ガーリーエアフォース 黒色の狩人   作:ロングキャスター

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実力

説明会が終わったその日の昼、グリフォン隊の面々はエプロンに出された愛機の元に集まっていた。

しかし、そこにはグリフォン隊の四人以外に空自のパイロット、整備士など多くの人が集まっていた。

空自のお目当てはグリフォン2とグリフォン3だ。

 

この2機は日本でお目にかかることはないどころか、日本にやってくること事態奇跡のようなものだ。

空自のお目当て、[Su-33 フランカーD][F-14D トムキャット]この2機の回りにはまるで少年に戻ったかのようないい年した男どもがワイワイと騒いでいた。

[Su-33]はロシア製の艦上戦闘機で、大元は旧ソ連時代にスホーイ社が開発した[Su-27]をベースに主翼前方にカナード翼を搭載し、折り畳み式主翼に改修された海軍向けモデルだ。

こんな機体は中国、ロシア軍に対するスクランブル発進の時くらいしかお目にかかれない。ましてや手で触れるなんて出来るはずはなかった。

 

一方の[F-14D]は[Su-33]以上の人気だった。

戦闘機乗りとして、戦闘機の整備士として、空自に入った人達にこの[音速の雄猫]を知らないものはいない。それどころか、この機体に憧れないものもいない。世界中に多くのファンをもち、その特徴的なフォルムに魅力されない戦闘機マニアはいないだろう。この機体がこれほど人気になったのもアメリカの映画が引き金だろうが、恐らくここに群がった者たちの九割はこれがきっかけだろう。

 

空自の面々は間髪いれずに、2機のパイロットを質問攻めにする。だが、二人は嫌そうな素振りも見せない。それどころか、皆の興奮に押され自分自身も興奮している様子だ。やがて写真の撮影会から、コックピットへの試乗まで発展していく。

皆のテンションも急上昇しっぱなしだ。

 

そんな2機を尻目に、グリフォン1と4はたいして賑わい過ぎることもなく、平穏無事に過ごせていた。

だが、分かるものには分かる。グリフォン1のカラーリングはファンを釘付けにした。

 

「この、主翼と垂直尾翼両端が青いのって、もしかしてゲームが関係してます?」

 

ランディーの元に興味津々に訪ねてきた空自のパイロットがいた。

 

「やっぱりわかるか!

その通りだぜ。ラーフに入って自分の機体を好きにデコレーション出来ると知った瞬間にこれだって思ってよ。これは憧れだったんだ。」

 

ランディーは楽しそうに答える。

 

「やっぱりかぁ~

俺も見た瞬間ビビっと来ましたよ。俺もあれに憧れてイーグルファイターになったんで」

 

質問してきた空自のパイロットも楽しそうにしている。

 

「なんだったら、俺のことは『円卓の鬼神』って呼んでもいいぜ!」

 

ランディーは空自のイーグルファイターの肩を叩きながら言う。

 

「なら、そっちの2番機のフランカーは『ミスターX』ってとこですか。」

 

空自のイーグルファイターもランディーの冗談にのり、ブランドンのフランカーを見ながら笑って言った。

 

「それを意識してたはずだからなアイツのカラーリングは。『鬼神』と『ミスター』がいるなら、『片羽の妖精』と『三本線』が欲しいところだ」

 

ランディーはさらに冗談を交えて笑う。

ちなみに、ブランドンのフランカーのカラーリングはそれが元ネタになっている。

そんなたわいもない話を進めていると、いつしかランディーの周りにも人だかりが出来始める。皆、楽しそうに談笑している。まるで、ザイなんていないかのように

 

 

しかし、そんな平穏な一時も甲高く、不気味な音が一気に緊張へと変えた。

スクランブル警報だ。恐らくザイだろう...いや、それ以外に可能性は皆無なのだが...

 

 

集まっていた空自の面々は各々緊張と不安の顔つきで配置に戻って行く。ランディーたちグリフォン隊もすぐさま自分の待機所に戻りパイロットスーツを身にまとう。

ヘルメットを手に自機のもとに走ると、各々の整備クルー達が機体の最終チェックに入っていた。

 

ランディーはすぐさまタラップをかけあがりコックピットの中に飛び込む。計器盤上のディスプレイやその他の計器類を一通り確認して動作確認に入った。

操縦桿を右に左に、そして前に後ろに...

ラダー、エルロン、エレベーターを一通り動かし異常は見当たらなかったので、管制塔との通信に入った。

 

「こちらグリフォン1、機体の準備が整った。滑走路へのタキシング許可を要請する。」

 

しばらくして、

 

「こちら管制塔。了解した。グリフォン1ならびにグリフォン2以下各機の滑走路へのタキシングを許可する。ランウェイ24より離陸せよ。また、離陸後は北西方向に飛行、高度5000フィートまで上昇せよ」

 

「ラジャー」

 

ランディーらグリフォン隊は小松空港のランウェイ24に移動する。

その道中、エプロン上に同じく出撃準備に入っている独立混成飛行実験隊の面々も見えた。さらに、エプロン上で見送りに出てきた整備士たちにランディーはサムズアップと敬礼で答える。

 

タキシングウェイを移動し、ランウェイ24に進入したグリフォン隊は一旦停止し管制塔からの指示を待った。

 

「グリフォン、ランウェイ24クリアードフォー、テイクオフ」

 

「ラジャー。グリフォン1、クリアードフォー

、テイクオフ」

 

管制塔からの指示にすぐさま返すとスロットルレバーを全開に押し出し、アフターバーナーを全開にする。

全身に強烈なGがかかりみるみるうちにランディーのF-15は離陸速度まで上昇する。フラップを全開にし、アフターバーナーで加速したF-15は宙に浮き始めた。

 

「いっちょ、ファンサービスと行くか」

 

ランディーはそう無線を僚機に入れると一気に操縦桿を引き起こす。

F-15は緩やかな上昇機動から一変、ギアアップしながら機体を地面に垂直に、90°の角度で上昇し始める。

2000フィート辺りで緩やかな上昇機動に移行したが、

 

「グリフォン1、周りには民間がある。危険な急上昇はよして貰いたい...

だが、かなり面白いものは見せてもらったよ」

 

管制官からのお叱りの言葉と笑い混じりの言葉が入ってきた。

ランディーは少し微笑みながらザイが出てきたと思われる空域へと進路を取った

 

 

 

 

ーーーーーー

 

「急な展開で皆ドタバタだっただろう」

 

空中管制官、テイラーの無線が空に上がった3部隊に入ってくる。

 

「テイラー、状況の説明を頼む。」

 

ランディーが言う。

 

「うん。今回飛来してきたバンディッドはザイだ。機数は12。現在小松基地からスクランブル発進した8機のF-15Jが応戦に当たっている。」

 

「おいおい、エリートでもタイマンが難しいザイ相手に、一般機が8機だぁ?」

 

ブランドンはテイラーに投げ掛ける。

 

「そうだ。だが、発進した各機には応戦するのではなく、逃げ回って時間を稼ぐように言っている。」

 

「なるほどね」

 

「あと、バービー。君たちはこれより、エーワックス『スカイウォッチャー』の管制下に入ってもらう。ホーカー、君もだ。」

 

「お言葉ですが、テイラーさん...だったかしら。私たちにはこの私『RF-4EJ-ANM ファントム』がいますので、貴方の管制下に入る必要はないかと。 」

 

ファントムがお前らの力なんか借りるもんかとばかりの口調で言ってくる。

 

「それはこちらも把握済みだよ。しかし、1機で2つの仕事をするより、2機で2つの仕事をする方が集中出来るし、より確実ではないかい?」

 

テイラーが答える。

 

「ま、それもそうですわね」

 

「ホーカー1、君は1機しかいない。そしてバービー、君たちは3機だな...

言いたいことは分かるかい」

 

「ホーカー1了解。バービー04の位置に入ります。」

 

ホーカー1の機体がバービーの編隊に混ざった。

やがて戦闘空域に近づいてきた。

 

「レーダーコンタクト、ザイは...12で変わらずか」

 

ランディーはレーダーに映ったザイの機影をみて落胆した。

 

「空自のイーグルは6機、なんとか持ちこたえてる状態だな。」

 

テイラーがランディーの言葉の引き継ぐようにいった。

 

「とりあえず、当たるか当たらないかの賭けやるぞ。全機、ターゲットロック。」

 

ランディーはそう言うとターゲットロックをし、ミサイルの発射準備を行う。

 

「よし、ターゲットロック!グリフォン1、フォックス3!」

 

「フォックス3!」

 

グリフォン隊の4機が『AIM-120 アムラーム』を発射する

このミサイルはアメリカのヒューズ社が開発した中距離空対空ミサイルだ。

 

「ランディーさん、ザイ相手に通常のミサイルは殆ど効果が...」

 

鳴谷はランディーに言う。

 

「ああ、んなことわかってるさ。だが、奴等はミサイルを感知して妨害電波を出すんだろ?なら、今空自のイーグルに夢中になってるところに不意討ちすれば当たる確率は少なからず上がるはずだ」

 

ランディーは答える。

確かに利に叶ってはいる、当たるかどうかは別として。

 

「ミサイル、ターゲットヒットまで、残り10、9、8、7、6、5、4、3、2...

ミサイル8発発射、ヒット3」

 

テイラーがレーダー情報を確認しながら報告する。

 

「よし!当たったか!」

 

ブランドンが声をあげる。

 

「当たったが、レーダーロストは2。残りは致命傷にならなかったようだな。」

 

「落とせただけましさ。勝率が少し増えたかな。」

 

グリフォン3、ブライアンが言う。

 

「よし、全機。一気に行くぞ。空自ファイターどもを帰してやるぞ!」

 

「よっしゃ!やったりますか!」

 

ブランドンがより一層気合いの入った声をあげる。

 

「ふふ~ん、残念だけど、ザイは全部イーグルが貰うもんね!」

 

イーグルが楽しそうに言う。

 

「おっと、こりゃぁ激しいキル争いになりそうな予感」

 

グリフォン4、マイクが言う。

 

「さぁ!早いもん勝ちだ!」

 

ランディーはスロットルレバーをさらに、押し込んだ

 

 

 

ーーーーー

 

「くそ!くそ!離れない!」

 

「リッパー2、平井!助けてくれ!後ろに着かれっぱなしだ!」

 

「くそ!俺も無理だよ!」

 

「増援はいつ来んだ!」

 

ザイと戦うスクランブル組は必死の抵抗をしていた。

出撃の時に戦わず、ただ増援の到着まで逃げ回って時間を稼げと言われたが、逃げ回るだけでも相当な要求だ。

ミサイルを撃たれればフレアをたき、機銃の射程内に入れば回避機動。

 

こんな激しい動きを要求され続ければ、いくら鍛えた体と言えど限界を迎える。皆もう逃げるのも覚束なくなっていく。

 

「ハァハァ...

くそ、後ろに着かれた...ブ、ブレイク!」

 

「リッパー3!小日向!早く回避しろ!」

 

「くっそ!も、もう...」

 

リッパー3、小日向は死を覚悟した。ミサイルが命中し、機体が暴散する未来が見えた。両親、弟、そして小松の街に残してきた大切な恋人の顔が脳裏をよぎる。

 

あぁ...死にたくない...

 

その直後機体が激しく振動すると同時に爆発音がした。

機体が爆発した...だか、小日向はなんともない。

 

(俺...死んだ?...いや!)

 

ふと我に帰り後ろを見ると、真後ろに着いていたザイが粉々に吹き飛んでいた。そして、猛スピードで真横を戦闘機が横切る。

その戦闘機は主翼、垂直尾翼両端がスカイブルーで塗られたF-15C。

 

「円卓の...鬼神...」

 

小日向は出撃前の談笑を思い出した。

そうだ、今彼を助けたのはあのときのイーグルファイター、ランディーだ。

 

「助かった!ありがとうございます!」

 

小日向はすぐさま無線を入れる。

 

「あぁ、あのときのイーグルファイターか。礼を言うのはまだ早いぜ。ここは俺らが食い止める、お前さんらはさっさと逃げな」

 

「いえ、自分もやりま...」

 

「ふざけんなよ、あんなヨタヨタ飛行しといてまだやれるって?9Gのアクロバット飛行ばっかりやってたんだろ?だったら...くっ!...ふぅ...相当疲れてんだろ?」

 

ランディーはザイに追われながら淡々と小日向に笑い混じりのお説教をしていた。

 

「帰ったら、話の続きだ。いいな?」

 

ランディーは小日向にそう言った。

 

「...分かりました。ランディーさんもご無事で」

 

「おうよ」

 

小日向は小松基地への撤退を開始した。

その時チラッとランディーのF-15Cを探した。小日向は衝撃を受けた。

ランディーのF-15Cは卓越した機動でザイの攻撃を回避する。いや、回避どころか攻撃まで試みていた。

自分たちは回避だけで手一杯だったのに...

 

 

「これでこの空域からお荷物はいなくなったな」

 

ブランドンからの無線が入る。

 

「あぁ、盛大に暴れましょ」

 

ランディーはそう返すと後ろに着いていたザイを振り払うため、回避機動に移る。

 

操縦桿を引き起こし、機体を上昇させる。と、その瞬間、すぐに右に倒し機体を斜め右方向に動かす。

そこから徐々にスロットルを緩め、大きな円を描くように回っていく。

その間もキャノピーに付けられたミラーに映るザイから目を離さない。そして一定距離近づくと一気にスロットルを抜き、エアブレーキを展開する。

一気に失速したF-15Cを速力がそのままだったザイが抜き去る。その直後、ランディーは『AIM-9 サイドワインダー』を発射

ザイはそれを90°の直角上昇で回避する。それにあわせてランディーも機首をあげるがザイは連続の直角飛行ですぐに後ろを取ろうとした。しかし、後ろを取った瞬間、ランディーのF-15Cはザイの正面に機首を向けた。

 

ランディーはザイがこの機動で後ろを取るのを読んでいた。その為の、ランディーは上昇と同時にエアブレーキを展開、スロットルを抜いていた。ザイが後ろを取った瞬間、F-15Cはストールを起こし、機首を下方へ一気に向け、ザイとのヘッドオン状態になった。

ザイが回避するよりも、F-15Cの『M61A1 20mmバルカン砲』の20mm弾がザイの正面に突き刺さる。

 

黒煙を吹きながら墜ちていくザイを横目に次のザイに狙いをつける。

その最中、次々にザイがレーダーから消えていくのを確認すると辺りを見渡した。

 

「やべぇな...」

 

ランディーは思わず口にだした。

ドーターの動きは尋常でなく、ザイと全く同じような機動でザイを追い詰めていく。

しかし、ドーター嵩ではない。ラーフ社の秘密兵器、UAVもドーターと殆ど変わらない性能でザイを追い詰める。

 

グリフォン隊の面々もそれなりに頑張って墜としている。

 

「負けてらんねぇな」

 

ランディーがザイに狙いを定めようとしたとたん、ミサイルロックオン警報とミサイルアラートが鳴り響く。

 

「くそ!ブレイク!」

 

ランディーはすぐにフレアをたき、機体を左に機動させ回避する。

どうやら1機のザイが後ろに取りついたようだ。ランディーは機体を右に左に、ジグザグに動きながら隙を伺う。

徐々に速度を緩め、エアブレーキを再び展開し、一気に左回転のバレルロールをかます。速度差でザイが前に出たが、すぐに右に90°機動で回避され、後ろに取りつかれた。

 

「ったく、しつけぇ野郎だ!」

 

ランディーはスロットルをあげ少し加速してザイから逃げる。再びジグザグに回避していくが徐々に追い詰められていく。

ランディーは突如、ジグザグ飛行を止め一直線に飛行した。

当然ロックオンを伝える警報が鳴り響く。だが、それでもランディーはなにもしない。当然、ミサイルは発射される。ミサイルアラートが鳴ったのを確認すると反射的にフレアを放出。スロットルを大幅に下げエアブレーキを展開、操縦桿を手前に引く。

するとF-15Cは機首を上に向けつつも、推力が足りずに上昇することなくその場で機首を上に向けたまま、コブラ機動に似た動きになる。と

突然急激な失速により再びザイが前にでる。その瞬間、ランディーは操縦桿を手前に押し込み、スロットルを上げ、機首を水平にする。

 

「フォックス2!」

 

再びサイドワインダーを発射する。ザイが垂直に上昇を開始した。

 

「よっしゃ!かかった!」

 

ザイが上昇するのとザイに20mm弾が降り注いでくるのは同時だった。

ランディーは一か八か、ミサイルを避けるために上に逃げると賭けにでたのだ。

今回はそれが成功に終わったようだ。

 

ザイは空中でガラス片のようなものを撒き散らしながら爆散する。

 

「よし、これで2つ!」

 

こう言った直後、2機のザイに後ろを取られた。しかし、そのザイもすぐに爆散していった。

ランディーのF-15Cの真上を黄金色のイーグルが抜けていく。

 

「2つも~らい!」

 

イーグルの陽気な声が聞こえてくる。

 

「やろう、取りやがって!」

 

ランディーも陽気に返すと

 

「ザイが撤退を開始した。今空域から脅威は消え去った。」

 

テイラーの声が聞こえた。辺りを見渡すと確かにザイは飛んできた方向へと逃げ帰って行っていた。

 

「ふぅ...グリフォン全機無事だな」

 

「グリフォン2が...」

 

そう無線を入った...

 

「ブランドン...

墜ちたんなら、なんで無線に?それに横で編隊組んでるのは亡霊かな?」

 

ランディーは笑いながら言った。

ブランドンもそりゃそうだとおどけて言ってきた。グリフォン隊は全機無事だった。もちろんバービー、ホーカーもだ。

 

「皆よくやった。ミッションコンプリート、RTB」

 

テイラーが言ってきた。

帰投の許可も降り、全機小松への帰路についた。

 

「初任務で初勝利は縁起がいいな。帰ったら飯をおごろう」

 

相変わらずテイラーは食い意地が張っている。

 

「もうリサーチ済みかよ。仕事が速いなぁ。

ビールもつけろよ?」

 

マイクの言葉にテイラーももちろんだと答える。

 

こうやって皆が無事に笑いながら基地に帰れるのは毎度の事だが、ランディーは嬉しく感じていた。

 

 

 

これが続けばいいのだが...

 

 

 

 

次回「翼を求めるもの」

 

 

 




長々とお待たせ致しました!
しかも、今回も長いですw

空戦機動を言葉で表すのは難しいですね...
なんとか皆さんにも分かりやすいように頑張って行きたいと思います!
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