い、彼女が悲しむのを少しでも遅らせたい。所詮一時しのぎだと頭では理解している。

 

「グラーフ、なんで」

「やめてくれ。それ以上は言わないでくれ。分かっている、理解はしているんだ……」

 

アクィラの目を見れない私は手を上げて彼女を止めた。またあの甘い匂いを嗅いだら私は耐えきれない。逃げるように階段を降りていく。

結局二人とも口を開かないまま、みんながいる射撃場一階の休憩室に辿り着く。全員が自身の得物を握り、私の命令を待っている。私は後悔などしていないかのように、いつも通りに振舞った。

 

「先程、提督達との通信が回復して救援を求められた。提督達は今新設の代用設備にいる」

「それはどこにあるんだ?」

「鎮守府北西にある最近増設された海軍予備司令設備がある建物だ。万が一、横須賀と市ヶ谷が使えなくなった時のために関東、中部、東北南東部に置ける指揮の代替設備のひとつとして、鎮守府内に乗り入れている貨物駅そばに作られた」

 

ああ、そこかとヴェルとタシュケントは言うがガングートとサラトガはしっくり来てないようだ。仕方ないので休憩室内にあった基地の航空写真を見せて説明する。

 

「この空き地に建てられた建物だ。正直、陽炎から30分以内に来てと言われ時間がないため多少危険だが地上を駆け抜ける。ルートは適宜判断するためこれ以上の説明は無いが質問はあるか?」

「提督の救援と、艦娘の保護とどっちが優先かしら?」

「……救援だな。私達の代用は効いても戦略家の代用は効かない」

 

サラトガは私の言葉に満足げに頷く。他に質問がないかと見渡すと全員が、アクィラも含めて決意に満ち溢れて目をしていた。救うという使命と嘘を付いてしまい会いたくないという感情に私は揺さぶられるが会いたくない感情を底にしまい、表情を取り繕う。

 

「それじゃあ、準備はいいか。では」

「ちょっと待って、なにか聞こえる」

 

ヴェルが口に人差し指を当て耳を澄ませていた。口を開こうとしたガングートを右手で抑えヴェルをじっと見る。

 

「プロペラ音、多分複数だ。」

「ヘリか?」

「ん……ブラックホーク系列では無いね。聞き覚えはあるけど」

 

援軍だといいけど、とヴェルが呟く。援軍だとしてもまた対空ミサイルで迎撃されないといいが。

 

「聞き覚えだと? 艦娘の艦載機か?」

「いや、違うね同志ガングート。それよりも重い。どこで聞いたか……」

 

ヴェルが目を細め記憶を辿っている。時計を見て私は決断するとヴェルに声を掛ける。

 

「時間が惜しい、外に出て進みながら確認しよう」

「……ああ。そのうち見えるだろうしね」

 

仕方ないと言いたげにヴェルはため息をついた。

急ぎ外に出ようと扉が開けなたれている玄関に行くとプロペラの音が聞こえた。これは……確かに聞き覚えがあるな。ああ、あの機体か。

 

「これってMV-22じゃないか? 最近陸軍だけじゃなくて海軍にも多く回ってきた機種だ」

「Ospreyなら最近、この基地に物資輸送で何度か来てたのを見たわよ」

「なら、その時に聞いたのかな」

 

部品の生産ラインや政治的問題で海軍には極小数しか配備されてなかったが米国との海上航路安定化に伴い多数導入されたはずだ。しかし何故……。

考えながら上半身だけを晒して射撃場の外を確認するとやや遠くに敵が数人見えた。ここからまっすぐ伸びる道の突き当たりで5.56x45mm NATO弾では有効打が出ない距離にいる。しかしながら、こっちを見ていたのか89式小銃を持っている奴らは撃ってきた。

 

「何を馬鹿なことを……」

「無駄だね」

 

私が何も言わなくてもヴェルが外に躍り出て片膝をつき膝射を行う。アクィラがカルカノを操り一人倒した。

 

「アイアンサイトなのによく当てたな」

「グラーフに自慢できると思って頑張りました〜」

 

なら私も負けていられないなと、仲間の死体に伏せ隠れて被弾を避けようとする敵に狙いを付けた。うまいこと死体が重なったことを利用し隙間から銃身だけを出して撃ってきている。やつの頭がどこにあるか、どこを狙いば一発で致命傷を与えられるかを瞬時に計算し、微妙に狙いを修正して引き金を引く。7.62x51mm NATO弾がその豊富なエネルギーを使い死体をぶち抜き生きている敵に命中する。ここからだとどうなったかよく見えないが、死体の奥から大量の血飛沫が上がったあたり致命傷を負わせたかもしれない。発砲音が聞こえなくなりプロペラ音がさらに大きく聞こえるようになった。

 

「どうだ?」

「ちょっと待って」

 

ヴェルがSVDを背中に吊しその身軽な体を活かして雨樋を掴み玄関の軒庇にスルスルと登っていく。飾り気のないコンクリート製の軒庇の上に伏せるとSVDを構えてスコープを覗いている。

 

「前方の敵……隠れていた敵は首が切れている。ほかの敵も死んでいるようだ」

「わかった。それじゃあ」

 

私の声をかき消すように轟音が流れてきた。急に流れてきた轟音、いやプロペラ音の音源のへと首を向ける。MV-22三機が陸側のここから二キロメートルと離れていない場所に佇んでいる。違う、こっちに向かってきている。逆光でよく見えないため私は急ぎスコープを覗き込んで確認する。

 

「多分海軍のMV-22だ、洋上迷彩を施されている」

「となると援軍か? 通信も寄越さずに?」

「同志ガングート、多分接近がバレるのを伏せたかったんじゃないかな」

「んー、友軍とはいえここまで近かったら発光信号とかで通信をすると思います」

 

先に進まねばならないが、不可解なMV-22を一応観察するとV字編隊の正面機下部からなにか棒のようなものが飛び出しているように見えた。固定翼モードで接近するMV-22が翼がもげるかと思えるぐらいの速度で翼の角度を変え、機種を上に上げて急速に減速する。正面機下部から出ている棒が機体の影から出て陽の光にあたり鈍く輝く。

そこが若干、瞬いたかと思うと赤い豪雨が爆音とともに射撃場玄関へと降り注いできた。

 

「ひっ」

 

誰かの悲鳴が聞こえる中、軒庇の下にいた私は必死に身を捩り射撃場の中へと飛び込んだ。焦げ臭い匂いと爆音、飛び散るコンクリート破片に床に身を打ち付けた衝撃で意識が朦朧となるが、霞む目が死の雨がこっちに迫ってくるのを捉えた。

動きの鈍い体に鞭をうち必死に動かす。あれに囚われれば待っているのは死だ。まだ、死にたくない。私は深海棲艦を相手取った時にも感じなかったほどの恐怖を目の当たりにし少しでも奥に向かおうとして閉まっている扉に頭からぶつかり、倒れた。ガラガラとコンクリートが崩壊する音が聞こえる中、痛みで頭を擦る。すると、指が引っかかり手を離すと手に帽子がくっついていた。よく動かない頭を動かし確認すると帽子に開いた銃痕に指が入っていただけだった。

銃痕……。途端に頭の中が晴れハッとして頭に傷がないことを確かめ首を後ろに向ける。雨は止んでいた。コンクリートはひび割れ僅かに残っていた窓ガラスが四散している。ほかのみんなも廊下に逃げ込んだり別の扉から顔だけを出して様子を伺っている。

 

「収まった……」

 

MV-22のエンジン音だけが聞こえるこの場にサラトガの安堵が響いた。私はよろよろと立ち上がると、倒れた時に手を離し床に落ちたHK417のハンドグリップを手に取る。するとフレームが機関部ごとトリガーの上あたりで割れる。

……冗談だろ? 驚きのあまり少し固まってしまう。裏返してみるとロアレシーバーのプラスチックと顕になった機関部の金属に銃弾が擦った跡がついている。腕からから力が抜け折れたHK417が下を向くと内部から部品がいくつも落ちてきた。

愛銃が……。予想外の出来事に血痕が着いている左手を顔に当てる。

 

「おい、ちょっと待て」

 

ガングートの荒々しい声が聞こえ私は顔を上げる。タシュケントとともに焦った表情をしていた。何故、と呑気なことを考えていると現実に引き戻される。

 

「同志ちっこいのが見当たらない!」

 

 

 




Q救いは無いんですか
A(ないことはいけど暫くは)ないです
個人的にはグラーフには苦しんで欲しいというか幸せになって欲しいんだけど、地獄のような苦を味わって欲しいというか。嫁の金剛とはこれまた違った愛情?を持っています。
数話グラーフ視点が続きます。彼女の精神が耐えきれるかどうかは……お楽しみに
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