【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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8話 終焉と日常

「ちょっと阿賀野姉ぇ!ちゃんとやってよ!ばれちゃうよ!」

「ごめんごめーん。ちょっとミスっちゃった」

「まったく。今は隠密行動中なの忘れないでよね?」

「はーい」

 

 彼女たちは現在第1から12艦隊まで分かれ、カシカワのサーバに向けて進軍の途中であった。

 その途中で深海棲艦に遭遇し、阿賀野を中心とした第8艦隊がそれに対処していたのだ。カシカワ側に彼女たちの事がばれないよう、隠密行動での奇襲というざっくばらんとした作戦だったのだが、深海棲艦と戦闘が始まってしまったためわずかな時間であったが感知されてしまったのだ。

 しかし、カシカワ側はこれを艦娘と深海棲艦の戦闘ではなく、アンチウイルスソフトによるファイアウォールの動作と捉えたのだった。結果としてカシカワ側には彼女たちのことは感知されずに済んだ。

 

「ホント、阿賀野姉ぇは肝心なところで失敗するんだから」

「もー!やめてよねー!」

 

 矢矧に嫌味っぽく言われながらも彼女たちは進軍を続ける。

 一般ネットワークに接続されていたファザックのサーバには、裏マップに存在していた異形の深海棲艦にも似ていた。

 そこを戦闘を避けるようにして進んで行く。すると、光で出来た巨大な出入口がそこにはあった。

 彼女たちは全員集合する。

 

「この入口は?」

「だいたい予想はついてますけど、カシカワへの入口ですね」

「偵察機でも出しますか?」

「そうですね」

 

 赤城が艦載機を飛ばし、光の門のような入り口に向かわせる。

 艦載機が光の門に入ってからしばらくすると、艦載機の情報が入ってきた。

 

「……!すごい数の深海棲艦がいます。どうやらここが深海棲艦の本拠点と思われます」

「この先はカシカワのサーバになるから、提督の賭けは当たっていたようですね」

「赤城さん、もう少し詳しい様子は分かりますか?」

「ちょっと待ってください。……どうやら一区画が深海棲艦の巣窟のようになっているみたいです。攻略は困難を極めるかもしれません」

「そんな……」

「でも、それを可能にするのが、私たちに課せられた使命です」

「そうね。ただで負けるわけには行きませんから」

 

 彼女たちは改めて覚悟を決める。

 誰が合図したわけでもなく、彼女たちは各々が取るべき行動を取っていた。

 先陣を切って光の門に突入する駆逐艦娘。それに続くように巡洋艦、戦艦の艦娘が続く。戦艦の艦娘の周りには潜水艦娘が警戒のために輪形陣を取り、空母艦娘はそれぞれ攻撃隊を発艦させる。

 ここにカシカワと元原特務提督の艦隊との全面交戦が始まった。

 


 

 カシカワ本社では、謎のエラーを吐き続けるシステムと格闘が行われていた。

 

「一体何が起きているんだ!?」

「分かりません!」

「畜生!ここまで来て問題発生など聞いてないぞ!」

「我孫子主任!なんだか様子が変じゃないですか?」

「うん……。この感じ、まるで向こうからファイアウォールが来たみたいだ……」

「どうします?このままじゃシステムごと破壊されますよ!」

「今考えてる……」

「我孫子主任!今すぐ対策を講じろ!でなければ計画が台無しに――」

「ちょっと黙ってろ!」

 

 普段おとなしい我孫子が叫ぶ。それに驚いたメンバーは、一斉に黙ってしまった。

 

「何がどうなってんだ……。何かおかしい……!」

 

 我孫子がぶつぶつと呟く。これまで見たことない、異様な光景が広がていた。

 

「と、とにかくだ!今は情報をかき集めろ!どんな小さなことでもいい!それとこちらもファイアーウォールを装備だ!急げ!」

「は、はい!」

 

 カシカワの社員は久保の指示により、新たな設定(戦術)実装(採用)することになった。

 


 

 カシカワの反応により、艦娘は苦戦を強いられていた。

 

「なんか急に強くなった感じしないっ!?」

「ホントッ!それなっ!」

 

 深海棲艦に攻撃を与えながら、敵の猛攻を躱す。しかし、それを続けていくのは非効率かつ不毛な行為である。

 何かしらの打開策を打たなければ敗北になるだろう。

 

「でもどうするんですの!?こんな状況じゃ何もできませんわ!」

「撤退だけはできません。徹底攻勢のみです」

「加賀さんそんなキャラだったっけ!?」

「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」

 

 冗談を言う状況ではないほど、敵の攻撃は激しい。

 そんな中、空母の雷撃機が金剛をめがけて攻撃を仕掛けていた。

 

「お姉さま!危ない!」

 

 もの凄い勢いで突っ込んでくる雷撃機。このままでは回避は不可能だろう。大破は免れないほどの雷撃機を目前にして、金剛は覚悟を決める。

 その時不思議なことが起きた。

 なんと雷撃機が金剛のことをスルーして飛び去っていったのだ。

 その光景を見た彼女たちは一瞬唖然とする。

 

「な、何が起こったデスカ?」

「でもお姉さまが無事ならいいです!」

 

 彼女たちはこの現象について考えようとするが、戦闘の最中であるためじっくり考えている暇はなかった。

 すると、直後に赤城が敵駆逐艦に接近してしまう。この距離では砲撃で簡単に撃沈されてしまう。だが、その駆逐艦は赤城に目もくれずに横を通り過ぎて行った。

 これを見ていた吹雪はある一つの考えがよぎる。

 

「もしかしたら……」

 

 吹雪はその考えを確かめるために、すぐさま行動に移した。

 それは敵に対する突撃である。まっすぐ重巡級の敵に走っていく吹雪の姿を見て、ほかの艦娘は驚きを隠せなかった。

 

「吹雪ちゃん!?何してるの!」

「睦月ちゃん!ちょっとわかったことがあるの!」

 

 敵までもう目と鼻の先まで迫っていた。このままでは衝突してしまうと思われた。

 だが次の瞬間には、敵の重巡級は吹雪のことを積極的に回避する。

 

「えっ?なんで……!」

「やっぱり!思った通りだ!」

 

 この時吹雪は一つの確信をする。

 

「特殊兵装を装備している私と赤城さんと金剛さんは、味方と誤認している可能性があります!」

「それは本当ですか!?」

「今確信しました!」

「それじゃ、やることは一つですネ!いきますヨ!」

「はい!」

 

 三人は危険を顧みずに敵の巣窟へと吶喊する。

 彼女たちを感じ取った深海棲艦は、「同士討ちを回避する」という思考結果のもと、まるで三人を通すために左右に割れていく。

 その最深部に淡い光の壁があった。これこそが深海棲艦を生み出すカシカワのパーソナルサーバの一端である。

 

「いきますヨ!全砲門Fire!」

「全艦載機、発艦!」

「魚雷発射!いっけーっ!」

 

 三人がそれぞれに攻撃を行う。金剛の砲撃が光の壁に命中し、大きなヒビが入る。甲型烈風の機銃掃射で細かくヒビを入れていく。最後に吹雪の魚雷が巨大な水柱を形成するほどの爆発を起こす。

 ついに光の壁は崩壊し、中から深海棲艦の海(汚れた情報)が流出する。

 三人はその勢いに乗って、海域を離脱していった。

 


 

「駄目です!原因不明のエラーに対してファイアウォールが効きません!」

「なんなんだ、あれは!?どうして深海棲艦を無力化できる!?」

「だ、駄目です!攻撃不可によりここのサーバまで来てしまいます!」

「なんでだ……。どうしてこんなことに……」

 

 カシカワ本社の一角、深海棲艦の動向をチェックしていた久保以下社員は、元原率いる艦娘艦隊に苦しめられていた。彼らから見れば、艦娘の行動は原因不明のエラーが正常と判断されている状態にあるからだ。

 

「あぁっ!原因不明のエラー、サーバに攻撃を開始……!」

「なんでもいいからこいつを防げ!」

「間に合いません!まもなく突破されます!」

 

 そしてネットワークにつながっているものの、高度なセキュリティがかけられている。だが、それはいとも簡単に突破されてしまう。

 

「サーバのファイアウォールが突破されました……」

「なんということだ……」

 

 部屋の中はPCが発するファンとビープ音のみが壊れたカセットテープのように繰り返し流れていた。

 ふとパソコンの画面をのぞいた社員が驚きの声を上げる。

 

「こ、これはっ……!」

「どうした?」

「課長……、データから情報が流出しています……」

「なんだと!どの情報だ!」

「サーバに入っていた情報全てです……。何もかもが白日の元にさらされます……」

「そんな……」

 

 彼らのサーバには、不正に取得した個人情報や深海棲艦のプロトタイプのソースコードなどが保存されていた。それが流出するということは、世界的な猛威を振るっていたネットウイルスの正体の一端がカシカワにあることを示している。

つまり彼らが犯罪行為をしていたことがすべてわかってしまうのだ。

 そのことを理解してしまった久保は、その場で力なく膝から崩れ落ちた。

 


 

『……次のニュースです。世界規模で被害が発生していたネットウイルスが、カシカワの社員の手によって行われていた事件について、警視庁は港区にあるカシカワ本社に対して家宅捜査が行われました……』

 

 元原が自社のサーバに艦娘を放出してから数日、カシカワ本社には連日マスコミ関係者と警察官が押し寄せ、それぞれが様々な方法で情報を確保する。

 元原はそのようなニュースを見ている傍ら、自室でカップ麺をすすっていた。元原の会社ではほぼ無関係ではあるものの、カシカワの孫会社であること、会社とカシカワのサーバ同士が接続されていたこともあり、一時的に出勤をやめるように通達が入ったのだ。

 

「はぁ、大変だなぁ……」

「そうでもなさそうに見えますよ、司令官」

 

 PCの中の吹雪がそう言った。

 あの時、カシカワに攻撃を行った後、彼女達は無事に帰還した。しばらく元原のPCにいた所、艦これのサービスが無期限停止してしまったことによりブラウザに戻ることができなうなってしまったのだ。

 そんな訳で元原のPCに居候しているわけだ。

 

「いつまでこうしてるんだろうな……」

「司令官は今の状態が嫌なんですか?」

「いやという訳ではないんだけど……」

「じゃあいいですよね!」

「何がいいんだか知らんけど、まぁいいか」

 

 彼女達との生活は始まったばかりである。

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。個人的なあり得る艦これ世界を書かせていただきました。
 いやー、大変だった。それっぽいこと書いたからツッコミ入ったら答えるの難しいかも。
 まぁ、そんなことは抜きにして感想とか欲しいのでください(懇願)

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