テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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二人の死神

「かーなーしーみー」

 

「おい、ちょっと待て」

 

「んだよ…もう常連客並みに見馴れてるだろ」

 

 何時もの様にレディレイクにやって来たのだが、はじめて検問に引っ掛かった。

 何時も検問をしている門番なのに、オレを検問で引っ掻けるとはいったいどういう風の引き回しだ。

 

「それはなんだ」

 

「お前、前回オレを止めなかったのに聞くか普通」

 

 調べるものを調べ終え、家に帰ってアリーシャに渡したチャリをもう一度作り直した。

 そして今回も乗ってきたのに止めてくるとは、ボケるのが早いんじゃねえのか?

 

「その後ろの荷車だ…確認させて貰うぞ」

 

「へーへー、とっととしてくれよ」

 

 自転車の後ろには荷車がついている。

 何時もの様に買い物や情報収集に来たのではなく、商売をしにやって来た。流石にはいそうですかと通してはくれないよなと諦めながらオレは荷車に入っているものをみせる。

 

「水瓶に氷に、硝子の容器に…絵?」

 

「この辺は娯楽がすくねえから、こう言うの需要あんだろ…もう良いか?」

 

「ああ、いっていいぞ…しかし、氷か。何処かに献上する品か?」

 

「…?」

 

 こいつはいったいなにを言ってるんだろう。

 氷は蒸留水をアイスロッドで凍らせたもので、何処にでもある氷だ。冷蔵庫がないから氷が貴重とか、そんな事を言うんじゃねえだろうな?……ありえるな。

 

「さーて、どうするかな……」

 

 市場まで来たが、売れそうなスペースが全く無い。

 こう言う大きな街だから、商業の組合かギルド的なものが存在しているんだろう。

 それに入っておかないといけないパターンだろうか…身分証明書とこの国の文字読めないから、キツいな。

 

「お~い」

 

「ん…って、マジか!」

 

 とりあえず、商業の組合かギルドを探そうとしたらアリーシャがやってくる。

 歩いて来たんじゃなくて、自転車に乗りながらやって来た…ぷっ…ふっ、は!?

 

「ちょうど良い時にきてくれた」

 

「ちょ…ちょ、ヤバい…」

 

 何時もの格好で自転車に乗っているアリーシャ。

 木製の特に塗装のされていない自転車を何時もの格好で必死になって漕いで来ている。

 その姿はマクドでドライブスルー(ママチャリ)をするおばちゃんよりもシュールで、アリーシャが恵まれた容姿で必死になって漕いでいるだけで笑える。

 

「ど、どうした!?」

 

「いや、なんでもなんでもない。本当に、気にしないで…くれ…ヤバい、っく!笑え!」

 

 余りの光景にお腹を抑えるレベルで笑ってしまい、アリーシャが心配する。

 医者を呼ぼうかと聞かれるが、こんな事で医者を呼ばれたら恥だし、この世界の医者は信用出来そうにない。

 

「ひーひっひっひ…」

 

 思う存分、腹の底から笑う事で思い出し笑いを防ぐ。

 いや、本当にスゴい。スゴいまでにシュールな絵面で笑うしかない。

 

「そ、そんなにおかしいか?」

 

「す、すまん…」

 

 流石に自分が笑われていると気付くアリーシャ。

 自分の格好を見ておかしなところはないが、おかしなところはない。おかしなところはないから、余りにもおかしい。

 

「と言うか、普通に乗ってるんだな」

 

「ああ、この自転車と言うのはとても便利なものだ。自分の行きたいところまで行くことが出来て、家の片隅に置くことが出来る…風を感じることも」

 

「あ、うん…因みに自転車操業の」

 

「コレを大量に作ることが出来れば、馬の負担も少なくなる」

 

 普通に乗りこなしているが、プレゼントとして渡していない。

 自転車操業の意味を理解して欲しいから渡したのだが、自転車の便利さに忘れているな。

 

「それで、オレになんの様だ?まーた、ロクでもない用件だったら普通に断るぞ」

 

「まずは、教会に来てくれ」

 

 あ~もうこの時点でロクでもない。

 しかしまぁ、一応は聞いてやらないと話は進まなそうだ。アリーシャの言う通りにオレは教会に向かう……自転車で向かう。絵面本当にシュールだよなぁ…ママチャリに乗った姫騎士とチャリアカーに乗った胡散臭いやつだ。

 

「それで、なにをしたいんだ?」

 

「実は…来年に聖剣祭をしたいんだ」

 

「聖剣祭?」

 

 確か、オレがはじめてこの街にやって来た際に言ってたな。

 この時期はライラがいる聖剣を引っこ抜いた奴が導師とか最終的に炎を捧げるとかそういう感じの儀式するんだったな。

 

「飢饉だか飢餓だかで、出来ないんだっけ?とにかくしたいならすればいいだろう、オレはこの街の住人じゃないしこの国に思い入れ無いから盛り上がんないけど」

 

 神聖な祭とかそんなのを言われても、特になにも感じない。

 日本の現代っ子にとって祭とはぼったくりされる場所であり、クジに当たりが入っていないのは常識である。

 

「ああ、私はしたいと思い色々と駆け巡っている。このままいけば聖剣祭をする事が可能なのだが、そうなればライラ様に炎を捧げる事になる…その役をゴンベエに」

 

「却下だ」

 

 予想以上にロクでもない事だとわかった。

 オレは手を交差し×の字を作って全力で嫌がり、断る。聖剣付近に座っているライラはしょんぼりとして悲しそうな顔をしているが、知るか。

 

「そう、か……どうしても、ダメなのか?」

 

「オレはオレの国の宗教を貫かないとダメなんだよ。聖剣祭でそんな事をすると宗派を変えた事になる…変えたら、ヤバい」

 

 どうしてもやって欲しそうな顔をしているが、それだけは出来ない。

 別の宗教に変えてしまえば二度と日本の地獄に戻ることは出来ない、それが例え異世界の宗教であろうとも。

 

「具体的には、どうなるんだ?」

 

「死後にオレの国の宗教に属する死後の世界に行けなくなったりする。下手すりゃあの世にもいけずに、この世に漂う地縛霊かなにかに生まれ変わり、うらめしや~…と、アリーシャの枕元どころか、夢の中に登場する」

 

 夢枕とか言う霊能力使うぞ。

 

「お、おばけに……天族じゃないのか?」

 

「そんな高尚なもんじゃねえよ。むしろ、お経とか唱えられて除霊されたりする」

 

「お経?」

 

 なんだそれはと首を傾げるアリーシャ。

 ジェネレーションギャップと言うべきか、世界観ギャップと言うべきか。神様じゃなくて仏が出るファンタジー……あ、それは低予算の勇者の物語だな。

 

「お前の用事はそれだけか?オレはとっとと自分のやりたい事をしたいんだ…流石に働かないといけないからな」

 

「働く、何処かに就職したのか?」

 

「いや、違う。どっかに就いても、何時崩壊するか分からんから出来ん…それよりも、自力でどうにかしないと」

 

 オレは外にあるチャリアカーに積んでいる水瓶を持ってくる。

 この街…と言うよりは、産業革命が起きていないレベルのこの世界だ。コレの作り方自体は驚くほどにシンプルだった。

 

「…コレは?」

 

「うちの国なら誰もが知っている飲み物だ」

 

 柄杓を取り出し、中身を硝子の容器に入れる。

 

「この黒い液体は…」

 

「っと、冷えてないから氷も入れて揺らす」

 

 最初の一杯は自分が飲む物だ。だが、二杯目はなにかと世話になっているアリーシャに飲んでもらいたい。

 グラスに入っている液体を見て、飲める物なのかと疑っているが飲める物である。

 

「それ飲める物だっつーの…多分、飲む機会少ないと思うが」

 

「そうか……ゴンベエを信じてみるよ」

 

「毒いれてる可能性ある前提で言うなよ」

 

「…!?……プハァ……コレは、お酒なのか!?」

 

 綺麗にイッキ飲みしたアリーシャは慌てる。

 自分が飲んだものがお酒だと騒ぐが、そんなもんじゃねえ。

 

「酒じゃなくて、炭酸水で、それジュースだ」

 

「炭酸水……炭酸水!?」

 

「そう、炭酸水」

 

 うちの国でもそれの量産なんかに成功して普通に販売出来るようになったのは約百年前。

 ならば、この国で量産する事は出来ないだろう。

 

「この辺に炭酸水が沸き出る所はない…随分と遠くまでいったのだな」

 

「…うん、っまぁ、うん…」

 

 人工的に作れるので、そこまで苦じゃない。

 酒を入れた壺に管がついた蓋をして、その管を水が入った筒にくっつけて、二酸化炭素が入るようにして川の滝の流れを利用したりして約一日ぐるぐると回したり、桶に水入れて酒樽の上に置いとけば良いだけだ。重曹的なの必要だと思ったが、案外そうでもなかった。

 

「…天然物じゃないんだけどな…」

 

 割と製造方法はシンプルだが、余計な事を言うとややこしいので黙っておく。

 アリーシャ曰く冷奴は三千円する世界だから、余計な事を教えるとレートが崩壊する。

 

「コレ、幾らぐらいで売ったら良いと思う?」

 

「そうだな…この容器に氷付きだから、一杯、800ガルドだな」

 

「たっけーな、おい」

 

 適正価格を聞いてみると、予想以上のぼったくり価格だった。

 ドリンクバーが無い店でも中々に500円越えないと言うのに、普通に越えている。そんな値段じゃ人が寄り付く筈もないだろう。

 

「んな値段じゃ上流階級ぐらいしか買わねえだろ」

 

「だが、氷と炭酸水は貴重でそうでもしないと採算が取れない」

 

「あ~…」

 

 炭酸水と氷の原材料は実質、酒と水だけだ。だが、稀少な物には変わりない…が、それじゃあダメだな。

 

「一杯150ガルドで売る…200越えたらコーラはぼったくりになる」

 

 この世界じゃ絶対に無いであろうコーラ。

 どんだけの価値があるかは知らないが調理は至ってシンプル。焼いた蜂蜜にパクチーにレモンを炭酸水にぶちこんでかき混ぜればそれっぽくなる。

 

「そうか…なら、最初のお客だな私は」

 

「別に最初の一杯は無料で良いんだがな」

 

 アリーシャは懐から150ガルドをだし、料金を支払う。

 貰える物は貰っておこうとオレはガルドを受け取ると、別の容器にコーラを入れる。

 

「ほらよ…この辺で商売するからサービスだ」

 

「まぁ、よろしいのですか?」

 

「サービスだ、サービス。黒い液体だなんて、ワケわかんねえ物を売ってても飲みたくないだろ?」

 

 ライラにもコーラをやる。

 とりあえず、コレを飲んでも問題ない。コレを飲んでもお酒じゃないと証明する奴が欲しい。コカ・コーラと違って安心と安定の信頼感が存在しないからな…大手のブランドのネームバリューは恐ろしい。

 

「その辺の神父達、今日は金取らねえから、飲んでくれねえか?あ、飲み終わったらちゃんと容器返せよ。流石に使い捨てのプラスチック容器作れねえんだから」

 

「プラスチック?なんですか、それは?」

 

「知らないなら知らないでいいんだよ」

 

 使い捨てのプラスチック容器があるなら、楽だったが文句は言えない。

 礼拝に来ている街の人達や神父達に無料でコーラを配る…ちゃんと次からは金を取ると言って。美味かったとレビューして口コミしてくれればそれで良く、味がよかったのかアッサリとコーラは完売した。

 

「持ってきたコレ、無駄になったな」

 

 売れなかった時のプランも考えていた。

 だが、思いの外に売れてしまったので使うことがなかった。コレからコーラ以外の商品を作るならば、コレはもう必要無いんじゃないだろうか?

 

「ゴンベエ、それは?」

 

「紙芝居だ」

 

「紙芝居!?」

 

 海水で作った水酸化ナトリウムで煮込んで作った紙擬き。

 こんな世界だから紙も高いとか言い出しそう。現に羊皮紙で物書いてるし。

 

「それはどんな内容だ!?」

 

 アリーシャは目を輝かせ、紙芝居を見る。

 

「ちょ、近いって」

 

「ああ、すまない。だが、紙芝居と聞いてつい…それは、ゴンベエの国の御話なのか?」

 

「あ~多分な」

 

「多分?」

 

「オレもそこまで詳しくないし、似たり寄ったりの話はあるから。この国にも似たような感じの童話があったら、なんか面倒になりそう…」

 

 流石にコレとそっくりなお話は早々にないだろう。しかし、万が一とかワケわからんお話があるのが異世界なんだよな。

 

「その紙芝居はどんな紙芝居なんだ?」

 

「最終的にタダよりも恐ろしい物は無いってオチの話……紙芝居するなら、なんかこう、タメになる話の方が良いかもしれねえ。この国のタメになるお伽噺とかって無いのか?」

 

「ハイランドのお伽噺…そうだな…」

 

 アリーシャに他の話がないかと振ってみると真剣に考える。

 良い話が多すぎるのか、アリーシャはぶつぶつと小さく呟く。

 

「ライラはなんかタメになる話はないか?」

 

「そうですね……タメになると言うものかどうかはわかりません、ですがある方から不思議なお話を聞いたことがあります」

 

「不思議なお話?」

 

「ゴンベエ」

 

「あ、わり」

 

 ライラと会話をしていると、私もと言う顔をするアリーシャ。

 まことのメガネを取り出して、ライラの声を聞こえるようにする。

 

 

 

 

 

スキット ★ 二人の死神

 

 

 

ライラ「題して、二人の死神」

 

アリーシャ「二人の死神、ですか」

 

ライラ「昔々あるところに死神と呼ばれる医者がいました。何故医者が死神と呼ばれているのか、それは彼の体が継ぎ接ぎだらけの男だったからです」

 

ゴンベエ「…んん?どっかで聞いたことがあるぞ、この話」

 

ライラ「しかし、その死神は医者としてはとても素晴らしい腕を持っていました。国一番の名医と呼ばれる医者の知識や腕を遥かに凌駕しています…ですが、彼は国に仕える医者ではありません。彼の腕は余りにも異端、治療方法も通常の方法とは異なるために国が作る医者の資格を持ってはいません」

 

アリーシャ「医者の資格を持っていないなら、それは医者ではないのでは?」

 

ライラ「はい、なので無免許で医者をしています。普段は海辺の崖の上に家で暮らし、死神の腕を聞き付けて依頼人が日夜やって来ます」

 

アリーシャ「……?そんなに依頼人がやってくるなら、普通に医者をすれば」

 

ライラ「いえ、そこが問題なのです。なんとその医者はとんでもない医療費を請求するのです!最低でも1000万、酷いときは10億ガルドを躊躇いなく要求するのです」

 

アリーシャ「10億!?そんな、法外な!」

 

ライラ「通常の相場の何百倍の請求するのですが、それでも腕は確かです。治療した人が経営する居酒屋で一年間無料や、ラーメンを奢って貰ったお礼と称して治療することもあります」

 

ゴンベエ「あ~うん…完璧にうん…」

 

ライラ「そんな彼の元に依頼者が今日もまたやって来ました。その依頼者は子供で、寝たきりの母を治して欲しいと言う依頼で、法外な医療費は一生を費やしても払うと言いました。取り敢えずはその人がどの様な状態なのか、どんな症状なのかを確かめに死神はその子の家に向かいました…」

 

ゴンベエ「あの話かぁ…」

 

ライラ「その子の家に向かうと…もう一人の死神がいました。彼とは違い継ぎ接ぎだらけではなく、それなりの容姿の男性です…しかし、継ぎ接ぎの死神よりも恐ろしい医者です。何故ならばその死神は人を殺す医者だから」

 

アリーシャ「人を殺す医者!?」

 

ライラ「はい…人を殺す医者です。母親はもう悟っていました、自分を治せる医者なんてこの世の何処にも存在しないんだと。寝たきりの自分は子供達の迷惑でしかない、寝たきりの自分の介護をさせては子供達が働けない。介護をするだけでお金が掛かってしまう…動くことも出来ない母は自殺も出来ない。だから、人を殺す医者にもう一人の死神に依頼したのです」

 

アリーシャ「そんな…最初のつぎはぎの死神はどうしたのですか!?」

 

ライラ「殺す方の死神は血にも尿にも残らない特殊な毒を用意し、母親に飲ませようとした瞬間に間に合いました」

 

アリーシャ「ほっ…」

 

ゴンベエ「ほっ…じゃねえんだよな…」

 

ライラ「つぎはぎの死神は無免許とはいえ医者としての誇りはあります。殺す医者の存在を認めず、私が治療すると母親を診断し、その結果、自分なら治せる事が判明しました…しかし、母親は拒みました」

 

アリーシャ「そんな…どうして」

 

ライラ「つぎはぎの死神の医療費は余りにも膨大でした。母親の子供がコツコツと酒にも女にも溺れずに真面目に働いて中年になる頃にやっと返済できるほど。自分の為にそこまでしなくていい。自分の夢を掴みなさい、自分のやりたいことをしなさいと母親は子供の幸せを願いました。自分が死ねば保険金が入り、子供が大人になるまで安心して暮らせると喜びました」

 

アリーシャ「…お金が…お金がそんなに大事なのか?」

 

ライラ「つぎはぎの死神は母親はこの世で何よりも大事な存在だと思っています。この世で最も美しいと思う女性は母親と思っているほどで、子供の母親が手術を拒む理由を聞いて、何かを重ねたのでしょう。医療費はタダにすると、タダにしました…そして、もう一人の死神からその母親を奪い、見事なまでに治療に成功。母親は元気に歩く事が出来るようになりました……おしま」

 

ゴンベエ「…おしまいじゃねえだろ?」

 

アリーシャ「これでおしまいじゃないのか?母親は助かり、膨大な迄の医療費を支払わずに済んで、もう終わりじゃ」

 

ゴンベエ「その話には続きがある…」

 

ライラ「御存じなのですね?」

 

ゴンベエ「うちの国の五本の指に入る画家が描いた話だ…終わりを知っているからこそ、弄くったな?」

 

ライラ「……」

 

ゴンベエ「最後のオチ言わねえなら、オレが言うぞ…やっと治ったと歩き回れる様になった母親は子供と一緒に出掛けて、子供もろとも死亡して治療が無駄に終わるどころか死人が増えました、おしまい」

 

 

 

 

 

「おしまい……終わり、なのか?」

 

 ライラが言わなかった最後のオチを言うと目を見開き、固まるアリーシャ。

 色々と改編しているせいで、もう一人の死神がどうして人を殺すのかを教えていない。確か軍医で、傷ついて治らなくて苦しんでいるから殺したとかそんな感じだったな。

 

「終わりだよ、これ以上はなにもない。医者の方の死神はなんの為に治療したのか苦しんだりするだけで、母親も子供も不思議な力で生き返ったなんて言うご都合主義も存在しない、コレで終わりな物語。色々と大事な部分を端折ってるがな」

 

 一番大事なものを言わないとは、どういうつもりなのだろうか?いや、それよりもだ…

 

「その話、何処の誰に聞いたんだ?」

 

「昔、ある方が語ってくれたのです。その方も別の人から聞いたお話で、その人が誰なのかが…」

 

 確実にそれはオレだろうな。いったいなんでそんな話をするようになったのだろうか…いや、それよりもだ。

 

「それをなんの為に話したのか理解しているのか?改編しているって、事は改編前のお話をちゃんと知っているんだろ?」

 

「……はい…」

 

 バッドエンドにはバッドエンドの役割があるんだ。無闇矢鱈にハッピーエンドに変えておけば良いなんてもんじゃない。特に創作の童話は、読者に伝えたい思いがあるから書いてるんだぞ…

 

「…なんで、未来のオレはそんな話をしたんだか…」

 

 エドナの兄が言ったナナシノ・ゴンベエにライラが語ったお話をしてくれた人。

 それはどちらもオレであり、何時の日にか未来か過去でそんな面倒な話をしないといけない。正直な話、面倒だから無視をしたい。





スキット タダよりも怖いものはない

ゴンベエ「なんか重い空気になったから、楽しめる話するか」

ライラ「そうですね、こう言う時こそパーっとした方がいいですわ!」

ゴンベエ「いや、重くしたのお前だからな」

アリーシャ「ライラ様は悪くはない…ゴンベエ、どんな話だ?」

ゴンベエ「声は重いな。至って普通の何処にでもある話だよ。屋台の蕎麦屋で一人の男性が蕎麦を食うんだが、その蕎麦を」

ライラ「ああ、誉めまくってお会計をタダにしたのですね!」

ゴンベエ「おい、ネタバレやめろよ!」

アリーシャ「無線飲食か?」

ゴンベエ「誉めに誉めまくって、最後にお会計をする。
細かいのしか無いから、一緒に数えてもらい今何時か聞いて、八時と言わせて頭に8を浮かばせて、勘定を誤魔化す。
それを聞いた奴が真似したのは良いが、時間帯を間違えて余分に多く支払う…そしてそれを聞いた奴がそれの真似をしようとしたら、蕎麦屋を見つけた。その蕎麦は今まで食べた蕎麦よりも美味すぎる。きっと上質な素材を使っているんだなと聞いた。
この蕎麦はどんな蕎麦粉を?さぁ、なんでしょうな?この蕎麦の出汁はなにで出来ている?さぁ、なんでしょうな?
この蕎麦の薬味は香りが良いが取れ立てか?さぁ、なんでしょうな?この蕎麦のトッピングは湯引きした肉とかき揚げだけど、何処の肉と野菜をさぁ、なんでしょうな?とはぐらかす。
蕎麦は今まで食べたことの無いほどに絶品だが、店主が余りにも胡散臭い。
しかしアレだけ美味い蕎麦、材料費が物凄く手間が掛かっているんだろうと男は蕎麦屋の店主はぼったくるのだと思った。
いざ食い終わり、勘定を済ませようとしたらなんと無料だった。オープン初日でもなんでもなく、客で賑わっているわけでもないのに、まさかの無料で驚いた。その驚きを見て、まだまだお腹を空かせてるんだと勘違いをした店主がもう一杯蕎麦を食べるか?何杯食べても無料だよと微笑むと、男は逃げ出した…お勘定を誤魔化すなんて出来ない。安すぎて怖い…世の中、高いよりも恐ろしい物が存在する。タダよりも怖いものは存在しないと男は身に染みました…おしまい」

アリーシャ「途中から、怖い話に変わっていないか?」

ライラ「いいえ、タダよりも恐ろしいものはないと教えるタメになる話です…ところで、コーラはなにで出来ているんですか?」

アリーシャ「あ、そう言えば…黒い液体だなんて、いったいなにを」

ゴンベエ「さぁ、なんでしょうな?」

アリーシャ・ライラ「「……タダよりも怖いものはない…」」

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