この小説もなんだかんだで、10話以上書いていると思うとよく続いているなと感じます。オリジナル小説の難しいところは一から物語を形成しないといけないので少し面倒という点ですかね。まぁ、それでも応援してくださっている方たちがいるので、これからも頑張りますよ!
では、15話です!
Chapter 夏休みについて
ミーンミーンとセミの鳴き声が聞こえ始め本格的に夏だと感じ始めた今日この頃、私はカーテンの隙間からの光と若干の寝苦しさで目が覚めた。
____今何時だろ…
手を伸ばし、机の上に置いてある時計を取り時刻を確認する。
____えっ!もう7時!?
私は二回くらい時計の針を確認したが、やはり時刻は7時。恐らく…昨日、遅くまで本を読んでいたのが原因だろう。
____今から支度しても間に合わないか…
幸いにも学校は先週から夏休みに入り、学校面で焦る必要性はない。問題は…
____もう、おじさん行っちゃったかな…
一番ショックなのは日課を疎かにし、私の楽しみであるおじさんとの時間を無くしてしまったこと。……いや、まだもしかしたらいるかもしれない。
私はすぐさま立ち上がり、身支度を始めた。ぱっぱとパジャマを脱ぎ、私服に着替える。着替え終わり急いで1階に降りて、洗面台で顔を洗い髪を整える。
____あまり時間はかけられないし、こんなものでいいか
私は洗面所を出て、リビングにいたお母さんに少し外に出てくると告げ、靴を履き外に出た。
____おじさん……まだいるかな…
私はあまり自信がない速力で走り出した。
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私が家を出て数分後、程なくして公園に到着した。いつものように笑顔で挨拶してくれる人はいなくて、ただセミの鳴く声だけが無情にも間に合わなかったことを突き付けてくる。
____やっぱり間に合わなかった……
ちらりと時計台を見ると、時刻は7時20分。私はとぼとぼとベンチまで近づいた。遠くからは分からなかったがベンチにはおじさんがいつも飲んでいるメーカーの缶コーヒーが置いてあった。
____やっぱり今日もおじさんは来てくれたんだ
そのことが分かっただけで胸が痛いぐらいに締め付けられる。おじさんはいつも通りに来てくれたのに私は何をしていたんだろう……。私はいつまでも突っ立っていては仕方ないと思い、家に帰ろうと出口に向かって歩き出す。
「そこのお嬢さん、私と少し世間話でもいかがですかな?」
私は瞬時に誰の声なのかがわかり、勢いよく振り返った。
「よっ!今日は遅かったな、もう行っちゃうところだったぞ」
「……そのわりには私服みたいだけど」
「ははっ!行くのは会社じゃなくて自分の家かな!」
振り返った先には片手をあげて、私に微笑むおじさんがいた。
「……なんでいるの?」
「今日は有休をとっていてな、午後からは嫁さんと出かける予定なんだ」
「…そう…なんだ」
先にベンチに座ったおじさんはポンポンとベンチを叩き、私に座るように促してくる。私は拒む理由がないので、言うとおりにおじさんの隣に腰掛ける。
「それにしても珍しいな。寝坊かい?」
「…うん、昨日は夜遅くまで本読んでてそれで寝坊しちゃった…結構待たせちゃった?」
「まぁ、一人でぼぉーとしてたからそこまで待った感じはしないかな」
でも、待たせたことには変わりない。私は一言、おじさんに謝る。
「気にしなくてもいいよ。偶には一人でゆっくりと考える時間も必要だったからちょうどよかったよ」
おじさんは気にした様子はなく、ぽんぽんと優しく私の頭を撫でる。
「それに君も相当急いできたんだな、髪、はねてるぞ」
「…そこは気にしなくてもいいのに」
「う…すまない」
「…あいかわらずデリカシーがないね」
私は手櫛で指摘された箇所を軽く流すが、直りそうにないので放置する。
「…そういえば気になったんだけど」
「?どうした?」
「…おじさんって先に公園にいたんだよね?なんで私が着いたときはいなかったの?」
「あぁ~それはな、これを家に取りに行ってたんだ」
そう言っておじさんは懐から四葉のクローバーの入ったしおりを差し出してきた。
「…これを?」
「そうそう。先日、偶然四葉のクローバーを見つけてな折角だからしおりにして君にプレゼントしようと思ってたんだけど、家に忘れちゃったから取りに帰ってたんだ」
私は渡されたしおりをじっくりとみつめる。……これをわたしのために。
「……おじさん」
「どうした?」
「……ありがとう。とってもうれしい!」
私は自然と頬が緩んだ。家族以外からのプレゼントは初めてだからすごく心が躍る。
「その笑顔が見れただけでプレゼントした甲斐があるもんだよ」
「……笑顔?」
私が?ぐにぐにと自分の頬をいじる。
「君のいろんな表情が分かるようになってきて俺は嬉しいよ」
「…そう」
その優しい笑みは照れるからやめてほしい……
____まったく……デリカシーのない人だな…ふふっ
私はつい嬉しくなり、心の中で笑った。
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「ほい、冷たくはないだろうけど」
「ううん、買ってくれるだけでもうれしい」
おじさんは私を労わって、自動販売機でお茶を買ってきてくれた。…遠慮はしてるのに。
「そういえば君はもう夏休みなのか?」
「…うん、先週から夏休みだよ」
「いいなぁ、夏休みがあって……俺はお盆まで仕事だよ」
おじさんは、はぁーとため息をついて肩をすくめる。
「だけど、俺の夏休みの印象ってはっきり言って地獄なんだよな」
「…なんで?」
「君は部活に入ってないんだよね?」
「…うん、うちの学校は自由入部だから」
「そうか…俺はバレーボール部に所属してたんだけど運動部の宿命なのかな、これがまたハードでさ」
「朝からの時もあれば、昼からの時もあったんだけど、朝からグラウンド20周した後に、バレー部全員で馬跳びでグラウンド15周とか毎日やってたから顧問を死ぬほど恨んだよ」
「…いまやったら間違いなく熱中症で倒れるよね」
「ははっ!ちがいない!」
「あとはやっぱり宿題かな。ほら、夏休みの友みたいなやつ」
「…あるよ」
夏休みなのに、なんであんなに量が多いんだろうか。休みとは一体なんなのか…
「落胆するよな…あんな量出すなら普通に学校あったほうが良いわ」
「…おそらく全国の小中学生がアレを渡されたとたんに現実逃避をする」
「まぁ、あれの対処法は毎日コツコツやるだな」
「…うん、私もそうしてる」
夏休みは約1カ月と1週間弱。数字にしておおよそ40手前ぐらい。だいたい夏休みの友って毎日3~4ページ以上はやらないと終わらない気がする。
「まぁ、それに加えて自由研究とか読書感想文とかもあるだろ?」
「…ある」
「あぁ~懐かしい。読書感想文で死にかけた覚えがあるわ。読んだ本は内容が全然頭に入ってこないし、感想文もすごい幼稚なものに仕上がるしで散々だったな~」
「…おじさんは自由研究なにやったの?」
「ん~たしか虹のことについてやった記憶がある」
「…へぇ~意外とロマンチスト?」
「ばっか、俺はいつでもロマンを求める男だぞ」
へへん!とどや顔しているおじさんはほっといて話を進める。
「…虹の面白い話ないの?」
「あんまり覚えてないんだけどな~多分、みんなが知ってるようなことしか知らないぞ」
「…いいから言ってみて」
「虹って雨が止んだ後に晴れないと見れないことは知ってるか?」
「…そうなの?」
「厳密にいえば、光が差さないと見れないだけどな」
「虹はそもそも光を反射したもので、人間が視認できる色っていうのは所謂、赤橙黄緑青藍紫の七色ってわけだな」
「…面白いのが太陽の反対側に虹は見えるんだ」
「…なんで?」
「たしか光の屈折が関係してた気がするけどあんまり覚えてない」
「まぁ、そんなことを自由研究で書いたんだ」
「…面白そう」
「だろ?普段、何気なく見てるものを一から調べてみると興味深いものだったりするんだよ」
「今見えるものなら、時計台はどうして動いているのとか、水飲み場の水は、はたして安全といえるのかとかね」
「…よく思いつくね」
私はそう言ったことはぱっと思いつきそうにないから素直に感心する。
「んー深く考えると余計に難しく考えちゃうから、これは難しくなりそうと思ったらすぐさま思考を変えたほうが切り替えやすいよ」
「できないならできないでスパッと諦める。そう言った切り替えも大事なんだよ」
「まぁ、一概にもそうとは言えないかもしれないけどね!」
ははっ!とおじさんは高らかに笑う。おじさんはとても柔軟的な考え方をしている。この人のこういった面を見習わなければいけない気がする。
「そういえば……」
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あれから私たちは結構長く喋った。お互いに休みという事もあって、いつも以上に話しこんでしまった。おじさんはこれから仕度とかもあるから帰らなければいけないらしい。
「…ほんとに今日はありがとう。このしおり、大切にするね」
「おう、是非とも使ってやってくれ」
私は胸の前で、宝物を扱うようにプレゼントされたしおりを両手で包み込む。
「ふふっ……じゃあそろそろ行くね」
「…うん、またね」
「おう~」
おじさんはひらひらと片手をあげて公園を出ていった。私は改めて渡されたしおりを見た。
____ふふっ、初めてのプレゼント……か
私はそのことが嬉しくなって、公園を少し駆け足で出ていく。
後日、家で本を読んでいるとお母さんがしおりの存在に気づき、また問い詰められることになることなど今の私には予想もできないのだった。
ご精読ありがとうございました!
今回は【寝坊】【しおり】【夏休みの友】【自由研究】でお送りしました。
皆様は、夏休みの友を経験なさりましたか?あれはどうやら、出ていた地域と出ていない地域があるみたいで少し驚きましたね。子供からしていれば、夏休みの友(てき)ですね(笑)
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