テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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キャラ設定をちょこっと書いてはみたけど、ネタバレになりまくってるからアリーシャのサブイベ全てを終わらせないと……現代編まで続くんだよな。最終的にはあんなことになるし。


夢はやがて覚めて消えるのが道理

「ごちそうさまでした」

 

 1日待つといい、アイゼンとロクロウはベルベットの家を去った。

 私達はと言えば、この質の悪い夢から抜け出す事をせずにそのまま夕食を頂く……ゴンベエはこの場にはいない。

 

「結構なお味でした」

 

「うむぅ、味見をしたライフィセットに花マルじゃなぁ」

 

 ゴンベエがあんな事を言っていたのでちゃんとごちそうさまという。

 なんとなく当たり前でやっていたことだが、今日はじめて意味があるものだと自覚をする。

 

「ゴンベエの分も残しておかないと」

 

 大皿に乗っているキッシュやプティングを小皿に移す。

 ロクロウやアイゼンは食事を取らなくても問題はないのだが、ゴンベエはそうはいかない。なんだかんだで半日ぐらい食事を取っていない。

 

「ベルベット、蚊帳は無いか?」

 

 ゴンベエの分を取り分け終えたので、虫が寄り付かない様に蚊帳がないかを聞く。しかし私の言葉はベルベットには届いておらず、ベルベットは弟のラフィを見ていた。

 ベルベットの作ったプティングを弟のライフィセットが食べてくれて、眠っているとはいえ生きている事にベルベットは心の底から喜んでいる。

 

「明日はシチューを作ってあげるね」

 

「ベルベット」

 

「あ、ごめん……なんだっけ?」

 

「蚊帳は何処に置いている?」

 

「蚊帳はそこにあるわ」

 

 意識が弟のライフィセットでなく私に向いたので蚊帳の場所を聞く。

 これでゴンベエの分は確保出来たのでベルベットの事を確認する……ベルベットはどうするつもりなのだろうか?ベルベットがどう動くか見守っているとライフィセットが弟の部屋にある本棚に入っている一冊の本に気付く。

 

「これって!」

 

「どうかしたのか?」

 

「カノヌシの古文書、しかも最後まで書いてあるよ!」

 

「!」

 

 王宮で見つけた物は完璧じゃない。

 その為にカノヌシの解析が中途半端になっていたが、まさかこんなところで……いや、ここだからあるのだろうか?

 

「ねぇ、フィー。ちょっとでいいからあんたの羅針盤を貸してくれないかしら?」

 

 カノヌシに関する古文書が見つかった。

 これは私達に取って大きな進歩の筈なのにベルベットは目向きもせず、ライフィセットから羅針盤を貸してくれと頼み込む。

 

「お願い」

 

「う、うん」

 

 ベルベットの頼みを断ることが出来ないライフィセットは羅針盤を取り出す。

 羅針盤を受け取ったベルベットは弟のライフィセットの枕元に羅針盤を置いて慈愛に満ちた微笑みを向ける。

 

「この子、あんたと一緒で凄く羅針盤が欲しかったのよ。あんたと同じ様に海の向こうを超えて冒険をしたいって……」

 

「そう、なんだ……」

 

「目が覚めたら、あんたといい友達になるかも」

 

「……目覚めたらか」

 

 それはどっちのことを言っているのだろう。

 ベルベットは本来の姿を見せているのだが、こうして見ていると偽りの姿とも言える。

 

「……ベルベット」

 

「なに?」

 

「これは質の悪い夢だ……夢は何時かは目覚めるものだ」

 

 これ以上は見てはいられない。ベルベットに私はハッキリと夢だと伝えるのだがベルベットは無言になる。

 本人も心の何処かでこれは質の悪い夢だとは思っているのだが、夢と決別をすることは出来ない。なにかきっかけとなる事が必要で……私には思い浮かばない。

 

「ゴンベエに会いに行こう……」

 

 ゴンベエがいれば、あっという間に解決をする。頼り過ぎるのはよくないことだが、ここはゴンベエに会いに行くしか方法はない。

 ベルベットの腕を掴んで家から出ようと引っ張るのだが、ベルベットは行きたくはないのか私の手を振り払う。

 

「やめてよ!私はゴンベエには会わないわ!」

 

「ダメだ!ゴンベエに会って全てを見るんだ!」

 

 例えそれが辛い結末だろうと見届けないといけない。ベルベットを引っ張ってでも連れて行くのが私の役割だ。

 無理矢理にでも連れて行くしかないともう一度手を掴もうとするとベルベットは反抗し、暴れるとゴンベエの分だと取っておいた皿がひっくり返ってベルベットに降りかかる。

 

「もう、何をしているのですか!」

 

 この光景を見ていたエレノアは私達を叱る。

 叱られて当然の事をしてしまった私達はシュンとしてしまう。

 

「アイゼンが1日だけ待つと言っています……時間はまだ残されています。ゆっくりと考えましょう」

 

「……だが」

 

 こうしている間も聖寮が何かを企んでいる可能性がある。

 今見ている酷い夢だと言うのが分かっているのに……どうすれば目が覚める……。

 

「……プティング、少しだけ甘すぎたわね」

 

 顔についたプティングをパクリと口にするベルベット……え?

 

「!!?」

 

「ベルベット、味がわかるの!?」

 

 ベルベットは味覚が無い。

 どういう原理かは分からないがゴンベエが作った物やゴンベエが物を食べさせた時だけ味がする……だが、それ以外では味はしない。

 現に今回作ったキッシュやプティングはベルベットでなくライフィセットが味見をしていたのに……味がした。

 

「……マギルゥ、夢を操る術ってある?」

 

 味がした事で何時もの表情へと戻ったベルベット。

 テーブルをバンっと叩いて傍観していたマギルゥに問いかける……この夢を見せている人には心当たりがある。

 

「夢……」

 

「あるぞ、ある特殊な聖隷を用いた特殊な術が……霧とともに相手の後悔を取り込み相手を幸福な夢に閉じ込めるという」

 

「後悔を取り込んで……幸せな……」

 

 私達が見せられている質の悪い夢の正体。

 甘い汁を吸わせる最低最悪な夢で、改めて夢だとベルベットは理解し震えて怒りを顕にしている。

 

「岬に行くわよ」

 

「今からですか!?」

 

 これが夢だと分かったベルベットは直ぐに本来の目的を果たしに行こうとする。

 あまりにも早すぎる行動にエレノアは驚くのだがベルベットは気にせずに家から出ていこうとする。

 

「お姉……ちゃん……」

 

 ベルベットが家から出ていこうとするとタイミングを合わせるかの様に弟のライフィセットが目を覚ます。

 今にでも死にそうな弱々しい声で……何処かで聞いたことがある声だが、いったい何処で聞いたのかは思い出せない。

 

──パリン

 

「虫メガネが飛んできた……あ、これって!」

 

 何処で聞いたかを思い出すのをやめるとまことのメガネが飛んできた。

 ゴンベエはこっそりと私に託したお守りで私達の会話を聞き取っている……ベルベットの覚悟が決まったと分かったから、ゴンベエが投げてきたのかライフィセットがまことのメガネだと分かると、直ぐに拾ってまことのメガネを通してこの家を見る。

 

「!、ベルベット」

 

「……これはフィーの物よ」

 

「待っ、て……おねえ……」

 

 今にでも死にそうな声で震えながらベルベットに手を伸ばす弟のライフィセット。

 ベルベットはライフィセットの羅針盤を手に取って家から出ていこうとする。

 

「ラフィ……ごめんね……」

 

 ライフィセットはベルベットにまことのメガネを渡そうとするが受け取らない。

 代わりに弟のライフィセットに申し訳無さそうに謝ると家を出たので私達も追い掛けてみると、外ではロクロウとアイゼンが村の人達に囲まれていた。

 

「ライフィセット、まことのメガネを貸してくれ」

 

「あ、うん」

 

 これが質の悪い夢なのは分かってはいるが、真実は見ていない。

 ライフィセットからまことのメガネを借りて、真実を見ると私は絶句する。ベルベットの言っていたことは本当だった。

 

「あ、ベルベット!お連れさんを止めてよ。祠にどうしても行くって言っているのよ」

 

「聖寮に立ち入りを禁止にされてるんだから、入れると私達が怒られる」

 

 ニコを含めた村の人達は歩もうとする私達を止めに来る。

 そこに行かせたくはないという思いが籠もっているのだが今のベルベットに、その思いは届くことはない。

 

「……ニコ、私は最低なやつだよ……自分の失ったものが全部取り戻せるんじゃないかって、忘れられるんじゃないかと思ったの」

 

「……」

 

「自分の為にラフィを言い訳につかって……けど、忘れられるわけない!あの子は、ラフィはわけもわからず殺されたんだから!」

 

 左腕を喰魔の姿に変えるベルベット。

 その目には迷いはなく、戦う意思を見せており村の人達は一歩ずつ引いていく。

 

「どけ……さもないと喰い殺す!!」

 

「どうして……ベルベット」

 

 友達のニコは鳥のような憑魔へと姿を変えていく。

 ニコだけじゃない。他の村の人達も憑魔へと姿を変えていき、気付けば四方八方囲まれていた。

 

「よくも、よくも私の夢を利用してくれたわね……殺るわよ!」

 

「……ああ」

 

 夢から覚めるのがどういったことなのかを少しだけ誤解していた。

 村の人達だった憑魔との戦いは心苦しい物になる……そう思っていたが、ベルベットは気にしない。

 

「真月!」

 

 衝撃波を巻き起こしながら蹴り上げて真円を描くベルベット。

 容赦が無く倒さなければならない相手だと分かると全員が構えるのだがベルベットが火の神衣を思わせるかの様な姿になった。

 

「業焔紅滅爪!」

 

 一回目は上から大きく振り下ろし、大地を抉る。

 抉った大地は燃え盛っており、今度は振り上げて憑魔を高く飛ばすと業火を握ったベルベットは炎を殴りつける。

 神衣モドキの力を使いこなしており、村人だった憑魔を一気に焼き尽くしていった。

 

「容赦ねえな」

 

「する必要なんて無いわ……森に行くわよ!」

 

 ベルベットの合図と共に森に向かって走る私達。

 ベルベット先導なので確実に迷い込むことはないのだろうが、それよりも何があったかの説明をロクロウとアイゼンは求める。

 

「なんだったんだ結局」

 

「聖寮がベルベットに夢を見せてたんだよ……ベルベットが見たかった夢を」

 

 走りながらロクロウの疑問に答えるライフィセット。

 色々とあったが要点を纏めるとベルベットが見たかった夢をあえて見せて足止めをした……なんの為にかはまだ不明だが。

 

「悪趣味な術だ……ゴンベエはどうした?」

 

「ゴンベエは後に回しても大丈夫だ……これを託されている」

 

「!……そうか」

 

「全く、これがあれば直ぐに解決したというのに……夢と現実に区別を付けられなくなっていてはこれから先、乗り越えられぬ、そんな所かのう」

 

 まことのメガネをアイゼンに託すとアイゼンも真実を見る。

 この最悪な夢から抜け出るにはまことのメガネがあれば一瞬にして終わったのに、今回ゴンベエは何もしなかった。この質の悪い夢からベルベットが自力で抜け出せるということを心の何処かで信じていたからだろうか。それとも夢の甘さに取り込まれない為なのか。

 どちらにせよゴンベエが居れば直ぐに解決したことだが、そうせずに自力で乗り越えた結果、ベルベットの強い復讐心は更に高まった。

 

「いました、喰魔です!」

 

 ベルベットの先導の元、岬へと向かうと巨大な2頭を持つ犬型の喰魔がいた。

 

「グルウォオオオオウ」

 

 ベルベットの事を見ると突如吠えて威嚇する。

 するとベルベットもなにかに気付いてか2頭を持つ犬型の喰魔に近付き、聖寮が施したであろう結界をぶち破る。

 

「悪いけど、ついてきてもらうわよ」

 

「ベルベット、まだその喰魔は」

 

 意識を保っている。

 今回の喰魔はモアナ達の様に元が人間ではない。ライフィセットのクワブトの様になにか別の生物がベースとなっており話し合いが通じる相手でなくある程度は戦わないといけない。だがベルベットは戦う素振りを見せない。

 

「……いいのよ。私はこの子達のご主人の仇なんだから」

 

 左腕を喰魔化して右側の頭を掴むベルベット。

 喰魔になっている生物の心当たりがあるのか、ジッと見つめている。

 

「けど、今はだめ。あたしが仇を取ったあとに好きなだけ食べていいから……だから、力を貸して!」

 

「元に戻った!」

 

 2つの頭を持つ犬は2匹の小さな犬に戻る……ロクロウの様に片方の目の部分が喰魔か。

 

「どうやら術も解けたようじゃの」

 

 喰魔の犬が元の姿に戻ったと同時に辺りを包んでいた濃い霧が晴れていく。

 霧が晴れていくと今までしていた人の気配が完全に消え去っていき、今まで見ていた夢から覚めて元の現実へと戻っていく。

 

「やっと、終わったか」

 

「ゴンベエ!」

 

 完全に霧が消え去ると同時にゴンベエがやって来る。

 先程まで偽の世界を見せられていたのでつい、まことのメガネ越しでゴンベエを見るとハッキリとゴンベエは立っていた。

 

「ったく、コスい手に引っかかってるんじゃねえよ」

 

「……悪かったわね」

 

 今回の一件をゴンベエは最初から気付いていたので見事に引っかかってしまったベルベットに呆れる。

 

「ゴンベエ、まことのメガネがあったのにどうして使わなかったの?」

 

 ライフィセットは今更な疑問をぶつける。

 このまことのメガネさえあれば何時でも夢を見破ることが出来た。それなのに一度もしようとせずに私達と一旦距離を置いた。これがあれば、ゴンベエが最初から夢だと言えばこんなに時間を掛けずに済んだ。

 

「阿呆が、それだと意味は無いだろう」

 

「意味……?」

 

「今回は今までとは違うだろ……明らかに敵側がベルベットをメインに狙いに来ている」

 

 今までは喰魔が居る場所を聖寮が警備をしているだけで、それ以外は特にはなかった。所謂守りの体制で、そこに私達がやって来て喰魔を連れ出して行くだけだったが今回は違う。喰魔を連れて行こうとする私達を迎え撃つかの様に、この旅の要と言うべきベルベットを狙いに来た。謂わば攻められているのと同じ状況だ。

 

「今までベルベットや俺達に色々と酷い物を見せたりしてきたと思ったら、今度は甘い汁を吸わせにきた……オレが居れば直ぐに終わった事だがこれくらいの事は自力で乗り越えてもらわねえと困る」

 

「困るって、そんな」

 

「んな事を言うんだったら、どうして1度もオレを探しに来なかった?アメッカ以外、誰一人としてオレを探しに来なかった。オレを見つけて、まことのメガネを貸してくださいと言えば済む話だろう」

 

 他人事の様に言っているゴンベエ。エレノアは他人事の様に扱っていることに色々と言おうとするが先にゴンベエが封じる。

 誰か一人でもゴンベエを訪ねてまことのメガネを貸してくれと言えば全てが簡単に終わる話で、私達の中で誰一人それをしなかった。

 アイゼンは最初からこの出来事に警戒心を強めていて、ロクロウはベルベットに良かったなと言いつつも本来の目的を一切見失っていなかった、エレノアは本来のベルベットに驚きつつも自分で決断をせず、マギルゥは事の真相に気付いていたがなにも言わず、ベルベットは夢の甘さに囚われていて、そんなベルベットをライフィセットは見ていた。

 唯一会いに行った私はゴンベエがベルベットがまことのメガネを貸してくれと言ってくるのを待っていると気付き、敢えてベルベットを見届ける事にした……最後の最後に見届けるだけでは駄目だとゴンベエの元に連れて行こうとしたが。

 

「人と言う生き物は甘い汁を吸って味を覚えてしまえばその味を求めてしまう……単純すぎる手なのにものの見事に引っかかって……まぁ、なんだかんだで自力で脱出したみたいだし、喰魔の回収には成功してるし結果オーライだな」

 

「……悪かったわね」

 

「なにがだ?お前はこうして自力で抜け出たんだからなにも問題はないだろう」

 

「あんたの夕飯の取り置きが飛び散ったのをたまたま口にしてなんとか現実に戻ったのよ」

 

「あ~なんかそんな感じだったな……ん、待てよ?もしかしてオレって夕飯なしか?」

 

「うむ!アメッカとベルベットが見事にひっくり返したぞ!」

 

「嘘だろ、おい」

 

 結果的に夕飯を食べれなくなったことにショックを受けるゴンベエ。

 ぐ〜とお腹が鳴っている音が聞こえてきてさっきまで夕飯を頂いていた身なので気まずくなってしまう。

 

「一食ぐらい飯を抜きにしても人は早々に死なない」

 

「元から食わなくてもいい奴には言われたくはねえ」

 

「それよりもお前……ずっとバイオリンを弾いていたのか?」

 

 夢の話は終わり、今度はゴンベエの話をする。

 私達がアレコレしている間にゴンベエは動かずにバイオリンの練習をしていた。

 

「一曲ぐらい弾かなきゃいけない空気だろう」

 

「そんな物はいらないわ」

 

「そういうな……お前、今結構メンタルがボロボロだろう」

 

 ついさっきまで自分が望む夢を見ていたベルベット。

 見ていたものが全て夢だったと受け入れてはいるが、さっきあったことに遺恨の様なものが残ってはいないと言えば嘘になる。

 

「1分半だけの演奏だ、時間は取らせない」

 

「……早くしなさいよ」

 

 なんだかんだ言いながらもベルベットは聞く耳を持ってくれた。

 聞いてくれると分かるとゴンベエは真面目な顔をしてバイオリンを演奏する。今までとは違う短めの単調な曲とは違う時間にして約1分半に及ぶ曲を演奏する。ベルベットは目を閉じ、ゴンベエの演奏を聞き取る。

 

「素敵な曲だ……」

 

 わざわざ練習していただけあってその曲はとても美しい。

 詩人ではないが音楽に心が動かされるのはこういうことかと魅了される……いったい、なんという曲だろうか?

 

「……終わったわね。早く、船に戻るわよ」

 

「もう少し音楽に浸ってはどうだ?」

 

「そんな事をしている暇はないわ」

 

「いや、これでいいんだよ……ベルベットは元に戻った」

 

 私達が曲に魅了されている中で感想を一切言わないベルベット。次に行こうという冷たさを見せるのだがゴンベエはこれでいいと満足した顔をしている。何時も通りのベルベットがいいのか……。

 

「さてと、とっとと喰魔を連れて──」

 

「古文書が無い!?」

 

 目的は果たした。

 早くベンウィック達のところに戻ろうとするとライフィセットは大きな声を上げる。

 

「なに言ってんだ、さっきまでいたのは夢の世界でそこで手に入れた古文書は夢の世界の物、現実に戻れば無くなるのは当然だろうが」

 

「いえ……待ちなさい。確かあの本は……私の家に行くわよ!」

 

 またまた走り出すベルベット。

 

「どういうことだ、説明をしてくれ」

 

 一先ずは追いかけながら、事情を聞く。

 

「あのカノヌシが書かれた古文書、私の記憶が間違いじゃなければ家にあった物よ!」

 

「家に……だが」

 

「今までのが全部夢だったら私が村の奴等を殺した後、聖寮がオルトロスを閉じ込めただけならある筈よ!」

 

「あの本、カノヌシの事が最後まで書かれていた」

 

「なら急ぐぞ……この質の悪い夢を見させた奴が……メルキオルのジジイに回収される前に!」

 

 喰魔の回収を終えて一息つく暇もなく、私達はベルベットの家に向かっては全力疾走をする。




スキット ネタバレ厳禁

ゴンベエ「よっこいしょっと」

エレノア「なんですかその紙の束は?」

ゴンベエ「今まで描いてきた紙芝居だよ」

ベルベット「箱一杯に、あんたこんなに描いてたって……暇なの?」

ゴンベエ「オレはこれで生計を立ててるんだよ!」

エレノア「貴方が……紙芝居屋……」

ゴンベエ「おい、なんでそこで苦い顔をしてる」

ベルベット「あんたがそういう風に生活しているとは思えないのよ……アメッカ、ちょうどよかった。こいつ本当に紙芝居で生計を立ててたの?」

アリーシャ「随分といきなりだな。ゴンベエは紙芝居屋と雑貨品を売って生計を立てていると前に言ったじゃないか」

ベルベット「想像しにくいのよ……にしてもこんなにあったのね」

ゴンベエ「約1年もの間、紙芝居屋をしていたからな」

エレノア「何故今になって持ってきたのですか?」

ゴンベエ「……お前等が前回書いた紙芝居をモアナ達には見せられないってボツにしたからだ……ダメだダメだと言いながらも最後まで見やがって」

エレノア「あれはもう子供向けの話ではありません」

ゴンベエ「物語を通じて子供を成長させる情操教育を知らないのか?」

ベルベット「明らかに子供向けじゃないでしょう……で、それをモアナ達に見せるつもり?」

ゴンベエ「今から新しいのを作るんだったら既存の話をしようと思って……」

エレノア「この数を審査するとなると、かなりの時間が掛かりますね」

ベルベット「そんな暇はないわ……どういう話かざっくり教えなさい」

ゴンベエ「お前等に一回通さないといけないのは確定なんだな」

ベルベット「なにか言った?」

ゴンベエ「いえ、なんでも……出来ればお手柔らかに」

ベルベット「考えておくわ」

ゴンベエ「それ考えておくだけじゃないですかやだぁ!」

ベルベット「喧しい……で、これはなんの話?」

アリーシャ「それは世界で一つしか無い物を集める盗賊団とそれを守る防衛隊の戦いを描いた物語で、後半に出てくる主人公の兄の力と記憶を受け継いだゴーレムが出て来て、実はそのゴーレムは主人公の兄の記憶を受け継いだのではなく兄を殺して人格と力を奪ったという展開がなんともダークだがそこがまた面白い物語で、オススメだ」

ベルベット「……これは?」

アリーシャ「これは52枚の魔法のカードを一人の少女が集める物語で、実は父親が魔法のカードを作った人の生まれ変わりだったり、ライバルになった男の子の霊能力者が少女に恋をする冒険活劇でどんな願いでも叶える店の作品と記憶喪失になったお姫様を救う為に色々な世界を巡る作品と世界観が繋がっていて実はそっちの方を見ないと語られない様々な事がある。憂鬱な展開はないからオススメだ」

エレノア「ええっと、じゃあこっちは?」

アリーシャ「こっちは古の秘宝を手に入れた主人公が悪行を重ねている人にデスゲームを仕掛けるもので、実は古の秘宝に古代の王の魂が宿っていて最終回には本来の人格と古代の王が戦って、死んでいる人間は生きてはいけないとゲームの中で宣告されるんだがここに至るまでの展開が熱くてオススメだ」

ゴンベエ「おい……ネタバレしてんじゃねえよ!」

アリーシャ「え、あ……すまない」

エレノア「どれもこれも面白そうな話ですが、そうもネタバレをされると見る気が失せますよ……あ、これは」

アリーシャ「それは御伽噺の住人が暴走して」

ベルベット「それ以上言うんじゃないの!」

エレノア「ネタバレは最もやってはいけない事ですよ!」

ゴンベエ「お前等、なんだかんだで全部見る気なんだな……」


ゴンベエが弾いたのは仮面ライダーキバの紅音也のテーマです。(音也のエチュードではありません)

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