【艦隊これくしょん】「雨」合同作戦誌【合作】   作:ウエストポイント鎮守府

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 はじめましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。今回の合作で1番の狂人を自負してる佐武です。
 今回はですね、鉄路での艦娘の輸送というテーマで書かせていただきました。
 至らない点、分かりにくい描写など多々あるかとは思いますがどうか最後までお付き合いください。




緊急戦力輸送(佐武駿人)
前編


────2017年某月某日

 

 舞鶴鎮守府にて

 

 中舞鶴駅から舞鶴鎮守府へ続く専用線の先、普段は数両の貨車が並んでいるそこには鮮やかなブルーをまとった客車が佇んでいた。いわゆる、ブルートレインである。

 

 その前に整列していたのは今回の北方方面支援へ向かう艦隊である。

 かねてより敵戦力の出没が多数報告されていた津軽海峡及び千島への対応及び、敵地攻略作戦のためとして各地からの戦力集結が図られたのである。

 

「────これより我々舞鶴鎮守府大湊派遣隊は各地からの部隊の集う大湊へ向かう。我々舞鶴鎮守府は見ての通り鉄路での移動となる。

道中の行程については国鉄の平田助役から詳しくお話していただく……平田助役、お願いします」

 

 壇上から降りた青年将校に代わり軍服とはまた違った紺色ベースの制服を着用した30代後半から40代であろう男が登壇する。

 

「ただいま武本中佐よりご紹介に預かりました国鉄の平田です。えー…今回は8両編成の客車列車を使用いたします。現在機関車が繋がっている、一番前の客車が8号車、一番後ろが1号車です。7、8号車は業務用車ですのでまるごと締切扱いとなります。ご注意ください」

 

 平田、と紹介された男は今度はもう一人の若い職員の持ってきた路線図を指し示しながら説明を続ける。

 

「経路ですが、東舞鶴駅を経由して、綾部でスイッチバックして山陰本線を走行します。京都駅からは東海道本線、湖西線、北陸本線、信越本線、羽越本線、奥羽本線、東北本線を経て、野辺地駅より最後のスイッチバックを行い大湊線へと参ります」

 

 次に停車駅ですが、と一区切りしてから今度は黒い点を順に叩いていく。

 

「途中、綾部、敦賀、直江津、新津、酒田、秋田、青森、野辺地で乗務員交代等のため停車することとなり、所要時間は22時間と40分の───日本海回りのコースとなります。長い旅路となりますが、どうぞお付き合いください」

 

 つまりほぼ23時間車内に閉じ込められる、というわけだ。それを聞いた艦娘達からは口々に驚き呆れたような声をあげる。

 

「これは作戦の一環だ。文句なんか言ってないで早く乗った乗った」

 

「部屋割りはあらかじめ説明した通りだ! 各員別れて乗車!」

 

 手を叩いて乗車を促す青年将校二人と艦娘達に苦笑しながら平田助役と若手の堀井助役とそれを見守る。

 

「あっ……うちのとは違ってかわいいですね」

 

「堀井助役、あまりデレデレしてくれるなよ」

 

 客車に乗り込む際に暁や綾波に手を振られて舞い上がった堀井助役を嗜めつつ平田助役はその背後に刺さるような視線を感じていた。

 

「何か落ち度でも?」

 

 車内ですれ違ったときにはそんな言葉を刺されることを覚悟して誰もいなくなったホームを確認する。

 

 全員の乗車を確認したのち二人は手を上げて車掌に戸閉合図を出し、堀井助役は機関車へ、平田助役は最後尾の車掌室へ乗り込む。

 

《9081列車機関士へ、こちら9081列車車掌です。応答願います》

 

《9081列車車掌、こちら9081列車機関士です。どうぞ》

 

《9081列車発車ー!》

 

「出発注意! 9081列車発車!」

 

 綾部駅までを担当するDE10形ディーゼル機関車が高らかに汽笛を上げて出発する。

 大湊警備府への支援艦隊を載せた臨時9081列車は舞鶴鎮守府に残る艦娘達や手透きの男たちが手を振り帽を振り、見送るなか、舞鶴の門を抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 単線の中舞鶴線をゴロゴロと進む列車は途中並走する国道を走る自動車に追い抜かされつつ湾のすぐそばに迫る山と赤レンガ倉庫群の間を抜けていく。

 湾に沿って走る列車はかなりの低速運転だ。

 

《ご乗車ありがとうございます。この列車は大湊行きの貸切列車[さくら]号です。車掌は神田と北野、ご案内の不知火、堀井、東雲です。終着大湊までご案内します。機関士の東は途中園部までのご案内となります。

大湊には明朝5時40分の到着予定でございます》

 

 ガタンガタンという小気味良く鳴るジョイント音の調べと車掌の車内放送がよく合い旅情をかきたてる。

 

《続いて車内のご案内です。現在進行方向一番前の車両から8号車、一番後ろは1号車です。お手洗いは1、2、6号車にございます。シャワールームは2号車と6号車です。

また、次の綾部駅にて8号車側へ車両を繋ぐ連結作業を行います。客車揺れますのでご注意ください》

 

 やがて海沿いの国道を離れた線路は北吸隧道をくぐる。ここを抜けると最初の経由地の東舞鶴駅だ。

 汽笛を鳴らした機関車は北吸隧道を速度を上げて一気に潜り抜けると東舞鶴駅へ入線する。

 そのまますぐにスイッチバックして舞鶴線の本線へと転線するのだ。

 

 そのまま舞鶴線を一気に駆け抜けた列車は綾部に入線し機関車をピンクのEF81へと付け替える。同時に進行方向後ろ寄りに艤装や物資を載せた貨車を連結しこの先を15両編成の混合列車として走行する。

 

 

 

綾部駅

 

 

 

 綾部駅の場内信号を越えてきた列車はギィィィイイというブレーキシュー(制輪子)の金属音とともに停止位置目標にピタリと停車する。 

 ここまで引っ張ってきたDE10は誘導係を乗せるとすぐに切り離されて側線へと行ってしまった。

 綾部では車両増結のために10分近く停車するためか何人かの駆逐艦も外へと出てきていた。

 恐らく目当てはホームの駅弁なのだろう。一目散に売店へ走って行っては日頃溜め込むばかりでほとんど使わない給金を引っ張り出す。

 たちまち行列のできた売店に駅弁の存在に気づいた戦艦空母も加わる。

 

 そのうちに側線から目当ての貨車を引き出してきたDE10は入換信号に従い推進運転で貨車を先頭に入線してくる。

 助役の赤旗で一旦停止。この時点で貨車と客車の距離は1mほど。

 作業員が軌道に降りて連結ピンを操作し、連結器が双方共に錠揚げ位置即ち連結待機の状態になると作業員がすぐに退避する。

 再び助役が緑の旗を掲げるとDE10はゆっくりと貨車を押し……ガコン! という音と共に作業員が再び貨車と客車にとりつき、連結を完了させた。

 

 

 出発準備が整い出発信号現示を機関車がピィィと発車前の汽笛を鳴らす。

 それを聞いた艦娘たちは一斉に客車へと駆けていく。

 

「ほら、長門早くして。行くわよ!」

「くっ……! おじちゃん釣りはいらん!」

「いや10円足りねぇぞ!」

 

 最後まで悩んでいた二人もホームを売店のおじいちゃんと疾走し、ギリギリ飛び込んだ。

 

「もう! だから早く決めてって言ったじゃない」

「仕方がないだろう。どれもこれもうまそうだったのだから!」

「だからって……きゃっ」

「おっと……! 結構揺れるな……」

 

 汽笛一声。二人が口論になりかけたところでこれから野辺地まで列車を引くEF81が力強く客車を引き出した。

 製造から30年以上経った客車は継ぎ目をミシミシと軋ませながらも1両1両ゆっくりと進み始め綾部の駅を出発した。

 この先は機関士の交代のある敦賀まで途中無停車である。複線電化された山陰本線を、後ろの荷物(貨車)のため最高速度に95km/hの制限がかかるが、雪の残る山中を列車は速度を落とすことなく時にクネクネと邁進する。

 余談ではあるが京都の山中を走るこの区間は秋には紅葉で山が美しく色づき、多数の行楽客が詰めかける観光地でもある。新線切り替えを行った区間の旧線で観光用のトロッコ列車を運転していることからもその事がわかるだろう。

 これが秋ならきれいな紅葉が窓の外一面に広がっているんだろうけどなぁ、と通路の補助席に腰かけて車窓を眺めていた夕張が呟くと向かいに同じく補助席を出して座っていた響が苦笑する。

 

「仕方ないよ。これも任務なんだから。ところで木曾さんとか軽巡のみんなと一緒にいなくていいの?」

 

「いいのいいの。それに私ってほら、体格的に駆逐艦に近いじゃない? だからこっちにいる方が落ち着くの!」

 

「人はそれをボッチっていう」

 

「う、うるさいなー!」

 

 夕張は不貞腐れたようにそっぽを向く。

 ごめんよ、と響が宥めるが夕張は「知らない知らない」と聞く耳を持たない。

 見かねた綾波が個室から出て来て鉄拳制裁(げんこつ)を加える頃には列車は京都の市街地へとたどり着いていた。

 

 

《皆様お疲れ様です。ただいまの時間は午後0時12分です。列車は定刻通り嵐山駅を通過しいたしました。間もなく車窓に京都の市街地が見えて参ります。右手に見えますのが有名な映画村です。

当列車は間もなく京都駅を通過します》

 

 

 

 東海道本線の新快速を出発信号機で待たせつつ上り外側線と内側線の間にある通過線を抜けていく。

 ホームにはどこから情報を仕入れたのか、既にカメラを構えた一団の姿があった。

 

「一応、こいつは運行情報が秘密だから漏れるのはそこそこまずいんだがなぁ……」

 

 書類を広げたA寝台個室で青年将校───眞鍋(まなべ) (まもる)中佐は車窓に映るカメラの群生を見ながらため息を吐いた

 これだけ話題になっているなら深海棲艦にも作戦は筒抜けではないのか。そんな嫌な予感がした。

 そもそも、舞鶴や佐世保など各地から北方へ増援が送られるのだって津軽海峡や宗谷海峡から侵入した敵機動部隊の日本海沿岸への爆撃が無視できなくなってきている、という面もある。

 

 そして眞鍋護中佐の予感は敦賀駅停車中に的中する。

 

 

 

 

───敦賀駅

 

 

 

 

 

 艦娘を乗せた列車は雪を散らしつつ若干の早着で轟音とともに敦賀駅へと滑り込んできた。

 列車が空気ブレーキ特有の甲高い金属音を響かせながらゆっくりと動きを止める。

 車掌が停止位置を確認していると敦賀駅の助役が走ってきた。

 

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

「9081列車の車掌ですか?」

「はい、9081担当車掌の不知火です」

 

 敬礼の後、助役がメモを開く。口頭通告だ。

 

「9081列車に通告します。津軽海峡を通過した深海棲艦の機動部隊が確認されています。空襲警報には充分注意してください。えーなお、日本海縦貫線は各線で間引き運転を行っております」

「はい、深海棲艦の機動部隊による空襲に注意する件、日本海縦貫線は各線で間引き運転の件了解しました」

 

 通告を受けた不知火は内容をメモし、復唱する。

 

「かなり危険な行路になって申し訳ないね。危険だと思ったらすぐに停めるんだよ」

「了解です。お任せください」

 

 大垣、という名札を着けた助役は満足そうに頷くと機関士の方へも走っていった。機関士はこの駅で交代するため、ちょうど引き継ぎ中の様だ。

 

 5分ほど停まっていただろうか助役が出発合図を送り、列車は再びギシギシと動き出した。

 助役の敬礼に見送られて雪の降るなか列車は駅を後にした。

 

 

 

 

 

 列車が日本海沿岸の崖と山を縫う路線に入ってしばらくしてからのことだった。

 提督執務室と化したロイヤルスイートへ堀井助役が駆け込んできた。

 

「眞鍋中佐、どうも我々は奴ら(深海棲艦)からは逃げられそうにないようです。

先ほど輸送指令から空襲警報の伝達がありました。ただいま全力で最寄りのトンネルへと向かってます」

 

「トンネルまでの時間は」

 

「約……30分といったところでしょうか。敵機が目視圏に達するまでは20分前後かと……運命の10分間、覚悟していただきたい」

 

 それでは!と堀井助役は小走りで退室すると編成の前の方へ走っていった。

 その後ろを完全武装の艦娘が数人さらに駆けて行った。

 


 

「敵はすぐに来ます! 急いでください!」

 

 寝台客車特有の狭い廊下を駆け抜け、各デッキに2名ずつ配置していく。

 

「ん、なんだどうした───」

「邪魔です」

 

 途中廊下を走る音を聞いた長門(障害物)が部屋から首を出すが即座に先頭を走る不知火によって部屋の中へ強引に押し込まれる(右ストレートをお見舞される)

 伸びた長門を陸奥が部屋に引きずり込む横を不知火達は目もくれず一目散に走っていった。

 

「矢矧さん、索敵機を! 北北東……若干東よりにお願いします」

「承知したわ……行け!」

 

 矢矧の放った零式水偵はその小ささに見合わぬ速度でぐんぐん高度をあげていくとやがて見えなくなってしまった。

 

「どうですか……?」

「だめね、見つからない……」

 

 しばらく飛ばしたところで不知火が横にいる矢矧に問いかけてみるが結果は芳しくないという。少し高度をあげてみるわ、と矢矧が呟いた。

 

「……! 見つけた!

新型(タコヤキ)30、いつものが50! これは正規空母もいるわよ……」

「了解です。目視圏まではどれくらいですか」

「ざっとだけどね……5分くらいかしら」

 

 幸運なことに敵編隊を先に発見した矢矧の偵察機は雲に隠れつつ触接を続ける。

 

「日本海なんかに敵の正規空母がいるのはさすがにどうかとは思うけど……タコヤキに爆弾が付いてないだけましかしらね」

《熊坂トンネルまであと10分!》

 

 ポツ、ポツと雪に混じって降り始めた雨のなかを、トンネルへ滑り込むべく機関車はほぼトップスピードで鉄路を駆けるが次の熊坂トンネルまではまだ約10㎞もある。戦闘は避けられそうにないようだ。

 

「瑞鳳さん、直掩を!」

「任せて!」

 

 その搭載機を全て零戦へと載せ変えた瑞鳳がありったけの矢を次から次へつがえては空へと打ち上げる。弓から打ち出された矢矧はしばらく飛翔するとミニチュアサイズの零戦へと変化し、列車の上空で編隊を組む。

 27機の零戦隊は3機一組となり列車上空四方八方へ目を光らせる。低空に一編隊を残し、残りの八編隊は空高く、いつでも敵機を返り討ちにできるよう高度を上げた。

 航空機というものは一般的に相手より高い高度に陣取るのが優位である。なぜなら降下によって得られる加速と太陽を背にした奇襲攻撃が可能だからだ。つまり、高高度からの降下をかけつつ奇襲することで零戦の土俵である格闘戦(ドッグファイト)へ一気に持ち込むのだ。

 

「敵機来襲!」

 

 目を閉じて零戦隊と視界を共有していた瑞鳳が敵機の接近を知らせる。同時に零戦隊は2群に別れて雨雲で霞んだ太陽を背に突撃、突然湧いて出てきた迎撃機によって敵機編隊は隊列を乱し、初撃は完全な奇襲となった。

 零戦隊の奇襲によって一時は編隊を乱したが即座に新型機(タコヤキ)は爆撃機を切り離し、零戦隊へと逆襲を仕掛けてきた。

 やがて両陣営は入り乱れてのドッグファイトへと突入し爆撃機は数を減らしつつも零戦隊の迎撃を掻い潜り列車を射程に捉えようとしていた。

 

《敵機来襲! 対空戦闘ヨーイ!》

《これより当列車は戦闘地域に突入します。非戦闘員は床に伏せてください!》

 

「射撃用意……撃ェッ!」

 

 田畑のすれすれを飛ぶ爆撃機に照準を合わせ、不知火の号令と共にデッキに陣取った吹雪、初月、朝潮、白雪、野分、愛宕、矢矧の主砲と対空砲が一斉に火を吹いた。平野に響く砲声と共に車体が左右へ大きく揺れた。

 

「この車両は防弾ガラスなんてないのよ! 機銃一発すら撃たせないで!」

《了解!》

 

 装甲の「そ」もない客車にとっては機銃弾一発が乗員乗客の命取りになりかねない。また、後ろに繋げているコンテナ車には燃料タンク車も含まれている。誘爆でも起こされたらたまったものではない。

 

「初月! 後方上空、投弾態勢の敵機が2機。必ず落として!」

「了解だ! 撃て!」

 

 初月の号令で腰の艤装に着いている長10㎝砲が激しく対空射撃を敢行する。

 深海棲艦の爆撃機の周りに次々と対空砲による黒煙の花が咲く。だが、だんだんと強くなってきた雨のせいで視界が悪く、なかなか突っ込んでくる黒煙に覆われた敵機に直撃弾がない。

 

「クッ……このォ!」

「まずい! 敵機投弾態勢!」

 

 黒いカブトエビのような機体が機首を引き上げ始めると、その腹に抱えられていた爆弾が宙へと投げられた。

 しかし、弾幕射撃の甲斐あってか敵弾は線路を逸れ、近くの畑へと落下した。

 見た目はミニチュアだが畑の土壌を巻き上げ、大穴が空いた着弾点を見るとその威力がわかる。爆風で車体を揺らされながら列車はカーブを制限ギリギリで通過した。

 

「トンネルまであと少しよ! 頑張って!」

「機銃掃射! 伏せて!」

 

 黒い機体が下部の銃口から火を吹いたのと同時に不知火は自分よりも随分背の高い矢矧を多少強引に、まるで床に叩きつけるように伏せさせた。

 すぐに敵機の接近に気づいた瑞鳳の零戦が、機銃掃射をかけた敵機を撃墜したがすでに発射された銃弾は2号車と3号車の連結部に着弾した。鋼板を貫通する音と共にデッキと貫通幌に穴が開き、風雨と機銃弾が不知火と矢矧が陣取る車内へと飛び込んできた。

 

「大丈夫ですか!?」

「平気よ……それよりトンネルまで持ちこたえるの。いいわね!?」

「了解です!」

 

 矢矧に促され、不知火は共に対空射撃に戻るが、矢矧の頭からは落下してきた部品で切ったのだろうかどくどくと血が流れていた。

 

「て、提督! どうしたんだこれは、なんの騒ぎだ!」

 

 眞鍋中佐の執務室に飛び込んできた長門はその場のメンバー同様に伏せながら提督に尋ねる。

 

「お前、さっきの放送聞いていなかったのか! 深海棲艦の空襲だよ、銃撃を受けたんだ!」

「き、聞いてないぞ! 私が気を失ってる内にそんなことになっていたとは……!」

「長門、どこへ行く!」

 

 床に伏せながら外へ出ようとする長門を眞鍋中佐が呼び止める。

 

「決まってるだろう。私の艤装を取りに行くんだ。このまま黙ってやられるものか!」

「無茶だ! それに今後方のコンテナを開けるのはかえって今護衛してくれている彼女らの邪魔になる。わかったらそこに寝てろ!」

「しかし!」

 

 思わず声を荒げて立ち上がった長門だが、すぐにバランスを崩して床に側頭部を強打した。突然、列車がガクンと揺れたのである。機関車がブレーキを入れたのだ。つまりトンネルは目と鼻の先である。恐らく先頭はもうトンネルに入る頃だろう。

 同時に最後のチャンスとばかりに多数の敵機が後ろから食らいついてきた。

 

「野分、白雪もうすぐトンネルだ! 後ろの敵機を近づけさせるな!」

「分かってます! 撃ぇー!」

 

 時折銃弾が飛んでくる中で、初月は他の二人を鼓舞するように声を張りあげた。

 野分もそれに答えるように盛んに対空射撃を行い、敵機を寄せ付けまいとする。

 客車最後尾の電源車から身を乗り出しつつ3人が必死に射撃した甲斐あってか列車を追うように迫っていた敵機はトンネルの直前で機体を起こし、列車の追尾をあきらめた。

 間一髪トンネルへと滑り込んだ列車はさらに非常ブレーキをかけてトンネル内で急停車した。

 

《お知らせします。当列車は空襲警報が解除されるまでこのトンネルにて待機いたします。なお、合わせて車両点検を行います。発車までしばらくお待ち下さい》

 

「どうやら……逃げ切ったみたいだね」

「あぁ、しかしこれからどうする?」

「どうするもなにも……彼らが何か言ってくるまで待つしかないだろう」

 

 伏せていた床からベッドへと移動してドサッと倒れこんだ眞鍋はなげやりな風に呟いた。

 やることが無いことが不服なのか、不満気な顔で抗議しようとした長門の声は荒々しく扉を開けて入ってきた男の声に遮られた。

 

「よぉ、相棒。生きてるか」

「なんだ、武本中佐。貴官も無事だったのかい」

「無事なもんか、見ろこれを。一張羅が台無しさ」

 

 そう言って武本中佐が差し出してきたのは大きく破れた制帽だった。

 

「跳弾が伏せてた俺の頭上すれすれを通過していったんだ。もう少しで俺の頭もザクロだよ」

「ごめんごめん。で、何の用だい?」

「ああ、そうだそうだ。これから乗務員が車両点検をするらしいが何人かに手伝ってほしいらしい」

「わかった。すぐに行こう」

 

 じゃあ俺は先に行ってるぞ。と言って武本中佐は部屋を出ていった。

 

「じゃ、長門一緒に行こうか」

「あ、ああ」

「あっその前にこれを着てね。一応トンネルの中だし間違いがあっても困るから」

「む……これか、少しキツいからあまり好きではないのだが……」

 

 眞鍋はその制服の上に反射ベストを、長門の方は作業服に反射ベストを重ね着した格好だ。やはりというかいろいろとかなりキツそうである。

 だからこれはキツくて苦手なんだと、長門はぶつぶつと愚痴りながら宥める提督と共に車外へと向かった。

 




 今回は前後編の2部構成となりました。しかもこの後書きを書いている時はまだ後編が500文字くらいしかかけていないという……()

 恐らくですが未来の僕が頑張ってくれると思うので現在の佐武は諦めて遊んできます。
……アッ許して提海さん!!!!

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