弾幕ごっこしませう   作:天馬要

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はい、ここで取って付けたような自己紹介スタート!
わたし、銀鏡 凛音(しろみ りんね)!
アニオタ・陰キャ・中二病のスリーアウトな転生者で可愛い盛りの12歳よ!
ここは光差さぬ吸血鬼の地下都市・サングィネム!
あらすじでも言ったけど、Xmasに母とタコパしてたら世界が滅んじゃったの!
あ、別にたこ焼きパーティーが世界を滅ぼす原因になった訳ではなくてね、大人を感染対象に殺傷能力バリ高いウイルスが世界中に蔓延しちゃったんだって。
タコパと世界滅亡に因果関係はありませんよー!


Ⅰ 爆誕、銀弾[シルバー・ブレット]
装填


 黒色のグランドピアノの譜面台に、予め頁を開いておいた楽譜をセット。

 心の準備ができたら、白と黒が織り成す鍵盤に両手をそっと置き、ベートーヴェンの『エリーゼのために』を爪弾く。

 指が鍵盤を叩く度に、手首に痛みが走るものの、それを無視して弾き続けた。

 わたしの演奏を、血で満たされたワインを傾けて聴き入るのは、ピンク髪の幼女。ここの女王様、クルル・ツェペシちゃん様だ。ちゃん様は断じて誤字ってるわけじゃない。

 本当はクルルちゃんとお呼びしたいが下手をするとど突かれそうなので自粛しているのだ。

 演奏を終えたわたしに、クルルちゃんは、ぱちぱちと小さなお手手で拍手を送って下さる。もうわたし、クルルちゃんになら血を吸い殺されてもいいです。

 「ありがとう。今夜も素敵な演奏を聴けて良かったわ」

 「こ、光栄です! これからも精進します! クルルちゃん様!」

 「ねぇその変な呼び方なんとかならない?」

 クルルちゃんからの問いかけをガン無視し、ガタンと椅子から立ち上がると、慌てて頭を下げてペコペコしてしまう。あぁ、陰キャの悲しき性……

 でもいいんだ。ロリ相手ならいくらでも!

 「まあいいわ…今月分よ」

 控えていた吸血鬼さんがわたしに金貨を詰め込んだ皮袋を寄越す。中々に重たい。十分な金額を確認する。

 「ありがとうございます」

 それを受け取り、楽譜を持っていそいそと『王の間』から出ようとすると、「凛音」と呼び止められた。

 「な、なんでしょう…?」

 控えていたお付きの者はとうに下がらせたのか、部屋には二人きり。え、なに、拷問でも始まるの?

 真紅の瞳がわたしを射抜く。思わず唾を飲み込んでしまった。

 「……フェリドに変わりはないかしら?」

 「へ? あ、あぁ…そうですね。特に変わった様子はないようです」

 「そう…」

 それを聞き、頬杖をつくクルルちゃん。名画のように優雅な仕草だ。チェキ1枚いくら払えばいいのだろうか。

 「もう行っていいわよ。次はフルートを聞きたいわ」

 「承りました〜…」

 失礼します、と王の間から退散する。

 あー…緊張した。しかしながら、これで来月の食い扶持もなんとかなりそうだ。食費と衣料品、それから生活用品と……

 あと、欲を言えば、

 「ちょっとお休み、もらいたいかも」

 酷使した手首がズキズキと痛む。腱鞘炎っぽいなぁ、これ。

 くそ、フェリドにリクエストされたベートーヴェンの交響曲第5番、通称『運命』を無理矢理弾いたからか。

 しまった。湿布を切らしてたような気がする。フェリドに頼んで入手しようか。いや、なんか「クサーイ」とかダラダラ文句言いそうだな。ダメだ今想像だけでイラッとした。

 仕方ない、帰ったら氷水で冷やそう。少しはマシになるだろう。

 ダメだったらクルルちゃんにダメもとで有給休暇と湿布を頂けるか訊ねてみるか……

 皮袋と楽譜を両腕に抱えて長い廊下を、マントをヒラヒラとさせながら歩いていく。

 「おい、あれ…」

 「あぁ、女王様の楽器だ」

 誰が楽器じゃコラ。

 とは言えないけど。

 大広間を抜けて、吸血鬼の往来に出た途端、彼らの視線が突き刺さる。だが、それもすぐに逸らされた。

 胸の前で結ばれたピンクのリボンで留めるタイプのマント。これは、クルルちゃんがくれたのだ。住処から外に出る時には、いつも身にまとっている。

 分かりやすい首輪──とも言えるが、吸血鬼達が他の子供達と区別するためにだろう。要するに、この外套は目印なのだ。

 芸は身を助けるとはよく言ったものだ。フェリドが開放した音楽室で楽器を奏でるわたしの噂を耳にしたクルルちゃんは、わたしの演奏を気に入ってくれたのだ。

 そして、わたしに演奏者の仕事を与えてくれるようになった。週に数回の、彼女のためだけの演奏会(コンサート)を開く。

 観客がいない方が陰キャとしては助かるので二つ返事でオーケー。以来、クルルちゃん専属の演奏者(がっき)として扱われている。

 女王様の楽器というものは、下々の吸血鬼が触れる事は疎か、吸血なんて以ての外。おかげで血も取られなくなり、暮らしもずいぶん向上した。クルルちゃん様々である。

 人間の子供達が収容されている区画から、少し離れた吸血鬼の貴族が居を構える区画。その端っこにこじんまりとした二階建てのレンガ造りの洋館がある。

 白い壁に窓枠はペールブルーで色付けされた、可愛らしい館。

 ここが演奏の仕事を引き受けてから、クルルちゃんに貰ったわたしの家だ。正直に言うとめちゃくちゃ気に入ってる。

 ……でもこれ、ぶっちゃけ犬小屋だよね。

 なんて卑屈ながらも正しい認知をしながら、首から下げた鍵を胸元から取り出し、扉を開ける。

 前に、未遂とはいえ盗難被害に遭ってから、戸締りはしっかりするようになったんだよね。忍び込んだ犯人は佐久間とかいう、ちょっとばかり歳上の男子だったわけだが。

 「なんでお前ばっかり!」というのが彼の主張だった。

 うるせえ、わたしがひたすらフェリドが開放してる図書館と音楽室を行ったり来たりして

 I can praying the piano and flute!!!!

 の力をアピールしたのか、そっちこそ分かっとんのか!

 こちとら元々習っていた事と、弾き語りの趣味のおかげで安定した暮らしを手に入れたんだ。芸は身を助けるとはよく言ったもの。

 まぁ……一人だけ優遇されてたら、そりゃ反感も買うか。

 現にわたし、ここに来てから一人も友達出来てないし。百夜孤児院みたく家族も居ないし、ぼっち寂しいです。

 がちゃん。内側からの施錠もしっかりして……と。これでよし。

 皮袋を金庫に仕舞い、楽譜を居間に置いて、洗面所に向かう。

 タオルを冷水で濡らして、痛む右手首にグルグルと巻き付けた。ま、とりあえずこれで応急処置しとこ。

 再びリビングに戻り、猫脚のソファーにぼふんと仰向けで背中から倒れる。あぁ、疲れた。

 「……ここに来て、もう4年かぁ」

 いつまで、こんな生活が続くんだろう。

 世界が終末を迎えたあの日、血を吐いて倒れた母から引き剥がされた。

 そして、収容されてからあのクルルちゃんとフェリドと、すんごい遠目から優一郎くんとミカエラくんを見た時、思い出した。

 「あ、ここ、終わりのセラフっていう作品の世界だ」って。ちなみにわたし、それ前世でアニメしか観てないッスね。しかも、うろ覚え。

 で、結論から言うと、つい先日、百夜孤児院御一行で脱走を図り、優一郎くんだけが外に出たようだ。実質上の1話だね。

 確か、 ミカエラくんは吸血鬼になって生きてるはずだけど、どうなったんだろう。

 クルルちゃんの『王の間』とその周辺では見かけなかったなぁ。

 うん、まぁ、つまりね?

 わたしは彼らに便乗して脱出しようとしたんだけど、百夜孤児院側と上手くコネクションが作れず、せっかくの機会を逃してしまったのである。

 先程、クルルちゃんがフェリドの様子を確認してきたのは、彼が妙な動きをしていないかの探りであった。今は、表面上は大人しくしているようだけど……あの人、というか吸血鬼か。絶対になんか企んでるよね。胡散臭さが顔に出てるもん。

 「……わたしも、逃げたいな」

 クルルちゃんの事は好きだ。良くしてくれるし、単純にキャラデザが好みだし、ロリババア最高。

 ……でも、わたしは、やっぱり……

 「外に、出たい」

 このままモブとして、搾取されて終わるなんて嫌だ。

 クルルちゃんには悪いけど、わたしもここからの脱走計画、企てさせてもらおうか。

 個人的に最も欲しているのは、武力だ。やっぱさ、力だよ力。

 というのも、百夜孤児院の脱走により、出口付近に門番の如く吸血鬼達が張り付くようになってしまったのだ。

 ……まぁ、そのおかげで露骨に「ここが出口ですよー!」って言ってるようなもんだと、彼らは気づいていないのだろうけど。

 いや、実際、吸血鬼の身体能力に人間の子供が敵うわけがないので、出口を突破されるとは微塵も思っていないのだろう。

 でも、ほら、そこは、ね?

 鬼呪装備があれば、一発よ。まぁ無いんですけどね(笑)

 「どっかに落ちてないかな〜」

 AHAHAHAHA☆

 

 ★

 

 ぱた、ぱた。

 暗闇の中で羽を動かす度に、両翼に吊り下げられた七色の結晶が揺れ、微かな光を放つ。

 赤い瞳に金髪の幼子。彼女は、吸血鬼でありながらサングィネムの最奥部の牢獄に幽閉されていた。

 そんな 少女は、天を仰ぎながら呟く。

 「お姉様……会いたいわ……」

 例え分厚い地層に遮られ、夜空が見えなくとも、見上げたそこに瞬く星の姿を描き、願い事をかけるような──そんな様子だった。




銀鏡 凛音(しろみ りんね)
転生者。
前世の記憶を持っている程度の能力
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