テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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オレはぁ…

「あ~死ぬ、マジで死ぬ」

 

 この世界に来て、一ヶ月。

 吉幾三の歌並みに文明が低いこの世界での一ヶ月は色々と辛かった。

 エドナの兄が残した鉱石をジャンル分けしてからの、海に行って色々な物を集めたりしないといけなかったり…人海戦術でどうにかする事が出来ることも、四人までしか分身出来ないので結構キツい。

 

「素材の倉庫を作ったり、硝子の砂探したり……何時になったら元の生活レベルに戻るのやら」

 

 転生特典で作りたいものをどうすれば作れるのか、作るまでの過程の知識をくれるからどうにかなる。

 よくわからんが手先の器用さがスケットダンスのボッスン並になってたから、作るものが汚いとかそう言うのもないが、限界がある。

 

「いい加減に仕事探さねえとな」

 

 何度目かは忘れたが、レディレイクにやって来た。

 曲がりなりにも王都…うん、いい加減に仕事を探さないといけない。まだお金には余裕があるし、最悪純金や水晶を売ればどうにかなるが、ある程度、ガッポガッポ稼いで老後の貯蓄を作りたい。50ぐらいで仕事しなくてもいい状況を作りたい。

 

「そこの者、止まれ!!」

 

 何時も通り市場にでも行って、なにかないかと探そうとするとそこそこ年食ってる女に吠えられる。

 

「んだよ、まだなんもしてねえだろうが」

 

 最初の子供とアリーシャと揉めたのと聖剣を引っこ抜いたのトリプル役満で、街の住人には変人とか悪人とか導師(偽)とか教会の犬とか言われているが、前科もなにもない一般ピープルだぞ。

 

「怪しげな物に乗ってると住民から通報を受けた」

 

「怪しげなって…木製のチャリだぞ」

 

 移動手段が欲しいが、石油ないし蒸気機関の車だと効率が悪いからと作り上げた木製の自転車。

 流石にギアやチェーンは鉄だが、タイヤの部分は竹の六編みを束ねて出来ていて余程の道じゃない限りは走れる。幸いと言うべきか、この近隣は異常なまでに険しい獣道が無いからもう楽々で、坂道も元いた世界と違い肉体が尋常じゃなく強いので苦じゃない。

 

「電気文明はなくても、このレベルの木工なら余裕で出来るだろう…馬か、馬がそんなに凄まじいのか?」

 

 乗ったことねえけど、馬ってそんなに凄まじいのだろうか?

 

「おばはん、オレは怪しいものじゃないからな。いやまぁ、胡散臭さはあるのは理解しているが悪人じゃ…いや、どっちだ?」

 

 一先ずは身の潔白を証明しないといけない。自転車を止めて、両手をあげて降参のポーズをとる。

 

「おばはん…だと?」

 

「見た目は若いが、騙されねえぞ。三十路は当の昔に過ぎてんだろ」

 

 異世界あるあるのロリババアとは逆の年食ってる美魔女的なあれ。

 目の前にいる騎士のおばはんはまさにそれだと言ってやると、黒い靄を出す。

 

「とにかく、オレは怪くて胡散臭いがなんもしてねえぞ。嘘かどうか気になるんだったら、アリーシャに聞いてくれ。少なくとも悪事を働いてないって」

 

「アリーシャだと?」

 

 身の潔白を証明するには第三者だと名前を出すとピクリと反応するおばはん。

 街の有名人(一部からはめっさ嫌われてる)らしいから、逆に怪しまれるか?

 

「師匠、ここに…ゴンベエか」

 

「やめてくんねえか、その目は」

 

「す、すまない…君が此処に来ると、何かしらの騒動が起きているから、つい」

 

 噂をすればアリーシャがやって来た。

 おばはん騎士の方に近付いてきてオレがいると思うとまたかという目で見られる。

 レディレイクに来るたんびに何かやらかすが、十中八九相手側が悪い。そう

 

 

 

 

 

オレは悪くねえ!!

 

 

 

 

 

 

「つーことだ、オレは怪しいものじゃないのを証明出来ただろう…」

 

「師匠、彼はナナシノ・ゴンベエです。遠い異国の人で、色々と変わった知識を持っていますが悪人ではありません」

 

「成る程な……ところで、今日はどういった用件でこの街に?」

 

「職探し、日出国から此方に来たから今は無職なんだよ」

 

 なにかをしようとするなら、やっぱり営業許可とか必要なんだろうか?

 治安悪いけど曲がりなりにも王都だからヤのつく人が金寄越せとかは言ってこなさそうなのは救いか。最悪、レディレイクから離れて別の街でなにかするってのもありか。

 

「職を探しているのならば、我が国の騎士になるのはどうだろう?」

 

「騎士だと?」

 

「騎士ですか。確かに強く知識も豊富で冷静さもありますので、ゴンベエにはちょうどいいのかもしれません。ゴンベエ、試しに入団試験を受けてみてはどうだろう?ゴンベエの実力ならば簡単に受かるはずだ」

 

「嫌だ」

 

 アリーシャは君なら出来る絶対にと後押しするが、絶対に嫌だ。

 

「国になんて仕えてみろよ、親の総取りにも程があるだろう」

 

「親の総取り?」

 

「権力者はずっと権力者、貧乏人は何処まで頑張っても貧乏人のままってことだ…分からないなら、分からないでいい。とにかく、この国にいるとはいえ宗教を変えたりとか国に仕える騎士になんてならねえよ…騎士なんてもんは柄じゃねえし」

 

 オレはそう言う団体行動は向いていない。

 地獄で戦闘訓練を受けてる際に言われた『君は今まで見た転生者候補生の中でもトップクラスの戦闘センス等を持っていますが、それだけですので自惚れずに』って…人を率いるカリスマ性や此処ぞと言う時の決断力とか行動力に欠けてる。なんでもそこそこに出来るから当然と言えば当然で…一番大事なやる気が無い。

 

「柄じゃない、か…」

 

 しょんぼりと落ち込むアリーシャ。オレと一緒に働けるのを想像していたのか、それとも戦力が欲しかったのだろうか。

 

「騎士なんて、どうせロクなもんじゃねえだろ」

 

「確かにそうかもしれないな」

 

「師匠!?」

 

「この国の騎士は、怠慢で傲慢な者が多い。騎士は本来、守るもののために強くあり、民の為に優しくある者だ…ロクなものじゃないと気付いている者だからこそ、今の騎士団に必要だ」

 

 どうでもいいけど、このおばはんは何時まで黒い靄を出しているのだろうか?

 何処かで聞いたことある綺麗ごとを語っているが、本性はどす黒いんじゃねえかと思うぐらいに黒いな。けどまぁ、それでも誰かが笑ったり平穏に過ごせるならば汚くても良いけども…

 

「そいつは、騎士じゃないとダメなのか?」

 

「なに?」

 

 何処にでもあるありふれた綺麗事を聞いて、アリーシャは流石ですと言う視線をおばはんに向けている。

 ある程度の理知的でカリスマを持った人間がそこそこの正論を言うと人は流石だと思うらしいが、価値観や常識が違うオレからすれば全く違う。

 

「争いはどうあがいても納まらないのは理解している。騎士が争う奴等とやりあうのは分かっているが、少しそれはおかしいだろ。弱いから守ってやらないとってのは間違いじゃないが、守る奴は頑張って清く正しくあれなんてのは間違いだろ」

 

 一人一人が清く正しく美しくなんてなっちまえば、世界は停滞しちまう。

 ある意味、この世界がこの国がそれを象徴していやがる。

 

「なにが言いたい?」

 

「騎士なんて時代遅れなもんで人は守れねえんだよ」

 

「ならば、問おう。なにならば人を守れる?」

 

「知らん」

 

 おばはんの問い掛けの答えをオレは持っていない。

 そんなコレを真面目にコツコツとやりさえすれば人を守る事が出来るなんて都合の良い職業は存在しない。見えないところで人は支えあって生きており、子供は大人になる…んじゃねえのか?よくわかんねえけど、そんなんだろ。

 

「ふっ…ゴンベエはアリーシャとは真逆の様だな」

 

「私と真逆、ですか?」

 

「お前は少々柔軟性が欠けている、かといって」

 

「おい、こらクソババアやめろ」

 

「クソババアだと?」

 

 いい感じに締めようとするが、そうはいかねえ。

 微笑ましく面白い事があったと笑い、期待の眼差しをするおばはんだが、オレはそれが嫌いなんだよ。

 

「自分よりも一回り若くて青いが面白い奴が来たと言う視線を向けんじゃねえ。アリーシャは頭が堅くて柔軟性に欠ける、オレはその逆で柔軟過ぎて真面目じゃないとか見るな」

 

 若い世代を見て、面白い奴が入ってきたなと微笑ましく見る老害キャラは嫌いだ。

 これはあれだ、お前の事を本当に思っているから厳しくするとかそう言う感じの事を言うタイプのババアだ。

 

「ゴンベエ、幾らなんでも」

 

「黙ってろ…どうも、さっきから嫌な視線を感じる」

 

 元々嫌な感じのするおばはんだが、アリーシャとオレをセットで見た際にハッキリと感じた。

 目を優しげにしているが内心ボロクソに思っていやがるな。アリーシャは気付いていないが、アリーシャも見下してるな。

 アリーシャは明らかに怒っている、師匠(せんせい)と呼んでいたから慕っているんだろう。

 

「…すまなかった」

 

 ババアは謝った。

 なにかを考えた後、ペコリと謝ると黒い靄を自分の中に閉じ込めてから謝った。嫌な感じの視線と言ったのが効いたのか、消したな。

 

「師匠!?」

 

「見ず知らずの人間を面白いものを見る目で見れば、不快になって当然だ。長く生き、様々な人を見ているせいかゴンベエの様にはじめて見る種類の人は面白いと思ってしまってな」

 

 なに若干自分が悪かった反省してる感出してんだか。まぁ、これ以上は関わっても意味ねえし上からのところもある。

 アリーシャが師匠なんて呼んでるんだから、そこそこの地位を持っているだろう。関わりはあんまり持たない方が良いと思い、逃げようとするが捕まった。

 

「だが、その言葉遣いは戴けない。目上の者に対する敬意が無い」

 

「生憎だが、歳上=目上じゃねえんだ。オレとは方向性が違ったりスゴいと認めさせたら言うことを聞くし、それ相応の敬意を抱く」

 

 先人達がなんて感情は何処にもねえよ。

 おばはん呼ばわりされてからのクソババア扱いに明らかにキレている。しかし、そう扱っても仕方ねえだろう。

 

「ならば、私の凄さを教えてやろう」

 

「ゴンベエ、師匠は『蒼き戦乙女』(あおきヴァルキリー)と呼ばれる御方だ。今すぐに」

 

「うわ、キッツ!!二つ名キッツ!!」

 

 ボコって矯正しようとするので、その前にとアリーシャがおばはんの偉大さと言うかスゴさを教える。

 しかし、オレは思う。痛い。もう痛い…いや、分かってるんだよ。天族とか言う胡散臭いのがいる時点でそう言うの当たり前だってのも。思わず引いてしまうと、抑えていた黒い靄が溢れでて目を光らせる。

 

「とりあえず、オレはそう言う暴力NGなんで。料理対決とかなら喜んで受けますので」

 

 このままだとバトルをする展開になる。

 そんな面倒なのはごめんだとオレは来た道を戻ろうとするが、そうはいかない。

 

「生かすとでも?」

 

 あれ、字が違うんじゃね?

 アリーシャに確かめようと見るも、アリーシャは青ざめている。おばはんの恐ろしげなオーラと怒りを直に感じ取っているのか、震えている…が

 

「喧嘩したきゃ、先に手を出せよ」

 

「ご!?」

 

 相手を見てものを言いやがれ。

 オレはおばはんの頭に肘を入れると、おばはんは綺麗に倒れる。

 

「まぁ、おばはん、おばはん呼ぶのは失礼だと思ったりムカつくなら名前名乗った方がいいぞ?」

 

「師匠を一撃で…」

 

 倒れているおばはんは白目を剥いて気絶している。やっぱり肘はまずかった。

 アリーシャはありえないと自分の尊敬する御方がたった一撃で、しかもしょうもない男にやられたと驚いている。

 

「……アリーシャ、その人に尊敬の念を送るのは良いけど、その人みたいになるんじゃダメだぞ」

 

 清く正しく逞しく美しくを体現しているっぽいおばはん。

 アリーシャが憧れたり尊敬したりするのはまぁ、分からんことでもない…だが、それじゃダメだ。

 

「師匠の様になってはいけない…それは、どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味だ…蒼き戦乙女だかなんだかしんないけど、その異名の時点でもう手遅れだ…て言うか、アリーシャはなんで騎士をしている?」

 

 本当に今更ながらの事をオレは聞いてみる。

 こいつ、ボンボンでそこそこの地位を持ってるんだから騎士なんてしなくても良いだろう。

 

「……目の前の現実に嘆くだけでは、なにも変わらない。先ずは自分が変わらなくてはならない。だから、私は騎士を目指した」

 

「アリーシャ、クソッタレな世の中を変えるのは騎士じゃないぞ」

 

 予想通りと言うべきか、定番のクソッタレな世の中を変えたい系の姫様だった。

 だが、世の中を変えるのは何時だってそう言う生真面目な存在じゃない。オレは否定するとアリーシャは肩を掴んだ。

 

「分かっている、分かっている!!そんな事は分かっている!!ただの小娘が憧れで自分を変えたく周りを変えたく独りよがりの事をしていることぐらいは!!」

 

 今までなにかが溜まっていたのだろうか、アリーシャは腹の内を開く。

 

「私は…ゴンベエの様に天族が見えない、雨を降らす魔法も使えない。もしあの聖剣を抜くことが出来るなら、私は今すぐにでも抜いて導師になり災厄の時代を終わらせたい!」

 

「アリーシャ……」

 

「でも、私はどうすることも出来ない!ライラ様の姿も声も聞けない…筆談した際に聞いた、私だとダメかって…貴女では出来ませんって、ゴンベエなら出来るって言われて…私には、私には…力がない」

 

 ポロポロと涙を流すアリーシャは悔やむ。

 綺麗な容姿に貧しいどころか裕福な家庭環境にそこそこの地位を持ち、戦いに置いては有能そうな師匠がいる。しかし、肝心のなにかを変える力を持っておらず、今の世界を変えるために必要な導師になれない事を悔しんでいる。もしあの聖剣が抜けるならば、抜く。例え世界を救うのが過酷な道のりでもやりきってみせる覚悟がある…だろう。

 

「オレが言いたいの、そう言うんじゃない」

 

「…ふぇ?」

 

 あ、可愛い。アリーシャの涙目からの女声を聞いて、オレは心をときめかす。人生に潤いが大事なんだとアリーシャの声で理解する。

 

「…どー説明すれば良いんだ?ライラに聞いたら…いや、ダメだな。導師=正義だと思ってるし…」

 

 オレが言いたい事をどう説明すればいいのか考える。

 本当に必要なのはお祈りとか信仰とかよりも人類の発展とか、薬作ったりとかだけど…ストレートに言ってもなぁ。アップルグミとか言うグミ食べればダメージ消せる世界で薬って、どんな扱いになってるんだ?

 

「……しゃあねえ、これやるよ」

 

 色々と考えた末に、オレは自転車を差し出した。

 

「この乗り物は…馬車に似ているが」

 

「自転車だよ…アリーシャが知らないって事はこの国にはねえのか。だったら、アリーシャ…自転車操業って言葉について考えてみろ…いや、これであってるのか…まぁ、いいか」

 

 作るのに一週間以上かかった自転車。

 チェーンとかは金型があるから作り直す事が出来るが木製の部分の調整に時間がかかる。出来て一週間もたっていなく、尚且つ自作を他人に渡すのは心が痛む…だが、こうでもしないと無理っぽい。

 

「市場にでも向かって仕事かなんか探すか…」

 

 オレはアリーシャに背を向け、市場に向かった。





スキット アリーシャ、はじめての…

アリーシャ「はぁ…情けない姿をゴンベエに見せてしまった…」

チラリと木製の自転車を見る。

アリーシャ「ゴンベエはいったい、私になにを伝えたかったのだろう?コレは…乗り物、のはず」

恐る恐る自転車に触れて乗ってみる。

アリーシャ「えっと……この足を置くところで…きゃあ!?」

試しにとペダルを踏むと前に進み、バランスを崩すアリーシャ。

アリーシャ「動き出した…そうか、コレはここを踏んで動かすのか…よし、もう一度!」

自転車について理解したアリーシャは挑戦する。

アリーシャ「ふっ、ほっ…きゃあ!?」

はじめての自転車に。
何度も倒れてしまうが諦めずに努力する…二十歳越えてはじめての自転車に。

アリーシャ「ふんんんんん……ふぅ…ふぅ…すー、すー…スゴい!!この自転車は馬車要らずな代物だ!」

そして遂に自転車を乗りこなす様になった…が、自転車操業について忘れていた。

アリーシャ「今度、何処か遠くに行く際にはこれに乗っていけば早くいける!」

ママチャリに乗った姫騎士をシュールだと誰もツッコまない。自転車の概念が無いのだから。

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