「ベルベット」
アリーシャが目の前にいる女性に会おうとするのだが、結界がそれを拒んだ。
結界を斬る術を持っていないアリーシャは結界を喰らうことで破壊しているベルベットに頼む。ベルベットは言われんまでもないと左腕を喰魔に変えて結界を喰らい潰す。
「……あんたがメディサね」
「……ええ、そうよ。貴女は?」
「あんたと同じく、聖寮をアルトリウスを憎む者よ」
突如として現れたオレ達に警戒心を向けるメディサ。
ベルベットは助けに来たなんて言うわけがないが、もう少し言葉を選んで欲しいと少しだけ思う。
「安心してください!私達は貴女を助けに来たのです!」
ベルベットがツンツンしているのでフォローに入るエレノア。
これで取りあえずの対話が……出来そうにないな。
「助かりませんよ」
「え!?」
「諦めないでください!私は」
「違う、そうじゃない」
助からないから諦めてるんじゃない。諦めてるから助からないんじゃない。
「助からないのは貴女達です」
「!」
「……そういうパターンもあるか」
立ち上がり目をクワッとさせるメディサ。
オレ達に向けていた警戒心を敵意に変えて、穢れを溢れさせる。
「導師アルトリウス様の理想を!聖寮の理を穢す者は私が殺し」
「デラックスボンバー!」
長い!そして大体分かったのでもういい。
周りから大量の蛇の憑魔が出現したのでメディサの力かなにかだと思うので、久しぶりのデラックス・ボンバーをぶつける。メディサが敵意を向けていた事が予想外で更にはオレの不意打ちが予想外すぎて固まる一同。
「ゴンベエ、もっと色々とやりとりがある筈だろう!?何故、いきなり色々とすっ飛ばして攻撃をするんだ!」
「敵だと分かって会話をしてる方がおかしいからな」
アリーシャが空気を読めと言ってくるが、最早空気を読むとかそういう戦いの次元じゃねえぞ。
そりゃ相手が吐き出せる情報を持ってんならある程度は喋らせてからだけど、なんかもう大体予想出来るからさ。
「蛇、消えちゃったね」
「完全に意識を失っているな」
「手加減はちゃんとしたぞ」
白目を向いて気絶しているメディサ。
周りを取り囲んでいた蛇達も何時の間にか消え去っていき、メディサもこんな状態だ。
「……事情を聞きましょう」
「なんかもう大体分かるだろう?」
「いいえ、分かりません!!」
メディサは喰魔関連の事情を知っている、その上で喰魔になった。
そんな感じでオレ達と敵対をしていて、多分だけどそれでもまだ知らされていない事があるとかそんな感じだろう。
聖寮の対魔士の中でも実際のところ、全てを知っている奴は何人ぐらいいるんだ?殿下はなんか色々と知ってるっぽかったが。
「ライフィセット、メディサを治してください」
「う、うん」
とか言いつつしっかりと拘束術をかけてんじゃねえか。
気絶しているメディサを鎖で縛りつつ、ライフィセットに治療をしてもらうエレノア。
オレの察しが良すぎるのか、他の面々も事情が気になるので、そのまま連れていこうとはせずに回復するのを待つ。
「……!」
「目が覚めましたか?」
「っ、放せ!!私をどうするつもり!!」
「落ち着け、ここからは話し合いの時間だ」
暴れようとするメディサだが、事前の拘束術のお陰で動けない。
ここからは血みどろの殴りあいより酷いかもしれない話し合いの時間だ。正直、苦手なんだよな。
「貴方は……っ、そうか。貴方が災禍の顕主の下僕ね!!」
「……え、待った。オレ、どういうイメージ?」
自分からベルベットの手下を名乗るのはちょくちょくあるけど、ダイレクトにそう名乗った記憶はない。
「アルトリウス様に唯一傷をつけた男よ!」
ご丁寧に答えてくれるメディサ。
そういえばデラックスボンバーで一応のダメージは与えていたな、あんま効いているイメージは無いけども。
「メディサ、貴女は聖寮に無理矢理に喰魔にされたのではなかったのですか!?」
「違うわ。私は自らの意思で喰魔になったのよ!」
「でも、貴女の娘さんは業魔になって対魔士に……それで聖寮を恨んでいる筈じゃ」
「ええ、恨んでるわ……人間の穢れが業魔を生んでしまう、この世界を!!」
なにを言い出すかと思えば、やっぱりというか事情は知っているか。
穢れというワードが出たことで驚き開いた口が塞がらないエレノア。メディサは語り続ける。
「対魔士様が教えてくれたわ。ディアナが業魔になったのは穢れを発したせいだと……私は穢れを喰らう喰魔になって二度とディアナの様な子を出さないのと決めたのよ!!」
……穢れに当てられたでなく、穢れを発したのか。
「どんな醜い姿になろうが、構わない。カノヌシ様を復活させて、この悲惨な世界を変えるのよ!!」
「どうやってだ?」
「だから、カノヌシ様の力を使って」
「使ったら私達は具体的に、どうなるんだ?」
アリーシャはなんで?の疑問をメディサに対してぶつけてみる。
なんとなくでの予想はついているが、実際のところカノヌシが目覚めるとどうなるのか、アルトリウス達がロクでもない事をしでかしてるぐらいしか分かっていない。
ベルベット達は分かろうとするつもりは無いし、聖寮の対魔士達は口を開けばアルトリウス様と妄信的なまでに崇拝をしていて信じきっている。人ってのは裏切る生き物なのにな。
「それは……」
「知らない、としか言えないか?」
「っ、黙れ!!確かに私はなにも聞かされていないわ!けど、貴女達災禍の顕主のとは違うのよ!!」
「さっきから言っているそれ、なんなのよ?」
「災厄の時代をもたらす魔王の名前よ……」
「違う!!」
現代でボコボコにしたヘルダルフの異名が出てくるとは思ってもいなかったが、当然と言えば当然か。
日頃の行いの悪さを思い出しているが、アリーシャは違うと首を横に振っている。
「確かに結果的にベルベットが災厄を呼び寄せているのは事実だ……だが、ベルベットもまた被害者だ!」
「被害者ですって?欲望のままに世を乱し、混乱と災厄を世に撒き散らしている省みない穢れの塊が?」
「アメッカ、余計な事は言わないで……魔王、災禍の顕主、喰魔。本当に人を好き勝手に呼んでくれるわね」
本当に分かっていたことだが、話し合いとなった途端にドロドロしている。
「でも、あたしが魔王だって言うのならばあんたは魔王に利用されるだけよ」
「させない……私は絶対に!!」
このままだと連れていかれると感じたメディサは立ち上がる。
エレノアに拘束されてまともに身動きを取れない筈なのにそれでも諦めないのは子供の為に……。
「子供の喰魔が居てもか?」
「……なんですって?」
このままいけばエレノアが仕掛けた拘束術をメディサは無理矢理にでも解いてしまう。
そうなるともう一回デラックス・ボンバーを撃って気絶させないといけない。このままメディサを無理矢理に連れていってもなにをするか分からない。クワブトや鷹の様に人間じゃないなら無理矢理に連れていけば良いだけだが、そうとはいかない。
なにか動かす材料は無いかと考えた末にモアナの事が頭に浮かんだ。
「……聖寮に無理矢理に喰魔にされた少女がいます。娘を助けようとした母親はお腹を空かせているモアナに自らの肉体を差し出して……」
「メディサ、貴女は母として立ち上がっている。例え親の心子知らずだとしても……だが、子の心も親知らずだ」
「モアナはずっと泣いているんだ。お母さんに会いたいって」
モアナの事を出して語るエレノア、アリーシャ、ライフィセット。
険しい表情で穢れを溢れさせていたメディサの顔色は変わる。オレ達に向けていた敵意を完全に忘れ去って別の方向を向いている。
「だから、お母さんが死んだらディアナも悲しむよ」
「……違う」
「まだ……!」
「私は、貴女の為に……」
それでもまだ否定するのかと、立ち上がるのかと思えば段々とメディサは弱々しくなっていく。
震え涙を流しており、過去を強く深く後悔し始める。
「あなたは自分自身が邪魔物になったと思って、穢れて業魔に」
「……そうか」
メディサの娘のディアナの話を聞いて、少しだけ違和感を感じていた。
穢れに当てられて憑魔へとなり果てたのでなく自らが穢れを発して憑魔化したと言っている。子供と言うのは良くも悪くも純粋な存在だ。なにかを切っ掛けに……街で集めた情報が確かならば再婚相手と新しい父親家族云々で揉めて結果的には憑魔となったんだろう。
「私のせいで、ディアナ……ごめんね……ごめんなさい……」
「メディサ!」
気絶したメディサに駆け寄ろうとするライフィセット。
体の方のダメージは最初にライフィセットがかけた回復系の術でもう治っている。けど、今気絶したのは体の方じゃなくて心の方のダメージを受けての気絶だ。
「それは時間と切っ掛けを与えないと治らない傷だ……」
「ふぅむ……メディサの後悔を聖寮は利用したようじゃの。自分達の意のままに操れるようにの」
「そんなの……残酷すぎます」
「じゃが、理には適っておる」
確かに聖寮がメディサを操るのに娘を引き合いに出していくのは理にはなっている。
「……そうですね。理に反している方は」
「違う……理その物が間違っているんだ」
「アメッカ?」
理に反している自分を認めようとするエレノアに待ったをかけたアリーシャ。
この光景を見て、まだ理が大事だと言うのならばそれは9を選んで1を切り捨てる何処ぞの正義の味方と一緒の考えだ。
「この理が、悲劇の連鎖を生み出しているんだ!もっと、もっと良い理が!」
「アメッカ、それ以上は言うんじゃねえ!」
この時代のシステムは負の連鎖を続けている。
現代での浄化と導師のシステムよりも遥かに劣っていて、悲しいことが続くだけで誰も報われない。最後に迎えるのは悲しい結末だけだ。
この時代の何処かにあるかもしれない浄化の力さえ見つければ、今とは考え方が違う理さえあれば救えると強く思うのは良いが、それを教えることだけはしちゃいけねえ。
「オレ達がどうしてベルベット達の旅に同行をしているのか、忘れんな」
例えそれが悲劇的な結末だろうと、もっと良い明日に向かって行くためには受け入れなければならない。
先人達の成功と失敗を踏み台にして一歩ずつアリーシャは歩んで行かなければ、きっとスレイが世界を救っただけで終わってしまう。
「オレ達が見届けた後にするのは星の開拓者になることだ……」
「星の開拓者……」
人類の歴史を一歩踏み出す人にアリーシャはならなくちゃいけねえ。
今まで通りの事をやっているだけじゃスレイの代で負の連鎖が終わって、災厄にまみれるだけだ。
「あんた達の理がどんなのかは知らないけど、結局のところは穢れる人間が悪いのよ」
「……」
負の連鎖が悪循環している事を目の当たりにしてしまい、揺らいでいるアリーシャにベルベットは言葉を投げ掛ける。
「私は目をそらしたくはありません。自分の選んだ道の先にあるものからは。それが理に反する私の、せめてもの義務です」
エレノアはアリーシャとはまた違った意見を投げる。
誰が正しいのか?なにが正しいのか?そこにあるのは正義でも理でもなく、ただの人の強い意思だ。
「本当に面倒ね。あんたもアメッカもこの女も……ゴチャゴチャ考えないで、悪事は全部私とコイツのせいにしとけば良いのよ」
「……待て、そこでオレも含まれるんだ?」
すべての痛みを自分が変わりに受け止めようとするツンデレな優しさを見せるベルベット。
そこにサラリとオレの名前を入れているのはおかしいんじゃないんですかね?
「なに言ってるのよあんたは私の奴隷でしょ」
なんか段々とランクが下がっていってしまっている気がする。
「ベルベット……」
おかしい。
オレの下僕とか奴隷とかに関しては誰もツッコミを入れず、ベルベットの優しさを感じるエレノア。
もう完全にベルベットの下僕とかそういういうかんじに見られてるんだな……いや、うん。
「別に気を遣ったわけじゃない」
「勘違いしないでよね!」
「あたしは気にしないって事よ。道の先になにがあろうとも」
「あんたがどんな道を歩んでどう変わっても、あんたはあんたなんだからしっかりしなさい」
「……おい」
「今回は蹴りか」
妙なところでツンデレを発揮するベルベット。
何時ものように本音を語ってあげると攻撃が飛んでくる。今回は綺麗な飛び膝蹴り。肘とか膝での攻撃は的確に相手を殺す一撃であんまり受けたくないが、ここで避けるのと後々大事な場面で避けるのでは大きく異なるので攻撃は受けておく。
「貴方は一向に成長しませんね……」
「なにを言い出すかと思えば、オレは基本的にこんな感じだぞ」
蹴られるオレを見て呆れた目で見てくるエレノア。
オレがちっとも成長していないと思っているかもしれないが、そうじゃない。むしろお前等がオレのステージに追い付いてきたものだ。既にオレは遥か彼方の高みにいるんだ。
「なにかありがたい言葉を送ってほしそうな顔をしてるから、一個だけやろう」
「あの、別に欲しいなんて言ってませんけど」
正義とか悪とか難しい事を考えるからいけない。
確かに秩序とか善悪が無ければこの世は混沌としているが、それよりも大事なのは道でもある。
エレノアは必要無さそうな顔をしているがたまにはこういう真面目な事を言っておきたい……普段、今まで以上に真剣にしときゃもっとマシな扱いをされるだろうが。
「きっとこれからも絶望は押し寄せてくる。その度に道が分からなくなって踏み外しかける」
今見ているのはスレイ達と旅をしていたら見れない人間の悪の部分。それらは自らが進んで学ぼうと知ろうとするものはいるかもしれないが、わざわざ教えようとする奴はいない。教えて良いものでも……あるか。
「行く手を阻む迷いも痛みも絶望も、夢と勇気と友情で
自分が信じた道を誰かと共に一歩ずつ歩んでいく。
人と言う強くて弱い矛盾した生き物で、自分達だけが自然の摂理から抜け出していると思っているが抜け出すことは出来ていない。だから、誰かと一緒に歩む。オレみたいな例外も居るには居るが、この事を忘れてしまったらおしまいだ。
「人間という生き物がどういう物なのかを知って、その上で自分の道を……あー」
「どうかしたのですか?」
「いや、ちょっと……」
あの時、アリーシャが槍の使い方を聞いた時に骸骨が言っていた事が今になってよく分かる。
人間というのは弱くもあり強くもある矛盾した生き物だ。矛盾こそしているが、その矛盾は正反対で2つじゃないんだ。
「増援が来る前に、さっさと戻るわよ。マーキング、してるんでしょ?」
ちょっとだけタメになることを言い終えると、気絶したメディサを俵担ぎするベルベット。
アリーシャより筋力は無いので若干ながらふらつきがある。ここでオレが代わりに持とうかと聞けば、メディサの姿からしてセクハラだなんだと言われるのでフロルの風でさっさとヘラヴィーサにあるバンエルティア号の船着き場に戻る。
「うお!?」
「うるさいぞ」
「そりゃ誰だって驚くっつーの……それで成果の方は?」
「あるにはありました……直ぐに船を出すことは出来ますか?」
「おう、何時でもいけるぞ」
オレ達の帰還に驚くベンウィックだが、これぐらいは慣れっこなので直ぐに何時も通りにする。
コイツら、オレ達が遺跡にメディサの所に行っている裏でちょっとアレな取引をしてるんだよな。
ヤバい奴等で思い出したが、スレイは無事なんだろうか?途中でやめたとはいえアリーシャを殺しにきたバカどもと一緒に何処かに行ってんだろうが、一応はハイランドに色々と村を回ってても、赤聖水を売っていたインチキ導師以外は見掛けなかった。
「っ……ここは!」
「目が覚めましたか」
監獄島に順調に向かっていき、寒い区域を抜けた辺りで意識を失っていたメディサは目を覚ます。
さっきまでと異なる場所で困惑しているメディサにエレノアは近づく。
「貴女は……そう」
「ここはバンエルティア号の中です。申し訳ありませんが縛らせていただきます」
「一応、監視としてオレも居る」
エレノアがなにかの情けで拘束術を解く可能性がある。
バンエルティア号を傷付けず秒で蹴散らせるのはオレぐらいのもので、裏切りは無いが騙しはありそうだ。
「……貴女に頼みたい事があります」
「ふざけないで!誰が災禍の顕主の一行に力を貸すも」
「エレノア、ちょっと来てくれ!!」
オレが居る前で堂々と頼み込むエレノア。
別に秘密裏とかそんなのでなく、この後起きる事を先に頼んでいるだろうと見ているとアイフリード海賊団の船員が慌てた様子でこちらにやってきた。
火急の用だが、オレでなくエレノアをわざわざ指名してきた。
「なにがあったのですか?」
「殿下から電話があった」
「殿下からですか……」
「で、んかめ。ヤベえ状況なら真っ先にオレに掛けてこいよ」
船に積んである電話に連絡があった事を報告するが、基本的になにかあった時の為だ。
ベンウィック達はシルフ擬きとか言う伝書鳩みたいなのを利用しているが、それでも間に合わない時の為に電話を用意した。本音を言えば血翅蝶との連絡のやり取りに使いたいが、まだ手紙と伝書鳩でのやりとりをしている奴等に電話を貸すとなにしでかすか分からねえ。
分解してぶっ壊されたらそれこそおしまいだ。
「パーシバル殿下、ただいま代わりました」
電話を置いてある所に向かい、受話器を手に取るエレノア。
わざわざ自分を指名してきたということに少しだけ疑問を持っている。
『急な連絡ですまない』
「出来ればオレを呼ぶ理由で掛けてほしかったんだがな」
『ゴンベエもそこにいるのか……こちらの方は今のところコレと言った異常はない。私的な理由で掛けてしまって申し訳ない』
「エレノアをわざわざ指名してきたんだ。大方の予想はつく」
『モアナ、エレノアと連絡がついたぞ』
受話器越しからダイルの声が聞こえると若干のノイズが少しだけ走る。
船に設置しているアンテナの調子が悪いか、電気が無くなりかけているのか。帆船じゃなく機帆船だったら発電システムとか作れるんだがな。
「なんなの、コレは」
「遠くの人と会話をする事が出来る道具だ……今の社会をぶっ壊す道具だから、喋るんじゃねえぞ」
電話を見るのがはじめてなので困惑をするメディサ。
一応の釘を指して、一先ずはと様子見をする。
『エレノアぁ……』
「モアナ、どうしたの!?」
電話越しで聞こえるのは泣いているモアナの声。
エレノアはモアナの声で大きく慌てており、モアナの方もモアナの方で泣いているだけで事情を説明する事が出来ていない。
「子供が泣いている?……いったい、どういうことなの?」
「知りたければ下手に暴れずに今から向かう所に行けば分かる……と言いたいんだがな。ダイルかで、んか、どっちか居るだろう。状況を説明しろ」
大方の予想は付くのだが、オレの予想よりも当人達の口から聞いた方がいい。
困惑するメディサを隣に置いて通話を続ける。
『お前が眠らせた後にまた母ちゃんの夢を見たんだよ』
「それで?」
その程度の事ならお前等が処理できる、と言うかしないといけないことだ。
そこからわざわざ電話を入れてきたってことはもう一個、何かあったんだろう?
『今度の夢は母ちゃんと仲良く出来た夢なんだけど……問題は途中で起きちまって夢だって分かってしまってよ。もう一回、眠れば夢の続きを見れるって必死になって寝ようとしたんだが、その』
「1度もその夢を見ることが出来ていないか……」
『エレノアが居ないのを見て、今度はエレノアまで居なくなってしまったとショックを受けてしまって。ちゃんと戻ってくると言っても信じては貰えなくて……私達がモアナを任されたというのに、すまない』
電話の価値が分かっているのでこういうことに使う事を申し訳なさそうなで、んか。
事情を聞く限りではエレノアの声を聞いて安心をしたかったのだろうが、肝心のモアナは泣いたままだ。
「……モアナ、聞こえますか?」
『エレノア……何処に行っちゃったの?エレノアもお母さんみたいに何処かに行っちゃうの?消えちゃうの?』
「っ……」
言葉は選べよ、エレノア。
モアナの言っている消えるは夢の話で本当の意味での消えるじゃない。そこはまだ気付いていない。
「私は貴女の前から急に消えたり居なくなったりはしません……嘘じゃありませんよ」
『じゃあ、何時になったら帰ってくるの?』
「そうですね……モアナがいい子にして船着き場で私達の帰りを待ってくれたらあっという間に帰ります」
「……ん?」
『ホント?』
「ええ、本当です」
『……じゃあ、モアナ、いい子にして待ってる。エレノアも約束、破らないでね』
「ええ……」
優しい嘘を吐いたかと思えば、直ぐにバレそうな嘘をつく。
しかし泣き止んだのでこれで電話による通話は終わりだと受話器の電源を落とす。
「ゴンベエ」
今頃は監獄から出て船着き場に向かおうとしているモアナ。
エレノアは直ぐに着くなんて言ってくれたが、船は寒い区域を抜けた辺りで帰るのにもう少し時間が掛かる。今頃はモアナは監獄から船着き場に向かっているので、このままだとエレノアが言ったことは嘘になる。
そしてその嘘を本当に変える方法はたった1つだけある。
「船を監獄島にワープしてください。貴方なら出来ますよね?」
オレが船をワープさせることだ。
「船を操縦しているのはベンウィック達だ。ベルベット達とベンウィック達にワープするって頭を下げてこい」
元を正せばオレがモアナを無理矢理眠らせたから変な夢を見させてしまった。泣いているのはオレにも責任があるから嫌とは言わない。エレノアの嘘であっという間に辿り着かないといけなくなったのならばエレノアが筋を通せ。このまま普通に行けば監獄島に辿り着くことは出来るのだから。
「分かりました」
エレノアは急ぎ足で船内を飛び出してベンウィック達の元に向かう。
その足取りには迷いはなく、頭を下げることは屈辱的と思っていない。純粋にモアナを心配している。
「後でベンウィック達から文句を言われて、ベルベットからなんか一発やられそうな気がするな……」
これも身から出た錆。もっといい方法があったかもしれないのに、それをしなかったオレが悪い。
エレノアは直ぐにベンウィックとベルベット達からの許可を取ってきたので、オレは船上に出て風のタクトを↓→←↑の4拍子で指揮すると疾風の唄が発動した。
DLC 純白の花嫁 漆黒の花嫁
説明 2人の花嫁の衣装のセットDLC。選ばれた方が無料で配布され選ばれなかった方が有料になる。
漆黒の花嫁側の衣装
バニーガール(黒いウサミミWithジャケット無し)
説明
黒色のこれぞ定番中の定番、王道中の王道のバニーガール。
長くて苦しい旅の果てに彼に対しての気持ちが少しだけ分かった……だが、既に彼の隣には純白の彼女がいる。自分の事を思ってくれてるのは分かるのだが、どうしても彼は純白の彼女を見てしまう。
だったら、此方を振り向かせてやろうじゃないと以前ポロっと聞いていたバニーガールを着て彼を誘惑する。そんな彼女に対して彼はあんまり目線を合わせない。悪乗りやボケで変な事を言うが、その姿だと本当に洒落にならない。
そういった感情を出さないようにしている彼を簡単に誘惑する。彼女のベット(意味深)は中々で、二人きりの時に迫って優位性を取ってやる……ただ電気は暗くしておいて。その、覚悟は出来ているから。あんた、好きでしょ?私の胸……私自体が好きなの……そう。
漆黒の花嫁衣裳
説明
穢れに満ちた黒色のドレス。黒は縁起が悪いのだが災禍の彼女にはちょうどいい。
知ろうとしなかった壮大なまでの残酷な真実を知り、死を選ぶ彼女。生きる者は手を掴み、名無しの勇者は次元を越えてカノヌシに一撃を見舞う。それでも死を選ぼうとする彼女に対して彼はただ怒る。彼女を選ばなかったのならばオレは彼女を選んでやる。
何気ない言葉かもしれないが、彼は彼女の事を化物としては見ていない。ただの1人の生きる者として見ている。そして彼女は自覚をする。自分が人であり続けれる理由を。このバカが居てくれたから……。
だから、私を選びなさい。
もし選ばなかったら私は怒り狂う。純白の花嫁から笑顔を奪い、世界に再び災厄をもたらす。あんたがその気になれば私を殺せるのは知っている。だったらあんた以外の全てを皆殺しする。私だけを見なさい。
大体、こんな事になったのはあんたが原因なんだから責任を取りなさいよ……国の首都で大きな豪邸で暮らすとか欲しい物がなんでも買えるとか、そんなの欲しくない。あんたにまで裏切られたら私は世界を滅ぼす。天族も人間も何もかもを滅ぼす。
純白の花嫁が選ばなかったら指名手配にする?子供が出来たって言う?……別にいいでしょ。
世界と身内に対して喧嘩を売ったことがあるんだから今さらよ。あんたは私を幸せにしないといけないでしょ……その、あんたと一緒に居れるだけで充分に幸せだから……お願い。お願いだから私の前から消え去ろうとしないで。私を見ていて、私の手を握っていて……っ……にげないで……1人にしないで。