テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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質の悪い夢

「ふん」

 

「なにをやっているんだ!?」

 

 動揺するベルベットから少しだけ距離を置くとアイゼンがロクロウを殴った。

 なんの迷いもなくお腹を殴っており、あまりにも突然の出来事に全員が驚く。

 

「……っち、目覚めないか」

 

「お前、そういうのは自分でやれよ……」

 

 アイゼンは今見ている景色が幻かと思い、ロクロウを殴った。

 普通は自分を殴って目覚めさせるのに何故かロクロウを殴っており、その恨み言をロクロウは呟く。

 

「そんな事をするよりも、ゴンベエ……」

 

「そういや、アイツ、何処行った?」

 

 ゴンベエに聞けば、全てが解決する。そう、解決する。

 私はその事を言うのを途中でやめるとロクロウはいなくなっているゴンベエは何処かと辺りを見回す。

 

「ゴンベエの事は私に任せて、誰かベルベットの側に居てくれないか?」

 

 今のベルベットは非常に不安定な状態だ。誰かが側に居てやらなければ、何時暴走するか分からない。

 本当ならば私が側に居てやりたいが、ゴンベエの事が非常に気になる。

 

「ベルベットの事は僕に任せて」

 

「ライフィセット、頼んだぞ」

 

 ベルベットの事をライフィセットに任せると私はこの場から離れてゴンベエを探す。

 先程まで狼になっていたゴンベエ、探すのは難しいかもしれないと思っていると美しいバイオリンの音色が聞こえる。

 このバイオリン、間違いない。

 

「ゴンベエ!」

 

 村の外れに足を運ぶとそこにはゴンベエがいた。

 手にはバイオリンがあり、先程の音色はゴンベエが弾いていたものだと直ぐに理解する。

 

「るせえよ、今バイオリンの練習をしてるんだから騒ぐな」

 

「バイオリンの練習?」

 

 何故今こんな時にするんだろう。

 私達は質の悪い夢を見せられているのにゴンベエは呑気にバイオリンを弾いており、もしかすると目の前にいるゴンベエは偽者じゃないかと疑ってしまう。

 

「お前、なに変な事を考えてるんだ……ここにいるオレは正真正銘の本物だ」

 

「あ……す、すまない」

 

「で、なんか用か?」

 

 バイオリンを一旦弾くのを止めて、ゴンベエは私がここに来た理由を尋ねる。

 

「今起きていることは」

 

「んだよ、そんな事を聞きに来たのか?質の悪い夢だ」

 

 ゴンベエに会いに来た理由を言うとあっさりと答えてくれる。

 質の悪い夢、やっぱり私達が見ているものは幻かなにかでゴンベエはその事を見抜いている……それなのになにもしない。

 ロクロウやアイゼン達が警戒をしている中で、ゴンベエは一言も言わずに村の外れにやってきている……それはつまり……。

 

「ゴンベエ」

 

「オレはここでバイオリンの練習をしてるから、ベルベット達に言ってこい」

 

「……わかった」

 

 ゴンベエは此処から動くつもりはない。

 誰が襲ってきてもゴンベエなら撃退をする事が出来るのを知っているので私は村に戻り、ベルベットの家にに向かうとベルベットは泣き腫らした顔で家から出てきた。

 

「アメッカ、ちょうど良かったわ。今から買い物に行くところだったの」

 

「……ベル、ベット?」

 

 何時も怒っていてばかりのイメージがあるベルベットだが、表情が柔らかかった。

 ついさっきまでこんな幻に騙されるかと言っていた姿とはひ一転している……今までこんな表情のベルベットを見たことはない。

 私がゴンベエに会いに行っている間に何があったのかと直ぐ近くに居るエレノアに視線を向けるとなんとも言えない顔をしていた。

 

「ベルベットの家に、弟のライフィセットが居ました……その」

 

「……ゴンベエに会ってきた」

 

 ベルベットの憎悪は弟を殺されたものからだ。その弟が生きていたとなればベルベットは怒る理由はなくなる。

 気まずそうな顔をしているエレノアに私はゴンベエと会ってきた事を伝えるとなんとも言えない気まずい空気が生まれる。私がゴンベエに会ってきたということがどういう意味なのかをエレノアは直ぐに理解した。

 

「ゴンベエ、何処にいたの?」

 

「村の外れでバイオリンを弾いていた」

 

「そっか……後ででいいんだけど、呼んできてくれない?ラフィ、眠ったままで……ゴンベエが曲を弾いたら目覚めるかも」

 

 何時もならば極力名前を呼ばない様にしているベルベット。

 弟のラフィの為に一曲をと頼み込んでいる姿はとても優しい女性で……。

 

「ベルベット」

 

「なに?あ、買い物をするから荷物持つのを手伝って……ホントならゴンベエに頼みたいんだけど、忙しいみたいだし」

 

「……」

 

 これは言った方がいいのだろうか?

 ライフィセットとエレノアはベルベットをチラリと見ていてなにか言いたそうな顔をしているが、しているだけで何も言おうとしていない。マギルゥはまるで全てを理解しているかの様にニヤニヤしている。

 

「……ああ、その代わり美味しい料理を頼む」

 

 色々と考えてみた結果、私は言わないことを選んだ。

 ゴンベエがそうしたのならば私も同じ道を選んで待つしかない。

 

「おじさん、卵と牛乳、ほうれん草にトマト、後それとチーズのいいところ」

 

「ほうれん草……」

 

 ベルベットの買い物に付き合うと苦々しい顔をするエレノア。

 商人のおじさんから買っているほうれん草に視線を向いており、嫌いな物だと主張をしている……エレノアはほうれん草が苦手なのか、意外だな。

 

「好き嫌いしていると大きくなれないわよ」

 

「個人的にはもう充分です!」

 

「仕方ない。今回入れないであげる。貸し一個よ」

 

「ベルベット、対魔士様と友達とはやるじゃないか」

 

「と、友達じゃないわよ!」

 

「はっはっは、仲がいいな」

 

「……これが本来のベルベットか」

 

 何時だったかゴンベエはベルベットの事を常に怒り続けていると言っていた。

 今のベルベットからは怒りの様なものは感じれず、何処にでもいる町娘の様な雰囲気を纏っている……ここがベルベットの生まれ育った村で、ベルベットの弟は生きている。

 今見ているベルベットこそ何時も私達が見ているベルベットとは違う本来のベルベットで……アルトリウスはこの幸せな日々を壊し、今の世の中を築き上げた。

 

「そうそう、ウリボアの肉はある?」

 

「おっと、それは売り切れだ」

 

「じゃあ、何時も通り鎮めの森で狩るわ」

 

「それが近頃鎮めの森でウリボアが見つからないんだ。狩るんだったらモルガナの森の方がいい」

 

「そう。じゃあ、行ってみるわ」

 

 商人のおじさんから食材を買うベルベット。

 

「狩りか、私でも出来るか?」

 

 料理は下手で手伝える事はなにもない。しかし狩りならば出来るかもしれない。

 イズチに迷い込んだ際にはスレイにやってもらったが、あの時と違い今の私は強くなっており、相手は憑魔ではない。

 

「簡単よ……あ、でも狩りすぎない様に注意しないと」

 

「……そうか」

 

 馴れない。

 素っ気なくツンツンしているイメージが強すぎて今、目の前にいるベルベットに違和感を感じる。本当だったらこっちの方が素なのに、今まで見てきたものとのギャップというかなんというか……これが本当のベルベットなのを受け入れるのは難しい。

 

「さ、狩るわよ」

 

 何時もが殺伐としていた戦いばかりだが今回は違う。

 食べる為に狩る戦いであり、不思議と肩は軽く相手が何時もの危険な憑までなくウリボアなので簡単に倒せる。

 普段の相手があまりにもアレなだけで私は決して弱くはないのをこういう時に理解できるのはなんとも皮肉なものだ。

 

「これだけあれば充分かな」

 

 私だけでなくエレノアとライフィセットも手伝いあっという間に大量のウリボアの肉が手に入った。

 大量だとベルベットは喜ぶのだがライフィセットは浮かない顔をしている。

 

「どうかした?」

 

「うん、ちょっとかわいそうだなって」

 

「わかります。このウリボア達も家族だったかもしれない……残酷ですね、人間も」

 

「……そうね、そんな感じ忘れてた」

 

「……そうか」

 

 ウリボアにライフィセットとエレノアは同情をする。

 私はその辺の感覚は薄い。スレイがヤギを狩った時も感謝をすれども同情等の感情は出てこない。

 その気になれば私達すら使い捨ての駒の様に扱うベルベットだが、今は本来の素に戻っている為か弱気な姿を見せる。

 

「けど、仕方がないことよ。生きるためには食べなければならないんだから」

 

「……仕方ないことじゃな」

 

 そう、これは仕方がないことだ。

 私達が日頃、口にしている肉は生き物の肉であり菜食主義でない限りは命を奪っている……いや、人によっては植物も生き物と捉えているので菜食主義も命を奪っていることになる……なんとも納得が出来ない。

 

『だったら、いただきますに感謝を込めろ』

 

「ゴンベエ……!何時の間に!?」

 

 なんとも微妙な空気が流れていると私の懐が光る。

 何事かと懐を確認すると宝探しの時にゴンベエがベルベットに渡したお守りが入っていた……いったい何時の間に仕込んだんだ?

 

「いただきますに感謝ってどういうこと?」

 

『疑問を持っているライフィセットにこの歌を送ろう』

 

 ガチャガチャとお守りの向こう側から音が聞こえる。

 物凄く上手く心癒す曲をゴンベエは弾けるのに滅多な事では弾こうとしないが、今回は弾いてくれるのか。

 

『何のために食うか 分かるかい?生きるため 命のためさ。味わってやらなくちゃ いけないんだ 食材に 感謝を込めて イタダキマスはそう、最高のありがとう……はい、終了』

 

 何かが足りない気がする。恐らくというか歌詞に続きがあるのだろうがゴンベエはそれ以上は歌わない。

 

「食材に感謝か……」

 

 とはいえ、伝えたい思いはなんとなく分かった。

 食材に感謝を込めて味わう、そんな大切さを教えてくれる歌で先程まで場に流れていた微妙な空気は消え去っていた。

 食べることは生きることで、感謝を忘れてはいけない……うん。

 

「ちゃんといただきますって言わないとね」

 

 ベルベットはゴンベエの歌に感化をされた。

 少しだけ気分が軽くなったベルベットは上機嫌に村に戻っていく。

 

「買い物をして狩りをして、友達と笑って……ベルベットはこんな風に暮らしていたんだね」

 

 そんなベルベットの後ろ姿を見て、物思いに耽るライフィセット。

 これが本来のベルベットの姿。

 

「はい、私も昔を思い出します」

 

「え、でもエレノアの村は業魔に……あ、ごめん」

 

「いえ、いいんです。家族と過ごした幸せは今でもいい幸せです……それに村が滅んだ後でも楽しい思い出もいっぱいあるんです」

 

 そんなベルベットの姿を見て、自分の昔を思い出すエレノア。

 こういう時になにかを思い出さない私は俗世とは掛け離れているのを実感する。

 

「お腹いっぱいご飯を食べたり、新しい友達が出来たり……」

 

「恋をしたり」

 

「そう、新しい恋をって、なにを言わせてるのですビエンフー!?」

 

「照れなくてもいいんでフよ。普通の女の子の幸せ第一位は【初恋の思い出】なんでフから〜」

 

「うぐっ……」

 

 ベタな事を言うビエンフーの言葉が胸に突き刺さり、痛む。

 いや、今の私は女性だとかそういうのを関係無しにしていて恋とか愛とかの色恋沙汰は無し……無しで初恋とかそういうのもない。

 

「初恋の人……ベルベットにも」

 

「ベルベットも一人の女性だ、恋もするものだ」

 

 恋するベルベットを想像してションボリとするライフィセット。

 災禍の顕主だ喰魔だなんだと言われているがベルベットも一人の女性であり恋を……。

 

「そういう言い方はやめてくださいビエンフー!ハッキリと言って、おじさん臭いですよ!」

 

「ガーーン!ボクはまだ150歳なのにオジサン扱いされたでフよ!?」

 

「……ビエンフー、150だったのか!?」

 

 意外な事が判明した。

 ノルミン天族で私達より歳上なのは分かっていたが、まさかそんなに歳上だったとは思いもしなかった。

 ビエンフーの実年齢に驚いた私を見てエレノアとライフィセットは笑い、私もそれに釣られるかの様に笑う……こうしていると何もかもを忘れて、ただのアリーシャとなっている気分でとても楽しい。私達には大事な使命があるのを忘れそうになってしまう。

 

「弟のこと、聞いた。よかったな」

 

 日が暮れてきた頃、村に戻りベルベットの家に向かうと家の前にロクロウとアイゼンがいた。

 この二人は今の今まで喰魔が何処に居るのかを探してくれており、ここに来たという事はなんらかの成果があったというわけだ。

 

「……村を調べていたのね」

 

「ああ、岬の祠を調べようとしたら止められた。聖寮が立入禁止にしているらしい」

 

「祠か」

 

 今までも神殿だ森の中だ監獄と喰魔がいた。

 祠といえばそれっぽい場所で喰魔が居る可能性が物凄く高い。

 

「喰魔がいるならそこだろうが……お前はどうする?」

 

 ベルベットにアイゼンは問いかける。

 今、ベルベットは立ち止まっている。弟のライフィセットや友達のニコが生きており、今まで歩んできていた復讐の道を立ち止まっている……これが質の悪い夢なのに。

 

「オレは喰魔を引き離す……例えそれが罠だろうが。この平穏はその内、無くなるものだ」

 

「決行をする時は私も……」

 

 私はこの戦いから降りるつもりはない。

 最後まで見届けるのが私の役目で見届けた後はヘルダルフとローランス帝国をどうにかしないといけない。ゴンベエにそこで頼ることになり、何れはスレイとも再会する。そうなれば私が頑張れなければ。

 

「お前がここで止まってもオレ達は戦いをやめない」

 

「とめたければ、力ずくよね」

 

 この夢が覚めてほしくないベルベット……夢だという事は自覚している。

 

「あ」

 

「待て、ベルベット!」

 

 左腕を喰魔へと変化させるベルベット。

 友達のニコが近付いている事に気づいてはいない。

 

「ひっ!」

 

「!?」

 

 ニコの悲鳴を聞いて振り向くベルベット。

 見られてはいけないものを見られてしまったというショックを受けている。

 

「一日だけ待つ……覚悟が決まったら岬に来い」

 

 これは質の悪い夢で何時かは目覚めてしまうものだ。

 その事をアイゼンは分かっており、ベルベットが夢から覚めて戻ってくることを期待してロクロウと共に去っていく。

 

「そ、その手は……」

 

 アイゼン達がこの場から去ると、ベルベットの腕を凝視するニコ。

 

「見ての通り、業魔よ……3年前にこの村を襲ったのは私の」

 

 左腕をこれでもかと見せつけて威嚇するベルベット……目が弱っている。

 

「……ベルベットはベルベットだよ!業魔なんて関係ない!……怖いけど、怖くない!」

 

 怯えながらもベルベットに歩み寄り、左腕に触れるニコ。

 

「あたし、誰にも言わないから……だから前みたいに一緒に暮らそ、ね……」

 

「……」

 

 普通の人が見れば、ベルベットを化物と見る。

 けれど、ニコはベルベットを受け入れようとする……化物じゃない。友達として彼女を見ており、変わってしまったベルベットの左腕を絶対に秘密にしている。

 

「……ゴンベエ、何もかも分かっているんだな」

 

 私はゴンベエがこっそりと託したお守りに語りかける。この場に一向に現れようとしないゴンベエはなにもかもお見通しだ。

 これは質の悪い夢で、ベルベットが望んでいるものをなにもかも用意されている。どれだけ痛めつけようが折れないベルベットだが、今回は痛めつけに来ない。甘い汁を吸わせて立ち止まらせ、迷わせている。

 

「……ごめん、また変なところを見せちゃって……私、誰にも言わないからね」

 

 ニコはそう伝えるとベルベットの手を離して去っていった……。

 

「どうするつもりだ、ベルベット?」

 

 このまま喰魔を探してアルトリウスへの復讐を果たすのか、このまま此処で立ち止まっているのか。

 決めるのはベルベットで、私がなにかを言う権利はあるのだろうか?こういう時こそゴンベエがズバッと解決してくれればありがたいのだが、ゴンベエはあえて姿を現そうとしない……ベルベットが自力でどうにかするのを待っているのだろう。




スキット 1つだけ同じなもの

ベルベット「アメッカ、血抜きしないと臭くなるから仕留めたら血を抜いてね」

アリーシャ「ああ……血抜きに使えそうなのは、王家のナイフか……」

ライフィセット「……」

エレノア「どうかしましたか、ライフィセット?」

ライフィセット「これが、本来のベルベットなんだなって……」

エレノア「そうですね、私も驚きです。ベルベットがこんな表情が出来るだなんて」

アリーシャ「何時だったかゴンベエはベルベットはずっと怒っていると言っていた……今が怒っていない素なんだ」

ベルベット「3人でなにを話してるのよ?ほら、早く狩りましょう」

アリーシャ「ああ」

エレノア「普段が普段だけに馴れませんね……」

ライフィセット「でも、これが本来のベルベットなんだ」

ベルベット「大きなウリボアがいたわ!」

アリーシャ「よし任せろ!」

ベルベット「でぇやぁああああ!」

アリーシャ「魔神剣!」

ライフィセット「……ベルベット、戦う時は普段と一緒なんだね」

エレノア「戦う時は素だったんですね」

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