【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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3話 作戦と同僚とフラグ

「いけっ……いけっ……いけっ……!」

「いっけぇ!」

 

 夜戦に突入し、ボスをあと一歩まで追い詰めた吹雪の最後の攻撃。魚雷の航跡がボスに向かい、残りの耐久値を全て削り切った。

 

「よっしゃぁ!沖ノ島海域突破ァ!」

「やりました!司令官!」

 

 初心者提督が必ずと言っていいほどぶち当たる壁、それが2-4の沖ノ島海域である。それは元原率いる艦隊がクリアしたのである。

 

「あぁぁ、終わったぁ……。長かったぁ……」

「ここ数週間は毎日のように出撃してましたからねぇ」

「ほんとこのクソ提督には参っちゃうわ」

「あたし的にはもうちょいかかると思ってたけどな」

 

 最近は艦娘の数も増えて、母港がだいぶ賑やかになった。実際母港に表示されているのは秘書艦である吹雪改のみだが、その後ろで音量を下げたような騒ぎ声が聞こえてくるのだ。

 

「外野!ちょっとうるさいぞ」

「まぁまぁ。人が増えれば騒がしくなるものですからね」

「だからってそんなうるさくされちゃこっちも困るんだよなぁ。お隣さんに聞こえてたら変質者扱いだよ」

「それもそうですねー」

「なんで他人事みたいに言ってんだ。君も当事者だよ」

「あっ、そんなことよりもですね……」

「ちょい待て逃げるな」

「艦これ運営から電報が届いています。今度の大規模作戦についてですね」

「作戦?」

「ここからは私が説明しましょう!」

 

 どこからともなく大淀が現れる。

 

「ぅおわ!急に出てきたな、おい」

「私は艦娘以外にも任務娘としての面もありますからね」

「それで、大淀が出てきて何の話を?」

「近日行われる大規模作戦の概要を説明するために参上した次第です!」

「なんかキャラ変わってない?」

「まぁ、ちょっとテンション上がっちゃいました。……それより大規模作戦の話なんですが」

「あ、うん」

「今回の大規模作戦を簡単に説明しますと、『南東諸島海域にはびこる深海棲艦の群れを撃退すべく、ここに進軍する友軍と共に連合艦隊を出撃させよ!』という感じです」

「南東諸島海域ってどこ?」

「南東にある諸島周辺の海域です」

「つまりそういう設定?」

「身も蓋もないですが、そうですね」

「最近攻略Wiki見てるから、なんとなく思ったけど、案外雑っぽいよね」

 

 元原が思ったことを口にしたとき、大淀の眼鏡が光る。

 

「提督?Wikiを見ているならお分かりだとは思いますが、最近の大規模作戦は次第に複雑化してきています」

「お、おう……」

「一応提督は初めて数ヶ月という初心者ですが、特務提督は問答無用で強制参加ですからね?」

「は?マジ?」

「マジです。大規模作戦は一見深海棲艦に打撃を与えるべく、我々から仕掛ける作戦のように見えますが、実際はネットワーク上に対深海棲艦用のセキュリティフィルタを構築するために行うんです」

「へー」

「艦これ初期は簡単なマップでしたが、これは深海棲艦側がまだ脅威の低い存在だったためなんです。それに対抗するため定期的に、より高精度なフィルタを用意するたび、マップが複雑なことになっていったんですよ」

「ほーん。でも俺それに参加しないといけないんだろ?Wiki見る限りだと俺見たいな初心者は無理じゃね?」

「無理ですね」

「はっきり言い切りやがった」

「ですが特務提督の特権で、作戦遂行の際はあんな畜生マップを攻略しなくていいんです」

「おい言い方」

「あのマップを攻略するのは一般の提督さんで、彼らが深海棲艦を漸減させるんです。そして特務提督が作戦の最後に、アンチウイルスソフトとしての機能を働かせるための作戦を実施するんです」

「つまりどゆこと?」

「うーん、そうですね……。世間一般の大規模作戦の実施をセキュリティアプリをダウンロードした状態とするなら、特務提督の作戦はアプリのzipファイルを解凍して起動させる役割ですね」

「なるほど分かりやすい」

「そして、この役割は特務提督が持つ権限の一つでもあるんです」

「だから俺も問答無用で参加させられるのか……」

「はい。でも心配ご無用です!大規模作戦時には運営から特別なモノが支給されます」

「特別なモノ?」

「それが特務提督のみに許された作戦、システム起動プロトコルです。これのために特務提督は通常とは異なる、いわゆる裏マップを攻略します。そのために特殊な装備が運営から送られてくるんです。それを使えば、とんな深海棲艦も一発で撃破!完全無欠でオーバーウェポンの最強装備です!」

「運営、すげぇ大盤振る舞いだな。別に最強装備じゃなくても、何か装備やらなんやらを支給してくれていいのに」

「それは出来ないんです」

「なんで?」

「先ほども言いましたけど、大規模作戦はネットワーク上のセキュリティを強化するために行うんです。常設のマップと違うんです。そこをはき違えないでください」

「あっはい、すいません……」

「まぁ、とにもかくにも、提督にはこの作戦に参加してもらうので忘れないでくださいよ」

「お、おう、分かった……」

 

 大淀に念を押されるように、きつく言われた元原。パソコンの中の存在ではあるものの、彼女には逆らわないようにしようと元原は心の中で決めたのだった。

 


 

 提督業が身についたこの頃。大規模作戦が実施されるとは言っても、彼にも本業がある。

 この日もいつものように出社した彼は、自分のデスクについて早速作業の続きを始めた。

 そんな中、元原に声をかける男が一人。

 

「よう、趣味なし野郎」

「あ?なんだ間抜け投資家?」

 

 趣味なしを公言している元原が間抜け投資家と称した男が、彼の同僚である宮戸洋輔だ。

 この男、投資家を自称しており、当時誰も注目していなかった株で一儲けした実績がある。しかし、その儲けた金で購入した株が大暴落し、危うく有り金を溶かしかけていた。今は細かい儲けを出すような運用をしている。

 

「まぁまぁ、そんな言い方はないだろうよ」

「どうでもええわ。んで、何用だよ?」

「そうそう。昨日さ、部長と取締役員が話してるのをチラッと聞いたんだがよ、どうもファザック株式会社がうちの株の50.1%を買うらしいぞ」

「は?なんだそりゃ?てか、お前なんちゅうもん聞いてんだよ」

「これは事件だね。ちょっと対策立てる必要がありそうだ」

「おい待て、インサイダー取引しようとしてねぇか?違法だぞ犯罪者め」

「言いがかりは良くねぇな。実行しなきゃ犯罪じゃねぇ。そんなことよりも、だ。ファザック株式会社っつったら、あの天下のIT企業のカシカワの子会社だぜ?」

「カシカワ……」

 

 聞いたことある会社の名前に、元原は微妙に反応する。

 

「もしうちがファザックの子会社になるようだったら、晴れてカシカワの孫会社だ」

「さいですか。でもよ、なんでわざわざうちのようなちっさい会社なんかを子会社化するんだ?」

「あんた自分の会社のスペック把握してる?そんじょそこらの会社なんか手が出せないようなサーバが山のようにあるんだぜ?」

「どんなサーバだよ……?」

「そりゃもう、世界規模のMMORPGを運営できるほどよ」

「あーそっすか」

「うちの社長、設備投資と人材育成には金を惜しまないんだよなぁ。結果としてカシカワの孫会社に成り上がれたわけだからな」

「……てか、それ全部お前の妄想じゃねぇか」

「いやぁ、割と当たってると思うぞ。なんたって、この敏腕投資家が言うんだからな!」

「それ自分で言ってて恥ずかしくない?」

「ない!」

 

 宮戸のよく分からない自信が、オフィスにむなしく響いた。

 


 

 この日も、元原は仕事を終えて帰宅していた。

 数か月ほど前の彼ならば、適当に夕食をとって寝るという生活であった。しかし、特務提督として活動を始めてからは、帰宅したとたんにパソコンの前を陣取り、買ってきた夕食を片手に艦これをするようになっていた。

 

「司令官、そんな雑に食事してたら溢しますよ」

「大丈夫だ、そんなヘマはしないぞ」

「そういうフラグいらないですから」

「フラグじゃないんだけど……」

「というか、パソコン壊したらどうするんですか?買い替えるんです?」

「んー、まぁ、ほかにパソコン無いこともないんだけど……」

「もしかして訳アリだったり?」

「いや、ただの改造した自作ノートPCなんだけどな。割と癖の強いヤツなんだよ」

「そうなんですか……」

「機嫌良い時は最高なんだけど、悪い時はそりゃもう暴走もいいところだよ。最近は機嫌悪いからそこらへんに放っておいてるんだけどな」

「……どういうことですか?」

「こっちが聞きたい」

 

 そんな雑談を交えて、第四艦隊を遠征に出るよう指示する。遠くで「オリョクルはもう嫌でちー!」という叫び声が聞こえた気がしたが、元原は聞かなかったことにした。

 元原は軽く溜息をつくと、普段はあまり飲まないビール缶に手を伸ばし、飲もうとする。しかし表面が結露していたがために、うっかり落としてしまう。不運は続き、中身がパソコンにかかってしまった。

 

「ぎゃあああああああああ!?!?!?ああぁぁぁぁ!!!!ウラーーーーー!!!!」

「司令官!?だから言ったじゃないですか!」

「あぎゃああああああ!!!!」

 

 元原は慌ててティッシュを雑に引き出し、ビールを拭き取る。しかしながら全部を拭き取ることはできず、その一部はパソコンの基板にまで浸ってしまう。

 そして数秒した後、ビープ音と共にブルースクリーンが画面いっぱいに表示された。

 

「ぬあああああああああ!!!!俺のパソコーーーーーン!!!!」

 

 見事なフラグ回収を行った元原の大絶叫の中、パソコンはお釈迦になった。

 それから十数分は絶望に飲まれ、放心してしまう。正気に戻ったあとは、パソコンをどうしようか考える。

 正直、5年ほど使っているノートパソコンであったため、買い替え時だろうと思っていた。幸い、パソコンの中には重要なデータ類はなく、その辺は問題はない。しかし今は生活に多少余裕がなく、新しいものが買えないのだ。

 

「となると、アレか……?」

 

 そう、元原が自作した改造ノートPCだ。壊したPCより少しばかり古いが、使えないことはないシロモノである。

 

「ここは腹を括れ、俺……!」

 

 部屋の隅に放置され、埃をかぶっていた角ばったPCを取り出す。それと、これまた放置されていたLANケーブルを引っ張り出した。

 自作ノートPCに電源ケーブルとLANケーブルを接続し、電源を入れる。

 

「機嫌よくしていてくれよー……」

 

 その願いは届いたのか、PCはちゃんと起動した。動作が少し重い中、すぐさま艦これのページに飛び、ログインする。

 多少PCが固まりつつ、そこには元原特務提督率いる艦隊の母港があった。

 

「あっ、司令官!」

「はぁぁぁ……、よかったぁ……」

「パソコン、無事だったんですか?」

「いや、ダメだった。これは自作PCだ」

「えぇ!?そうなんですか!」

「あとはコイツが機嫌良くしていてくれるかなんだけど……」

 

 若干安堵している元原だが、母港から元原を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「提督ー!ちょっといいですかー!」

「その声は明石か。なんだよ?」

「ちょっとアイテム屋に来てくださーい!」

 

 元原は仕方なくアイテム屋の画面に移る。そこで明石がなぜか興奮していた。

 

「ここってなんなんですか!?」

「どこって、俺の自作PCなんだけど」

「すごい場所ですよここ!ブラウザから飛び出せるんですよ!」

「……どゆこと?」

「つまりウィンドウから飛び出してパソコン内を自由に移動できるってことですよ」

 

 そういって明石はブラウザを飛び出し、デスクトップの一部になった。

 

「うわ、マジか……」

「私でもこんなの想定外ですよ!うわぁ、すごいなぁ……」

 

 明石は興味深々でPC内部を見る。

 

「提督、ここ改造してもいいですか!?」

「え、あぁ……。まぁ、あんまり酷くならない範囲なら……」

「やったー!早速改造してきますね!」

 

 そういって明石は、どっかに行ってしまった。

 

「なんなんだ……」

「しれいかーん?大丈夫ですかー?」

「あぁ、大丈夫だけど……」

 

 俺は母港画面に戻ってきた。こちらを心配そうに見ていた。

 

「明石さんの所で何してたんですか?」

「んー、なんかパソコンの中を移動できるみたいでな。どっか行った」

「えっ、ホントですか?」

「どっかに出入口とかない?」

「えーと……。あっ、ありました!」

 

 すると吹雪も、明石と同じようにデスクトップ上に出てきた。

 

「うわぁ、すごいですね……」

「うん、すごい。なんか一昔前のSF作品みたいな光景だ」

 

 最終的に、この状況を受け入れる元原であった。

 

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