いつも通りの日常に青薔薇の彩りを   作:にっしんぬ

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暑い日に飲むコーラはうまい


夕焼けといつも通りの音色

「新曲?ガルジャムまで日にちないけど…」

「うん、分かってる。でも成功させたい」

 

 

 

その日のスタジオで蘭から持ちかけられた話は

ガルジャムでセトリに新曲を入れることだった

オリジナルの‘That is How I Roll!’を最初に

カバーである‘Don'say lazy’,‘Butter-Fly’と

持っていこうと考えていたのだが

ラストに新曲を持っていきたいということだ

 

 

 

「とりあえず、聴かせてくれるか?」

「……うん。聴いて」

 

 

 

蘭が作ってきた新曲が流れる

曲が終わると、自分も含めてみんな驚いた顔をしていた

 

 

 

「ダメ、だった…?」

「そ、そんなことないよ!

すごく、すごくよかったよ!!」

「なんか、蘭っぽくない歌詞だよねぇ」

「確かに今までの蘭の書く歌詞とはちょっと

雰囲気が違うな。こう、素直っていうか…」

 

 

 

モカと巴の言うとおり、こんな素直な歌詞は初めてだ

That is How I Roll!にしろ、反骨精神の塊

みたいな歌詞を書くのが蘭だったはずだ

 

 

 

「奏、今失礼なこと考えなかった?」

「き、気のせいだと思うよ…」

 

 

 

ばれそうだった、危ない

 

 

 

「この曲を、ライブでやりたいと思ってる。

急かもしれないけど、どうかな?」

「俺は賛成かな」

「とはいえ、ライブまで残り1週間切ってる。

今からアレンジして仕上げまで考えると…

結構ギリギリだな。」

 

 

 

既存曲のおさらいも含めると

巴の言うとおり、1週間足らずでアレンジと仕上げを

やるには生半可な練習じゃ間に合わない

ほとんどのバンドはそんな無茶なことはしないだろう

 

 

 

「……難しいことだっていうのは分かってる。

でも、それでもあたしはこの曲をやりたい

この曲であたしの…ううん、あたし達の

本気を見せたいの!」

 

 

 

蘭の気持ちは本物だろう。言葉通り

難しいのも承知のはずである

 

 

 

「あたしは今までいろんなことから逃げてきた

父さんからも…それからみんなからも。」

 

 

 

蘭の言葉は続く。

下らない口喧嘩だったけど逃げずに

ぶつかって向き合って、怖かったけど

みんなもぶつかり合って

その存在がいかに大事だったか

 

 

 

「だからこそ……この6人で、この曲で父さんに

その思いをぶつけたいの……わがままな自覚は、ある」

「今の蘭の気持ちはワガママなんかじゃないよ

ワガママだとしても、蘭のワガママは

今に始まったことじゃないし……」

「かーくん!それはシーッ!だよ!」

「……」

 

 

 

ひまりがさらにえぐっていく

俺は知ーらない

 

 

 

「あっ…な、なんでもなーい!」

「ひまり、それはないぞ…」

「言い初めはかーくんじゃん!!」

「と、とにかく…!ライブに向けて

この曲も練習始めようよ!」

 

 

 

つぐの声で我にかえる

話をそらしてる場合ではなかった

 

 

 

「んーーー!!燃えてきた!

本番まで忙しくなるぞー!」

「つぐはあんまりツグりすぎちゃダメだからねー?」

 

 

 

なんだツグるって、つぐは動詞になったのか?

言われた本人、困惑してるじゃないか

蘭だけが分かってる感じがする

 

 

 

「まぁいつもの2人って感じだな」

 

 

 

ライブに向けてさらにみんなが

1つになったような気がする

ライブ本番まで俺もしっかり支えてかないと…

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

ガルジャム当日、会場前

 

 

 

「ここがガルジャムの会場…」

「ううっ、緊張してきちゃった…」

「まだ外だぞ、緊張するには早い早い」

 

 

 

まだステージどころか楽屋にすら入ってない

緊張するにはまだ早い

 

 

 

「奏くんは緊張してないっぽいね」

「ん?そりゃそうだろ。俺が演奏するわけじゃなし」

「うわっ、かーくんひどいっ!」

「うるさいぞ、ひまり。

それに俺が緊張してたら意味ないだろ?メンバーみんなの

精神的なところもケアするのが俺の仕事なんだから。

あとはまぁみんななら大丈夫だって信じてるし」

 

 

 

この日のためにたくさん練習してきたんだ

今までやってきたいつも通りの演奏が出来れば

怖いものなんてないと思ってる

 

 

 

「奏が珍しくいいこと言ってる」

「ここに来てまで喧嘩売ってるか、蘭?」

「別に…」

「ほらほら、奏に蘭も、早く入るぞ」

 

 

 

巴に急かされて楽屋へと向かう

これで緊張がほぐれてるといいけど

 

 

 

─────────

 

 

 

「なに、これ……」

「『美竹 蘭様 祝・ご出演』…?この花ってもしかして……」

「楽屋花、か?」

 

 

 

よく有名アーティストのライブイベントだったりで

個人や団体で、出演する演者さんたちに花を贈る

企画がある、というのをSNSで見たことがある

フラワースタンド?とかと同じ類のやつか…?

というか、Afterglowに贈る人なんてもはや

1人に絞られてくるのだが…

 

 

 

「蘭のお父さんから…だよね」

「立派な花だな。蘭、頑張れよ」

「ライブ、ますます頑張らないとね、蘭ちゃん!」

 

 

 

そう、蘭のお父さんである

 

 

 

「ね、蘭ちゃん!」

「……マジ、サイアク」

「やっぱ嬉しいんだろ、娘の晴れ舞台と言うやつは」

 

 

 

あれだけバンド活動を反対していたのに

しれっと花を贈るあたり、やっぱり親子だなぁと

 

 

 

「奏、何か言った?」

「いいえ、なーにもー」

「あ、あははは…」

「…つぐ、大丈夫か?」

 

 

 

急に声が聞こえなくなったつぐの方を見てみると

怯えきった子犬のような顔、と表現が似合うような

そんな顔をしていた。

 

 

 

「つぐ、そんなに緊張しなくても…」

「奏くんー…。だって緊張するよぉ……」

「つぐが頑張ってるのは俺が一番見てきた。

だからつぐなら大丈夫だって信じてる。

俺が信じてるんだから、大丈夫だよ」

「……うん、ありがとう。頑張るね!」

「ひゅーひゅー」

 

 

 

モカはなにを言ってるかわからないが

そんなこんなで話してるうちに

スタッフさんがやってきた

 

 

 

「すみませーん!イベントの段取りについて

打ち合わせしたいので各バンドの

代表の方、お願いしまーす!」

「だってよ、ひまり」

「……だって、ひーちゃん」

「え!?私?かーくんじゃなくて?」

 

 

 

バンドの代表、と言ってたからここは

リーダーがいくところだろう

Afterglowのリーダーは、ひまりだ。

なんか変なテンションでひまりが出て行った

 

 

 

「……てか、リーダーってひまりだよね?」

「蘭か巴かって思われてるんじゃないか?」

「いや、うちのバンドのリーダーはひまりだよ」

 

 

リーダー=ボーカルっていうイメージがあるから

蘭だと思われてもおかしくはない

そんなことを思ってたらまたスタッフさんが

声をかけてきた

 

 

 

「あのー…美竹蘭さんはいらっしゃいますか?

差し入れに、と中年の男性の方が先ほどこれを…」

 

 

 

とスタッフさんから差し出されたのは

有名なドーナツ屋さんのドーナツである

 

 

 

「おいしそー。あたしコレとっぴーねー」

「じゃあ俺これ貰おっと」

「マジ…恥ずかしすぎ……!」

 

 

 

これも蘭のお父さんからであろう

よくここまでやるよな…

 

 

 

「いいお父さんだな。」

「あっははは、そうだな!」

 

 

 

なんていいつつドーナツの取り合いをしていたら

ひまりが戻ってきた。ちなみにひまりのドーナツは

モカの胃袋の中に消えた

 

 

 

「みんなー、ちょっとセッティングのこと話したいから

ステージの方に来てー!」

「モカ、口にドーナツついてる」

「おしゃれでつけてるのー」

 

 

 

口にドーナツつけるおしゃれなんてあってたまるか

 

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

「いよいよ次が私たちの出番かあ……」

「会場の熱気は十分だな」

 

 

 

とうとうAfterglowの出番だ

 

 

 

「つぐ、いいこと教えてあげよっか。お客さんはねー

全部パンだと思えばいいんだよー」

「そこは野菜とかじゃないのかよ」

 

 

 

いつもおいしそうなパンが並んでると思いながら

やってるとかいつか飛び込みそうで心配だ

 

 

 

「ふふーん。ひーちゃんの顔も丸くて

パンみたいだなー」

「ひまり、モカに食べられても知らないぞ」

「モカもかーくんもひどいー!!」

 

 

 

そんなこんなで演奏が終わる

とうとう本当にAfterglowだ

 

 

 

「じゃあ、俺は観客席から見てるから、頑張れよ。」

「……みんな。『いつも通り』…最高の演奏、しよう」

 

 

みんながステージへと向かうなかつぐだけが戻ってきた

 

 

 

「どうした、つぐ?」

「あっ、えっと、手借りてもいいかな?」

 

 

 

何がしたいのかわからないがとりあえず手を差し出す

そうするとつぐは手を握って……

 

 

 

「……よしっ、ありがとう!」

「おう?頑張れ!」

 

 

 

 

観客席に向かうと会場はすでにすごい熱気であった

このなかでAfterglowが演奏を。

 

 

 

「……今、この瞬間から、会場の熱をすべてあたし達の

モノにする。見逃さないでついてきて!いくよ!」

 

 

 

蘭の掛け声とともに曲が始まる

1曲目は『That is How I Roll!』

 

 

 

「(蘭のやつ、絶好調だな。完全に吹っ切れて

思いっきり火がついたみたいだな)」

 

 

 

2曲目『Don't say "lazy"』

 

 

 

会場の盛り上がりは更に増す

曲が終わるころにはAfterglowを賞賛する声が

ちらほらと周りから聞こえてきた

 

 

 

「……次で最後です。」

 

 

 

これで最後、あの日蘭が提案してみんなで頑張って

作り上げた新曲

 

 

 

「あたしが、道に迷った時……そばにはいつも

メンバー達がいてくれた。今ここに立っていられるのも

ここにいる4人、そして観客席にいるもう1人の

メンバーの5人のおかげだって思ってる

……みんな。あたしはもう迷わない。

どんなに迷っても、もう逃げたりしない」

 

 

 

 

改めて言われると、こうなんだ照れるな

なにかしてあげられたのか正直不安なところであったが

こう言われると、うん、最早泣けてくる

 

 

 

3曲目『True Color』

 

 

 

あの日があったからこそできた曲

大事なのは見守るのではなく本気でぶつかること

それぐらいじゃ本物の絆は変わらない、壊れない

 

 

 

 

─────────

 

 

 

「この状態でみんなに会うのか。モカやひまりに

なんて言われるか…」

 

 

 

会場は大盛況、会場の空気をAfterglowが持って行った

だからこそ…

 

 

 

「リハでも聞いてたのにまさか泣くなんて…」

 

 

 

泣きすぎてもはや目が赤いレベルだ

なんとか隠さないと、絶対いじられる

 

 

 

「みんな、お疲れ」

「奏くん!ありがとう!目赤いけど大丈夫」

 

 

 

まさかのつぐに突っ込まれる事態

なんとか逃げなければ

 

 

 

「ほら、ひまり泣くな。ライブの度に泣いてるんだから」

「うっ…かーくんだってぇ、泣いてたでしょー!」

「いや、俺は…泣いてない!」

「2人とも面白いなー。あ、写真撮っとこ」

 

 

 

 

と、ライブの余韻に浸ってると楽屋に

蘭のお父さんがやってきた

 

 

 

「…父さん」

「お久しぶり、ですかね」

「こんにちは奏くん。みなさんも…いつも

蘭がお世話になってます」

 

 

 

それはもうめちゃくちゃお世話してますなんて

言うと空気が壊れるからと思ったらモカが案の定

その言葉を放り込んだ。

 

ちゃんと会場には来ていたらしい

高校生が趣味でやってるバンドはたかが知れてる

と思ってたらしいが、どうやらこのライブで

考えが変わったらしい

蘭の思いが、伝わってよかった

 

 

 

「…お前は、いい仲間に恵まれたな」

「…っ!ありがとう、ございます…!」

 

 

蘭のバンド活動を認めてくれた

本当に、よかった…

 

 

 

「やばい、泣きそう」

「うっ、うっ…よかったぁっ!」

「それではこれで失礼するよ」

 

 

 

そういうと蘭のお父さんは楽屋から出て行った。

 

 

 

「さっ、早く片付けて帰るぞ…」

「奏くん、泣いてる?」

「そういうつぐこそ」

 

 

 

あんなライブ見せられて、蘭の思いが伝わって

泣かないわけ、ないだろう…

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

帰り道、小さい頃よく遊んだ公園に寄ることになった

 

 

 

「あの頃のままだな」

「ほんとだね!なんかこうして変わらないまま

あるのって嬉しいなあ」

 

 

 

時が経てば変わるものもあるし変わらないものある

昔遊んだ公園もその一つ

でも変えなきゃいけないものもある

Afterglowのように。あの喧嘩があったから

変われた、新しいAfterglowに

どんなことがあってもAfterglowは変わらない

でも何かを変えることができる

 

 

 

「せっかくだから目標とか考えるか?」

「目標、かー。新曲作るぞー!とか?」

 

 

 

それは目標というかただの予定な気が

 

 

 

「あ、あのっ!」

「お、なんか思いついたか?」

「目指せ、武道館!とかどうかな?」

 

 

 

 

武道館…そりゃバンドといえば武道館

みたいなイメージはあるが…

 

 

 

「急にスケールが大きいな!でも、いいと思うよ」

「ふふっ、こういう言い出しっぺって

だいたいつぐみだよね」

 

 

 

そう、バンド組もうという話も、ガルジャム出ようと

後押ししたのも目指せ武道館も、何かの始まりには

いつもつぐがいた。

つぐがいるからこそどんどん前に進んでいける

 

 

 

「んーー!なんか私Afterglowに無限の可能性を

感じてきた!!やるぞーー!」

 

 

 

いつものひまりのやる気満々キャラである

 

 

 

「…これは、くるよ」

「あぁ、来るな」

「だよねー」

 

 

 

そう、これがいつも通りの日常

変わらないものもたしかにある

 

 

 

 

「よーっし!頑張るぞー!えい、えい、おー!」

「「「「「……」」」」」

「ええっ!?さすがに今回は

全員言うと思ったのにー!?」

 

 

 

うん、いつも通りだ

こうやってこの日常は変わらずにみんなで

過ごしていけるといい、かな




ここはひとつにまとめたかったので5000字超えちゃいました
キリよく10話(途中Roselia入りましたが)
UA5000超えお気に入り70件本当にありがとうございます
拙い文章だと思いますがこれからも読んでいただけると嬉しいです
ツイッターやってます。私のページに飛んでもらえると
IDが載ってるのでぜひよろしくお願いいたします
ではまた次回。
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