ガーリーエアフォース 黒色の狩人   作:ロングキャスター

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翼を求めるもの

 

ザイの奇襲を迎撃し、グリフォン、バービー、ホーカーの3部隊は無事に迎撃任務を終えることに成功。小松基地に帰投した。

彼らが帰りつく頃にはスクランブル発進で先陣を切った空自のイーグル部隊もとっくに戻っていた。

だが、8機全機の帰投はかなわなかった...

 

全機帰投したグリフォン隊に空自のイーグルファイター達が集まってくる。

 

「先ほどは本当にありがとうございました!」

 

真っ先に小日向がランディーに礼を言う。

 

「礼を言われるようなことはしてねぇよ」

 

「また、そんな在り来たりなことを...

でも、助けてもらったのは事実ですし..」

 

他の隊員が言う。

 

「2機を助けられなかったのは...

その、何と言ったらいいか...」

 

ランディーが声を詰まらせる。

 

「ええ...

でも、ザイへの迎撃戦ではしゅっちゅうですよ。

普段なら全滅だってあり得たんですから..」

 

小日向がフォローとも言いがたいフォローを返す。周りの皆もうんうんと頷いている。

そして、各々感謝の言葉を述べる

 

「まぁ、感謝してくれるのはありがたいな...

でも俺達だけじゃなく、向こうの連中にも言ってやれよ」

 

ランディーはバービー、ホーカー達のいる方を顔で差し、言った。

皆少しそれぞれの顔を見て、そうですねと答える。

なぜだろう。ホーカーに関しては分かるが、独立混成飛行実験隊の面々は前々から居たはずだ。なのになぜこんなおどおどとしているのか

 

(無理もないか...)

 

ランディーはアニマ達のもとに走っていく空自の面々を見つめながら心の中でも呟いた。

アメリカ軍のアニマ、『ライノ』の暴走の一件は空自にもすぐに届いた。だからだろう、恐らく「怖い」のだろう。

 

 

いつ

目の前の3人が暴走するのかと...

 

だから普通の人間であるランディーやその他グリフォンの面々のところに来たのだろう。

ランディーは突然感謝され、キョトンとしている四人の元へ歩き出した。そこには八代通も来ているようだった。

 

 

「よう、お疲れさん」

 

ランディーは右手を上げながら挨拶する。

 

「ん?ああ、どうした何のようだ?」

 

八代通は答える

 

「おいおい、まるで来られるのが迷惑みたいな言い方だな」

 

「悪いな、俺はこんな言い方しか出来なくてな」

 

「ああそうかい。なぁに、さっきの戦いでドーターの動きを見て興味を持っただけさ

見てもいいか?」

 

ランディーは『JAS39D-ANM グリペン』を差し、八代通の許可を貰うと機体各部をまじまじと見つめていった。

グリペン自体特徴のある機体だった。

軽量ボディにアメリカ製ゼネラル・エレクトリック F404-GE-400 をスウェーデンが独自に改良したものを搭載し、最高マッハ2.0で飛行可能。

デルタ翼と大型のカナード翼により高い機動性をもち、スウェーデンの国情から、滑走路のみならず高速道路上での離着陸ならびに整備が行えるよう、軽量・コンパクトそして整備性の高さが売りの戦闘機だ。

だが、いま目の前にいるグリペンはノーマルとは比べ物にならないほど改修を受けている。特徴的なのは装甲化されたキャノピーと真っ赤な機体のカラーリングだ。

 

「しっかし、すげぇ赤いな~

通常の3倍の機動力ってか 」

 

ランディーが独飛のもとに行くのを見てブランドン達もこちらに来ていたようだで、グリペンを見上げながら言った。

 

「動き的にそんな感じも無かったけどな」

 

グリフォン3の二人目、リドリーが答える

 

「グリペンに関しては他の二人とは事情が異なっててな。聞いてるとは思うが...」

 

「鳴谷 慧とグリペンの脳波が奇跡的に一致している。それによってグリペンの覚醒時間が大幅に長くなる。だから同じように機体の中に乗せることでグリペンの戦闘可能時間を引き伸ばそうとしたが、グリペンが下手っぴだから鳴谷に操縦させてグリペンが火器管制をしてるって感じだろ?」

 

八代通の言葉を遮るようにランディーが続ける

 

「まぁ、そんなところだ」

 

遮られた八代通が不服そうな言い方で答える

 

「下手ではない」

 

同じくランディーの言葉に不服そうにグリペンが訂正する。ランディーはそれを笑いで返すと、

 

「にしても、ドーターはアニマが動かすもんだと思ったが、普通の人間も動かせるのか」

 

と言った。

 

「一応な。元々ドーターも通常の機体だったわけだしな」

 

ランディーの言葉に八代通が答える。

 

「なら、俺らでも動かせるのか」

 

ブランドンが言う

 

「おいおい、お前を乗せてくれるほど室長殿も優しくはないだろうよ」

 

ブライアンが言う。

そのブライアンの言葉に八代通も笑って答える。皆、最悪乗れると分かっても自ら乗る者はいないだろう。

 

彼らが乗ったところで、ドーターの100%の性能は引き出せないのだから

 

「なぁ、昼にしないか?」

 

突然マイクが切り出す。

ザイの襲撃は昼前だったのだが、今は昼を過ぎている。

やはり戦闘に出向くと時間が経つのが早い

 

「それもそうだな、食堂でランチでも取りますか」

 

ランディーはそう言うと食堂の方へと歩き始めた。しかし、すぐ後ろを振り返り

 

「そうだ鳴谷、昼飯のあと空いてるか?空いてるなら少し話がある」

 

ランディーは鳴谷に言う

 

「え?話し?」

 

鳴谷は反射的に聞き返した

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「はぁ...なんで俺なんですか...」

 

鳴谷はため息混じりに問う

 

「いいじゃないか、暇だったんだろ?それに、基地の中で一番若いんだし、小松の人間なんだし」

 

ランディーは答える。

昼食前に言われた「話し」とは『小松の街を案内しろ』というものだった。

まだ到着して1日と経っていない彼らにとって小松は未知の世界だ。その街を案内しろというのは分かるが何故よりによってこの俺なのか...

 

「それに、空自の連中はまだお仕事の時間だしな。その点お前は正規の軍人じゃないから融通も効くだろうし」

 

ランディーは続ける

 

「なら、あなたは仕事してなくていいんですか?」

 

鳴谷は聞き返す。空自がまだ仕事の時間ということは、彼らも仕事で来ている以上、まだ時間外ではないはずだ

 

「うちはわりかしルーズでね。仕事時間中でも、スーパーに行こうがコンビニに行こうがカフェに行こうが、別の部隊の奴と談笑してようが、連絡をいつでも受けれる状態なら何しててもいいのさ」

 

ランディーは肩をすくめた。

 

「いいですねそういうの」

 

鳴谷は心のこもってない言葉で返す。

その後しばらく歩きショッピングモールまで来た。

 

「時間とか潰すにはこういうとこがいいですよね」

 

鳴谷はモールを見上げながら言った。

ランディーもそうだなと返しつつ見上げる。ランディーが視線を落とすとクレープ屋台が出ていた。

 

「ありゃクレープか

歩き疲れたろうしちょっと休憩でもするか」

 

ランディーは鳴谷の方を向く

 

「でも、さっき飯食ったからそれほど減っても...

一人すごいキラキラした目の奴がいるな...」

 

二人に付いてきて影の薄くなっていたグリペンが一気に表情を変え、目をキラキラさせていた。

 

「んまぁ、とりあえず買ってくるわ」

 

ランディーはそう言うと屋台の方へと歩き出した。鳴谷とグリペンは近くのベンチに腰かけた。土曜日とは言えど人は沢山いた

何も変わらない普段と同じ光景。

まるでザイなんて居なかったかのように皆楽しそうに目の前を横切っていく。

 

(ここもいずれ中国みたいになるのかな)

 

鳴谷はそう考えた。彼が小松に来て最初の頃には思ったことと同じだった。

だが、今は違う。それを防ぐ力がある。そして大切なパートナーがいる。

鳴谷はグリペンの方を見た。それに気づいたグリペンを顔を見合せ

 

「なに?」

 

と尋ねてくる。

 

「いや、何でもないよ」

 

鳴谷は笑みを浮かべながらそう返す。グリペンは不思議そうな顔をしている。そこへランディーも戻ってきた

 

「お前らの好み聞いたなかったから、俺のセンスになっちまったが」

 

そう言いながら二人に買ってきたクレープを差し出す。鳴谷はありがとうございますと答えながらそれを受け取った。

 

「日本円持ってたんですね」

 

鳴谷は聞いた。

 

「そりゃ日本に来るんだから日本円に両替しないわけにはいかないからな」

 

ランディーはそう言うとそのまま買ってきたクレープを食べ出す。それにつられるように鳴谷たちも口に運ぶ。

 

「ランディーさんって日本語堪能なんですね。」

 

鳴谷がふと聞いた。

 

「ああ、会社の航空兵学校の時に日本語を専攻してたからな」

 

「航空兵学校で?」

 

「航空兵学校は航空における知識や法律、あとは軍事においての航空機の歴史だったり、戦術だったり、飛びしかたとかを学ぶとこだな。そこで各種言語を学べるんだが、俺は日本語を学んだんだ」

 

「でもなんで日本語なんか」

 

「んー...じいちゃんの影響かな。小さい時から日本についてよく話しを聞いてたから興味があったというか...

あとは空自の逸話を聞いて機会があるなら直接話しをしたいって思ってたからかな」

 

ランディーは所々考えながら日本語を学んだ経緯を話していく。

 

「おじいさんは日本について詳しかったんですか」

 

鳴谷は聞いた

 

「いや、詳しくなんかないさ。ただまぁそうだなぁ...えっと、俺のじいちゃんは昔戦闘機パイロットでな。むか~し

もむかし、70年以上前さ」

 

「70年...」

 

グリペンが途方もないような声で呟く

 

「70年前ってのがどんなだったのかお前でも分かるだろ、鳴谷」

 

70年前。その時なにがあったのかは殆どの人が知るだろう。〈第二次世界大戦〉と〈太平洋戦争〉。ドイツ、イタリア、日本とアメリカ、イギリス、ソ連が血で血を洗いあっていたあの時

 

「じいちゃんはWW2でアメリカ陸軍の航空隊に入隊し、ヨーロッパ戦線でドイツの戦闘機とやりあったそうだ。んで、ドイツが降伏したら今度は太平洋戦線に送られ、日本とも戦ったそうだ」

 

ランディーは空を見上げた

 

「まぁ、俺が聞いたのは日本の戦闘機はどうだとか、日本と戦ってどうだったとかばっかりだったし、俺が興味もったのも、ゼロ(零戦)だとか、オスカー(一式戦)だとか、トニー(三式戦)とか、戦闘機とかばっかりだったからなぁ。でも、それは俺がパイロットになるきっかけの1つでもあるんだよな。

さて!食べたことだし、ショッピングでもしますか」

 

ランディーはクレープが包まれていた包み紙を丸めると立ち上がった

鳴谷もそこで質問を止め、同じく包み紙を丸めながらランディーに続いた。

 

 

 

 

ランディー達一行はモールの中をフラフラと回っていた。ショッピングするとは言ったものの、行く当てもなければ買うものも特にない。ただただ中をフラフラと歩くだけ。

 

そんな時だった。

 

「よう、慧じゃん」

 

と鳴谷は呼ばれた。

鳴谷が声の方を向くとそこには鳴谷と同い年くらいの青年が立っていた。

 

「なんだ、マサか」

 

鳴谷はその声の主につまらなそうに答える

 

「そんなに冷たくあしらわなくてもいいじゃん」

 

青年は答える

 

「なんだ、知り合いか」

 

ランディーはその〈マサ〉と呼ばれる青年をチラッと見ると鳴谷に聞いた

 

「ええ、俺のクラスメイトの政弘(まさひろ)です。」

 

 

鳴谷は答える

 

「んで慧、なんで外国人なんかと...」

 

政弘は鳴谷の隣に外国人であるランディーがいることにな疑問をもった。

鳴谷がよく学校に来ないことと関係があるのかと

 

「え?あ、ああこれは...その...」

 

鳴谷が言葉を詰まらせる。

その時。政弘は気づいた

 

「あれ、その胸のエンブレムって...

ラーフ社航空隊のエンブレムじゃ...」

 

政弘がランディーの服の左胸につけられたエンブレムを見て言う。

ランディーは会社支給のジャケットを着込んでいた。そのジャケットには航空隊のエンブレムと所属部隊のエンブレムが描かれてある

 

「ん?知ってるのか」

 

ランディーは思わず聞いた。

突然外国人が流暢な日本語で話しかけてきたことに政弘は驚いていた。

 

「ま、まぁミリタリーとか好きですし...」

 

政弘が張りのない声で答える。

 

「なるほど、なら知ってて不思議はないか」

 

ランディーはうんうんと頷いた。

何故ランディーが航空隊の軍人であるのかというのが分かったのかという疑問は解決できたが、まだ解決出来てない疑問があった。

 

「慧はなんでその人といっしょなの?」

 

ごく一般的な疑問だろう。

外国人と高校生が一緒に歩いてること自体珍しくのに、相手が空軍の兵士なわけなのだから

本来なら出会うはずもない二人がこうして歩いてることを不思議に思わない訳がない。

それに、隣にはピンクの髪の女の子までいる

 

「明華ちゃんが居ておきながらお前は!」

 

「べ、別にあいつとはなにもねぇよ!で、その...」

 

鳴谷は再び言葉を詰まらせた。

この状況をなんと話せばいいのか...

さらに追い討ちをかけるように

 

「なんだお前、事情話してなかったのか」

 

「ばっ!それは言わないでくださいよ!」

 

「事情?」

 

「いや、だからその...」

 

「慧は私のパートナー、一緒に...」

 

空気を読まずグリペンがしゃべり出したところで慧は、すかさず口を押さえてしゃべらせないようにした。

 

「ばか!グリペン、言うなって!」

 

「聞きたいこと山積みだけど、なんか悪いし、やめとくわ」

 

政弘が先に引いてくれて事なきをえた

 

「それにしても、空軍の人にここで会えるとは...

パイロットの方ですか?」

 

改まって政弘がランディーに聞き出す。

 

「ああ、F-15に乗ってるよ」

 

ランディーも快く答えてくれる。

 

「イーグルファイターですかぁ。イーグルってラーフ社の主力戦闘機なんですよね?」

 

「そうだな。あとはフランカーもだけど」

 

二人は楽しそうに会話が弾んでいた。そんな一時を一本の電話が遮った。

ランディーの携帯だった。ランディーは悪いと一言いうと、電話にでた

 

「ああ、俺だどうした。

...なんだって!?ああ。で、俺らにその尻拭いをしろってのか?

...はぁ、わかったよ」

 

ランディーは携帯を耳から外し鳴谷の方を向いた。

 

「うちの超重要機密が逃げ出したってよ」

 

「え!?」

 

鳴谷はその言葉を聞いて思わず声をあげた。

軍の重要機密とは恐らくあの『ドール』と呼ばれていたAIユニットのことだろう。

そんなのが逃げ出すとは...

 

「悪い、今日はここまでだ。鳴谷と友達なんだろ?だったらまた時間を作って改めて話をしよう」

 

ランディーはそう言うと、残りの鳴谷とグリペンと共にその場を離れた

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「ジュースは?」

 

政弘に向けて女の子が聞く。

 

「あ!ごめ忘れてた」

 

政弘はハッと思いだした。

元々政弘は一緒に来ていたこの女の子にジュースを買ってくるといいその場を離れていた。

そしたらランディー達と会ったというながれなのだが

 

「はぁ?じゃあどこほっつき歩いてたのよ」

 

「いやぁ...慧とあってさ、話してたら...つい...」

 

政弘は頭をかきながら言い訳を絞り出す

 

「慧?ああ、鳴谷君のこと?

...はぁ、もういいよ」

 

有美(ゆみ)、ごめん」

 

政弘は連れの女の子、有美に謝った。

 

彼女は政弘のクラスメイトで幼なじみだ。今日はその有美が出掛けようと提案してきていたのだ

 

「もう気を取り直してまた回ろ」

 

有美は歩き始めるのに合わせて政弘も後から追う。

 

 

二人はその後もフラフラと洋服屋や本屋などを転々と巡りながら時間を潰した。

 

「ここ来てなかったら今ごろは完全間近だったんだけどなぁ」

 

政弘はそう呟いた。

 

「なに?誘われたのがそんなにご不満?」

 

有美はふてくされたように言った。

 

「別に、ただそう思っただけ」

 

「休みになったら毎回部屋に籠ってずっとプラモデルばっかりなんでしょ?お母さん言ってたよ?」

 

「別にいいじゃんか」

 

(母さんまた余計なことを...)

 

幼なじみが故、政弘の母親も有美と仲がいい。何かあればすぐに有美に言う。有美がおせっかいな性格なせいもあって政弘にとっては悩みの種だった

 

「今日も、そうやってマサが引きこもりにと思って誘ったのに」

 

「余計なお世話だよ」

 

政弘は有美の説教じみた言葉にうんざりしつつ一緒に歩いた

 

「で、なに作ってたの?」

 

「フロッグフット」

 

「なにそれ」

 

有美は余計疑問に思った

 

「ロシアのスホイが開発した対地攻撃機で、『ロシア版サンダーボルトⅡ』って感じだね。サンダーボルトⅡよりも速力が勝ってて...」

 

「そこまでは聞いてない」

 

有美がそっぽ向いて冷たくあしらった

 

「自分から聞いといて」

 

「なにを作ってたのかだけ聞いただけ。それに、そんな詳しいことまで言われても私わかんないし」

 

政弘は不満そうな顔で有美を見る

 

「ねぇマサ、本当に自衛隊にはいるの?」

 

突然改まって有美が訪ねる

 

「...そのつもりだよ」

 

「でも、今かなり危ないでしょ?そのザイだっけ...

飛行機に乗りたいならお父さんと同じ旅客機でいいじゃん」

 

「旅客機と戦闘機じゃまるで違うだろ 」

 

「一緒じゃん、結局空を飛ぶんだし...

そりゃ見た目は違うけど」

 

「見た目だけじゃなくて、色々と違うから。

それに、俺が将来どんな仕事に就こうが俺の勝手だろ?お前に関係ねぇじゃん」

 

「関係なくないよ!だって幼なじみが死んじゃうかもしれないとこ行くんだよ?心配になるでしょ...」

 

有美の大きな声が徐々に小さくなっていく。

ザイという凶悪な存在が空を飛び回ってる中、それと戦う組織に入ろうとしている。止めたくなるのも当然だ。

 

「前は『お父さんと一緒に飛ぶ』なんて言ってたのに、今では...」

 

「それかなり昔の話だろ?昔は昔、今は今」

 

二人の口論はヒートアップしていく。

『やめさせたい』と『やりたい』の意見がぶつかり合う。しかもそれには『命』がかかっている。無理もない

 

「もうこの話は終わり、あと、解散!」

 

「あっちょ、マサ!」

 

政弘はそう言い残すと足早にその場を去った。

有美が言うこと、心配してくれていること、それは政弘にも分かっていた。自分の気持ちは抑えられない。

いや、抑えるつもりはない...

 

 

政弘が航空自衛隊に入りたいと思ったきっかけは単純だった。

 

『ブルーインパルスになりたい!』

 

ただこれだけだった。

小学校低学年の時に連れてってもらった航空自衛隊のイベントで縦横無尽に飛び回るブルーインパルスの姿をみて、少年だった政弘の心に強く残ったのはそれだった。

そしてそれは十年近くずっと変わらない。

 

いや、正確には変わらなかっただ...

二年前、突如出現したザイ。そして最近になって頻繁に日本にやって来るようになり、それを迎撃するため航空自衛隊機がスクランブル発進。

もちろんそれは地元小松でも変わらなかった。ジェットの轟音を唸らせながら上空に上がって行く機体を見上げながら、政弘の心境は変わっていった...

 

命をかけて日本を、そして自分たち日本国国民を守っている姿をみて、単に『ブルーインパルスになりたい!』などと言っていられない。それになる前にやるべきことがある。

迎撃に向かうイーグルファイターのように、その他の航空自衛隊員達のように、『この日本を、そして大切な幼なじみを守る』

政弘の心境はこう変わっていた。

 

政弘はそんな風に悶々と考えながら荒い足取りでモールを後にしようとしていた。周りの状況をよく見れない状況の政弘は、同じく注意が散漫になって走ってくる人の存在に気づかなかった。

 

「あいたっ!」

 

二人はそのまま出会い頭にぶつかり床に倒れた。

 

「いたた...すいません、前、よく見てなかったです...」

 

政弘は転けた反動で強く打った肘をさすりながらぶつかった人の方を向く。

そこには美しい金色の髪に透き通った青い瞳に幼い顔つきの少女が座り込んでいた

 

 

 

 

 

次回、「トップシークレット」

 

 

 

 

 

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