とりあえず話を聞くことにした。でもこれ多分、強制的にご協力コースだよね。
「た、助け出すって……フランちゃん、何したんですか?」
恐る恐る訊いてみた。
「異世界に飛ばされてきて、こちらに保護されたは良いけど、パニックになったフランがちょっと暴走しちゃってね……」
「下級吸血鬼を殺しまくったんだよ」
「語弊のある言い方はやめてくれる? 壊した、よ」
「どっちにしろ物騒だな。…状況はだいたい分かりました。まとめるとこうですね」
↓
迷子の吸血鬼として保護されサングィネムに
↓
「もう幻想郷に帰れないかも」と情緒不安定になったフランちゃん、吸血鬼共をきゅっとしてドカーンしまくる
↓
クルルちゃんがフランちゃんを幽閉
(↑今ここ)
「で、フランちゃんを助け出そうとしている…と。ちょっと聞いてもいいですか?」
一応、挙手しながら断りを入れて発言をする。
「なにかしら」
「なんで幻想郷から飛ばされてきたの?」
そもそもはそこだよね?
っていうか、クルルちゃんフランちゃんを押さえつけたの? すごくね?
「それが分からないのよ。フランと外を散歩していたはずなのに、気がついたら倒壊したビル群の間にいたんだもの」
倒壊したビル群……ということは、世界崩壊後にやって来たのか。
「わたしは4年いるけど、レミィちゃん達はどのくらいいるの?」
「私も同じくらいよ」
「じゃあ、ほんとに世界崩壊直後に来たんだね」
持っていたティーカップを置くのは、レミリアだ。
「……3年半よ」
「え?」
「フランが幽閉されてから、3年半になるわ。あの子、ずっと地下牢に閉じ込められたまま……このままクルルの元にいたら、一生出て来られないかもしれない」
顔を俯き、目を伏せた。
「…レミィちゃん…。そうだよね、姉妹だもん。家族だったら、一緒にいたいよね…分かった。わたし、協力する」
「!」
レミィちゃんの瞳に希望の火が灯る。
「本当…?」
「うん!」
満面の笑みで答えた。
「……ありがとう、凛音。あなたには大した見返りもできないのに」
「別にいいよ、レミィちゃん。レミィちゃんは、わたしのお友達だから!」
「! 友だち…そうね。凛音、あなたはここに来て初めての友達だわ」
「決まりだね。ボクらのパーティーにようこそ。歓迎するよ、凛音」
フェリドは怪しく微笑を浮かべる。
「よ、よろしくお願いしますフェリドサマ」
「あー、それもういいよ。キミ、ホントはボクのこと嫌いでしょ?
敬語もだけど、無理に様付けさせてもね」
いやバレてたんかーい
「ボクらも、今日からは“オトモダチ”さ」
「……まぁ、いいけど……後、嫌いじゃなくて生理的に無理ってだけなんで」
「え、それ同じじゃないの」
☆
パーティーに加えられた後は、フランちゃん救出のための作戦会議へと移行される。
「まず、決行は明日の夜だよ」
「あしたぁ!?」
思わず大声を上げてしまう。
「……急過ぎない?」
「善は急げって言うだろー?」
フランちゃんが幽閉されているのは、王の間付近の地下牢であるため、それを踏まえてフェリドが立案した作戦はこうだ。
①わたしが演奏でクルルちゃんを引き止めている間にレミィちゃんが地下牢に潜入
② フランちゃんは、どうやらオカルトチックな鎖に繋がれていて、力を使えないのでレミィちゃんが外側から檻を破壊して、鎖も壊し脱獄
③そのまま二人で外へ逃げる
「つまりわたしが時間稼ぎ役なのか……」
そしてフェリドは表立って介入しては来ないのね。
それを指摘すれば、「ボクは指揮官だから」と言ってのけた。なんだよそれ。
「それに、明日の見張りはクローリー君とこの子達だから、ちょっと厄介だよ。しっかり戦術を立てないとね」
「ふーん…てかクローリーくんってまず誰?」
「第13位始祖 クローリー・ユースフォードよ」
……名前聞いても分からん。
顔に出ていたのか、二人共もういいと言って、話を進めた。ちょっと酷いと思う。
「闘うのではなく、逃げることが最優先だよ」
慎重そうな発言をするフェリド。なんかちょっと頭脳派みたい。これにはレミィちゃんも同調する。
「そうね、私だってクルルに敵うとは思ってないわ」
待って? どんだけ強いのクルルちゃん。
レミィちゃんやフランちゃんだって、結構強い部類のはずでしょ?
うーん、わたしはいつもそれだけの強者の前で演奏していたのか……
「今度、フルートを聴きたいって言われたんだよね。できるだけ長い曲にしないと。サービスって言って二曲ぐらいプラスさせようかな」
「いや、できるだけ普段通りでいいよ。飽くまでも凛音は関係の無い素振りにしないと、キミがお咎めを受けるかもしれない」
「なんだ。そんなの、別にいいのに。フランちゃんとレミィちゃんが二人で逃げられるのなら、わたしはなんでもいいよ」
偽りのない、心からの言葉だった。
「!」
「!……そう。凛音、本当に彼女達のファンなんだね」
「まー、推しの幸せを願うのがオタクだからね!」
「さっきプロポーズしてなかった?」
「あれはちょっと、勢いが余っちゃっただけ!」
その後も脱獄の段取りを確認し合い、細かくシュミレーションして、解散となった。
食べ切れなかったパウンドケーキやクッキーなんかを手土産に持たせてくれたフェリドに、ちょっと好感度が上がる。
帰ってから、また手首を冷やして床につく。
だが、早朝8時半頃、思わぬ来客が。
ベランダの窓を蹴破って登場してきた時は、どこのラノベのヒロインが突入してきたんだと思ったのだけど……
「どしたの、レミィちゃんってば。こんな朝早く…いや、昼遅く? に」
しょぼつく目で笑いを取ろうとするわたしに、レミィちゃんは衝撃の事実を告げてきた。
「フェリド公は、あなたを裏切ろうとしているわ」
「…え?」