テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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※読む前の注意点

注意点

このサブイベントは本編とあまり関係ないもので、アリーシャが強くなるには結局なにが必要なの?とかを別の世界に転生した転生者に教えて貰ったり貰わなかったりするサブイベントであり、ゲーム的な話をすればサブイベントを進める事によりゴンベエの第三秘奥義が使えるようになり、最終的にある事を知ることが出来てアリーシャ達の好感度とかがなんかスゴい事になり更なるサブイベントが解禁されたりされなかったりします。
そしてこのサブイベントでアリーシャが槍を使える様になり精霊装擬きを使える様になるとかそういうのはない。所詮はサブイベントだから。



サブイベント 姫騎士アリーシャと導かれし愚者達 その3(後編)

「そういえば、この島の名前はなんと言うのですか?」

 

 ワイングラスの形をした奇妙な島に辿り着き、上陸の準備をしながらお爺さんに訪ねる。

 この島はお爺さんの持っている島で、お爺さんと一緒に異世界から来た島でとても不思議な島……後、お酒臭い。

 

「酒宴島とでも言っておこうかの」

 

「中々に良い名前だ」

 

「あ、重い荷物は私が」

 

「いやいや、コレぐらいは羽根の様に軽い」

 

 アイゼン達の心水が入っていた容器を纏めた箱を軽々と背負うお爺さん。

 見た目に似合わず物凄い怪力なのか楽そうな表情をしているのだが、直ぐに箱を降ろす。

 

「こりゃ、未成年は足を運んではいかんと言っておるじゃろ」

 

「どうしてもダメなの?僕もこの島を探索してみたいよ」

 

 箱の中にライフィセットが縮こまって入っていた。

 この島にあるものはどうしてもお酒の成分が混じっているので、ライフィセットは立ち入れない。

 当初は少しぐらいはと思っていたエレノア達も、まさか海水が酒になっているとは思ってもおらずお爺さんに頭を下げて頼んでこない。

 私としてもライフィセットを入れてほしいと言う思いはある。そうなると問題なのはお酒だ。ライフィセットはまだ子供でとてもお酒の飲める年齢ではない。

 

「ダメじゃよ」

 

「諦めろ、ライフィセット。こればかりは運も関わる」

 

「でも、お爺さんが帰っちゃうと島も無くなるんだよね……」

 

 今を逃せば次は絶対にない。

 偶然に島が流れ着いたことを知っているライフィセットは今を逃したくはない。けど、逃すしかない。

 

「なにこの島の酒が上手く発酵して生まれる王酢という酢があっての、寿司や酢を使った料理には最高なんじゃよ」

 

「そんなものまであるのか……爺さん、早く行こうぜ!」

 

「まぁ、そう慌てなさんな。物事には、いや、酒を飲むには順序があるじゃろ」

 

 早く島を巡りたいのかウズウズとしているロクロウ。

 ロクロウだけじゃない。アイゼン達もウズウズとしており、無くなったお酒を補充が出来るだけでなく未知なるものを見たいという好奇心に刈られている。

 

「すまない。私だけ行ってしまって」

 

 この島にはベルベット達は足を踏み入れられない。

 そんな中で私だけ足を踏み入れる事に少しだけ罪悪感が沸いてくる。

 

「別に気にしてなんかいないわ……それよりもむしろ心配よ」

 

「心配?」

 

「皆さん、完全に飲むつもりですよ」

 

「酔っぱらいの相手は大変じゃよ」

 

 ベルベット達がそういうのでふとアイフリード海賊団を見る。

 葡萄酒の海水を酌んで贅沢にバケツごと飲んでいて頬を真っ赤にしている者がおり、お爺さんに小突かれてている。

 

「酒を飲む前に準備がある。酒は飲んでも飲まれてはいかんぞ」

 

「準備って、なんだ?二日酔いに効く蜆の味噌汁でも作るのか?」

 

「なについてくれば分かる……ほれ、ワシも今回我慢しておるから行くぞ」

 

 目の前にあるお酒を飲むのをやめて、島の中に向かって歩いていく。

 全体的にお酒の匂いがしていて何処になにがあるかが分からないが、一先ずは歩く。

 

「美味い酒があると、美味いつまみも欲しくなるよな」

 

 口の寂しさを感じ始めるロクロウ。

 そこかしこからお酒の匂いが感じるせいでお酒の副菜であるつまみが欲しくなる。

 

「ああっ、副長!アレを見てください!」

 

「っ、な!?ポテトチップスの木だと!?」

 

 お酒の匂いを我慢しながら歩いているとポテトチップスの木を見つける……なにを言っているか分からないが、木の幹の皮がポテトチップスになっている木がある。

 私の記憶が正しければポテトチップスは芋だ。芋は地面の中になるもので、木の幹の皮になるなんてことは絶対にありえない。

 

「アイゼン、大変だ!」

 

「今度はどうした!?」

 

「酔っ払った牛がこっちに向かって走ってきている」

 

「なにぃ!?」

 

「ブモォオオオ!?ブィッ……っぷ」

 

 ポテトチップスの木に驚いていると今度は酔っ払った牛が走ってきた。

 完全に酔っぱらってるのか顔を真っ赤にしており、さながら闘牛の様に全力で突っ込んでくる。

 

「この島は酒宴をするのに最高な島、あの牛も最高のつまみじゃよ」

 

「つまり狩れって事だな!!分かりやすくていいぜ!!」

 

「確か麦の発砲した心水の粕を飲ませれば牛が美味くなると聞いたことがある。肉と心水は極上の組み合わせだ」

 

 狩るしかないか。

 ロクロウとアイゼンは構えるので、私もやってやろうと槍を取り出して構える。

 スレイが私の為に山羊を狩ってくれた時の事を思い出すな。確か頸動脈をスパッと切って血を抜かなければ、肉が不味くなってしまう。

 

「!」

 

「「!?」」

 

 狙うならば頸動脈。

 アイゼン達が若干酔っているので私がしっかりしなければと思っていると寒気が走る。いや、寒気じゃない。

 例えるならばそう、魔神剣だ。剣圧を飛ばして相手を切り刻む技と同じような物でその斬撃が私達を透き通っていく。

 

「な!?」

 

 その感覚は嘘でもなんでもなかった。

 攻撃をされていると感じた私は直ぐに気を引き締めていくのだが、既に遅い。

 酔っぱらってこっちに向かって来ている牛が例えるならば標本の虫の様に、人間の白骨遺体の様に肉だけ完全に削ぎ落とされた。

 

「ブモオオ!!」

 

「まだ動いているのか!?」

 

「違う……これは、まさか!」

 

 模型や標本のように綺麗に骨だけになった。それなのにまだ酔っぱらってるかの様に突撃をして来ている。

 不死身なのかと驚いているとアイゼンは骨だけになった牛に向かって蹴りを入れると牛は悶え苦しむ声をあげてピタリと動かなくなった。

 

「この牛、死んでいた事に気付いていなかった……ランゲツ流の包丁術を極めれば、魚を生きたまま捌けてそのまま生かせるが……直接触れもせずに斬撃を飛ばして捌くだと?」

 

「いったいどれだけの技量なんだ……」

 

 飛んできた方向を見る。

 偶然に巻き起こった鎌鼬のような物でなく、明らかにこの牛を狙った斬撃。しかも死ぬことすら気付いていない。

 ロクロウは似たことが極めれば出来るというが、恐らくこれはそれよりも遥かに高度な技術だ。

 

「あっちに誰かが」

 

 斬撃が、包丁が飛んできた方向を見る。

 木々や岩等の障害物で誰かがいるのが分からないが、誰かがいるのは確かだ。

 いったい誰だ?こんなスゴいことが出来るのが。死んだことすら気付かないまま牛肉を一瞬で捌くのは。

 

「今のは聖ちゃんじゃの」

 

「聖、ちゃん?」

 

「ワシの相棒じゃよ……まぁ、君達には会わないと思う。それよりもついたぞ」

 

「おぉ!!これは果実の蒸留心水の池!!」

 

 そうこうしている内にお爺さんの目的地に辿り着いた。

 琥珀色の一瞬濁っている水かと思うが、そうでなく透き通っている高級な蒸留酒、ブランデーの泉に。

 海からお酒が溢れ出てるので、まさかと思ったがお酒が流れる川が存在しているとは……。

 

「っしゃあ!!さっき捌かれた牛とポテトチップスをつまみに宴だ!!」

 

「待った」

 

「んだよ!まだ待てって言うのか!?」

 

 目の前にあるブランデーを目の前にして待ちきれないベンウィック。

 お爺さんはアレじゃよと黄土色のとぐろ状の……あ、あれは!

 

「ウン━━」

 

「ウコンじゃよ。ウンコの形をしておるが立派なウコンじゃよ。ウコンウンコじゃよ」

 

「ウンコ?ウコン?どっちだ!」

 

「どっちゃでもいいじゃろう……ほれ、コレを飲まんとこの島の酒に依存しすぎて一生酔いしてしまう」

 

 酒は飲んでも飲まれるな。

 この島にあるお酒の強さを一番知っているのかお爺さんは鮫肌の降ろし金を取り出してウコンをすりおろす。

 これはウコン……見た目が完全にとぐろ状のアレにしか見えないがウコン……!

 

「ウコンだ!」

 

「そう堂々と言うもんじゃない!!レディがはしたないぞ!!」

 

「あ、すみません……アイゼン、これはウコンだ。堂々と飲んでも問題は無い!」

 

 ウコンの味がしたウコンをアイゼン達に渡す。

 すりおろすと更に酷い見た目になるが味は何処にでもある普通のウコンで、健康にいい。気のせいか、味の確認で飲んだほんの少しのお酒の酔いが体から消えていく。

 私が飲んだのでアイゼンも恐る恐る口にするとアイゼン達の体の中から酔いが消えていく。

 

「さて、今日はワシの奢りじゃ。この島にはチップスツリーや酒乱牛以外にも酒のつまみとなる物がある……思う存分、楽しむがいい」

 

 そこからは凄まじかった。

 お爺さんにずっと我慢させられていたアイフリード海賊団の面々は枷が外れた獣の如く走り出す。

 流れる度に混ざる七色のカクテルの川。

 あまりの透明さで透き通っていて底が見える清酒の池。

 黄金色に輝くビールの滝。

 ドラゴンの様な生き物の背中から発せられるエメラルド色のワイン。

 銀紙の様な繊維を持ったキャベツ。

 羽根がポテトチップののりしお味の紋白蝶。

 聖ちゃんと呼ばれる人が一瞬の内に捌いた牛肉。

 チーズと白菜が1つになった様な味わいを持つ野菜。

 

 どれもこれも凄まじく美味かった。

 今まで食べていたものがなんだったのか?腐っていたのか?そう思うほどに。

 

「おーい、飲んどるかの」

 

「あ、はい!とても美味しくいただいております!」

 

 どれもこれも見たことも聞いたこともない食材、流石は異世界。

 味付けもしていないのに既に充分に塩味がきいた海老を噛り、味を堪能する。

 

「ふむ……どうやら満足してくれないようじゃの」

 

「満足、ですか?どれもこれも絶品で美味しいですよ」

 

 どれもこれも絶品で今までに食べたことの無い物ばかりだ。

 此処が異世界と言われれば本当にそう思えるほどに美味な物ばかりで、私も心から楽しんでる……筈。

 

「その割にはあまり嬉しそうじゃなさそうじゃろう」

 

「それは……」

 

「ワシの代わりに行ってしまった子が心配かの?」

 

「……ゴンベエなら無事です」

 

 お爺さんの代わりに異世界に行ったゴンベエが心配かどうかと聞かれれば心配だが、一番最初にゴンベエは異世界に行って何事もなく帰って来た。

 前回危うくゴンベエが死にかけたが、そう悲観する程のものじゃない。ゴンベエの強さを信頼できない間柄じゃない。ゴンベエならばなんとか上手く生きている。

 

「ほれ、コレは格別じゃよ」

 

 巨大な酒瓶に入っているお酒を私の杯にお酌する。

 お酒はピンクとは若干異なる赤紫色で、とても透き通っており私の杯の底を写し出すだけでなく私の顔も移す。

 酔っ払ってはいないが頬を赤くしている。それなのにあまり笑っていない。アイゼンやロクロウ達はこれでもかという程に飲んで笑っていてイキイキしてるというのに。

 

「ワシの酒は美味い……いや、酒は美味くなる様に出来ているものじゃ」

 

 浮かない顔の私を心配して腰を降ろすお爺さん。

 大きな酒瓶とはまた違うロクロウが愛用しているのと同じぐらいの酒瓶を取り出して自分の杯に入れる。

 

「1月は正月、2月は豆まき、3月は雛祭り、4月は花見、5月は子供の日、6月は田植え、7月は七夕、8月はお盆、9月は台風、10月は運動会、11月はどさくさ、12月は忘年会。春は桜、夏は星、秋は満月、冬は雪。時には湯の中に入り青空を眺めながら飲む酒はある……それでも美味くないとなれば人の心に淀みがある」

 

「……」

 

 お酒が飲める飲む理由をこれでもかと上げられる。

 今の私は……どういう気持ちでお酒を飲んでいるのだろうか?いや、違う。お酒に写し出されている私はなんなのだろう?ここのお酒は現代でもこの時代でも見ないレベルのお酒で、数も種類も段違いだ。

 お爺さんに言われて心の中にある靄と向き合ってみる。

 

「……強く、なりたい」

 

「ほぅ、強くなりたいか」

 

 周りが進んで強くなっている中、自分だけが停滞している。

 現代のことは当然としてこの時代の事も見てはいられない。でも、今は口だけだ。なにかを成し遂げる為の力が私にはない……いや、ある。何度も何度もゴンベエが与えてくれたチャンスが。

 私は何度も与えられたチャンスを不意にしている。機会は幾らでもあるのに。

 

「ふっふっふ、そうか強くなりたいのか……強くなってなにをしたい?」

 

「……平和を築き上げたい」

 

 この世界と異世界が同じように出来ているとは思えない。

 穢れの事を説明していても理解できない可能性がある。上手い言葉を探してお爺さんに答える。

 穢れの無いハイランドについて色々と考えてみた……今のハイランドは穢れに満ちていて民の心が荒んでいる。それを私はどうにかしたい。どうにかして戦争なんて無い平和な世の中にしたい。

 

「それは強くなるのに使う理由かね?」

 

「……力無き正義は無力です」

 

「では、力こそが正義か?」

 

「……違います」

 

 改めて力について考えさせられる。

 力こそが正義となれば弱いものは全て悪となり、この世は暴虐な人間で溢れ帰っている。

 かといって力が無いのも、またダメだ。……だが、絶対ではない。なら、なにが正しいのだろう?平和を思う心?……いは、違う。やり方はどうあれ聖寮は平和を築き上げようとしている。

 私の様な人間が過去に誰一人居なかったわけではない。スレイの様な純粋な人間が過去に誰一人も居なかったわけではない……じゃあ、なにが平和を築き上げるのに必要なんだ?

 

「悩んどるのう」

 

 力も必要だが力だけではヘルダルフのようになる。悪に染まらない善の心だけでは聖寮の様なやり方を認めてしまう。

 力でも正しい心でもなければなにが必要か分からない。

 

「それだけが絶対に必要なものですか?」

 

 力がなければ力を持った者に負ける。正しき心が無ければ、平穏を作ることをしない。

 片方だけがあっても意味はない。コレが絶対に必要だというものがない答えなのかもしれない。

 

「必要なもの……物とは言いがたいがの」

 

「物じゃない?」

 

「答えは(これ)じゃよ」

 

「……手?」

 

 皺があるヨボヨボの手。

 これが一番大事なものだというがイマイチピンと来ない。なにかを成し遂げようとする折れない心や信念でなく手。

 五体満足な体だと言う意味、いや、体は物でお爺さんは物ではないという。

 

「平和を築き上げるのには手を繋ぐことが大事なんじゃ」

 

「手を繋ぐこと……」

 

 手を繋ぐ、それは色々な意味がある。

 大事な人と繋がっている証、何処かの国と有効になること。挨拶の1つでもある……確かに平和には必要不可欠だ。

 

「平和という物は1人で築き上げるものではない。ワシやワシの兄貴は馬鹿みたいな強さを持っているが、そんな物は平和を築き上げるの上では精々、めんどくさい奴等をシバくのにしか使えん。むしろ平和とは真逆の物じゃ」

 

「力が平和とは真逆」

 

「むしろそんな物は不要……と言っても、必要になってしまうのが残酷な世の中じゃ。この前なんぞ秋山の馬鹿が扉間くんと協力してバッドエンド━━いや、これは関係の無い話じゃったの」

 

 自分達の世界の厄介事を語るのをやめる。確かに力があり暴力的な存在は不要だ。そんな物があるから悪巧みをする人間がごまんと増えている……だからといって此方がなにも持たないとなれば向こうの好き勝手にされるだけだ。

 

「平和を築き上げたいのならば手を繋ぐ……1人ではただのくだらんざれ言じゃよ」

 

 人は1人では生きていけない。

 1人で先走っていても無駄で同じ思いや信念を持った人達と手を繋ぎ、手を結ぶ。そうして広がっていく輪が平和を築き上げるの一番大事な物だ。

 

「君はまず、自分の幸せを掴んでみればいい」

 

「……周りの人が苦しんでいるのに自分だけが幸せになることは出来ません」

 

 それが出来ないから私はこの道を選んだんだ。

 

「なら、逆に聞こう。君は自分が幸せになれないのに、どうして周りを平和という幸福に導ける?」

 

「それは……」

 

「皆が幸せになるならば自分が犠牲になってもいいと言う考えは素晴らしい。じゃが、それだけで実際の所はダメじゃ。それはただの自己満足で周りのものを多く悲しませる。自分が幸せになり、その幸せをお裾分けする……ちょうどワシ達の手は2つある。1つは自分の幸せを掴む為に、もう1つはその幸せを誰かにお裾分けする為に使うんじゃよ」

 

「幸せのお裾分け……私の幸せか」

 

 穢れ無きハイランドを見ることが私の夢だ。

 だが、夢と幸せはまた違う。穢れ無きハイランドを見るには争いを納めなければならない。争いが無くなったハイランドがあることが私個人の幸福と聞かれればそれは違う。そうあって欲しいと願うがそれで私個人の幸せとはまた違う。

 

 改めて自分という一個人について考えてみる。

 

 この時代の人達と仲良くなることは出来ているが、何時かは現代に戻る。

 悲しい話だが現代人の私にとって既に過去の人間で、現代にいる者だけで関係者を頭に思い浮かべ……思い浮かばない!?

 末席とはいえ王族だが、王族の者と同じ血を分けた者と仲が良いのかと聞かれればそうでない。

 かといって一般の街の人と仲がいいと聞かれればそうでなく、私の事を慕ってくれる給仕はいるがあくまでも慕ってくれる給仕で親しき友でない。

 いは、待て。私がひとりぼっちの人間じゃ……いや、そんな筈が……。

 

ゴンベエ

 

 一番親しくて自分の幸せとはなにか考えて、真っ先に浮かんだのはゴンベエの後ろ姿だった。

 

「お、浮かんだかの?」

 

「っ、違います!いや、違うとかそうじゃなくて私の周りにいるのが、よく考えればゴンベエだけでその!」

 

「いや、そこまで露骨に否定せんくても……そうやってると破滅フラグの格好の餌食じゃよ」

 

「破滅フラグ……私が?」

 

 なにかよからぬ事でも起きるというのだろうか?

 ゴンベエの事が中途半端に頭に残っている私はお爺さんに注いでもらったお酒を一気飲みし、ゴンベエの事を頭から消そうとする。

 

「美味しい……」

 

「酒は美味い………酒はどんな時、どんな場所でも美味い。それでも美味くないとなれば人の心が変わってしまったから。生まれ変わっても世界が変わっても何時までたっても美味い酒を飲みたいもんじゃ」

 

 このお酒はこんなに美味しかったのだろうか。

 また一歩、心が強くなったような気がして飲んだお酒は極上の一杯だった。

 

 

 

4日後

 

 

「あんた達、何時まで飲んでるのよ!!早く監獄島に戻るわよ!!」

 

 

 4日後、角が見えるんじゃないかと思えるほどに怒ったベルベットが迎えに来るまで全員がへべれけに飲んで酔っぱらっていた。




 スキット 酒は飲んでも飲まれるな

ゴンベエ「ただいまー」

ベルベット「あんた……今まで何処に行ってたの?」

ゴンベエ「USJに約半日ほどいた」

ライフィセット「半日?4日間じゃないの?」

ゴンベエ「オレが飛ばされた世界とこっちの世界じゃ時間の流れが違うっぽいんだよ。つか、どうした?アメッカ達、正座をしてるけど」

エレノア「それが、4日間ずっと宴会をしていたのです」

ゴンベエ「はぁ……なんかイマイチ、ピンと来ねえな」

マギルゥ「そこかしこが酒だらけの島が紛れ込んでての」

ゴンベエ「……待て。もしかして白髪のリーゼント爺がこの世界に来たのか?」

ベルベット「そうよ。リーゼントの爺さんが船のお酒を根刮ぎ飲んだからってワイングラスみたいな島に行ったと思ったらこの様よ」

ロクロウ「お、ぉお……頭が、頭がぁ」

アイゼン「くそ……今頃ウコンの力が消えてきて━━っ!!」

エレノア「二日酔い、いえ、四日酔いの後遺症が今更出てきていますね……」

ベルベット「自業自得よ、ほっときなさい。だいたい、なんで四日間もお酒をずっと飲んでるのよ」

アリーシャ「美味しかったんだ……っつ……文字通り酒が涌き出る泉があって」

ライフィセット「そうなんだ……」

ゴンベエ「危うく一生酔い組じゃない奴等はどうしてたんだ?」

エレノア「タカトオさんという料理人が船にやって来て、この島にある食材を使った料理を振る舞ってくれました……料理の腕もそうですが、素材がこの上なく極上で卵一個に対して卵黄が十個ある十黄卵という不思議な卵を使った親子丼が絶品で」

ゴンベエ「お前等、オレが居ねえ間にスゲエ美味しい思いをしてんじゃねえか!!ズルいぞ!!」

アリーシャ「っゴンベエ!!大声を出さないでくれ、頭に、っあああ!!」

ゴンベエ「悪い悪い……ちょっと蜆の味噌汁でも作ってくる」

ベルベット「作らなくていいわよ。タカトオがどうせ酔っぱらうから事前に作ってたわ」

ゴンベエ「そうか……お前等だけ美味しい思いをしてるのなんか凄えムカつくな」

ロクロウ「そういうと思って、爺さんがお前に最高の心水を……あ、悪ぃ。飲んじまってた!」

ゴンベエ「ファック!!テメエ、それドッハムの湧き酒じゃねえか!!」

アイゼン「っが……大声を出すな!!」

ゴンベエ「るせぇ!一杯飲むのに人生数回分の金が要るとかいう馬鹿げた値段がするんだぞ!!」

マギルゥ「また随分と馬鹿げた値段じゃのう……まぁ、悪くはなかったぞ」

ゴンベエ「テメエ……」

ライフィセット「そういえば、お爺さんの名前を聞くの忘れちゃったね」

ベルベット「どうでもいいわ。さっさと監獄島に戻るわよ!!」

ゴンベエ「ベルベット、なんでそんなに不機嫌なんだ?」

マギルゥ「なにを言っとるんじゃ。お主がおらんからどれだけの極上の料理でも味が一切せんのじゃぞ。ワシ等が舌鼓しておる中、一人だけ味気の無い食事をしておったんじゃ」

ゴンベエ「そうか……そんなベルベットにお土産の百味ビーンズをやろう」

ベルベット「……なにこれ?」

ゴンベエ「USJの名物のお菓子……要するにグミだ」

ベルベット「グミね……ま、それでいいわ。一口、ちょうだい」

ゴンベエ「はいはい。あー……あ!」

ベルベット「っ、なに、この、味」

ゴンベエ「ごめん、これ鼻くそ味だった」

ベルベット「あんた、なんて物を食べさせるのよ!!」


 ゴンベエの秘奥義


 サモン・リバイバル(withマスター次狼)


 ゴンベエ版サモン・フレンズ。リーゼントとフォークとナイフが交差されたクレストに入ると発生。
 閻魔の三弟子であるマスター次狼を呼び出しグランドノッキングで相手の動きを封じ、当たると問答無用で即死させるギネスパンチを叩き込み、次狼の相棒である高遠聖野が味方の体力を全回復&状態異常を解除する料理を振る舞う。
 ゲーム的な話をすれば発動すればヘルダルフだろうが即死させる問答無用の一撃必殺の技を叩き込み戦闘終了後に特殊な料理を獲得出来る。


 ドッハムの湧き酒……が入っていた容器

 説明

 閻魔の三弟子と呼ばれる転生者の始まりと呼ぶべき存在の1人であるマスター次狼があの手この手で作り上げた極上の酒……が入っていた容器。
 残念ながら死神や海賊や夜叉のアホどもが名無しの権兵衛にと残されたお土産分を飲み干してしまった様で、数敵しか残っていない。
 もし入っていたとするのならば1杯数億ガルドするとんでもない値のはる物で、これだけで一生遊んで暮らせる。


 ドロップする料理


 ガルタサウルス(原種)のロースト

 体力100%回復+攻撃力100%増加

 解毒草の回復サラダ

 体力100%回復+状態異常全回復+次の戦闘で状態異常を一切受けない

 シャボンフルーツのぜんざい

 敵のドロップ率を10倍UP

 フグ鯨の竜田揚げ

 BGが5回復しSGが全快する

 カリスドラゴンの鱗酒

 最大ヒット数%入手できるガルドUP

 BBコーン メルクの星屑添え

 集中力90%増加+被疲労効果90%軽減

 コンソメマグマ煮込み

 全属性の被ダメージ90%軽減

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