【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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4話 進展

 特務提督としての生活がいつの間にか半年を超えようとしている。

 そんな中でつい先日、ファザック株式会社が元原の会社の株を半分以上買い取り、事実上子会社化したことを自社のホームページで公表し、プレスリリースも発表した。

 これに乗じて宮戸は、プレスリリースの公表前後で持ち株を少しづつ売り払いつつ、いつもより利益を出したそうだ。正直元原は捕まらないかハラハラしていた。

 そんな中、元原が今まで仕事としてやってきた作業が山場を超えたところで、上司から呼び出しを受ける。

 

「なんですか、課長。話っていうのは?」

「あぁ、それね。その前に、今取り掛かっている案件はどうなんだね?」

「城見製作所の件なら、もうすぐで終わります」

「そうか……。では、その案件を別の誰かに投げてくれないか?」

「えっ……、どうしてですか?」

「実はだね、先日我が社がファザックの子会社になったことは知っているだろう?」

「えぇ、はい」

「それでな、あちらさんの意向で我が社のサーバを使いたいとおっしゃっている。そこで、先方から派遣されてくる技術チームと共同で作業するためのチームを、こちらからも捻出しなければならない。そこに元原君がこのチームに加わってほしいというのが、私からの話なんだ」

「そうなんですか……。でも自分以外にも優秀な人間はいると思うんですけど……」

「それがねぇ、先方の要望でいろんな人材を集めたチームが欲しいって条件をつけてきちゃって、しょうがないからみんなに声かけてるところなんだよ」

「それでも自分に回ってくるんですか?」

「……うちってさぁ、こういう他部門との共同作業が絡む案件って、従業員に強要できないの。だから従業員の自由意志で募ってる訳なんだけど、みんな断っちゃうんだよねぇ……」

「あぁ、なるほど……」

「だから元原君も断ってくれても問題はない。どう?」

 

 元原は悩む。ここで断らなければ、業務内容が異なる社員と一緒になるということであり、お互いの意思疎通が困難な場面に遭遇することが大多数だ。おそらくこれまで断った人はこういう思考回路だったのだろう。

 もちろん元原も面倒臭いとは思っている。だが、上司のあんな口ぶりで言われてしまったら、断りづらいのは分かりきっていることだろう。

 しかし、逆に考えれば自社のサーバ状況が分かるということだ。先日の宮戸との会話で、自社のサーバに興味を持つようになっていた。もしかすれば、今回の件でサーバに触れられるかも知れないと元原は考える。

 結果、返答は了承であった。

 

「正式な通知は後で行くと思うから、それまでに今の作業を別の誰かに引き継がせてくれ」

「分かりました」

 

 こうして元原は他部門とのチームのメンバーとなった。

 


 

 本職の仕事では大きな変化があったが、特務提督としての仕事はあまり変わらない。とはいっても、現在は大規模作戦の真っ只中であり、運営から支給された特殊な兵装を装備して出撃している。

 

「その特殊兵装っていうのが、この90式50cm三連装砲と92式6連装魚雷発射管、そして艦上戦闘機の甲型烈風か……。正直これでどうすればいいんだよ?」

「確かに、普段の感じと比べたら文句言いたくなるのも分かりますけどね」

「マジで説明も何もないから困る」

「まぁ、詳しい解説は大淀さんの方から受けましょうか」

 

 吹雪が大淀のことを口にしたため、どこからともなく大淀が現れた。

 

「私の力が必要みたいですね!」

「んな古臭い文言いらないから」

「そうですか、そんなこと言っちゃうんですか。あーあ、説明する気あったんですがやる気なくなっちゃいました。帰りましょうかねー?」

「あぁもう!俺が悪かったから、謝るから説明を頼む」

「それが人にものを頼む姿勢なんですかぁ?」

「……自分が悪かったので許してください。そして説明をお願いします」

「よろしい、ではご説明しましょう」

 

 そういって大淀はクイッと眼鏡を上げる。

 

「前にも説明しましたが、提督には通常のマップとは異なる裏マップを攻略してもらいます。この裏マップ、実はシステム起動プロトコルのためだけに用意されるマップなので、どんな作戦にもかかわらずマップは同じなんです。しかもボスマスまで一本道という苦労知らず!」

「それを俺がやるってことか」

「そうです。そのために装備が支給されたんですから」

「それで、支給された装備をどうすればいいんだ?」

「簡単です。それを装備できる艦娘に装備して出撃すればいいんです」

「……それだけ?」

「それだけです。ただし、出撃するのは装備出来た艦娘のみ、しかも出撃のタイミングは運営側から通告を受けてからです」

「通告ってなぁ……」

「これに関しては作戦海域が選択できる、できないくらいの差なので、あまり気にしなくても大丈夫です」

「あっそう……」

「説明はこんなところですかね。何か質問があればなんでも聞いてください」

「なんでも?」

「はい」

「じゃあさ……。明石は何やってるの?」

 

 大規模作戦よりも明石のことが気になった元原。それもそのはず、明石は元原の自作ノートPCの中で何やら大がかりな作業をしているのだ。それはまさにOSまでいじりそうなほどのものである。

 

「あぁ、あれですか……。私も聞いてみたんですが、ちょっとよく分からなくて……」

「はぁ……。とりあえず、提督権限で明石を呼び出して」

「了解しました」

 

 大淀が画面から消えると、しばらくしてから大淀に連行されるように明石がやってくる。

 その姿は、何か申し訳なさそうにしていた。

 

「あのー、私に何か用ですか……?」

「用がなかったら呼び出さないよね?」

「あー。……私、何かしちゃったんですよね?」

「そうだね。その『何か』を教えてくれないかな?怒らないから」

「えぇとですね……。その、艦娘が生活できるような環境をですね、構築してまして……」

「艦娘が生活できる環境?」

「はい!そもそも私たちはブラウザ上でしか活動できないんです。しかし、提督が改造を施したPCは、私たちの活動範囲を広げられる可能性を秘めているんです!そこで、この工作艦である私がPCの内部を調査し、艦娘を無制限に活動できるようにしているんです!」

「なるほど……。そう考えてみれば有意義ではあるな」

「でしょう!?」

「だけどね、何の通告もなく、ましてや許可を得ない状態でよく分からない改造をしているのはいかがなものかね?」

「あっ、えっとぉ、それはですねぇ……」

「しかも改造しているものが、上司の立場にある人間のものだなんて、変だとは思わないかい?」

「それはダメですよねぇ、あっははははは……」

「そうだよな、よく分かってるじゃん」

「ははは……」

「他に何か言うことあるよね?」

「ほんっとうに申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」

 

 部屋に明石の謝罪の声がむなしく響き渡った。

 


 

 明石の話によれば、やっていることの大体は先の説明がほぼ全部のようだ。もう少し詳細を詰めれば、元原の自作ノートPC内にオフライン状態でも艦娘が活動できるような環境を構築しているそうだ。もともと艦娘はオンラインで、かつ特定のプラットフォームでしか動作できない。それを明石が勝手に改造を施してしまい、結果として自作ノートPC自体が艦娘の活動可能範囲になったのだ。

 

「お前さぁ、限度とか節度ってのを守って欲しいんだけど」

「でもぉ……」

 

 明石がデスクトップ上で正座をさせられ、元原から説教を受けていた。

 

「でもじゃないよ。今やってる行為は前提そのものを覆すようなもんだぞ」

「前提なんて好奇心の前ではミジンコみたいな存在ですよ!」

「だから前提覆したらなんでもありになっちゃうでしょ!俺が仕事でそんなことされたらすげぇ困るんだよ!」

「はい、その通りです……」

「はぁ……。もうやっちゃったことはいいけどさ、次からはちゃんと報告ぐらいしてくれよな」

「はいぃ……」

 

 元原の説教により、明石は完全に萎縮したような雰囲気を出していた。その姿を見た元原は、仕方なく許すのであった。

 その後大淀を交え、明石との話し合いをした結果、元原の自作ノートPC内に現在作業中である艦娘の活動範囲拡張については許可することになった。それ以外に関しては大淀を通して元原に許可申請を出すことが決定した。

 

「はぁ……。マジで明石は問題児かよ」

「そういうところも含めて明石らしいですけどね」

「あ、司令官。話終わりました?」

 

 大淀に愚痴を吐いていた元原に、吹雪が声をかける。

 

「ん?あぁ、終わったよ。いろいろあったけどな」

「それで、何があったんですか?」

「まぁ、簡単に言えば明石がやらかしたって感じかなぁ」

「あぁ……、確かに明石さんなら何か問題起こしそうですもんね……」

「あいつ皆からそういう認識されてんのかよ……」

 

 元原はだんだん頭が痛くなってくる。

 

「でもいいところもありますよ、明石さんは」

「そう?」

「はい!」

「ま、そういうんだったらいいけどさ」

 

 なんとなく明石の扱いが面倒になった元原だった。

 

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