【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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グラーフ「心がしんどい」
ガングート「同志ちっこいのの霊圧が消えた……?」



北の艦娘の生き様

「同志ちっこいのが見当たらない!」

「なに!」

 

慌ててあたりを見回すが特徴的なヴェールヌイの白髪とSVDの長い銃身がどこにも見えない。銃撃を受ける前、ヴェルはどこ、に……まさか。

同じ結論に至ったのだろう。ガングートが震える足で歩き出し掃射を受け荒れた軒庇へと向かっていく。私は彼女を追いほぼほぼ確実な現実を確かめようとする。

軒庇や玄関の崩れ落ちた部分の破片を避けて歩くと瓦礫に隠れて見えなかった血がべったりと付着した破片がポツポツと落ちていた。風がこちらに流れ込んできて硝煙で麻痺した鼻に気づかせるほどの血の匂いが私達を覆う。天井が二階から崩れてトーチカのようになったところを避けて軒庇の瓦礫に目をやると、それは真紅に染め上げられていた

 

「同志! 同志ヴェールヌイ!」

 

そんな……。憤怒と悲哀が私の心を埋めつくし足を止めた。ガングートが駆け寄り赤い瓦礫に山に登る。PKPを置き何かを見つけたのだろう、跪いて手袋や手が切れるのにも関わらず瓦礫の山をかき分けていく。私はSVDの歪んだ銃身が瓦礫の山から突き出ているのを見つけ引っこ抜くとマガジンから銃床にかけてが無くなっていた。

ガングートが掘り出した穴の中を見て動きを止め項垂れる。黒い手袋は真っ赤に染まり切れた布地の隙間から傷口が顔を出す。近寄って穴を覗こうとすると赤く彩られた白髪が出ているのが見えた。ガングートが見たものを見たくない、見てはいけないと私の理性が言い、本能がここから逃げろと伝えてきた。

いつの間にか、私の後ろに来ていた三人が肩越しにこの惨状を見てしまう。少しでも押し留めて見せないようにと今更ながら考えたが、手遅れだ。中でもタシュケントが泣きそうな顔になりゆっくりっと自身の帽子を掴んで真下に投げ捨てる。

ガングート、外の方に目をやると基地上空を旋回していた一機のMV-22が、先程銃撃してきた機体とは違う機体が射撃場目の前の通りに向けて着陸しようとアプローチしていた。

 

「なあ、ガングート……」

……んぞ

「え?」

許さんぞ貴様ら!

 

ガングートが立ち上がり血濡れた手でPKPを掴む。彼女の戦艦にしては小さい身体から湯気のようなものを幻視する。やめてくれ、憎悪に飲まれないでくれ……。

 

「やめろ、落ち着いてくれ……ガングート」

「黙れ! 同志ヴェールヌイを殺されて、落ち着けと? 粛清されたいのか!」

 

背の小さい彼女が私の前に移り、襟元を左手で掴みかかってきた。金色の瞳が憎悪の闇と復讐の炎に囚われている。白いシャツに彼女の血が染み込んで、染め上げていく。彼女の手首を握りその手を外そうと握っていたHK417の残骸を落として握るが力を込めてもビクともしない。機関出力という面、艦娘の筋力という面でも私の方がパワーがあるはずなのに。*1目を合わせると私の装甲を貫通されそうな鋭い視線を投げかけて来る。そんな目で見ないでくれ……。それに耐えきれず、目を逸らす。すると、ガングートは私から手を離し舌打ちをする。俯いて立ち尽くす私にアクィラが寄り添ってくるが、彼女から感じる筈の温もりはどこか距離を感じた。

射撃場前の道にMV-22が機首をこちらに向け着陸する。距離は三百と離れていない。PKPをしっかりと握ったガングートがそれに反応して駆け出し、AK-74を腰に据えたタシュケントが付随する。

 

「ま、待て」

「色ボケでもして可笑しくなったのか! 貴様はさっさと提督の救援でも行ってろ!」

「ごめんね、同志。これだけはしないと行けないんだ」

 

止めようと伸ばした腕は空を掴み、虚しく振り下ろす。二人に、特にガングートに反論の言葉を投げつけたかったが、何も出てこない。サラトガが止めに行こうと足を動かすが、私はそれを止めた。

 

「無駄だ……どうせ止められるわけがない」

「Why? どうして!」

「目だ、あの目をしたガングートは止められない……何も出来ないんだ」

「ただ、見てろっていうの? サラはそれでもできると思ったことをするわ!」

 

若干私の言葉を誤解したようで、訂正しようとしたがサラトガは動き出す。瓦礫の影で止まると今の今まで背負っていたアイオワのSCAR-Hを構え、三倍ブースターをセットしMV-22に向けて射撃を始めた。この距離からじゃあ大して被害を与えられないが後部ハッチから出ようとした敵が怯むのが見える。

アクィラがカルカノを構え、狙っていた。私のP90は有効射程外だが……。何もしないのは流石に不味い。

 

「Ура!」

「雑魚どもが、消えろ!」

 

タシュケントが叫び、走りながら腰だめ射撃を行う。ガングートが罵声を掛けPKPをMV-22のコックピットやハッチを狙う。耐えかねたのかMV-22の影から敵が顔を出し、5.56mm系の軽い射撃音と7.62mmか? ちょっと重い射撃音を出してくる。迂闊に顔を出した敵をカルカノM1891とSCAR-Hが吹き飛ばす。この距離だとP90は有効射程だが理論的には届かせることはできる。私もよくやる砲戦の応用に近い。フルメタルジャケット(FMJ)弾であるSS190弾の弾道を脳内で思い浮かべ300メートル先に届かせるための角度をシミュレートする。予想される角度を腕を僅かに動かして作り出し、セレクターを連射にしてバラ撒いた。反動を利用することでいい感じに弾が散らばって落ちるはずだが……。予想通りにMV-22の左メインローター付近に多数の火花が飛んだ。

 

「よし……」

 

引き金を思いっきり引いてマガジンが空になるまで撃つ。数秒ほど敵が顔を出さなくなり、射撃に臆したのかMV-22が離陸しようとローターの回転数を上げた。それを見逃さずガングートがPKPの射線を左ローターの軸へと向けて走りながら乱射しする。サラトガとアクィラもそこを狙い私とタシュケントは出てこようとする敵を狙った。突如、左ローターの回転数が落ちて少し白煙が上っていく。突撃する二人の距離がMV-22から五十メートル程になると、逃げられないと察した敵が側面ハッチや後部ハッチから飛び出してきた。

 

「Умереть!」

 

ガングートが狙いを左から出てきた敵に定める。7.62x54R弾の射撃に絡め取られた敵が弾け、掠っただけでも倒れる。側面ハッチから出てきた操縦手はその足が地面に着く前に蜂の巣にされ亡骸が落ちていく。比較的小柄な身体と機動力を生かしてタシュケントがMV-22に張り付くと操縦席の窓を叩き割り、そこにAK-74を突っ込んで撃つ。ここから見えるほどMV-22の機内が赤くなり銃声がピタリとやんだ。歪んだACOGサイトを拾い上げ見にくいが、ガングート達を見る。ガングートが自ら仕留めた操縦手の元に行くと足で転がして顔を見ていた。

 

「ふん、他愛もない。もっと殺りごたえのある敵を」

 

通信越しに銃声が聞こえたかとガングートから血が上がり、今度は銃声が私の耳に直に聞こえた。彼女は右を向いてここから見えない位置を狙い撃つ。

 

「同志!」

「大丈夫だ。ちぃ、死にやがれ!」

 

タシュケントが援護に入る。私は居ても立ってもいられず、支援のために駆け出したくなる。だが、ガングートには提督の救援に行けとも言われた。大丈夫だ、まだ、時間はある。今から助けに行き地上を突っ切って行けば、それまで陽炎と不知火が耐えてくれればなんとかなるはずだ。……そういえば残りのMV-22二機はどこへ着陸したんだろうか。まさか提督がいる場所へ……? たとえ私だけでも行ってやる、そう思いアクィラとサラトガに声をかけようと思いスコープから顔を離す。

 

「アクィラ、サラトガ。正直、提督達が無事か不安だ。私だけでも先に行こうかと」

 

再び耳を劈くような、耳を抑えたくなるほどの多数の銃声。急いでスコープを覗きガングート達がいる方を見ると、白と赤が混ざったものが飛んで……。

 

「ガングート!」

 

彼女の腕が片方無くなっていた。PKPを右手だけで押さえ込み敵が来た方向であるここから見えない建物の影に射撃を行うが、銃身が反動でブレている。タシュケントが通信を繋がず何かを叫びMV-22の中に入っていく。

 

「ガングート、今助けに行くわ。だから」

「五月蝿い、貴様ら全員提督の元へ行け。私のことは構うな、行け!」

 

怒鳴り声を上げPKPを撃ちながらよろよろと射撃された方へと歩き出した。あんな状態で行けと言われても……。涙ぐむアクィラに行こうと服を引っ張られるが目線を彼女から外せなかった。焦燥感と無力感が足を固定する。

銃撃の最中を縫うように彼女はふらつきながら歩いて行く。PKPやタシュケントのAK-74の射撃の効果かどうかは知らないが、敵の弾は疎らで避けて行っているようにも見えた。通信を繋いだままのガングートが何かボソボソと呟くのが聞こえる。

 

「これは……ソ連国歌?」

 

小さく、耳を済ませないと聞こえないが歌声はどこか力強い。矛盾した感想を抱き、スコープから目を離すと横にいやアクィラも同じ困惑した顔をしていた。目線を戻すとガングートの体から血が吹き出す。一瞬だけ倒れそうになるが建て直した。PKPの残弾が切れたのかそれを捨て、ナガンM1895に持ち替え照準することすらままならなくなった腕で撃つ。身体から先程よりも大きな血飛沫が上がり、歌声が一瞬だけ止まる。それでもなお彼女は歌い続け前に進んでいく。

 

「なぜ、どうして歌い続けているの……」

「ああ……」

ヴェールヌイ(不死鳥)の精神でも乗り移ったのかしら」

 

サラトガが彼女らしくないことを言った。私はそれを否定したかったが、今のガングートは不死鳥じみたものを感じる。彼女が力を込めて祖国を讃える歌詞を言った瞬間足を撃ち抜かれて倒れた。何処かから聞こえるタシュケントの叫び声、ガングートがリボルバーの残弾を全て放つ音が聞こえる。ここからでは見にくいが、ガングートはまだ前に進もうとする。恐らく、右手と撃ち抜かれなかった方の足を使い這っているだろう。次のフレーズをガングートがか細く歌い始めると倒れた彼女に銃弾が集中した。肉が裂け骨が折れる嫌な音が聞こえ、泣きそうになる。

だが、銃声が収まると死んだかと思ったガングートは声にすら、今にも絶えそうな呼吸音だけでまだ歌っていた。もう、いい。よしてくれ……。

まだ僅かに動いていたガングートを確実に殺すため敵は撃つが、意図してかは知らず彼女の脳天を吹き飛ばす。通信が断線したような音を上げ何も聞こえなくなる。

アクィラが息を飲み、サラトガは渋い表情を浮かべる。私は……私は一体どんな顔をしているんだ? あの最後を見たというのに、僅か数分のうちに二人も友人を失ったのに自分のココロがよくわからない。復讐を望んでいるのは確かなんだが、それをやりたくないという感情もある。呆然と、ガングートの遺骸を見つめていると五百メートル程離れた建物の影から敵がぞろぞろと多数出てきた。

サラトガがガングートの仇を取ろうとSCRAの三倍ドットサイトにマグニファイアを除き混んだが何故か撃たなかった。ただの敵だろう?

 

「グラーフ、見て」

「なにが……っこれは」

 

サラトガがSCARを渡してスコープを覗けと言ってきた。熊野が言ってた日本陸軍の制服を来た敵だ。南方軍、海軍基地展開支援のために送られた部隊の迷彩服を来ている。これまで相手取った民兵擬きのような乱雑さは感じられず規律の取れた軍隊だ。少なくとも奴らはリシュリュー隊を制圧している。と考えこちらかは手を出すなと言う。

異常を察したアクィラがこちらを見ていたので、ACOGサイトを渡した。鷹のように目のいい彼女は四倍スコープでも誰が相手かわかったようだ。不安そうな顔をしている。

 

「……地下から行けば提督の元に行けるかしら」

「ん、ああ、行けないことはないが……敵が少しでも地理に明るいと直ぐにバレるぞ。射撃場は基地の端っこだから行き先は自然と限られる」

 

一瞬サラトガが誰に向かって言ったのかわからなかった。まだ補足されていないのか撃ってこないが、敵はこちらの存在をさっき撃っていたから知っているだろう。地図を脳内に浮かび上がらせ、どうにかして敵を引き連れずに提督の元へ行くルートを考えるがどのルートも上手くいく手筈が思いつかない。

一番魅力的な地下を通ればバレにくいが逃げ場がない。地上は論外だ。目を逸らすことが出来れば行けるか?

そんなことを考え何か使える隙などはないかと、借りたままのSCARで周囲を見渡すと先程から姿が見えなかったからてっきり逃げたかと思い込んでいたタシュケントがまだMV-22の中にいたのが見えた。

 

「おい、タシュケントがまだ残ってるぞ」

「え、どこ。……居た、なんで逃げなかったのかしら。ガングートが腕を撃たれてから彼女、撃ってないよね?」

「ああ……ああ、確かそうだ。逃げ遅れた、にしては様子が違うな」

 

私は彼女に通信のコールを飛ばす、が繋ごうとも切ろうともしない。サラトガも同じようにコールをするが、結果は同じだった。

見られていることに気がついたのかタシュケントはこちらに笑顔で手を振ってきた。嫌な予感がする、当たって欲しくない予感が。彼女は手信号で先に行けと行ってくる。足止めを行うとも。

タシュケント、君まで死ななくていいんだ……。彼女の手の中には敵から取ったのか攻撃手榴弾が一個握られている。さらに言えば私たちの銃撃や流れ弾で穴だらけのMV-22からは燃料が漏れ出てている。敵はMV-22を警戒しつつこちらを見ながら向かってくる。位置関係の問題で徐々にMV-22に近づきながら。綺麗なソ連式敬礼をすると駆逐艦にしては大柄な体を器用に曲げて機内に消えていった。

 

「ねえ、タシュケントは自爆する気なのかしら」

 

アクィラが呟く。否定したいという思いにかられるが、事実は事実だ。

 

「私はそうだと思う。ああ、なんでそこで逃げたりやり過ごそうとしないんだ」

「グラーフ。貴女の目の前でビスマルク、レーベかマックスが死んで自分だけが生きているって言うことに耐えきれる? 私はアイオワを失った今、死んでもいいと思っている」

「それは……」

「そういうことよ」

 

私がもっと上手く指揮出来たら、私がもっと射撃が上手かったらこんなことにはならなかったかもしれない。非情な現実を変えるだけの力があれば……。

指揮下の艦娘を失ったのはこれが初めてではないが、人間に銃を向けられて失うのは初めてだ。こうも、共に戦い、守り守られてきた存在に裏切られるのが辛いとは。

 

「グラーフ、提督の元に行きましょう? 言い難いけどここにいても時間の無駄になるわよ? 貴方しか地下の迷宮のこと知らないんだから」

「ああ、そんな事はわかってはいる。だが、何も出来ないからと見逃してはいけないと思うんだ。タシュケントを一人で死なせたくない、それが私が今できる唯一の餞なんだ……」

 

確かに提督の救援に向かうのが重要だ、今決断すれば直ぐに向かうことが出来る。タシュケントが自爆すれば敵が混乱して時間が稼げる。サラトガは私が成すべきことをしっかりと理解しているんだ。なのに私といえば……。成すべきことを理解していても体が動かない。

流石に嫌気がさしたのかそんな私にアクィラが左に寄り添ってくる。顔を掴まれてアクィラと目が合い、逸らした。彼女の顔を見たくない、そう思って目元を覆った。

 

「グラーフ、グラーフ・ツェッペリン。しっかりして、らしくないですよ」

ああ

「秘書艦代理として、グラーフとして提督を救いたいんじゃないですか?」

ああ

「アクィラ達は地下の詳細はよくわからないので案内してもらわないといけないんですよ。だから、行きましょ?」

「ああ」

「もお、グラーフ! しっかりしてください。アクィラだって仲間を失った上、今度は同郷の友人の避けられない死を目前にして泣きそうなんです!」

ああ

「お願いだから、グラーフ、今、この瞬間、提督の元へ救援に向かうと決断して!」

ああ、そんなことはわかっている!

 

私の中で何か切れた。煮え滾る激流が体中を巡りアクィラを突き飛ばして私を立ち上がらせた。

 

「私だって成すべきで、それを成すための過程もしっかりと分かっている! 秘書艦代理として、航空母艦グラーフ・ツェッペリンとしてな!」

 

提督の元へ向かうことが最優先だということも!

左手で胸を叩きアクィラを睨みつけ、苦い顔をしたサラトガも睨みつける。

 

「一応、まだ時間はある! タシュケントへのせめてもの謝罪として私は彼女の最後をこの目に収めたい! 先に逝ってしまったガングートとヴェールヌイの為にも!」

「それで提督が救えなくてもいいの? 今すぐ行くべきよ」

「だからって」

 

私が左手を大きく振った時ピシャという

何かが当たった音と、手の甲にジーンとした痛みを感じた。目の前にいるサラトガが唖然とし黙り込んでいる。針ひとつ落としただけでも爆音のように響きそうな状況になり、私は左側にいたアクィラへと、予想を否定しながら恐る恐る目を向けた。

アクィラが目に涙を浮かべ尻餅をついていた。彼女の右頬は赤くなり、とても怯えた表情をしている。……なんてことをしてしまったんだ。最悪だ。

途端に私の体の中を巡っていた激流が霧散し鉛が詰め込まれる。立ち上がらせた力が消えたことで膝から崩れ落ちる。大して考えることも出来ず私はアクィラに抱きつきただただ

 

「すまない……すまない……」

 

と呟いた。自分でやったことに嫌悪感を抱き死にたくなる。口の中に塩の味を感じて私は初めて自らが泣いていると気づいた。嫌われたかもしれない、許してもらえないかもしれないと考えてしまう。恐怖心と罪悪感に押しつぶされそうだ。

アクィラが動き片腕を私の腕の中から出した、と思うと私の帽子を外した。叩かれると思い身構えると優しく頭を撫でられた。

 

「いたた、ちょっとグラーフ、そんなに締めないで下さい」

「っ、すまない」

 

離れようとするが今度は逆にアクィラに抱きしめられた。彼女は私の耳元に口を寄せると穏やかに呟く。

 

「よしよし、グラーフ大丈夫ですよ。ちょっと怒った貴女が怖かっただけです」

「ほんとうか?」

 

私は顔を上げアクィラの顔を見つめる。彼女の表情はいつも程ではないが優しさを感じる表情だ。また頭を撫でられ擽ったくなり片目を閉じる。

 

「こういう時は嘘をつかないんですよ」

 

ふと、彼女の瞳の奥が陰ったような、暗い雰囲気を醸し出した気がした。柔らかな表情、柔らかな声、柔らかそうに見える瞳。これが全て私を落ち着かせるため無理に演じているとすれば……。そう考えると自分がとても情けない奴に思えてきた。感情を爆発させたかと思えばアクィラをぶってしまい、挙句の果てに彼女に慰められる。

目を合わせるのが辛くなって私はアクィラに取られた帽子を取り返して彼女に被せた。嫌なものを見せないために。私だって多少の演技はできる。

 

「アクィラ……その……ありがとう」

「いいんですよ」

 

帽子取ろうとしていたが押し付けて、立ち上がる。そして直ぐに背中を彼女に向けた。今の顔を見られたくない。いつの間にか、恐くアクィラと抱き合っている最中にSCARを拾ったサラトガがこっちを見ていた。

 

「その、サラトガ、すまない。取り乱してしまって」

「気にしないで、私だってピリピリし過ぎてたわ。誰もが戦友(とも)を失い明日を迎えられるかわからないって言うのに」

 

私なりにケジメはつけたはずなんだけどね、と遠くを見て話す。彼女がSCARの表面をゆっくりと撫でる。血が着いた部分を触ると馴染みじゃないと分からないほど僅かに顔を歪めて目を閉じた。慰めたい、その気持ちを和らげたいと考えるがそんな無意味なことよりもっといい事がある。

 

「サラトガ、アクィラ、行こう。提督の元へ。一分一秒でも早く」

 

私が我慢して演技すれば問題ない。アクィラだってできたんだ、私ができないはずがない。サラトガを安心させるために自信ありげな表情をしてP90を構えた。

 

「ええ、行きましょう。She is ham……

「なんだって?」

「なんでもないわ。早く行きましょう」

 

本当になんて言ったのか気になるんだが……。アクィラに手を貸して引き起こし、彼女を軽く抱きしめる。担いでいるカルカノM1891が邪魔に感じるがそれよりも彼女の温もりを感じれた。最後に一度だけ振り返ってMV-22を見たがタシュケントの姿は見れなかった。敵はこちらを警戒してかゆっくりと迫ってくる。大した戦力も残ってないのに随分と過大評価されているようだ。だが、お陰で時間が稼げている。

 

「さよなら、タシュケント。ヴェールヌイ、ガングートと共に安らかに眠れるよう祈る」

 

 

 

*1
ガングート級戦艦の機関出力は4.2万馬力 一方グラーフ・ツェッペリン級航空母艦は20万馬力




ガングートの死際はもっと上手く描写したかったしアニメ化したいです。最高だろ。エモすぎて書いてて死にそうになる。コサック三人衆はいいですよね。彼女達のせいでソビエト国歌にハマりました。\デェェェン/
ドルフロ経験アップ期間でレベリングと艦これのイベントが重なって原稿の進捗が止まることにはならないよう気をつけます。みんな早く主催以外は原稿だして(白目
ドルフロのVA-11 Hall-Aコラボまでにはこの作品の原稿も完結している……といいなあ。
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