ガーリーエアフォース 黒色の狩人   作:ロングキャスター

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少年は空へ

《政弘》

「お疲れさん、凄かったな」

 

政弘はエプロンに帰って来たシャンティに言った

 

《シャンティ》

「見てたの?」

 

《政弘》

「ああ、オペレーションルームでね。全部見てたよ」

 

《シャンティ》

「そんなに凄かった?」

 

《政弘》

「正直、あんなレベルとは思ってなかったかし」

 

シャンティは少し顔を赤くした。

 

《シャンティ》

(初めて褒められた)

 

《政弘》

「にしても、友達がとてつもなく遠い存在になるとはねぇ~」

 

政弘は少し離れた位置にいた鳴谷にわざとらしく大きな声でなげかけた

 

《鳴谷》

「なんだよそれ」

 

《政弘》

「いいや別に。ただ、戦闘機に乗れるとかいいなぁってな」

 

鳴谷とグリペンがこちらに歩いてくる。政弘はその歩いてくる鳴谷のパイロットスーツ姿をまじまじと見つめる

 

《シャンティ》

「政弘は戦闘機に乗りたいの?」

 

《政弘》

「え?まぁ...一応はね」

 

《シャンティ》

「ふーん...」

 

《政弘》

「にしてもさ、よく慧もGに耐えれるよな」

 

《鳴谷》

「いや、そこまでじゃねぇから。俺も最初は気を失ったし」

 

政弘は二人が乗る機体を遠目にみる。真っ赤なボディに大型のカナードがついた機体...

 

《政弘》

「サーブ JAS-39 グリペン...二人乗りってことはBかDだよな」

 

《グリペン》

「そうD型」

 

《鳴谷》

「知ってんだな」

 

《政弘》

「当たり前だろ。グリペンだぜ?名だたる傑作機のうちの1つだろ。まさかそんな機体を間近で拝めるとはねぇ。しかも日の丸までついてる」

 

政弘の言葉にグリペンは得意気な顔をしている。

グリペンはスウェーデンのサーブ社が開発したマルチロールファイターで、同社製のJAS-37 ビゲンの後継として開発された。スウェーデン語のJakt(戦闘)、Attack(攻撃)、Spaning(偵察)の略称をとり、JASとつけられ、3つのミッションを不足なく行うことが出来る。グリペンはスウェーデンの国状から高速道路で離着陸並びに整備、補給が行えるよう、軽量かつコンパクトにそして容易に整備が出来る設計がなされている。スウェーデン独自の政策と、グリペン自体の信頼性から多くの国で採用されているまさに傑作戦闘機だ。

 

《政弘》

「ぶっちゃけ、日本にはこのグリペンが一番あってると思うけどなぁ。対空、対地、対艦に加えて偵察まで出来るんだからなぁ~。あのデッカイ、デルタ翼にカナードの組み合わせはまさに欧州機だよなぁ」

 

政弘がグリペン(戦闘機)を褒めるたび、グリペン(アニマ)がさらに得意気な顔でウンウンと頷く。

 

《政弘》

「まぁでも、アメリカとの関係を考えてもそうだし、対空ではF-15がいるし、偵察にはRF-4とかいるし、RQ-4の導入も決まってるみたいだし、対艦だとF-2がいるから仕方ないか」

 

一転して、一気に叩かれたグリペンはさっきまでの得意気な顔が嘘のように沈んでいる。

 

《グリペン》

「対艦ミサイルを4発積めるF-2は変態...」

 

《政弘》

「あははっ。だったらスパホも変態だ」

 

《グリペン》

「そう、スーパーホーネットも変態!」

 

《シャンティ》

「じゃあ私も変態...」

 

《政弘、グリペン》

「え?」

 

《シャンティ》

「私というか...私のハンティング・ホークも対艦ミサイルを4発搭載可能...らしい」

 

《政弘》

「へぇ~。ていうか、あの機体ハンティング・ホークって言うんだ...」

 

《シャンティ》

「そう。XFR-1B ハンティング・ホーク 」

 

《グリペン》

「ならあなたも変態」

 

グリペンはシャンティを指差した。

 

《鳴谷》

「おいおい...

でも、らしいってどういうこと?」

 

《シャンティ》

「私自身、まだ対艦戦闘は試験でもやったことはない。とりあえずザイを迎撃出来るかのテストぐらいしか..」

 

《鳴谷》

「なるほど」

 

《政弘》

「ふ~ん...

にしても、いいよなぁ戦闘機乗れるって。俺も乗れるように努力しなきゃ」

 

《シャンティ》

「政弘は戦闘機に乗りたいって言ってたね」

 

シャンティが少し空を見上げる。何か考えてるようだ。

 

《シャンティ》

「なら、一緒に乗ろう!」

 

《政弘、鳴谷》

「は!?」

 

《シャンティ》

「実は3日後、日本海上でさっき言った対艦ミサイル発射試験があるの。そこで一緒に...」

 

《政弘》

「いやいや、座席的に無理だろ」

 

《シャンティ》

「大丈夫。複座だから」

 

《政弘》

「なんで複座なんだよ...」

 

《シャンティ》

「あの機体はXFR-T1の複座テスト型をベースに改造されてるから。」

 

《政弘》

「いや、だからって無理だろ。対G訓練とか受けてないんだぞ?」

 

《シャンティ》

「大丈夫。ただミサイルを撃つだけでからGもかからない。」

 

シャンティは政弘の言葉にめげることなく、飛ぶ事をすすめてくる。流石に訓練も受けていない人間が無許可で乗るのは許されないはずだ。だが、少なからず乗ってみたいという気持ちはあった。シャンティは大丈夫と言うが不安しかない。だが、乗りたいという気持ちもある。

政弘の頭のなかはその葛藤がぐるぐると回っていた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

《政弘》

「結局乗ってしまった...」

 

政弘は結局乗る事にした。だが、乗ってみて改めて後悔も感じる。

 

《シャンティ》

「いや?」

 

《政弘》

「いやではないけど...」

 

《バージョン》

「シャンティ、今回の試験を復唱してくれ」

 

《シャンティ》

「はい、今回は日本海上約200kmに存在する仮想敵艦へのミサイルの発射テストを行う...ですよね」

 

《バートン》

「その通りだ。

...政弘君も了解したかい?」

 

《政弘》

「え!?」

 

《バートン》

「見え透いたことをするんじゃないよ。君が乗ってることはこっちも把握済みだよ。」

 

《グリフォン2》

「ったく、ガキくせぇことしやがる」

 

今回は試験ではあるものの、日本海ということもあり、グリフォン隊が直援についている。政弘はこっそり乗ったつもりでも、周りにはバレていた

 

《バートン》

「まぁ大方シャンティが言い出したんだろうから責め立てるつもりもないよ。今回はただ、ミサイルを撃つだけだから、高G環境下にはさらされないはずだ。今さら帰ってこいとも言えないしな」

 

《政弘》

「すいません...」

 

《バートン》

「なに、帰ったらみっちりお説教するだけだよ

さてシャンティ、そろそろ高度を下下げよう」

 

《シャンティ》

「は、はい...」

 

高度がみるみる下がっていく。徐々に海が近づき、手で触れられそうな勢いだ。

 

《バートン》

「よし、その高度のまま進行してくれ」

 

《シャンティ》

「了解」

 

一面真っ青な海が続くなか、シャンティはただ、ひたすらに前に飛び続ける。政弘は窮屈な空間の中で周りを見渡す。ゲームや映像でしか見たことのない空間が目の前に広がっていることに気分が高揚した。さっきまでの不安も、周りには気づかれていたおかけで吹き飛んでいる。

目の前の計基盤や、両サイドを眺める。計基盤は完全グラスコックピット化されており、レーダー、高度、速度、搭載兵装、そして前方の地形を3DCGで描いたようなものもある。恐らくはこれで地形を把握しながら低空飛行をサポートするのだろう。右付近には操縦用のジョイスティック、左にはスロットレバーがあるだけで、スイッチ等は殆どない、

 

《政弘》

(これが現代の戦闘機か...)

 

政弘は少し悲しさを覚えた。戦闘機は無数の計器に足の間から伸びた操縦桿で動かすものだと思うからだ。確かに操縦者からすれば楽になるだろう。だが、これで戦闘機を操ってるとい実感が沸くのだろうか..

 

テスト場所までは長い距離だったが乗ってしまえば以外と早いもので、体感そこまで長い間では無かったように感じた

 

《シャンティ》

「ハープーン射程圏内に入りました。」

 

《バートン》

「よし、ターゲット1に照準を合わせるんだ」

 

《シャンティ》

「目標座標入力完了。発射準備よし」

 

《バートン》

「ファイア」

 

《シャンティ》

「発射!」

 

翼下に吊り下げられた『AGM-84 ハープーン』が発射される。

 

しばらくの間のあとオペレーションルームのオペレーターから無線が入る

 

「着弾まで残り...5、4、3、2...

着弾!」

 

《バートン》

「ターゲット1デストロイ。よし、次はターゲット2だ、遠隔操作準備。

シャンティ、次は移動中の目標への攻撃だ。また座標を入力してくれ」

 

《シャンティ》

「了解。...座標入力完了、発射」

 

再びハープーンが発射される。結果は命中だ。続いて別々の目標への同時発射試験も行われた。またシャンティは座標を入力し、ミサイルを発射する。

 

「...5、4、3、2...着弾!一発外れました。」

 

《バートン》

「ふむ、結果は上出来だな。発射による影響はあるかい?」

 

《シャンティ》

「システムオールグリーン。異常ありません」

 

《バートン》

「では試験終了だ。次は新型対艦ミサイルの完成を待って、そっちのテストもしてみよう」

 

《シャンティ》

「了解。帰投します。」

 

《政弘》

「案外すんなりと終わったな」

 

《シャンティ》

「うん、だから簡単って言ったでしょ」

 

《政弘》

「貴重な体験が出来たし、よかったよ。ありがとう」

 

《グリフォン4》

「とてつもなく簡単すぎて仕事だったな」

 

《バートン》

「全機帰投してくれ」

 

バートンが呼び掛けた直後だった。オペレーターの叫びにも似た声で響いた。

 

「レーダーに所属不明機出現!」

 

《バートン》

「なんだと!」

 

《グリフォン3 リドリー》

「レーダーコンタクト!こっちも確認した。機数8」

 

《オペレーター》

「ボギー急速接近!迎撃急いでください!

《グリフォン4》

「こりゃまずいな」

 

《政弘》

「嘘だろ...」

 

《グリフォン1 》

「グリフォン隊が迎撃に入る。ホーカーは直ちに小松に戻れ」

 

《バートン》

「そうだな。ホーカー、君はすぐに小松に戻ってくれ。

(...八代通!アニマ達を出してくれ!)」

 

バートンが奥の方に居るのであろう八代通に呼び掛けているのが聞こえる。

 

《シャンティ》

「心配要りません。私でやれます」

 

シャンティが突然自信満々に答える。

 

《政弘》

「は?ちょっ...」

 

《バートン》

「何を言ってる!戦闘はいい、帰投するんだ!」

 

《シャンティ》

「グリフォン隊だけだときついはずです。やれます!」

 

《バートン》

「待つんだシャンティ!」

 

シャンティはバートンの忠告を聞かずにザイに目掛けて飛んでいく。

 

《シャンティ》

(政弘にいいところを見せるチャンス!)

 

《政弘》

「うぐ...」

 

政弘の体に加速によるGが掛かる。

シャンティは遠慮することなくザイ目掛けて突っ込んでいく。そしてザイとすれ違うと、その場で180°の急旋回をかける

政弘の体にとてつもないGがかかる。どこから拝借してきたかわからない対Gスーツを着込んではいるが、それでも減圧してくれないレベルのGだ。政弘は一瞬にして辺りが暗くなるのを感じた。

さらに追い討ちをかけるように、後方にザイが張り付き、ミサイルを発射する。これを回避するべく、シャンティは速度を落とすことなく機首を上にあげ、コブラ機動の状態からエルロンロールをかける。そしてミサイルをかわし、ザイをオーバーシュートさせると機首を元に戻しザイを追いかける。この時にも強烈なGが政弘を襲う。

全身に強い痛みと意識が遠退いていく。

 

《バートン》

「シャンティ!その辺で止めておけ!」

 

《シャンティ》

「まだ!行けます!」

 

《バートン》

「後ろの政弘君のことを考えてまえ!」

 

シャンティはハッとした。

後部座席確認用のモニターにはぐったりとした政弘の姿が映し出されている。

 

《政弘》

「...気づくの...おせ...よ...」

 

《バートン》

「無理な機動はやめて、ただに帰投するんだ」

 

《シャンティ》

「りょ、了解...」

 

シャンティは大人しくその場を離れ始める

 

《バートン》

「あとはグリフォン隊に任せるんだ。彼女も今そっちに向かったいる。」

 

シャンティは動かなくなった政弘をモニター越しに見つめる。いいところを見せようとした結果、逆に彼を殺そうてしまった...

正直、動かなくなってしまっている今、彼の生存を確認することはできない。

動きが鈍くなったシャンティを狙いにザイが襲いかかる。ミサイルが発射され、それを避ける為に再び回避機動を行う。だが、これも高G機動だ。

 

《バートン》

「その動きでは、政弘君ももたない。

極端な動きしか出来ないのはわかる、オートパイロットに切り替えるんだ」

 

《シャンティ》

「はい...」

 

彼女には、高機動もしくは通常飛行機の両方しかプログラミングされていない。

人間が耐えられる限界の動きを彼女は知らず自分、というよりも機体が耐えうる限界の機動しか知らない。つまり、彼女の『普通』は人間の『限界』を越えているということだ。

 

そこでバートンはオートパイロットを指示した。この機体はラーフ社の最新技術をフル活用した機体だ。

彼女の機体は新型ステルス戦闘機『XFR-1B フライング・ハンター』をベースにAIユニットを載せたもので、AIユニットの有無の違いしかない。

オートパイロットは有人モデルの時の名残で、大まかに二つに分かれている。今回は『ファイティング・オートパイロット』を動作させた。このシステムは自動で空戦をサポートするもので、有人モデルにも搭載されており、シャンティのような無理な動きはしない。

 

ザイからミサイルが発射されると、コンピューターが自動でフレアを放出、回避機動でそれを回避する。その間、シャンティはなにもしなくてもいいのだが、しきりに政弘の事が気になったしまう。なにもしなくていいのに、なにもしてあげられないのが余計つらい。ザイもしつこく追いかけてくるが、それをグリフォン3が仕留める

 

《グリフォン3 ブライアン》

「これ以上は近づけさせねぇよ」

 

《シャンティ》

「ありがとう...」

 

《グリフォン3 リドリー》

「気にすんなって、それより早く王子様を連れて帰りな」

 

《シャンティ》

「おおじっ!?」

 

《グリフォン4》

「ほら行った行った!」

 

シャンティはスロットルをあげその場から一気に離脱する。

 

《ブライアン》

「マイク、挟むぞ」

 

《マイク》

「あいよ」

 

ブライアンとマイクが連携してザイを仕留めようと動く。マイクがザイにちょっかいを出す。するとザイはそれに食い付きF-16Cの後方に付く。そのタイミングでF-14Dがザイの後ろをとる。

照準器とザイが一致する瞬間、トリガーを押し込み20mmバルカンを発射する。だが、弾丸は虚しく空を切るだけだ。

ブライアンがザイに集中する間、リドリーは周辺を警戒する

 

《リドリー》

「上!来るぞ!」

 

《ブライアン》

「ああ、クソッタレ!」

 

ブライアンはすぐにスプリットsを行う。

これは機体をロールで180°反転させて、そのまま下方に逆宙返りを行うマニューバだ。

ブライアンが機体をロールさせ、下方に回ろうとした刹那、機体のすぐ横をザイの機銃攻撃がかすめる

 

《ブライアン》

「っぶねぇ!」

 

《リドリー》

「後ろ!張り付かれたぞ!」

 

《ブライアン》

「んなこと分かってる!

...マイク!こっちも張り付かれた!援護は無理だ!」

 

《マイク》

「マジかよ...」

 

ブライアンは狙いをつけさせないよう、右に左に動き回る。そしてザイもタイミングよく機銃を放つ。しかし、当たらない。

 

《ブライアン》

「おいおい、ネコちゃんのお世話は金かかんだから、いじめるのはやめてくれよな」

 

ブライアンは右旋回をかける。そしてすぐにシャンデルに入る。

水平状態から45°バンクし、そのまま斜め上方に宙返りする技だ。速度を上げることなくスロットルを一定にしたまま上昇を始めたF-14は速力を落としていき、持ち前の可変後退翼が作動し、その速度域に最適な角度に主翼が稼働する。

F-14はそのままスロットルを全開にして一気に降下していく。エンジン出力と重力加速度で一気に加速していき、機体が三角形のようなシルエットに変形していく。そしてある程度スピードがのったところで水平飛行とエアブレーキを作動させる。速度を落とすF-14と同じように加速してきたザイ。その間隔は徐々に縮まり、それを焦るように伝えてくるリドリー。ブライアンもミラー越しにそれを見る。後部座席で世話しなく後ろを向くリドリーが見える。

 

《リドリー》

「相手の射程に完全に入っちまってるぞ!?」

 

《ブライアン》

「ああ、わかってるよ。もう少し引き付けよう」

 

《リドリー》

「マジかよ...死にたかねぇんだけど?」

 

《ブライアン》

「俺もだよ。まあ、任せろって心配すんな」

 

《リドリー》

「はぁ...任せろってなぁ...ま、心配だったらとっくに座席射出してるぜ?」

 

《ブライアン》

「ビビっててよく言うぜ」

 

リドリーのまさかという言葉を軽く受け流しつつ、後ろのザイに気を向ける。もう少し引き付けよう、そう思った瞬間、ロックオンを知らせるアラームがなる。

ミサイルが来る!

という、リドリーの言葉を聞くよりもほんの少し前に操縦桿を引き、機首をあげる。だが出力が足りずに完全に上を向くことなく、少し機首を上に向けただけの姿勢になる。そうしたことでさらに空気抵抗が発生し、F-14はさらに減速、ザイをオーバーシュートする。オーバーシュートを確認するとすぐに機首を元に戻すが、ザイはすぐに回避して後ろを取らせない。

 

《ブライアン》

「クソッ!やっぱり無理か?」

 

《リドリー》

「おいおい、任せろって言ったよな?」

 

《ブライアン》

「あっれぇ?俺そんな事言ったかな?」

 

ブライアンはとぼけた。リドリーもそれを聞いて呆れたようなため息をもらす。

その間にもザイは彼らの後ろを取って墜とそうとしている

 

《ブライアン》

「どうすっかなぁ...

マイク、そっちは?」

 

《マイク》

「よろしくねぇぜ。」

 

《ブライアン》

「んならいっちょやっか」

 

ブライアンは左旋回を開始して、少し右上方向に機首を向ける。その先にはこちらに旋回してくるF-16がいた。2機はそのまま真っ正面から突っ込んでいく。この前ブランドンがやったようなチキンレースのように。お互い限界まで近づくとお互い右にロールしてお互いの腹下が向き合う形で合流する。そして、ブライアンがF-16の後ろについていたザイを、マイクがF-14の後ろについていたザイを機銃で凪ぎ払う。

2機はそれぞれが撃破したザイの横をすり抜ける。

 

《マイク》

「ちょっとお前ビビってたな?」

 

《ブライアン》

「まさか、そっちの方がちとばかし早くロールしたんじゃねぇか?」

 

《リドリー》

「んなことより、またおいでなすったぞ?」

 

《マイク》

「あらやだ」

 

《ブライアン》

「あいつらも元気ですなぁ」

 

マイクとブライアンが迫り来るザイを迎撃しようとした刹那、そのザイが爆発し、ガラス片のようなものを空中にばらまいた。そして、彼らの横を一機の戦闘機がすり抜ける。

 

《マイク》

「ああ?ファントムか」

 

その機体はファントムだった。

 

だが、そのファントムの様子はおかしかった

 

 

 

ーーーーー

 

 

ザイのいる空域から外れたシャンティはザイからの襲撃もなくなんとか無事に基地に帰れそうだった。

 

《バートン》

「とりあえず無事に帰れそうだな。

...それにしても、今日はやけに張りきっていたな。どうした?」

 

《シャンティ》

「いや...別に...」

 

《バートン》

「まぁ、その事は後で聞こう。今は政弘君の容態が第一だ。すでに救護隊も配置済みだ、急いで診てもらわないとな」

 

《シャンティ》

「...はい、博士」

 

《バートン》

「もう少しで、独飛も来るとは思うから、それまで急ぎつつも安全に来なさい」

 

《シャンティ》

「...」

 

シャンティは自分の行為にとてつもない罪悪感を感じた。あの時、乗ろうと言わなければ、あの時、張りきってザイと戦おうとしなければ...

変な感情だけが先に行ってまともに判断できなかった。こんな判断が出来ないAIは役立たずなのかもしれない

そんな事ばかりが頭を巡る。

 

と、その考えを止めさせるかのようにオペレーターの声がした

 

《オペレーター》

「後方より、ザイ接近!」

 

《バートン》

「なんだと!?」

 

《オペレーター》

「恐らく、グリフォン隊の防衛線をすり抜けたものとみられます!」

 

《バートン》

「なぜ彼女をつけ狙う!くそ、シャンティ、回避機動をとれ!」

 

バートンが言うのと同時にザイがミサイルを発射する。オートパイロットは入れていたので、機体は自動で回避機動をとる。もう少しでドーターも到着する。それまでの辛抱だが、オートパイロットも100%信頼出来るものではない。単純な回避プログラムしかないオートパイロットの動きにザイも次第に動きを読み始める

 

このオートパイロットでの回避も限界が来るのは近い。シャンティ自身が動かせば返り討ちにはできるが、それをすれば政弘の命が...

 

そんなもどかしさのなか、シャンティは一か八かのかけに出ようとした。だが、自分の心がそれを阻む。

 

このまま迎撃して自分は生き残り政弘を殺すのか。またはこのまま大人しくやられるか...

自分自身の代わりはいくらでもいるし、何より私はもう一度甦れる。

何せ、自分は機械なのだから...

 

こんなに悩んだことは初めてだ。戦闘では簡単なことで迷うことはあったが、すぐに解決できた。どんな結果になろうとも自分は生きていられるし、生き返れる。

どうすればいいのか、考えている間にも徐々に追い詰められていく。

もうダメだと、自らの手で回避しようと操縦桿に手をのばした直後、そのザイが到着した援軍によって撃破される。

その機体は後にグリフォン隊の救援に駆け付けた『黒いファントム』だった。

 

《黒いファントム》

「エネミーキル。ホーカー1、小松に機動帰投せよ」

 

《シャンティ》

「は、はい...ありがとう」

 

シャンティのお礼に対する返答も特に無く、ファントムはグリフォン隊の方へと飛んでいってしまった。そのすぐ後に3機のドーターとも合流した

 

《バートン》

「バービー、すまないがこちらの増援がすでに到着した。君たちはシャンティが安全に小松に帰って来れるように援護してくれ」

 

《鳴谷》

「でも、グリフォン隊は?」

 

《バートン》

「彼女が池場大丈夫だろう。心配はいらない」

 

《鳴谷》

「...わかりました。援護します。」

 

 

シャンティはそのまま3機にエスコートされながら小松に戻った。あの増援に来たファントムからはとてつもなくドス黒いオーラを感じた。機体がそんな色だったからかもしれないが、それでも何か引っかかる。

 

《シャンティ》

(怒ってるのかな...)

 

そんな事を思いながら、小松に帰投した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

小松に付いた彼女らは、救急車で運ばれていく政弘を静かに見守った。救急隊員の診断では気を失っているだけのようだった。

 

《バートン》

「シャンティ...今回は、叱るべきところもあるが、ザイの襲撃も想定外だったし、力んでしまったことも仕方の無いことと言うのは違う気もするが、彼も幸い無事のようだし今回は特別叱ることはしないでおこう」

 

《シャンティ》

「すいません...」

 

《バートン》

「謝るなら政弘君に言いたまえ」

 

バートンは深いため息のあと、視線を救急車がいた方へと向けた。もうすでに救急車はいない。バートンはただボーッとそこを見つめる。とそこへ空気を震わせるジェットの轟音が鳴り響いた。滑走路にゆっくりと降りてくるグリフォン隊と黒いファントムの姿があった。

 

グリフォン隊とファントムを合わせた5機は着陸すると減速し、タキシングウェイをゆっくりと走行してくる。誘導員の誘導にしたがってエプロンに並んでいく。その場にいた、バートン、シャンティ、鳴谷、グリペン、イーグル、ファントムの視線はそのファントムに向いている。

やがてファントムから一人の女性が降りてくる。その姿は清楚系女子といった感じで、顔には黒縁の四角いメガネをかけ、黒い長髪をなびかせている。まるでアニメや漫画の学園もので生徒会長や学級委員長を努めているような、そんな見た目だ

その女性はゆっくりとバートンの元に近づく。

 

《バートン》

「よくやってくれた。ありがとう」

 

《女性》

「あれくらい、余裕です。」

 

グリフォン隊の面々も集まった。そしてバートンは一同に

 

《バートン》

「突然だが、今日からこの小松基地に派遣された、礼子だよろしくやってくれ。」

 

《礼子》

「どうも皆さん。私は戦術航空ドール、『XD-02 礼子』と申します。以後お見知りおきを」

 

《ブランドン》

「礼子って...また日本人みたいな名前だな?」

 

《礼子》

「はい。私の名前は日本人研究員が名付けたものですので」

 

《バートン》

「彼女達のネーミングはそれぞれ別の研究員が付けている。彼女は日本人が担当したからな」

 

《ランディー》

「なるほどね」

 

《バートン》

「彼女はドールとしては2作目なんだが、AIとしては初期モデルなんだ。だが、実力はすごいぞ」

 

《礼子》

「皆様と共に戦えることを光栄に思います」

 

礼子は礼儀正しく挨拶とお辞儀をする。だが、頭をあげるとすぐにシャンティの方を向いて

 

《礼子》

「それにしても、民間人を機体に乗せて、その状態で高G環境にさらすだなんて、貴方いったい何を考えてたんです?」

 

《シャンティ》

「...」

 

《礼子》

「そんなんだからいつまでたっても低レベルな実力しかないんですよ?そこしシステムをアップデートしたらどうです?」

 

《シャンティ》

「はい...ごめんなさい...」

 

《バートン》

「そんな言い方をするんじゃない。彼女だって、必死に頑張っているんだから」

 

《礼子》

「はい。博士」

 

礼子は相当ドスの効いた言葉でシャンティを責め立てる。

 

《イーグル》

「ねえねえ、F-4ってまだ日本以外でも飛んでたんだね。このファントムだけかと思ったよ」

 

イーグルがアニマのファントムを指さした。ファントムはそれがきに食わなかったようで、またやりますか?といっている。

 

《礼子》

「貴方はイーグルさんでしたね。お会いできて光栄です。まさか、こんなお強い方とお会いできるとは」

 

《イーグル》

「ふふ~ん。そうでしょ、私は最強なんだから!」

 

《礼子》

「ええ、そうですね。

...でも、不思議ですね」

 

《イーグル》

「何が?」

 

《礼子》

「訓練でF-15Jが、F-4EJ改にボッコボコにされているとお聞きしましたが。」

 

《イーグル》

「うげ...」

 

《礼子》

「いくら、F-16のシステムと同等に改修してあるとはいえ、世界最強とうたわれていたF-15がやられるはずはないとおもうんですけど...

あっ、そういえばアメリカ軍のF-15が空自の旧世代のF-104スターファイターに撃墜判定をもらったとありましたね。最強なのに不思議ですねぇ」

 

《イーグル》

「そ、そんなに疑うなら実力を見せてあげる!」

 

《礼子》

「いえいえ、頭の中でも自分最強論を持ってる貴方に私が貴方の頭の中で勝てるわけありませんから。それに、現実を見せるのがかわいそうですし」

 

《イーグル》

「ムキー!」

 

本来口からでるようなセリフではないのに、相当悔しいのか、イーグルが敵意をむき出しにしている。

 

《ファントム》

「そろそろやめてはどうですか、イーグルが本気で空戦を挑んで来ますよ」

 

《礼子》

「貴方はファントムさんですね。」

 

《ファントム》

「ええ、ファントムです。お互い同じ機種同士仲良くやりましょう」

 

ファントムが好意的に礼子に手を差し伸ばし、握手を求める。鳴谷はその光景に驚いた。あのファントムが敵対心を出すことなく友好的に接そうとしている。

やはり同じ機種ということもあって何か通じ会うものを感じたのだろうか

しかし礼子はそれとは反対にキョトンとした顔でそれを見つめる。

 

《礼子》

「ぷっ...アハハハハ」

 

礼子が突然笑いだした。

 

《礼子》

「同じ機種同士って、あなたRF-4がベースでしたよね?」

 

《ファントム》

「え、ええそうですけど」

 

《礼子》

「たかが偵察型にそんなこと言われるとは」

 

《ファントム》

「たかが?」

 

《礼子》

「ええ、たかが偵察型が戦闘機型のF-4Eに向かって...

あなた面白いですね」

 

礼子は腹を抱えて笑っている。鳴谷はファントムの顔が引きつっている様子を見て寒気を感じた。まあ、あれだけの事を言われれば誰だって頭にくる

 

《ファントム》

「たかが偵察型とはよく言ってくださいますね。実力はあなたをはるかに超えてると思いますけど」

 

《礼子》

「RF-4が?バルカンもスパロー発射能力もない機体が?盗撮しか能がないのに?」

 

《ファントム》

「お言葉ですが、バルカンも空対空ミサイルの発射能力もあります。スパローなんて時代遅れのミサイルなんて撃つ必要もありません。それに、偵察よりも現在の私は電子戦術機としての意味あいが大きいのですが」

 

《礼子》

「え...そうだったんですか...

でも、それだとRF-4をベースにした意味とは?EJ改をベースにすれば対地戦闘能力も付いたでしょうに」

 

《ファントム》

「ええ、そうですね。

それにしても、あなたはかわいそうにならくらい自分の事を過大評価しているようですね。これでも私は100年分の戦闘をシュミレーションしているんですよ?」

 

《礼子》

「100年?だからなんです?百戦百勝ならばすごいと言えますが、100年分のシュミレーションなんて、なんのあてにならないじゃないですか。そんなのを自慢するようではただのカカシですな。百聞は一見にしかずですよ」

 

ファントムの引きつりは酷くなっている。かなりお怒りのようだった。

 

《ファントム》

「そこまで言うのでしたら、一度模擬空戦でもやりましょう」

 

《礼子》

「あら、面白そうですね。でも遠慮させていただきます」

 

《ファントム》

「負けるのが怖いんですか?」

 

《礼子》

「まさか。どうせこずるい手を使って来るでしょうからね」

 

ファントムはそれを聞いて少しかたまった

 

《礼子》

「あら、何も知らないと思ってました?しっかりと聞きましたよ?そちらのお三方にズルして勝って、勝ち誇っていたと。ま、そちらの方にあっけなく返り討ちにされたとも聞きましたけど」

 

礼子は鳴谷とグリペンの方を見た

 

《礼子》

「全く、そんな汚い手を使って勝って何が楽しいんですかね?自分の実力を全て出しきって勝利してこそ、真の喜びを味わえるのに...

そんな汚い手を使って勝って喜び、勝ち誇るやつは自分の実力に自身がない、自分の実力では勝てない人ばかりです。そんな実力の人とやってもおもしろくありませんし、現実見せられて泣かれるのも嫌ですから。」

 

《ファントム》

「す、好き勝手言ってくれますね...

では、それも無しのガチンコ勝負でも...」

 

《礼子》

「だ・か・ら、しません。やっても結果が目に見えてるし、燃料の無駄です。それに、長旅で疲れているんですから」

 

礼子はきっぱりと断った。ファントムもズルい手を使わずとも高い実力を持っているのは事実なのだが、礼子はそんなのお構いなしにファントムの提案を突き飛ばす。ファントムの手が震えているのが分かる。悔しいのか、それとも怒りなのか...

いや、その全てだろう。こんなファントムの姿をみるのは初めてだ。煽り耐性がかなり低いのはわかっていたが

 

《ランディー》

「まぁその辺で止めといてやれ。気が向いたらまた空戦でもやってやれよ、な?」

 

《礼子》

「そうですね。これ以上関係がこじれても困りますし」

 

《鳴谷》

(もう手遅れなんだよなぁ...)

 

礼子は何事もなかったようにしているが、煽り耐性が低いファントムはかなり悔しがっている。この感じだと、かなり根に持たれるだろう...

 

鳴谷はこの先の二人の関係がより悪い方に進まないよう切に願った

 

 

 




次回「ファイター政弘誕生!?」
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