【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】 作:ウエストポイント鎮守府
グラーフ「サラトガまで……もうダメだ。お終いだ。私なんかどうせ」
アクィラ「グラーフが被せてくれた彼女の帽子のお陰で私は正常でいられました。グラーフにも正常でいて欲しいのでこれをどうぞ」(緑のリボンを手首につける
グラーフ「頑張る」
「アクィラ。ここだ」
「へ?」
「このハッチの先が代用施設だ」
「え、じゃあ」
「時間は……五分前。間に合った。行くぞ!」
「ああ、待ってください。グラーフ!」
落としたライトを拾って適当なポケットに突っ込む。梯子を駆け上がりハッチの裏に書いてあるナンバーを再確認すると……。ああ、ああ。ここで間違いない。FiveseveNに手を掛け慎重にハッチを開けようと手を伸ばす。ここでさっき使ってからマグを交換していないことを思い出して、マグを取り出す。一発しか残っていなかった。新しいのを取り出し、古いのをしまったところでアクィラが追いつく。
「ちょっと、グラーフ。気になることが。グラーフが倒れる前に上から銃声が聞こえました」
「本当か? だとすると急がねば」
アクィラがさらに何か言っているが、これ以上待つ余裕はない。マグを入れて準備が整ってからハッチを少しだけ上げて隙間から様子を伺う。
施設内は夜の帳が降り始めたためか薄暗く、不気味だ。硝煙の匂い、そして血の匂いが充満して空気が重い。目に見える範囲には誰も見えず、物音一つ聞こえなかった。
「陽炎、聞こえるか? 到着した」
陽炎に通信を飛ばしてどこにいるか確認しようと考えたが応答が無い。……まさかな。今使った秘匿性の高い部隊内無線ではなく試しに基地内無線に切り替えると、雑音しか聞こえなかった。ここだけかなり強力な妨害電波がかかっている。提督達が作動させたのか? ここにはそれなりの防衛設備もあるらしいから強力な妨害電波が出せてもおかしくない。
周囲の安全を確認した私は一気に立坑から躍り出る。FiveseveNの銃身を敵が出て来るかもしれない廊下の角に向け全周囲を警戒する。何かが動いている様子はない。アクィラが上がってきてマテバオートリボルバーを構えたのを確認して進み出す。出た瞬間に襲われることを想定してFiveseveNをもったが、そんなことにならなかった。
「陽炎、不知火、提督。聞こえるか、私だ、グラーフだ。聞こえていたら応答してくれ」
大きく声をあげるが耳が痛くなるような沈黙。下にカーペットが敷いてあるにも関わらず私達の足音が爆音のように聞こえる。心臓の鼓動ですら耳障りに感じた。
正直、あまり覚えてないこの建物の見取り図通り、入ってきた倉庫前のハッチから壁沿いに提督達がいそうな司令室へと向かう。所々、弾痕がまとまってついていたり、窓や天井のライトが割れている。薬莢はそこらじゅうある。敵の死体も。先程見た南方軍の迷彩服や民兵の服装ではなく、どこかの軍が着ていそうな黒い市街地向けの戦闘服を身にまとっている。顔立ちはアジア系ばかりだが、混ざりに混ざっていてどこかから来たかわからない。
「これって
「いや、輸出用の
「そんなに、他の装備を探れば……提督達の救援が先ですよね」
「ああそうだ。行くぞ」
私も調べたいが、そんな余裕は無いかもしれない。再度通信を送るが反応は無い。……どこかシェルターのような場所に篭っているのか? ならば私が見つけないと。相互をフォローし合いながら角を警戒し、耳を澄ませ、空いている目で周囲を見渡す。私の個人的な予想、敵と戦闘中だろうというものに反しているこの空間に僅かながら恐怖心を覚えた頃に近くの扉、司令室の扉から何かが聞こえた。
私がP90の等倍ドットサイトを覗き込んで銃身をその左開き扉へと向ける。アクィラは一歩下がった位置にいるため見えないが私を援護できるように動いているはずだ。提督達か? それにしては違う気がする。
蝶番が内側にある扉だったため私が扉の右側に張り付き左側にアクィラが張り付く。聞き耳を立てると話し声が聞こえたような気がした。
少なくとも知っている声ではない。脅すような声ではなく、落ち着いた声でもない。この扉が厚めにできているのか中の音がくぐもっていてよく聞き取れない。
どうだ? という目線をアクィラに向けると首を振って返してきた。なら突入するしかないと腹を括りその旨を伝える。彼女の顔が僅かに強張り不安げな表情を見せたが頷いた。私が扉のドアノブに手をかけ、一気に開ける!
勢いよく開いた扉の先をアクィラが拳銃を構えて見渡す。私もその後に続いてP90を振り回しながら伺う。司令室内は生きている全てのディスプレイに電源が入っていて眩しかった。人の気配は……無いような気がするがそれよりも濃い血の匂いが気になった。……そんなことは無いはずだ。アクィラが奥の方へと進み、私は手前にある司令官用のコンソールに近づく。
「……基地へ。海軍司令部より。現在貴基地の金剛率いる高速戦艦隊及びイントレピッド率いる機動部隊が急行中。一時間半以内に到着予定。繰り返す──」
コンソールの上にある端末からそんな声が聞こえた。なんだ、声の正体は通信だったのか。艤装をつけた金剛達が来るならこの事態を容易に収拾できるだろう。もっと早く来てくれれば──。
「グラーフ! 来て下さい!」
私とは違う方向を見ていたアクィラの怒鳴り声。釣られてそっちを見ると誰かの頭が……。
「っ! 不知火!」
私の位置からコンソールの影から不知火の髪だけ見えている。駆け寄る前に、一度周囲を見渡して安全を確認し駆け出す。横に並んだオペレータ用コンソールの角を回って不知火を見ると、首と頭から血を流して死んでいた。コンソールを背にして座り込み、苦しげな顔をして、目を見開いたまま、自身の9ミリ機関けん銃を握り締めたまま。周囲には血溜まりとそこに沈む多数の薬莢。服は煤けて所々破れていた。
私が近づいて無駄だと思いつつ瞳孔を確認する。当然彼女の瞳は動かない。その上、まだ温かさを残していたことに気付いて後悔の念が押し寄せてくる。もっと早く来れば間に合ったかもしれない……。クソッタレが。
彼女の開いたままの瞼を閉じて座り込んだ姿勢から横に寝かした。不知火の亡骸を見ていられず目を逸らすと彼女の目の前のコンソールに敵がうつ伏せにもたれかかって死んでいることに今更気がついた。それは上半身から大量の血を流していて頭に被ったヘルメットにも穴が空いている。その手元にはPP-19 Bizonが、不知火を撃ったと思わしき短機が薬莢とともに落ちていた。
相打ちか……。残された物からそう判断する。
「ちぃっ。提督と陽炎はどこへ行ったか見当はつくか?」
アクィラの方をむくと手を合わせていた。ボソボソと不知火に向かって呟いている。何故かそれを見ているのが精神的に辛くなり周囲を軽く調べることにした。銃撃の跡がそこらじゅうにに有り、ディスプレイの幾つかは割れている。敵の死体がさっきのだけでなく、他にも幾つかはある。ん、これは……。
近くのコンソールそばに気になるものが落ちている。海軍の正帽だ。銃弾をいくつか受け穴が空いているが血は着いていない。周囲と帽子の中には拳銃ならそうそう見ない量の9x19mmパラベラム弾薬莢があった。ひっくり返して鍔を見る。この正帽は……大佐・中佐のものだ。将官用のでは無いから提督のものでは無い、となると一体誰の物だろうか。
「グラーフ、どうしました?」
いつの間にかにアクィラが私の背後に来ていた。その顔は思っていたよりは私は思っていたより明るかった。気になったが何も言わず正帽を見せると眉を顰める。
「大佐、中佐用の正帽を被っている人間なんてこの基地には数人しかいませんよ」
「ああ。そうなんだ。しかも今日いるのは土曜ということもあって参謀長と私が哨戒に行った時に乗っていた艦娘母艦〈やまつつじ〉の艦長だけ」
「提督と合流したとかじゃないですか?」
「ならいいんだが……」
本当にそうなのだろうか。漠然とした不安を感じる。私が個人的に把握している個人が携行している銃の中でここまで9x19mmパラベラム弾薬莢をばらまける銃を持っているのは艦娘以外では居ないはずだ。9ミリ機関けん銃は製造法が削り出し加工故生産数が少なく、生産されても艦娘や艦艇への配備が優先されている。不知火の9ミリ機関けん銃は彼女の手の中にある。敵から鹵獲したのか? 短機関銃持ちの敵なら幾つかいたからそうなのかもしれない。
「ああ、そうだ。アクィラ、提督達がどこに行ったか見当はつくか?」
「あっち、不知火がいる方の奥の扉へと薬莢が続いて落ちていました。陽炎か提督が逃げながら撃ったと思います」
「どれ……確かにそうだな。行こう」
時計を見ると中に入ってからそれなりに時間が経っていた。無駄に過ごしすぎたと後悔し、その分を少しでも消すために歩みを速める。扉の前に立ち、開ける前にもう一度だけ部屋内を見渡す。司令官用コンソールの上にあった端末からは未だに救援が向かっていることを告げている。通信が繋がっていないから、応答できないのが辛いところだ……ん。扉のノブに手をかけたところで矛盾を覚えた。
電波妨害で繋がっていないのに通信が来ている、有線ならともかく無線でだ。通信じゃないとすると録音か? ならなぜそんなことを……。
答えが出ないまま扉を慎重に開けて中をのぞき込む。扉の先は二階へと続く折り返し階段で暗闇の中に光を跳ね返して鈍く光る薬莢が輝く星のようにちらほら見える。その一方で階段の踊り場から血が垂れていた。コンクリートに囲まれた階段の中で血の赤さが目に刺さった。誰かの血、もしかしたら提督の血かもしれない……。
暗い灰色の中に浮び上がる明るい紅色が私の精神を乱していく。提督の血だとしたら間に合わなかったかもしれない。陽炎の血だとしても彼女まで撃たれたとなると楽観視できない。もし、この上に提督の亡骸があったら……。
考えるのをやめろと自分言い聞かせ目を落とす。自然と、と右手首につけた
「行こう」
「ええ」
P90を構え上を警戒しながら歩き出す。転がった薬莢を踏んづけて転ぶという割とよくあることにならないよう足元にも気をつける。踏面に足を置いたり、上げたりする度に血がピチャ、ピチャと音を上げ響めく。
踊り場まで行くと血溜まりの中に布切れが数枚浸かっていた。さらに今まで以上に大量の5.56x45NATO弾薬莢に.380ACP弾薬莢も落ちている。私は慎重に布切れの一枚を手に取り開けたままの司令室へのドアの方を向く。真っ赤に染まった布の元の色は……茶色系か? そうなるとこれは……陽炎のベストの切れ端か。これだけの出血、動脈でも撃ち抜かれたのかもしれない。無事でいてくれ……。
「アクィラ、陽炎のベストの切れ端だ」
「そんな……早く行きましょう」
彼女は私の前に出て階段の上に銃口を向ける。顔には焦りの表情が浮かんでいて上を狙っているオートリボルバーの銃身が揺れているような気がした。私も階段の上を見るとそこにも血がベッタリと付いていた。数段おきに血糊が大きくなって上の方では階段の半分近くを覆っている。
これだけの出血量では、多分もう……。
「死んでいるかもしれない」
一瞬誰が言ったか分からなかった。数瞬後に無意識のうちに自分が言ったことに気づくと心の中で自身を罵った。馬鹿たれが、口に出すな。出してしまうと……。アクィラが悲しげな表情をしていた。口に出さなければまだ彼女にもっと希望を与えられたかもしれないというのに……こんな悲しげな表情を見なくて済んだかもしれないというのに。
「……なんでもない。進むぞ」
ああ、もう。後悔しても、もう手遅れだ。起きたことは変えられない。私は陽炎が生きているようにと普段は信じる気にもならない神に祈る。提督の為に、アクィラの為に。
だが、祈る時期が遅かったようだ。階段を上がって直ぐのところに陽炎がうつぶせに横たわる。闇の中でも彼女の肌が異常に白く見えた。二階の廊下には赤いカーペットが敷いてあってあまり目立たないが確かに血の海が出来ている。受け入れ難い現実を私の目の錯覚ではなく、確立されたものとして受け入れるために彼女の脈を確かめる。首元に自分の手を当てると黒い手袋のせいで余計に肌の白さが際立つ。わかりきっていた事だが脈は、無い。
「……ダメか」
三十分は耐えれると言っていたのは何だったんだろうか。耐えれなかったじゃないか……やはり、射撃場でうじうじしていないで早く来ていれば……。思い返せばここに来るまで時間を削れた場所は沢山あった、なのに……私の不安定な心のせいで時間を取られてこんなことに……。
そうだ、提督は何処へ。周囲を見渡すがカーテンの閉まった廊下は暗く奥まで見通せない。薬莢も何も落ちていないし、血糊だってない。この場所は建物のほぼ中心で行こうと思えば二階中はもちろん、一階や地下にだって行ける。声を出して探すのは論外だ。まだ敵がいるかもしれない。ん、敵が居るならこんなに静かでいいのか? もしかして……。
「そんなことはあっては行けないはずだ。そうだ、大丈夫だ」
「グラーフ?」
っく、この建物で提督が行きそうな所はどこだ。考えろ、考えろグラーフ・ツェッペリン。ここの提督執務室か? それとも警備兵詰所、大会議室、資料室……。彼女の性格からして二階にはいると思うが、まるで見当が付かない。虱潰しに探すしかないのか……。
「アクィラ、仕方がないが虱潰しに探そう」
「……」
「アクィラ?」
また返事がないため、彼女の顔を見ると今度は考え込むような表情をしていた。
「ねえ、グラーフ。多分ですけど提督がいそうな場所が一つあるんです」
「なんだって? それは何処だ」
「高級士官向けの会議室です。少し前の話ですけど会議室の机を見て『隠れやすそうだね』って言ってました」
隠れやすそう……か。あの提督が言いそうなことだ。
「なるほど、そこに行こう。確か右奥の部屋だったよな?」
「そうです」
そこに無事でいてくれればいいが……。待っていてくれ、陽炎。提督を助けに行ってくる。P90を両手で構え、何時どこから敵が出て来ても対応できるよう腰を落として壁際を慎重に歩く。気が焦り駆け出したくなるのを、ほとんど余裕のない理性で押さえつける。
不気味な静寂に包まれた室内でもたまに遠くから銃声が聞こえてくる。敵が撃っているのか、それとも基地警備隊の生き残りか……どっちかははっきりしない。ただ、それがもし仲間だったら生き残って欲しいと切に願う。
程なくして建物の端の方にある一際立派な扉、高級士官向け会議室の扉が見えてきた。重厚な両開き扉は片方が僅かに開いている。誰かがいるという点ではアクィラの読みは当たったようだ。
「居るな」
「居ますね」
なんとなくだが人の気配を感じ取れる。しかも複数。布が擦れる音が扉に近づくにつれ少しだけ聞こえてくる。私とアクィラは扉の左側に張り付いて、僅かに開いている隙間から中の様子を伺う。シャンデリアがぶら下がっている豪華な会議室だが、こんな状況では不気味なだけだ。椅子がいくつか倒れ本当に少しだけだが弾痕も見える。さらに中をもっと見ようと姿勢を変えると奥の方に黒い影、違う、海軍冬制服をきた男が足元を見下ろしていた。帽子は被っていない。いったい誰だ? 他には何も見えず、この暗さでは成果は得られそうにないと判断し突入の準備にかかる。
フラッシュバンがあれば便利なんだが手榴弾の一つすら持っていない。私が突入しアクィラが援護するよう手筈を整えP90の状態を再確認する。装填よし、サイトも……問題ない。アクィラと目を合わせ問題ないことを確認すると私は扉を蹴り開けた。
「動くな!」
P90の銃口を海軍軍人がいる方へと向け顔を少しだけ出す。
「撃つな! 私だ、
「は? なぜ、ここに」
敵味方どころか、予想外の人物がいた事に驚いてフリーズする。参謀長は確か殴られて捕まったんじゃないのか!? 私の横からアクィラが出てきて耳元で驚きの声をあげられると耳がキーンとなる。どうして彼がここにいるかを考えようとするが時間がなかった。
「そんなことは後でいい。早く来てくれ!
「なんだって!」
彼がいる以上この部屋は安全だと判断し、体を投げ込むように部屋に入る。邪魔なU字型の会議テーブルを乗り越えて一目散に向かう。乗り越えると入口からは見えなかった位置に血溜まりと黒い女性用の冬制服の一部、数個の9x19パラベラム弾薬莢が見える。
そんなことは……あっては……起きては……いけない。誰が見ても明らかな結末が目の間に待っていることに気づいて足がすくんだ。両足裏が接着剤で固定されたかのように全く動かない。誰がそこに横たわって、どういう状況なのかは理解できているはずだ。間に合わなかったということも。
だが、見たくない、受け入れたくないという感情が勝り顔を一度背ける。でも、アクィラは待っていてくれなかった。提督の元へU字型の机にそって行き彼女の傍で膝から崩れ落ちた。
アクィラが行ったんだ、私も行かないといけない。再び揺れ動く視界の中で少しだけ右手首のリボンを見て覚悟を決める。
接着剤でくっ付いた足を無理やり引き剥がしてゆっくりと、提督の元に向かう。
「ああ、あ゙あ゙」
ピクリとも動かない提督。仰向けに倒れ胸に幾つも空いている穴。虚ろな目で上を見上げたまま固まった表情。嘘だ、そんなことはありえない。絶対に……絶対に。
「なあ、本当は生きているんだろう? 起きてくれ、お願いだから……」
邪魔なP90を外して提督の元に跪いて傷を見た。心臓のあたりに三四個の銃創ができている。彼女の右手が出血を止めようとしたのか銃創の上に覆いかぶさっていた。その手は血に濡れたところこそ紅いが、濡れていない所は真っ白だ。
まだ、まだ間に合う。
「アクィラ、AEDはこの中にあったか?」
「えっぐ、うぅ。グラーフ。提督は、もう……」
「そんなことはない! 今からやればまだ間に合う!」
そう言い放って心臓マッサージをしようと提督の胸の上に手をついた。姿勢を整え力を込めると銃創から血が噴き出した。それがちょうど私の顔に当たる。まだ生温い血は右目から口にかけて当たり、鉄っぽい味を感じる。見るとアクィラのリボンが所々染まっていた。
噴き出した血によってさらに赤くなった提督に視線を移すと全身から力が抜ける。間に合わなかったんだ。私が、遅かったせいで。提督の死体にこれまでに見たみんなの死体が重なり、私を責め立ててくるような気がした。首と体が別れたオイゲンが、ボロボロのリシュリューが、顔が半分消えたゆーが、腸が出ているしおいが、口から上が消えた矢矧が、焼け焦げたウォースパイトが、蜂の巣になったアイオワが、頭から血を流す雪風が、溶けた鈴谷と熊野が、血まみれのヴェールヌイが、銃創だらけのガングートが、燃えているタシュケントが、傷だらけのサラトガが、首と側頭部を撃たれた不知火が、白くなった陽炎が、最後に提督が。次々と現れて口が動いては異口同音に。
『オマエノセイダ』
「……うぉぉぉ!」
投げ出したP90を手に取り立ち上がる。
「どこだ、提督を殺ったやつはどこだ! この私が、グラーフ・ツェッペリンが殺してやる!」
復讐をすればみんなの死は無駄にはならない! 私は完全に間に合わなかったわけじゃなんだ。為さなければならない事はできた。たとえこの命に代えてもやってやる。失敗したら、死ぬだけだ。そう心に言い聞かせた。
焦点がズレている目を擦って、ふらつく足で何度も足踏みをする。少し落ち着いてきたところでまだ泣いているアクィラに声を掛ける。
「さあ、アクィラ。行くぞ」
「どこに……」
「決まってるだろう。提督を殺した奴を見つけに行くんだ。そうすれば──誰だ!」
急に背後で人の気配がして振り返りP90を突き付ける。
「落ち着け、グラーフ」
「なんだ、参謀長か。今から提督の仇を撃ってくる、止めないでくれ」
完全に意識の外にいた参謀長が肩を触ろうとしてきたため手で払い除ける。しかし、私とアクィラが提督に付いていた間、どこにいたんだ? そう考えると今の奴の表情や行動に違和感を感じた。なにかおかしい。何故革靴ではなく安全靴を履いている、帽子はどこへやったんだ。そもそもこいつは敵が乗ってきた輸送船の出迎えをして、殴られて倒れたところまでは陽炎が確認していたはずだ。何故ここにいる。
「止める訳ではない。動く必要はないと伝えたかった」
「それはどういう──」
バン! と後ろからで銃声。見かえると銃を持った黒い人影と、胸を抑える──。
「アクィラ!」
グラーフの精神を虐めるの楽しかったです()。そろそろ壊れるんじゃないかな。
陽炎と不知火、提督の死体はもっと上手く描写いしたいけどやり過ぎるとRタグをつけないといけないから微妙。
P90えっち。今回出した銃の中ではFALが結構好きななので今度どこかで使いたいなあ。ハンドガードと機関部すこ。
次回は……まあ言わなくてもわかるでしょう