少女とおじさんが駄弁るだけ(凍結)   作:ヤマニン

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こんにちは、ヤマニンです。

お約束通りに、先週休んだ分を連投いたします。

では、ごゆっくりお楽しみください。


二人について おじさん視点

Chapter 二人について

 

薄暗い雲が太陽を隠し、夏にもかかわらず少し肌寒いと感じる今日この頃、俺は少女が待つであろう公園に向かって歩いていた。

 

_____もうあの子はいるかな?

 

あの少女に出会ってから早3カ月。はじめは口数も少なく、あまりこちらを見てくれなかったが、徐々に口数も増えよく笑ってくれるようになった。

 

_____まぁ、ほかの人からしてみればあまり分からない変化かもしれないが……

 

あの子といるうちに分かったことがある。それは、彼女がとても優しい子だということ。特に彼女が家族の話題をしている時は本当に嬉しそうに話してくれるのだ。それだけであの子が家族のことを大切に想っていることがわかる。

 

______誰かを大切に想う気持ち…俺も見習わないといけないよな

 

大人が子どもに学を教えることは当たり前だが、大人が子どもに言われて気付かされる時ほど、自分の視野が狭くなったと実感するときはない。大人ってそう考えると、誰しもがみな平等に汚くなってるのかもしれない。だから、一生懸命に一つのものに取り組む人間に魅せられるのはそういった汚い気持ちを洗われるからかもしれないな。

 

______俺も何か趣味の一つか二つ、みつけてみるか……

 

俺は早くも老後の心配をしつつ、何かいいものがないかと思考した。……そうだ、あの子にも何か趣味があるのか聞いてみよう。

 

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「てなわけで、君は何か趣味はあるかい?」

 

「…いきなりどうしたの?」

 

俺は、ベンチに座ったと同時に彼女に質問した。彼女は訝しげにしていたが、すぐさま考えるように空を見上げた。

 

「……こうやって毎日、朝おじさんと会うことかな」

 

「……」

 

「…?……どうしたの?」

 

「…い、いやっ、なんでもないよ」

 

_____くそうぅ…今のは卑怯だろぉ……

 

まさかこんなにも年の離れた少女にドキッとさせられるとはな…。

 

「ははっ……嬉しいこと言ってくれるね」

 

「…わぷっ」

 

俺は照れ隠しするように彼女の頭を優しく撫でる。

 

「…それでおじさんは何かないの?」

 

少女は崩れた髪を直しながら上目遣いで聞いてくる。……あざとすぎるだろこの子。

 

「んーここに来る途中でも考えていたんだけどな。これがなかなか出てこないのよ」

 

「……趣味って考えて出るものじゃないと思う」

 

「……えっ」

 

「…その事が好きではじめる人もいるけど、なんとなくやってたらそれが趣味になってたって人もいるんじゃないかな」

 

「…なるほど」

 

確かにこの子の言うように、日常的にやっていたことがいつの間にか趣味になっていたという事も十分にあり得る事だろう。

 

「…おじさんって何か好きなことってないの?」

 

「…言われて思いつくことがないな」

 

「…じゃあ今習慣になっていることは?」

 

「今か?……そうだな、朝、ある可愛い女の子とお喋りすることかな」

 

俺はニヤッと笑い、彼女を見る。

 

「…つ!…」

 

彼女は大きく目を見開き、俺と目が合った瞬間に顔ごと横にそらした。彼女の横顔が若干赤みを帯びていることから照れているんだろう。

 

_____ふふっ、さっきの仕返しだよ

 

大人げないだろうがそんなことは関係ない。……男はいくつになっても少年心を忘れてはいけないのだ。

 

「…そういうのはいいからっ!」

 

彼女は少しムスッとした表情で俺を見つめる。ここは真面目に答えたほうがよさそうだな。

 

「最近は…というか、俺は星を見るのが好きなんだ」

 

「…詳しいの?」

 

「んにゃ、まったく。…でも、星を見てるとすごく心が洗われた気分になるんだ」

 

人がたまに意味もないのに空を見上げるように、俺は意味もないのに快晴の日の夜はよく星を見る。この広い銀河系の星の中でこんなちっぽけな世界で生きてるんだなって考えると、小さな悩みなんかすぐ吹っ飛んでしまう。こんなことを悩んでるんだったら、次の楽しいことを考えよう…と。

 

____そう考えると、星を見るっていうのも俺の趣味になってるのかもな

 

「…おじさんも好きなことあるじゃない」

 

「君に言われてようやく実感したよ。なんか無意識的にやっていたことなんだけど、これが自分が没頭できていたことなんだなってね」

 

「…よかった。おじさんの趣味が見つかって」

 

「…ホント君のおかげだよ。……ありがとう」

 

『子どもには大人でも気づかない事がある』もちろん、身体的な問題もあると思うが、一番は心の変化だろう。子どもの頃は、なにかしら可能性があったら迷わずにそれに突っ走っていたが、大人になってからはいくら可能性があっても、確率が低かったら諦めてしまう。子供の頃に体験した周りがとてもキラキラしていたのは全部が可能性があるものに見えていたからなのだろうか。

 

「……?どうしたの?」

 

「…ううん、なんでもないよ。少し考えごとしてただけだから」

 

…少し星に関しての本を帰りにでも買っていこうかな。

 

「…んっ?…お、久しぶりに見たなダンゴムシ」

 

「……」

 

「あれ?君は虫は苦手かい?」

 

「…前にあまり得意じゃないって言わなかった?」

 

「…そういってたかもな。でもな、ダンゴムシって観察すると意外と面白いんだ」

 

「…なにが?」

 

「ダンゴムシって右に曲がった後は、次は絶対に左に曲がるらしいよ」

 

「…へぇ~そうなんだ」

 

「こういった習性を交代性転向反応というらしい。だから、ダンゴムシは迷路でもジグザクに動くことにより迷うことなくゴールにたどり着けるわけだな」

 

虫って人間では理解できないような習性や生態を持ってるから、こういったことを雑学として持っておくと楽しくなる。

 

「…おじさんって何でも知ってるよね」

 

「ううん、なんでもは知ってないよ。自分が興味を持ったことだけを君に自慢のように話しているだけさ。それで、君が少しでも楽しんでくれるなら重宝だよ」

 

「…おじさんが話してくれること、とても為になるから私は好きだよ」

 

「……ふふ、そうかい。そう感じてくれているならこちらも話してよかったよ」

 

面と向かっては気恥ずかしくて言えないけど、俺も君と話している時間はとても好きだよ…。

 

「ん…もうこんな時間だね、お互い行くべき場所に向かおうか」

 

「…うん、惜しいけど仕方ないね」

 

少女は立ち上がり、パンパンとスカートに付いた砂を落とした。

 

「…じゃあね、おじさん」

 

「あぁ、お互い頑張ろう!」

 

「…うん!」

 

少女と俺は別れを済ませ、俺はとぼとぼと会社への道を歩くのだった。

 




ご精読ありがとうございました!

今回は【趣味】【子どもと大人】【ダンゴムシ】でお送りしました。

皆様は、自信をもってこれが自分の趣味だ!と言えるものはありますでしょうか?…私はこれといってはないのですが、ハーメルン様に投稿されている小説を読みふけるのが趣味ですかね。難しく考えようとすると全然出てこなくなるので、頭が固い証拠ですね(笑)

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