UAも500を超え、私の心もルンルンでございます!
では、第6話お楽しみください。
Chapter 熱中症について
じめじめとした空気にうんざりしながら、今日も今日とて本を読む。隣にはもうすっかり見慣れてしまった一人の男性が座っている。
「……」
「…ん?」
私がじっと見つめていると私の視線に気づいたようでおじさんは首を傾げて私を見る。
「どうかしたかい?」
「…いやなにも」
「そうか…」
このなにもない空間が妙に心地いい。
「…あぁ、そうだ」
「…?」
おじさんは何か思い出したのかカバンを開けて中を探る。おじさんが取り出したのはひとつの本だった。
「君、本が好きだろ?これ俺が昔読んでた本なんだけど良かったら読んでみる?」
「…いいの?」
「もちろん。そのために持ってきたからな」
「…ありがとう、それじゃ遠慮なく借りるね」
「あぁ、読み終わったら感想なんかくれると嬉しいな」
「…ん、必ず言うよ」
おじさんは缶コーヒーを飲みながら笑う。私は渡された本のタイトルを見る。
「…この本って」
「ん?それ、結構有名だと思うけどね」
「…私も少しだけ知ってる」
「昔、マンガで出てて少し前に小説になったんだよ」
確か、王子様に憧れた女の子がある男性に助けられて、その人の姿を追いかけて自衛隊に入って、その男性と七転八起しながら仲間と共に成長していく物語だったような気がする。
「その本、物語性もあって面白いよ。女の子が好きな恋愛要素も強いしな」
「…おじさんはこの本読んだの?」
「もちろん、このシリーズは最後まで見たよ。映画もやったほどだしね」
「…映画もやってたんだ」
「確か、アニメもドラマもやってたよ」
この作品はどうやらかなりのヒット作品らしい。まず、映画を放映している時点で注目されているのは間違いないんだけど。
「ま、ゆっくり読んで感想聞かせてね」
「…うん、そうする」
私は本を鞄に入れる。
「それにしても暑いな…」
「…うん、暑いね」
おじさんはカバンから扇子を取り出して扇いでいる。
「ん~朝はまだそこまで暑くないから扇子も役に立つな」
「…昼はそこまで?」
「うん、ただ熱風を送るだけ」
「…それはきついね」
まだ風があるだけ助かるけどね、とおじさんは扇ぎながら笑う。
「この季節、小学校は運動会を開催するところが多いみたいだけど子どもたちは大変だね」
「…熱中症が怖い」
「そっか、君も小学生ではないにしろ例外ではないのか」
「…うん」
「でも、学校側も熱中症を危惧して半日運動会なんてものをしているみたい」
「…半日?」
「そう、日が強くなるのって基本的に午後からじゃん?だから、午前中にある程度のプログラムを終わらせてしまうみたいだよ」
「…それが熱中症対策?」
「…俺は専門家じゃないから実際に効果があるかは分からないけどね。だけど、名古屋の方ではこれを実行する小学校が大半みたいだから実証はされてるんじゃないかな」
「それに小学生はまだ体が出来上がってないから熱中症になりやすいんだとか」
「まぁ、大人でも油断したらすぐに熱中症になるし、子どもがなっても何ら不自然ではないよ」
「…おじさんはなったことある?」
「俺はまだないかな」
「…そうなんだ」
「君はあるかい?」
「…私もまだない」
私はフルフルと首を振る。
「俺の友人に熱中症になったことがあるやつがいるんだが、そいつが言うにはまず視界がぐるぐる回って最後には目を開けている感覚はあるのに何も見えないらしい」
「…怖いね」
「で、体に力が入らなくて立とうと思っても立てないみたいだよ」
「怖いよな、もし熱中症を発症したのが駅のホームとかだったら身の毛がよだつよな」
「…考えたくもない」
「だな…ん~~!!」
おじさんは両手を組んで伸びをする。ぱきっという音が耳に入る。
「…骨」
「ん?骨の音鳴らすのはよくないって?」
「…うん」
「ははっ、分かってはいるんだけどね。つい、いつもの癖でやっちゃうんだよ」
「なぁ、この前は俺がいろいろ話したからたまには君が話してみないか?」
「…私が?」
「そうそう。なんでもいいよ」
「…そういわれると思いつかない」
「ん~ならなんかお題欲しい?」
「…出来れば欲しい」
「じゃあ、家族の思い出とかで」
家族の思い出…
「…妹との思い出…でいい?」
「おぉ~妹さんとの思い出か」
「…うん、えっと…2年前ぐらいかな」
「…私は6年生で、妹が4年生。それで、両親が仕事で夜まで帰れなくなったの」
「ご両親は共働きなのか」
「…うん、それでその時は平日だったから昼は学校があったから問題なかったの」
「…それで問題の夜になって晩御飯どうしようっていう話になった」
「…もちろん妹も私もまだ料理があまり上手じゃなくてお母さんが作ってたのを思い出しながら見様見真似で作ったの」
「…結局、その時の御飯がご飯とみそ汁ともやし炒めだけだった」
「ははっ!まるで男の晩飯だな」
「…そう言われても仕方ない」
私はひと息ついて…
「…これが妹と初めて一緒に作ったご飯の思い出かな」
「へぇ~今は料理どうなの?」
「…今はそこそこ」
「ちなみに得意料理は?」
「…八宝菜」
「お~いいね!」
おじさんは笑顔で私のことを褒めてくれる。
「…おじさんはなにか料理できるの?」
「俺は~ニラレバ炒め!!」
「…おいしいの?」
「あれぇ?ニラレバ炒め食べたことないの…って中学生が食べたことあるほうが逆に珍しいのかな」
「えっとね、ニラは分かるよね?」
「…うん」
「ニラとレバー、人参とかもやしを一緒に炒めたものかな」
…おいしそう。今度お母さんに頼んで作ってもらおうかな。
「さて、もう時間だし仕事に向かいますか」
「…うん、おじさん」
「ん?」
「…今度、お母さんに頼んでニラレバ炒め作ってもらうよ」
「おぉ!是非食べてみてくれ!おいしいから」
「…うん」
「じゃあ、行くね」
「…んっ、またね」
「あぁ、またな」
おじさんを見送り、私も学校に足を向けるのだった。
ご精読ありがとうございました!
今回は熱中症、ある本、少女の思い出のお話でした。
ある本については、とある作品を元に話を書いていたのですがこれで分かった人がいたら、さすがとしか言えません!
執筆の最中に普段の何気ない会話を小説にするって意外と難しいものだと痛感いたしました。ですが、皆様にもっと読んでいただきたいのでこれからも頑張りたいと思います。
では、誤字報告・感想ともにお待ちしてます。