「ベルベット……」
表の港に向かってで、んかを人質にして時間を稼ぐ。それで話は纏まったのだがライフィセットは悲しそうな顔をしている。
殺意の狂気に狂わされているベルベットは変貌している。その姿は見るに堪えないものでライフィセットは悲しんでいる……なにかをオレから言う事は出来ない。ライフィセットに言うべきことは既に言っているし、なによりもめんどくせえ。
「見えたぞ!」
「誰も居ねえな」
対魔士達を蹴散らしつつ、監獄の表へと辿り着いた。そこには沢山の対魔士達が……と思いきや誰もいなかった。
ベンウィックが掴んだ情報では数十人ぐらいの対魔士達を引き連れて来て、もう両手両足の指で数え切れない程に殺したから……全滅をしたのか。
「何処を見ている?」
「っ!!」
表に誰も居ないので全滅させた事を考えていると聞き覚えのある声が……アルトリウスの声がした。
走っていたベルベット達は足を止めて声が聞こえた方向を見る。オレはあんまりやりたくはないけども気配探知をすると強い気配を感じる。1つだけじゃない、複数の強い力を感じる。
「アルトリウス様だけじゃない!」
アルトリウスの顔が見えたと思えばその隣にはシグレが立っていた。
オレがその気になれば殺せないわけじゃないがそれをやるとロクロウに恨まれるのでやらない。程良くシバき倒さないといけない相手だが……駄目だな。違和感しか感じない。
「よぉ、久しぶりだな!」
「シグレぇええええ!!」
階段から飛び降りてやってきたシグレ目掛けてロクロウはクロガネが新たに打った征嵐で挑みに掛かる。
確実に我を失っている。言葉が通じない状態で邪魔をすれば確実に邪魔をした奴を殺しにかかる……それを踏まえた上でシグレを連れてきたのか?
「アルトリウスッ!!」
「待って、ダメだよ!!」
アルトリウスが視界に入ったベルベットは殺気を滾らせる。
ロクロウの様に我を失いかけてはいるものの、理性は保っているのでライフィセットはベルベットを止めにかかる。
「そうだ。私を人質にして時間を稼ぐのが今すべきことだ」
「殿下はお下がりください……その者の狙いは私の首だ」
「っ、その通りよ!!」
ライフィセットの腕を振り払い、ベルベットはアルトリウスに向かう。ライフィセットは手を伸ばすがベルベットには届かない
「コレは明らかに罠だ!」
追いかけようとするライフィセットをアイゼンは止める。
「だったら尚更止めないと!!」
「そうはいかん!お前まで行ってしまって全滅だけはあってはならない事だ。特にお前はオレの切り札でもある」
「っ……僕は、僕はモノなんかじゃない!!」
「ッ!!」
ライフィセットはアイゼンのお腹を殴った。
今のはどう見てもアイゼンが悪い……ライフィセットはライフィセットで誰の為でもない、自分が思った道を歩もうとしている。
「邪魔をするならアイゼンだろうと……倒す」
「大分自分らしくなってきたじゃねえか……ライフィセット、今の状態でお前等がアルトリウスを倒すのは不可能だ。後で滅茶苦茶怒られるのを覚悟してどっかでベルベットを気絶させるぞ」
「……うん!!」
やらずに後悔するよりもやって後悔した方が幾ばくかはましだ。
ライフィセットに力を貸すことを決めるのだが肝心のベルベットはと言うと左腕を喰魔化させて地の神依の対魔士を喰らっていた。
「神依ごときじゃ私の相手にならないわ!!」
ベルベットは無理矢理止めるしかなさそうだ。それでも問題は山積みだ。
「コイツは……面白え!その太刀、オリハルコンで出来てやがるのか!スゲえじゃねえか、はじめてみた!」
「ああ、最硬の太刀だ!」
「素材はそうかもしれねえ……だがよぉ!」
「ったく、ホントに厄介だな」
シグレが號嵐を振っただけで突風が吹き荒れる。
ロクロウにとってシグレと決着をつけるのには今が絶好のチャンスなんだろう。横入りしたら……ベルベット以上にボコられる
「ゴンベエ、アレは!」
「今度はなんだぁ……あぁ!?」
問題が山積みしているのに更なる事態が巻き起こる。
アリーシャが指を指した方向を見るとそこだけがクッキリと人の形をして光を放っている……ヤバい、ヤバいぞ。
「時間だ、下がれシグレ」
「おいおい、やっと体が温まってきたところなんだよ。水を差すな」
「巻き込まれればお前でもただではすまんぞ」
「……」
ここに来てのシグレを下がらせるアルトリウス。
オレ達の知っている情報が確かならばシグレは聖寮が抱えている最高戦力だ。そんなシグレに危険だ巻き込まれるだ言うのはヤバい。
分かっていたことだが聖寮の方が何枚も上手で……ここに来てくるってことは……
「ベルベットの相手はカノヌシがする」
「やっぱそうくるか」
何故今になってかは不明だがベルベットを殺しに最大戦力を注ぎ込む。
そうなると人の形をしている光はカノヌシ……今すぐにオカリナを吹いて全員を強制的に脱出させるか?
「っち、しゃあねえな」
カノヌシが出てくるとならば引かなければならないのかシグレは渋々引いた。
カノヌシの名前を出された一同は固まり、光を放っている人の形をしたカノヌシと思わしき存在に視線が集まると眩く発光をした。
「っな!?」
眩い光が消え去るとベルベットは驚愕をした。
ベルベットだけじゃない、アイゼンもエレノアもアリーシャもオレも驚いている。
「久しぶりだね、お姉ちゃん」
「ラフィ……」
「……どういうことだ」
ライフィセットとよく似た少年がカノヌシの正体だった。
目の前にいるライフィセットとよく似た少年はベルベットの事をお姉ちゃんと呼んだ。ベルベットの弟のライフィセットは……ラフィは死んだ。アルトリウスに殺されて死んだ。この情報だけは確かな筈だ
「ゴンベエ、まことのメガネだ!」
カノヌシの登場に驚いている中でアリーシャは叫ぶ。
この場にいないメルキオルが幻術を仕掛けたかカノヌシがベルベットの弟のラフィの姿に化けている可能性はないこともない。オレはすぐさままことのメガネを取り出して確認をするがそこに写っているのは肉眼で捉えているカノヌシと同じだった。
「っ……」
「本当にベルベットの弟……」
「こう来たか……」
オレがカノヌシはベルベットの弟のラフィと言わなかったのでエレノアやマギルゥ達は戸惑う。
「そう、ぼくはライフィセット・クラウ。そして鎮めの聖主カノヌシ」
「嘘……なんでカノヌシが……」
目の前で起こりうる現実をベルベットは受け入れられない。いきなりこんなものを受け入れるのは無茶だというものだ。
こうなりゃ後で怒られるの覚悟をしてやるしかない
「デラックス・ボンバー!」
思考停止寸前のベルベットの後ろからデラボンを撃つ。
ヘルダルフに撃った時の威力なのでそこそこの威力を秘めている
「っ!」
「なにをしている。相手はカノヌシだぞ」
オレのデラボンで停止していた思考は再び動き出す。
アイゼンが既に戦闘態勢に入っており、風の槍を飛ばすのだがカノヌシの前に障壁の様な物が展開されて防がれる……ヤバいな、曲がりなりにも神仏の類だ。ヘルダルフと比べるのが烏滸がましいぐらいには強い……まぁ、倒せないわけじゃないんだけども殺すと厄介な事になる。
「やるなら覚悟を決めろ!相手は敵なんだ」
「っ……分かってる!こんなのメルキオルの時と同じ」
同じじゃねえ。まことのメガネ越しでカノヌシを見ているので分かる
「どういう、事なんだ」
「アリーシャ、驚くなとは言わないが思考は停止するんじゃねえ」
今までの状況を一瞬にしてひっくり返す事が巻き起こっている。
動揺するななんて言えない。オレですら動揺しているのだから……ただ思考停止はしてはいけない。次の手を考えろ、まだ生きているんだ
「ゴンベエ、オカリナを使って逃げるしか」
「そうしたいのは山々だが……オレが立ち止まると厄介な事になるぞ」
「それはどういう──っ!!」
カノヌシは紙で出来た剣の様な物を振り回す。
衝撃波の様なものが発生してオレと距離があるで、んか以外を吹き飛ばす
「本当に聖主の力なのか!?」
圧倒的なパワーにアイゼンは翻弄される。
「ですが何故……喰魔を引き剥がして弱体化させている筈です!」
「ああ、そいつはちょっとちげえぞ」
弱体化していない事を疑問に思うエレノア。シグレが答えてくれる。
「そもそもでカノヌシは穢れを大量に必要としてるんじゃねえ。穢れの種類が大事なんだよ」
「穢れの種類だと?」
「穢れにも種類がある。カノヌシの覚醒には8つの穢れが……なにが必要だったけ?」
「貪婪、傲慢、愛欲、執着、逃避、利己、6つの穢れはお前達が喰魔を引き剥がす前にカノヌシに送り込む事が出来た。残すところは2つ……ベルベットから奪うことが出来る」
「……なるほど」
アルトリウスの説明で腑に落ちない点がやっと納得をすることが出来た。
モアナやメディサはともかくクワブトとかが喰魔になっている理由がイマイチ分からなかった。今アルトリウスが言った何れかに該当しているから適合したから喰魔になった……そうなると今までが全て無駄だった、無駄だと分かっているからビエンフーという裏切り者がいて奇襲とかの襲撃をしてこなかったわけだ。
「地脈を通じて吸い取るまでもないね……直接食べちゃおう」
カノヌシはベルベットに手を伸ばす。
「させるかよ!!」
ベルベットに手を伸ばそうとするカノヌシの間にロクロウは入り込む。
オリハルコンの太刀を構えるとカノヌシも剣を構えて打ち合うのだが、ロクロウが押されている
「邪魔しないでよ」
「っ、オリハルコンの征嵐を折った!?」
この世のなによりも硬いと言われており、クロガネが一心になって作り上げたオリハルコンの太刀を軽々しく叩き折った。
弱体化する事が出来ていないカノヌシはそれほどまでに力を秘めているのかとアリーシャが驚く。
「うぅううっ!!」
「……痛い」
ベルベットはカノヌシを貫いた。
カノヌシから血は流れておらず、刺された場所は発光している。
「コレは幻だ……全部、全部幻なんだ」
「ベルベット」
「言うな……オレ達はなにも言えないんだ」
ベルベットに現実だと伝えるべきかといった顔をするアリーシャ。
今のベルベットになんて言葉を投げかければいい。目の前にいるカノヌシは正真正銘ベルベットの弟のライフィセット・クラウと言えばいいのか……そんなんじゃない。今日まで憎悪で身を焦がしていたベルベットにかける言葉はそんなんじゃない……くそ、ホントにオレは戦闘特化の転生者だ。こういう時にクソの役にもたたん。
「痛いよ、お姉ちゃん」
「五月蝿い、黙れ!」
「お姉ちゃんは僕を殺すの?」
「っ、消えろ!!消えろ!消えろ!」
ベルベットはカノヌシに攻撃をし続ける……酷い……醜い……ああ……なんだろうな……う〜ん……酷く冷静だ。
危機的状況にも関わらずオレの頭は妙にスッキリとしている。ゾーン状態になっているわけでもなんでもないのに……疎外感……いや、違う。
「僕はずっと苦しかった……体が弱いせいで迷惑ばかりかけて……やっぱりお姉ちゃんは……僕が消えた方が良かった?」
「ああ……ああ……」
ベルベットはカノヌシの……ラフィの言葉に泣き崩れた。
今まで溜め込んでいた物を全て投げ捨てるかのように泣きじゃくり、ラフィに抱きしめた。
「そんなわけ……そんなわけ、ないじゃない。生きてほしかった。側にてほしかった。なのに、あんな事になって仇を討たなきゃって……あんたの為にわたしは……殺して……」
「アリーシャ」
「ベルベット……」
「ベルベットは無理に強がっているだけで本当はあんな感じの人間だ。強い人間じゃない……今、なにが正しいのか間違いなのか善悪のラインが大きく揺らいでいる。だから言っておく、正しいから道を歩むのは止めとけ。自分の思う道を選んどけ」
正しい道を歩もうとするのはいいけど、正しいからその道を歩もうとするのは間違いだ。
親の言うとおりに正しい道を歩んでしまって面白みのない人生を歩まされて最終的にはアル中が死因の転生者をオレは知っている……姉弟とかを見ているとアイツを思い出すな。
「よかった」
「ごめん、ごめんねラフィ……痛かったわよね……フィー、この子の傷を治して!!」
「で、でもそいつは」
「そいつじゃない!!私の弟、ライフィセットだよ!!」
「……」
姉弟の感動の再会……なんて甘いものはどこにもない。
「お姉ちゃん、ぼくはね、仇討ちなんて最初から望んでないんだよ」
「えっ……」
「だって、そういうエゴこそが穢れを……業魔を生む原因なんだよ」
ラフィはベルベットを喰らいにここにやってきた。
「だからぼくはアーサー義兄さんを手伝って鎮めるんだ……この痛みを……お姉ちゃんみたいな醜い穢れをね」
「醜い……穢れ……」
ラフィに否定をされる。
今に至るまでにやってきた行い全てを、存在そのものを……
「覚醒したカノヌシは全ての業を鎮めて人を穢れを生まない存在に作り変える」
アルトリウスはカノヌシの力について語る
「業が無くなるだと?んなことになっちまったら俺は俺じゃなくなる」
「それをやるって事だ……聖隷から意思を奪った様に今度は人間から意思を奪う」
「そんな……人の意思を消す事が貴方の目的だったのですか!!」
「そうだ。痛みもなにもない穏やかな世界を作り上げる……対魔士であったお前ですら裏切った。こうするしかない」
「勝手に纏めんじゃねえ、オレもベルベットも他の奴等も!一つの瞬間を必死になって生きてんだ!皆バラバラで当たり前だ!皆、バラバラだからこそいいんだ!」
業が無い世界なんて世界でもなんでもねえ。人間の歴史は人間の武器は多様性なんだ。
「業魔のいない優しい世界を作る……それがぼくの夢なんだ。安心して傷だって直ぐに治る……お姉ちゃんを喰べさえすれば」
ラフィがそういうと足元に術式の様な物が展開される。まずい
「全員、フックショットを使え!!」
喰らいに来ている。これはまずい。
オレは咄嗟にフックショットを出して壁に向かって撃って術式の外に移動をした。
「っ、からだ、が……」
黒い闇の穴の様なものにベルベット達は飲み込まれる。
アリーシャやアイゼンはフックショットを取り出して抜け出そうとするが、穴に嵌った時点で抜け出すことは出来ない
「アリーシャ!」
「来るな、ゴンベエ!!」
鉤爪のロープを取り出して全員を助け出そうとするがアリーシャがやめる様に言う。
この術式は一度でもハマってしまえば逃れる事が出来ない……考えろ、オレに出来ることはなんだ……いや、違う。そもそもでオレはどう思ってるんだ?アルトリウスに1発ぶち込みたいという気持ちしかない……
「待ってよ……私は、ずっとあんたの為に……なのに、こんなのって……」
「だからこそ、ちゃんと償わないとね。ずっと無意味に無関係な人を傷つけてきたんだからね」
「ラフィ……」
「っ、ベルベット!!」
ラフィに喰われる寸前にライフィセットが球体状の結界を貼って飲み込まれる皆を守った
「邪魔が入った様だな」
「問題無いよ。地脈に飲み込んだんだから何時でも喰べれる」
ベルベット達は完全に消え去った。だが、アルトリウスやラフィの言葉からしてベルベット達は死んでいない。
ライフィセットの最後の抵抗で生き延びている……ただ問題はベルベットだ。あの状態ではまともに戦うことすら出来ない
「それよりも虫が一匹、残ってる。駆除しないと」
「ふぅ……おい、クソ導師……ライフィセット・クラウは最初から生きてたのか?」
「……生きていた、と言うのは少し違うな。生まれ変わったのだ」
「……あ〜……う〜……」
なんだろうな、言葉が出てこない。
今まで色々とあったけれど……これはむごい。醜い……でも、オレは知っている。人間って生き物はこういう一面も持っている。
ベルベットが大勢の人を苦しめて傷つけた事実は変わりはない。それを見ていてまともに止めようとしなかったオレ達も同罪だ。
罪の重さを理解している……でも……見てきた。ベルベットは本当は弟思いの立派なお姉ちゃんで、復讐なんて向いていない何処にでもいる女の子だ。アリーシャみたいなタイプではない……そんなベルベットを騙し続けた
「ムカつくな」
ベルベットは泣いていた。ホントは殺しなんてしたくなかったのに弟の為だと自分に言い聞かせて苦しんでいた。そんな姿は見ていてムカつく……心の底から泣いているベルベットは見たくない。
「ぼくは追い掛けるからそいつを始末しておいて」
ラフィは地脈に潜った
「感謝はしねえけど礼は言っておくわ……お前等のお陰で戦う理由が出来た」
オレは転生者になるべく地獄の転生者養成所で鍛えて転生者になることが出来た。
だが、オレはなんとなくで生きている。その身を流れに任せてのほほんと生きて結婚できりゃそれで幸せだと思う。けど今は違う。やりたいことが出来た。
ゴンベエの術技
説明
ハウンド+ハウンドで生み出される合成弾。
追尾機能が通常よりも優れており、ギリギリのところまで引き寄せての回避も不可能。回避させた先にゴンベエやベルベットが待ち構えている隙の無い二段構えの技
王者の盾
説明
王家の盾がパワーアップした技。背中から巨大な魔神を呼び起こし、魔神の持つ盾で殴打する
決別の一撃
説明
巨大な炎を纏ったボウガンの一撃。相手に命中すると巨大な爆発を巻き起こす
番外編
-
続 異世界プルルン転生記
-
ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
-
ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
-
まゆゆんの貧乏くじ
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スペシャルスキットの続き