「独立混成飛行実験隊の諸君、初めまして。私はグリフォン隊の作戦指揮をとる、マクドネル・マッケンジー大佐だ、よろしく頼む。昨日は、実験隊のトラブルで私まで到着が遅れてしまってね。申し訳ない。」
マッケンジーは自己紹介と謝罪の二つをこの場にいる『独立混成飛行実験隊』の面々に述べる。
「ではまず、手短に我々グリフォン隊の説明をさせてもらうとしよう。
まず、グリフォン隊ならびに技術実験飛行隊の作戦指揮とブリーフィングを行うのが、この私マッケンジーだ。」
マッケンジーは自分の胸を軽くトントンと叩きながら自分の役割を説明する。
「そして、そこにいる彼が上空での情報伝達、管制を行う空中管制機、『E767』で空中管制を行う、管制官のテイラー・D・ファイバー少佐だ。彼自身、まぁ色々あると変なあだ名なんかもあるようだが、優秀な管制官ではあるよ」
マッケンジーは少々意味ありげにテイラーの紹介をする。グリフォン隊の面々は何の事か見当がついていた。
「それでだ、本命の彼らグリフォン隊だが...
昨日自己紹介は済ませてあるようだな。ならばここは省こう。では、実験飛行隊の説明に入りたいが...
博士、よろしく頼む」
マッケンジーは数歩下がり、入り口付近で大人しく説明を聞いていた博士に場所を譲った。
博士と呼ばれる男が壇上に上がってくる。その男はキレイにアイロンがかけられたようなまっさらな白シャツと黒いトラウザーズに、これまたまっさらな白衣という身なりに、四角い縁なしメガネをはめていた。体型もスタイルのよい感じで、技研の八代通とは真逆の出で立ちだ。
「皆さん、初めまして。技術実験飛行隊の研究リーダーをしている、バートン・ザーガンです。以後お見知りおきを。」
バートンは面前の各隊員達に一礼した。
「さっそく、私が行っている研究についてご説明致しましょう。」
バートンはさっそく本題にのり出した。
目の前のPCを操作し、プロジェクターにPCの映像を投影する。
「単純な話、私は対ザイ兵器の研究を行っています。
日本、ならびに米国、ロシア等各国では技研の八代通室長が開発した『アニマ』ならびに『ドーター』と呼ばれるものを研究、開発しているようですが、我々は違った路線で開発を行っています。」
バートンは八代通、鳴谷、グリペン、イーグル、ファントムの顔を一通り見ながら淡々と続ける。
「我々は、対ザイ戦の経験不足から『アニマ』と『ドーター』を開発に必要な『コア』の収集が困難な状況にあります。よって我々は通常兵器を拡張、補強して作ることになるでしょう...
しかし、それでは超機動のザイには十分に対抗できない...既存の技術でザイに対抗するには...
そう、『UAV』いわゆる『無人航空機』に頼るしかありません。」
バートンはプロジェクターに投影された画像を指しながら話す。
「我々は既存の航空機に『AI』つまり『人工知能』を搭載し有人機では実現不可能な機動を出来るよう研究を進めました。」
「その兵器の安全性は?」
バートンの説明にファントムが食い付く。
それもそのはずだ。彼女達の目の前で、アメリカの対ザイ戦闘機『ブロウラー』が暴走したのだから...
しかもそれは無人戦闘機だったからなおさらだ
「ブロウラーの一件は我々も聞いています。それに対する対処も考慮しています。
ブロウラーはザイの戦闘パターン、ミサイルジャミング装置の電波パターンをあらかじめプログラムし、それに応じて攻撃を行う。というものであったと記憶しますが、我々のUAVはそのような機構を用いず、人工知能による制御を行います。」
バートンはブロウラーと自身の戦闘機の相違点を分かりやすくまとめた3D画像のようなものを投影しながら詳しく伝えていく。
「我々はそう、戦闘に必要な知識、情報のみをプログラムとして機体にインストールし、後の戦闘処理は機体内部の人工知能が、レーダー、GPS情報、機体各部に取り付けられた各種カメラ映像を分析、処理し自ら考えさせて戦闘させます。
プログラム化されていない不測の事態に陥った場合も、プログラムではなく、人間と同じように思考させることで対処出来る訳です。
...理論上は」
バートンはさらに続ける。より一層熱がこもっているようだ。
「では、紹介しましょう。
入りなさい。」
バートンが入り口に向かって呼ぶと、扉が開き美しい少女が入ってきた。
「彼女はこの戦闘機の人工知能となる『ドール』だ。」
バートンはあたかも当たり前のようにサラッと紹介する。
「一体どいうことだ!?」
鳴谷は思わず声を出した。勿論その場にいる殆どの人間は同じ反応だ。
「『アニマ』と『ドーター』を切り離して管理するように、こちらも『ファイター』と『AI』を切り離して管理するという結論にいたってね。ひとくくりにしていて少々問題が発生したこともあったためだが...彼女は『ドール』。つまり人間ではなく、人間の形をした人形にすぎない。つまり、彼女が中に乗ってもGを気にする必要もなく、戦闘機事態の機動力も高い次元で維持できる。」
バートンはやはりサラッと説明していくが、なんとも頭が追い付かないというかなんというか...
この場にいる誰もが理屈は出来ても、目の前にいる『人間ではない人間』の存在に困惑していた。
...ただ一人、黄色い髪の音感以外は
「ねぇ、つまりその子も私たちとおんなじって事なの?」
イーグルがバートンに問う。
「ほぼ100%でその通りと言っていいかも知れないね。ザイの部品で作られていない、人間の技術だけで作られた『アニマ』といったところかな。それと、彼女についてだが...
さぁ、挨拶を」
バートンが少女に促す
「はい...
私はR.I.A.F、技術実験飛行隊所属の航空戦術ドール『XD-01 シャンティー』です。よろしくお願いします。」
シャンティーと名付けられた戦術人形は、機械的に声を発するロボットのような声ではなく、ちゃんと人間らしい声で挨拶をする。
だが、その声には人間から発せられるような暖かみはなく、冷たさだけがひときわ目立った。
『アニマ』と同じというわりに、『アニマ』のような親しみ易さもなく、ただただ不安だけが残る
「私の研究の説明に関しては以上になるかな。ただ、次のステップとして、彼女と彼女の本体である『ファイター』がザイに対してどこまで通用するのか、果ては有効的なのかを調べる必要がある。グリフォン隊、独立飛行実験隊の皆さん、力を貸して貰いたい」
バートンは優しく皆に頼み込んだ。
「では、次に独立飛行実験隊の説明に入って貰いたいが...」
マッケンジーが八代通の方を見遣る。
「昨日説明ある程度説明を受けているようだね。それ以前に説明もあったし...
何か質問があるなら挙手でお願いしたいが...」
「なら、俺から一つ」
ブランドンがそっと手をあげ言った。
「『アニマ』もその『UAV』も、何処まで安全なんだ?現に、アメリカの『アニマ』は暴走し、アメリカの『UAV』も暴走したって話だろ?
で、俺達はその危なっかしい2つの兵器に囲まれて日々を暮らさなきゃならねぇんだろ?」
ブランドンは『アニマ』、そして『ドール』をチラチラと見遣りながら聞く。
確かに、いくら日本の『アニマ』とラーフの『UAV』が暴走に強いと言ったところで、同型のものはすでに暴走を起こしている。いつ、そうなってもおかしくはないのだ。
ましてやラーフの『UAV』に関しては、ザイとの戦闘経験すらない。そんな状況で不安感を抱かない訳がない。
「アメリカの『アニマ』...『ライノ』だが、あいつは暴走を起こさないようにセーフティーをガチガチにしてあった。その状況で暴走したということは、その枷が解かれたとき、自分でどう判断すればいいのか、果ては自分という存在がどんなものなのかを見失ってしまったんだろう。」
八代通が口を開いた。
鳴谷に言ったことと殆ど同じ内容だった。
「日本の場合はセーフティをアメリカより緩くしてある。だから『ライノ』のようなことにはならない...
と言いたいが何が起きるかは未知の領域だし、その対策もわからない。」
八代通は続ける。
「勿論、我々の『UAV』も同じだ。いくら、人工知能による制御といっても、ザイが人工知能にどう悪影響を及ぼすかは未知数だ。」
バートンが言う。
「つまり、俺達は危なっかしい爆弾を両脇に抱えたまんま、ベッドでお休みってか」
ブランドンが呆れたように言う。
そんなのは地雷原に生身で身をさらし、走り回るようなものだ。その『地雷』はいつも爆発するかわかったものじゃない。
「どんなことであれ、俺達がそこに行けと、そこに身を投じろと言われた事実は変わらない。それに、この世に「100%」も、「絶対」もありはしないだろ。俺達が離着陸で墜落する可能性だって『絶対ない』わけではないし、戦闘で死なないなんてこともありえねぇ。少なからずリスク背負っとい他方が、スリルもあるだろ。」
ランディーが開き直るような感じで言った。
「それに...
その為の俺らだろ」
ランディは八代通の方を向いた。
どういう事なのか、みんな見当はついていた。結局グリフォン隊は『保険』なのだ。
いつも爆発するかわからない『地雷』を爆発する前に抑える...それをするために呼ばれたのだ。
ただ、言われた事を忠実にかつ言われた事以上の結果を伴わせてこそのエースパイロット部隊『グリフォン隊』だ。
と言わんばかりの自信が溢れていた。
その後、質問もなく説明会はサラッと終わった。
今後彼らが一体どんな方向に進むのか。
果ては彼らが無事にこの戦いを終えることが出来るのか、それはまだ誰にもわからない...
次回「実力」
次回はお待ちかねの戦闘です!