【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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7話 革命

 内閣官邸では情報をかき集めるため、緊急参集チームが情報の収集に当たっていた。しかし、すでにネットワークが壊滅的なダメージを負っているため、情報の集約は手こずっているようである。

 その頃、内閣府庁舎でも情報収集が行われていた。こと内閣府官房副長官補室では、原因が分かりきっていたため、他よりも分かることはあったものの、それでも不明な点は不明であったのだ。

 

「これの原因はアレだな?」

「深海棲艦ですね。問題はどうして一般のネットワークに侵入したのかですが……」

「カシカワに連絡は入れたのか?」

「すでに。ですが返事がまだです」

「現状、カシカワ以上に詳しい人材はいないんだ。なんとしても彼らの招集せねば……」

 

 そんな中、補室に警備員がやってくる。

 

「すいません。網島さんはいらっしゃいますか?」

「私が網島ですが?」

「先ほど大山という方が網島さんに会わせてほしいと来ていらっしゃるのですが……」

「何、大山さんが?分かった。通してくれ」

 

 しばらくして、補室にある男が入ってきた。

 

「どうも、網島さん。この間振りです」

「大山さん、とにかくこの状態をどうにかしてカシカワ側と連絡を取りたいのですよ」

「あぁ、そのことなんですけどね……。もしかしたら、そのカシカワが元凶かもしれないとの情報が入ってきたんですよ」

「……それは確かなんですか?」

「そう言われると自信が持てなくなりますが、可能性はゼロではないことは間違いないかと」

「むぅ……。真意はどちらにせよ、彼らと合流しない限りはなんとも言えないでしょうな」

「そうですが……」

「今は、彼らに連絡が届いていることを信じて待つしかないでしょう」

 

 補室の片隅では、まるで祈るような雰囲気が漂っていた。

 


 

 艦娘全員と物資を出来る限り元原のPCに移動させた後、元原はPCからLANケーブルを引っこ抜く。これでPCはオフライン状態となり、外部から影響を受けることはなくなった。

 

「大淀、全員の点呼終わったか?」

「はい。提督が所有していた艦娘全員います」

「明石、物資のほうはどうだ?」

「もともとあった資材の72%を回収出来ました。しかし提督、これからどうするんですか?」

 

 元原はその言葉を聞くと、何も言わずに初めから決めていたかのように準備を進めだした。具体的にはこれからどこかへ外出するような準備である。

 

「司令官、何をしているんですか?」

「決まってんだろ、これから敵を倒しにいくんだ」

「敵を倒しにって、どこに?」

 

 大淀の疑問に、元原は一度動きを止める。そしてPCの前に座ると静かに話し出す。

 

「……これは俺の勝手な推測に過ぎないが、おそらく黒幕はカシカワだ」

「カシカワって……、艦これの運営元ですよね?」

「そうだ。そのカシカワが深海棲艦のデータを使ってネットワークの放出したとするなら、今の状況は説明をつけやすいはずだ」

「確かにそうですけど、それならどうしてカシカワが深海棲艦を利用しているんですか?メリットはないと思うんですが……」

「いや、案外あるかもしれない。艦これは深海棲艦というマルウェアに対するアンチウイルスソフトの側面があるんだったな?」

「そうです。私が説明しましたから分かっています」

「その深海棲艦のデータを使って艦娘を作り上げ、艦これの枠組みを完成させた。ここまではいいな?」

「はい」

「そうなると、アンチウイルスソフトを完成させるには深海棲艦の詳細なデータを獲得する必要がある。確か吹雪の説明だと、被害を受けた機器に残っていたデータか深海棲艦の情報を得ていたんだったな」

「そうです」

「だが、もし逆だとしたら?」

「逆?」

「カシカワは深海棲艦のデータを最初から知っていたとすればどうだ?」

「最初からって……」

「深海棲艦は発生源不明の進化型人工知能ではなく、カシカワが作ったネットウイルスということだ」

「そんな……まさか……!」

「ですがありえない話ではないですね……。全ての仕様を知っているカシカワなら、アンチソフトの構築は容易だと思います。そうですよね、提督?」

「明石の言う通りだ。ただ、あくまで可能性は高いという話であるから、カシカワが真犯人であるという確証はどこにもない」

「それって、ある意味賭けですよね……?」

「そうなるな。だが、そうでなかったとしても深海棲艦の猛威を放置しておくわけには行かないだろう」

「でもでもっ、どうやって深海棲艦に立ち向かうんですかっ?」

「そうですよ提督。いくら私たちが特務提督率いる艦娘だったとしても、一般のネットワークに侵入した深海棲艦なんて手の打ちようがないですよ」

「だからこその賭けだ。敵を殲滅するなら、本拠地を叩くのが一番効率がいい。深海棲艦の本拠地がカシカワにあるなら、方法はないことはない」

「でも可能性が高いだけで、確実とは言えないんですよね?」

「そうだ、だからあくまで俺個人の意見であって、やるかどうかは全員の覚悟が必要だ」

 

 元原の言葉で、部屋の中に数秒ほど沈黙が続く。元原と直接会話してない艦娘まで、元原の問いに対すして思考を巡らせていた。

 だが、その沈黙を破ったのは吹雪だった。

 

「私たちは司令官の艦娘です。司令官が指示すればどんなことだってします」

「……そうか。分かった」

 

 元原は、吹雪の言葉を聞いた後立ち上がる。

 

「では、提督として命令する。これより敵をカシカワとし、これを撃破すべく行動に移る!」

「はい!」

 

 元原の命令に、吹雪の声が呼応した。

 


 

 既に日も暮れ、雨までも降り出していた。そんな中、元原は艦娘たちを収めたPCを濡らさないようにカバーをして、一路彼の会社に向かっていた。

 この時点で交通機関は麻痺しており、いつものように電車で会社に向かうことは出来ない。幸いにも、元原の自宅と会社の間は数駅程度しか離れていないため、普段はあまり使わない自転車に乗って会社へと向かっていた。

 時間は18時を過ぎており、もう誰も会社にいないかと思われたが、幸いにも連絡が取り合えた宮戸が珍しく残業中とのことで、元原はとにかく一秒でも速く会社に着くよう、急ぐ。

 その道すがら、町の様子見てみるとだいぶ混乱しているようだった。

 スマホが繋がらず慌てている人、情報がなく右往左往する人、車の中で必死にカーナビをいじる人……。ネットに繋がった生活だからこそ混乱が重なり合ってしまっているのだろう。

 遠くでは何かの衝撃音と黒煙が上がっているのが見える。元原は祈るような思いを胸に抱きながら先を急いだ。

 会社についたころには19時になっていた。

 元原は会社に入ると、まっすぐにサーバ管理室へと向かう。その道中で宮戸と遭遇する。

 

「おう、元原!無事か!?何がどうなっているか分かるか?」

「知るか、んなもん!」

 

 元原はそう怒鳴りつつも、全力で駆け抜ける。

 するとその時、廊下を照らしていた蛍光灯が突然全部消える。

 

「おわっ!停電か?」

「こんな時にかよ!」

 

 直後に非常用電源が動作し、社内に電気が供給され始めた。二人は危機感を覚えつつ、サーバ管理室に到着する。

 元原は持っていた合鍵を使って管理室にへと入った。その時に、元原はここまで一緒についてきた宮戸に対して部屋の外で待つように言った。

 

「宮戸、お前はここで待ってろ」

「なんでだよ?俺にも手伝えることがあるはずだろ」

「いや、駄目だ。ここは俺だけでやらないといけないんだ。……頼む、分かってくれ」

「……クソッ。分かったよ、ここで待っててやる。終わったら全部聞かせてもらうぞ」

「あぁ」

 

 元原は管理室の扉を閉め、すぐに作業に取り掛かった。

 PCを作業デスクに置き、サーバとPCをLANケーブルで接続する。

 

「司令官、ここは?」

「俺の会社。さっき言った賭けの鍵を握る場所だ」

 

 そういっている間にもPCとサーバの同期を行う。

 

「このサーバはカシカワの子会社であるファザック株式会社のサーバと繋がっている。しかもネット通信以外に光通信も可能だ。ここからファザック、ひいてはカシカワのサーバへ艦娘による総攻撃を仕掛ける」

「でもうまくいくんでしょうか?」

「まぁ、そうなるように祈るしかないだろ」

 

 ちょうどタイミングよく、PCとサーバの同期が終了する。

 

「明石、このまま皆を放出しても問題ないな?」

「多分、ですが……」

「不安要素があるのか?」

「ないとも言い切れないのが問題なんですよ。本来なら艦娘は一般のネットワークには属さないイレギュラーな存在なんです。それを急に通常のネットワークへ流すなんて、何が起こるか分かったもんじゃないですよ」

「……言いたいことはなんとなく分かった。でもやらなくちゃいけない時だってあるもんだよ」

「……提督」

「それに、ここのサーバって結構すごいらしいから行くだけ行ってみろって」

「それ言っちゃいます?」

「まぁまぁ、もしかしたらすごいことあるかもしれないぞ」

「言い方が軽い」

「とにかくだ。早いとこ行ったほうがいい。割と時間がないぞ」

 

 元原は明石に催促する。というのも非常用電源は長時間の使用を想定していない。元原の会社の非常用電源の電力供給は2時間程度を想定している。さらにサーバに負荷をかけている場合は、より電力を消費するため、想定よりも短い時間で電源が尽きる可能性も否定出来ないのだ。

 つまりは一刻を争う状況ということなのである。

 そんなこともあって、元原はなるべく早くサーバに行くように促したのだ。

 艦娘たちがサーバに行くのを見届けると、元原はPCの前で彼女たちの無事を祈った。

 


 

「なんじゃここはぁ~!」

 

 真っ先に明石の叫び声が聞こえてくる。そこは元原の勤める会社のサーバなのだが、ただひたすらに巨大な空間が広がっていた。

 

「ひっろーい!」

「なんだか力がみなぎってくる感じがしますね」

「とにかく提督の指示通りにカシカワのサーバに行きましょう」

「でもどうやって行くんですか大淀せんせー」

 

 鈴谷の気だるげな質問に、艦娘たちが口々に話始める。

 

「あぁ、もう……。とりあえず、一般のネットワークに侵入するところからやりましょう」

 

 大淀の指揮の元、どうにかして一般ネットワークに侵入しようとするが、二進も三進もいかない。

 そんな中、サーバのシステムをいじっていた明石を大淀が咎める。

 

「明石、そんなところで遊んでないでこっちに協力してくれない?てか貴女が一番になってしなきゃいけないところでしょう?」

「ちょっとまって大淀。今すごいのできるかもしれない」

「どういうこと?」

 

 大淀の問いかけに、明石が実物で証明する。

 

「ここのサーバめっちゃ強いから新しい艤装が作れちゃう!」

「ホントですか、明石さん!」

「うそでしょ明石……」

 

 明石と他の艦娘は盛り上がっていたが、大淀だけは頭を抱えていた。

 実際、明石の手にはこれまでの艤装とは外見上まったく同じだが、システム面から見ればこれまでのそれとは別物であることがうかがえる。

 

「まぁまぁ、大淀。提督の命令にもあったんだし、早いとこ済ませちゃお?」

「……それもそうね。それじゃ明石は全員分の艤装を改造しちゃってくれる?」

「おーけー。3分間で全部やっちゃうよ!」

 

 そう宣言した明石は、ものすごいスピードで艦娘の艤装に改造を施していく。それは明石自身の実力と共に、サーバが持つ処理能力の高さが実現させているのだろう。

 こうして、ものの数分の間に全員分の改造が終了した。

 

「準備完了!いつでもいけるよ!」

「では、提督の代わりに私から……」

 

 大淀は一つ咳払いをすると、声を張り上げる。

 

「総員、出撃せよ!」

「了解!」

 

 艦娘たちは一斉に、サーバからネットワークという大海へと解き放たれた。

 


 

 カシカワ本社ビル28階では、たった数人の社員がパソコンに向かって何かを監視していた。

 

「どうだ、首尾よくやってるか?」

「えぇ、順調です。新型深海棲艦の実力は相当なものですよ」

「この世に存在するアンチウイルスソフトなんぞ、足元にも及ばない程のものだからな」

「これを作り上げられたことは本当に光栄ですよ。なんたって歴史に残る偉業を成し遂げるんですから」

「ま、それはこれからなんだがな。だが、この日のために我々は10年以上もの時間を費やしてきた。失敗は許されないぞ、我孫子主任」

「分かってますよ、久保課長」

 

 そんな話をしていると、パソコンからエラーを表示する警告音が1回だけ響き渡る。

 

「おい、今のなんだ?」

「分かりません。今調べてみます」

「頼むぞ、こんなところで計画がおじゃんになったら大変なことになるぞ」

「んー、これはどこかのアンチウイルスソフトが深海棲艦に攻撃を与えたようです」

「それは計画に支障ないものなのか?」

「えぇ、抵抗はしたようですが32ミリ秒で破壊したようです」

「そうか、それなら良かった。こんなところで終わってもらっちゃ困るからな」

「まったくです」

 

 彼らはそうやって笑い飛ばす。しかし、先ほどのエラーの正体を詳細まで把握することを彼らは怠ってしまったのが間違いだった。

 

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