テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

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残酷なはじまりの日

「メッカ──アメッカ!!」

 

「エレ、ノア……っ!!」

 

 目を覚ますとエレノアの顔があった。どうやら気絶したようで直ぐに体を起こして今の自分の状態を確認する。

 なにも異常は無い……何時も通りの状態だがここは何時もの場所ではない。

 

「ここは……」

 

「恐らくですが地脈の中だと、以前に飲み込まれた際に場所が酷似しています」

 

「地脈の中……そうか……そうだったな……」

 

 ゆっくりとなにが起きたのかを思い出していく。

 アルトリウス達と対峙して決戦の時と思いきやカノヌシが登場した。そのカノヌシはなんとベルベットの弟のライフィセットだった。カノヌシが必要なのは大量の穢れでなく特定の質の穢れで弱体化する事は出来ず最終的には飲み込まれた

 

「ゴンベエは……」

 

 飲み込まれたのは私達でゴンベエは飲み込まれる前に逃げる事に成功した。

 あの時はどうあがいてもカノヌシに取り込まれると察したのでゴンベエからの救援を拒んだ。

 

「ゴンベエは……無事を祈りましょう」

 

「ああ……ゴンベエは負けない」

 

 飲み込まれなかったということは監獄にまだいる。監獄にはアルトリウスとシグレが居る。

 カノヌシの完全なる覚醒による鎮静化が最終的な目標のアルトリウス達にとってゴンベエは邪魔でしかない存在……殺しに掛かってくるかもしれないが私は知っている。ゴンベエは本当に強いことを。

 

「私達が此処に居るという事は他の皆は」

 

「それなんですが……」

 

 言うべきかどうかと悩むエレノア。なにかアクシデントでも起きたのかと辺りを見回してみるとライフィセットとベルベットがいた。

 どうやら2人は無事だった様なので一先ずはホッとして2人の元に歩み寄る。

 

「殺す……殺す……あんなに殺したのに……だってあの子が、あの子の為に」

 

「ベルベット……」

 

 虚ろな目をしてブツブツと呟くベルベットとそんな姿を悲しげな顔で見つめるライフィセット。

 無理もない。今まで死んでいた弟のライフィセットの為に必死になっていたのにその全てが否定されてしまった。

 

「なのに……あたし……無意味に……醜い……殺さなきゃ……死ね、死ね」

 

 今のベルベットにどんな言葉をかければいいのかが分からない。

 本当は弟が生きていて良かったなんて今までのベルベットを見ていた1人の人間として言えない。全てを否定された人間にどの様に接すればいいのか分からない

 

「ベルベット、アメッカが目覚めました」

 

「……行くわよ。ここが前と同じ場所なら何処かに出口がある」

 

「……行ってどうするつもりだ?」

 

「決まっている、アルトリウスを殺すのよ!」

 

「そんなボロボロの姿でか」

 

 オスカーとテレサを殺してしまってから使えていた筈の力が使えなくなっている。なんだったら私の方が使いこなせる。

 

「ベルベット、カノヌシはベルベットのおと──」

 

「そんなわけあるはずがないでしょう!!幻覚よ!!」

 

「だが、ゴンベエはあのとき」

 

「なら偽者よ。私を動揺させる為に何処かからそっくりさん、それこそあんたみたいなのを見つけて連れてきたんでしょう!!」

 

「っ……」

 

 ゴンベエはあの時、まことのメガネを使ってカノヌシを見ていた。

 真実を見通すまことのメガネでカノヌシを見て幻覚ならば幻覚といえばそれで終わる。それなのにしなかった。あの時あの場に居たカノヌシは紛れもなくベルベットの弟のライフィセット。

 

「仮に本物だったらどうしたって言うのよ?あの子が私を裏切ったって事でしょう……そんな奴を殺せないと思っているの?何故?どうして……あんたは見てきたでしょう。あたしが今までどれだけ殺してきたかを!!」

 

「ごめん、なさい」

 

 ライフィセットに顔を近付けるベルベットの気迫は凄まじいものだった。

 ライフィセットは悪いわけでもないのに思わず謝ってしまう程でこのままではまずいと感じたエレノアが間に入って仲裁に入ろうとするのだが、私達の目の前に大きな泡の様な物が地面から浮かび上がる

 

『起きて、ラフィ。朝だよ』

 

『もーラフィって呼ぶのはやめてよ子供っぽい……』

 

『いきなり文句とは、ちょうしいいかな』

 

 泡から流れ込む。今のベルベットと大して変わらない姿のベルベットとつい先程見たカノヌシの姿だった。

 弟の事を心配していて今日は元気そうで嬉しそうにしている何処にでも居そうな女の子……昔のベルベット……

 

「うぁああああ!!」

 

 ベルベットは過去の幻を見せてくれる泡を喰魔化した左腕で切り裂いた。

 

「ほら……ほら、殺せたわ!!当たり前でしょう。もう慣れたんだから!!」

 

 息を荒くし酷い顔をしているベルベット。

 

「さぁ、ここから出るわよ。あんたの力があれば抜ける事が出来るわ」

 

「けど」

 

「早く!!」

 

「……アイゼン達を探さないと」

 

「あいつらよりも今は出口よ!!早くしなさい!!」

 

「っ!!」

 

 ベルベットは右腕でライフィセットの頭を掴んだ。

 ライフィセットは抵抗しようとするのだが力が上手く入らない。

 

「いい加減にしなさい!!」

 

 何時も以上に身勝手なベルベットに我慢の限界が来たエレノアはベルベットにビンタをした。

 

「いい加減にするのは彼奴等だ!!だってそうでしょう!?……殺してやる……絶対に……」

 

「ベルベット……」

 

「落ち着いて……落ち着いてください」

 

 肩をガッシリとエレノアは掴む。

 暴れるかと思ったベルベットは左腕を喰魔化する事はせずに静かに怒りは納まる……

 

「……アイゼン達を見つけたらさっさと出るわよ」

 

 ベルベットはそう言うと先に進む。櫛を落としていった事に気付かない。

 さっきライフィセットが拾おうとした櫛はとても大事な物の筈なのにそれが目に入っていない。

 

「ライフィセット、今のベルベットは危険な状態です。気持ちの整理もありますし一旦私の中に入ってください」

 

「……ううん、しない……僕が居なくなったらベルベットが裏切ったって思うから」

 

「ですが」

 

「今の僕にはなにも出来ない……悔しいよ」

 

 ライフィセットは己の無力さを嘆く。

 今のベルベットになにもすることが出来ない。どんな言葉を掛ければいいのかが分からない。

 

「ゴンベエ……」

 

 ゴンベエから借りているお守りを取り出す。

 こんな時、ゴンベエならどんな言葉をベルベットに投げかけるのか……ダメだな。自分が弱いのは痛いほど知っているからかついついゴンベエを頼ってしまう。一人立しなければならないというのに。

 

「大丈夫です。例えなにかする事が出来なくても側に居てくれるだけで救われる事もあります。母を失った私がそうだった」

 

「エレノア……」

 

「今はベルベットの様子を見ながらアイゼン達を探しましょう」

 

「そうだな……こういう時だからこそ冷静にならなければならない」

 

 心に熱意は持っていても頭は冷静にならなければならない。

 熱くなりすぎて周りが目に見えなくなれば死んでしまう。今、私達が居るのはそんな場所だ

 

「あのカノヌシはベルベットの弟だったのでしょうか?」

 

「あの時、ゴンベエはまことのメガネを使ってカノヌシを見ていた」

 

「それは知っています。ですが、アレは幻を見破ったり見えない物を見える様にするものです。それこそベルベットの言う様にそっくりな誰かを連れてきたという可能性もあります」

 

「だとしたら何故今になって現れたんだ?いや、違う。偽者だったらベルベットに意味はない」

 

「……多分、カノヌシはベルベットの弟だと思う……メルキオルの幻術に耐えたベルベットがあんなにも動揺するんだ……」

 

「私達は……なにも知らないな、本当に」

 

 ベルベットは今日まで復讐の憎悪に身を焦がしていた。その姿は知っている。でも、それだけだ。

 カノヌシの弱体化を狙って各地に散らばる地脈点に居る喰魔を引き剥がしたが穢れの量でなく質が問題だった。そしてカノヌシはベルベットの弟のライフィセット……あまりにも分からない事が多すぎる。

 

「そうですね……私達はなにも知らない。世界の仕組みも、どうして死んだ筈のベルベットの弟が生きているかも……あまりにも知らなすぎます」

 

「……知ることが今の僕達には必要なんだ。でも……どうやって……」

 

「それは……」

 

 グリモワールさんの古文書の解読を終わらせてもカノヌシがベルベットの弟のライフィセットに繋がるとは言い難い。それこそ過去を知らなければならない。だが、過去を知ろうにもどうすることも出来ない。ゴンベエが言うには音や幻を保存する道具は存在しているがそれはこの時代、この大陸に存在しない物だ……ゴンベエなら……今の私の様に直接過去に行って全てを見ることが出来る。

 

「っ、また!」

 

 アイゼン達の心配よりもカノヌシがなんなのか何故なのかと考えながら歩いていると再び大きな泡が出た。泡が光を放つと私達に幻を見せてくる

 

「ここは……」

 

 何処かで見たことがある場所だった。

 何処だったかは思い出す事は出来ないまま幻はまるで私達が見ているかの様に写り変わり……アルトリウスが写った

 

「アルト、リウスっ……」

 

 アルトリウスが目に映ると殺意を滾らせるがこれが幻なのを分かっているので暴れる事はしない。

 

「あれはっ!!」

 

『もし!しっかりしてください。今、人を呼んで』

 

 木に腰を掛けているアルトリウスの元に1人の女性が駆け寄った。

 何処となくベルベットに似ている女性でベルベットは驚いている。

 

『……いいのです……もう……疲れた……』

 

 俯いているアルトリウスは顔を上げた。その顔は酷く疲れた顔をしており何処か絶望していた。

 

『旅を、してこられたのですか?』

 

『十年……師に後を託されたのになにも成せなかった』

 

『十年も……』

 

 まただ、また私達が知らない情報が出てきた。アルトリウスが十年もの間なにかをしようとしていた事を今になって知った。

 

『……なんて弱い翼だ……だから……もう……いいんだ……』

 

 自分に対してアルトリウスは酷く絶望をしている。諦めようとしている。

 

『……そうですね。そんなに働いたならゆっくりと休まないと。丁度ウリボアの肉が手に入ったんです。夕飯は鍋なんですけどご一緒にいかがですか?』

 

『は……いや、私は……』

 

 あまりにも突然の事にアルトリウスは戸惑う。お腹が鳴ったの女性の方は微笑みながらリンゴを取り出した。

 

『今はリンゴしかありませんが、どうぞ』

 

 アルトリウスにリンゴを差し出すのだがアルトリウスはリンゴを受け取ろうとしない。

 

『お腹がいっぱいになればきっと立ち上がる元気がでますわ』

 

『恥知らずな……生きる資格も無いのに』

 

『資格がいるんですか?ただ生きることに』

 

『それは……』

 

 あのアルトリウスが戸惑っている。今までにないものを私達は見ている。

 

『自然な事ですよ。お腹が空くことも、辛くて泣くことも……だって、私達は生きているんだから』

 

『……生きている……』

 

 女性の言葉でアルトリウスの目に生気が宿る。

 

『お名前は?私はセリカ・クラウと申します』

 

「クラウ……クラウ!?」

 

 ベルベットと同じ名字……まさか……。

 アルトリウスは差し伸べられた手を掴んで立ち上がった。

 

『私は対魔士アルトリ──……いや、アーサー、アーサーです』

 

 これは……ベルベットの姉とアルトリウスの──

 

「アルトリウスッ!!」

 

 ベルベットは怒り散らす。再び幻を見せてくる光る泡を左腕で破壊した。

 

「なんなんだ今のは」

 

「ロクロウ!……アイゼンも」

 

「無事だったんだね!」

 

 後ろから声がしたので振り向くとそこにはロクロウとアイゼンがいた。

 場所と状況だけに危険な目に遭っていないかと心配をしていたが無事だったようで一先ずはホッとする。

 

「貴方達も見たのですか?」

 

「応。アルトリウスがアーサーと呼ばれていた」

 

「……これは恐らくだが大地の記憶だな。地脈には写し絵の様に地上で起こった出来事を記録されると聞いたことがある」

 

 そういえばライラ様が似たような事を言っていた様な……

 

「つまりこれは過去の出来事の幻というわけか」

 

「……幻じゃないわ。あれはあたしの姉さん、セリカ姉さんよ」

 

「ならばアレは……」

 

 アルトリウスとベルベットの姉との最初の出会い。

 あのアルトリウスは絶望していたが今のアルトリウスと比べ物にならない程に穏やかで温かい存在だ。

 

「セリカ姉さんも騙されていたのよ……ね。そうか。だからあたしを監獄から出してくれたんだ……」

 

 ブツブツと虚ろな瞳でベルベットは呟きながら歩いていく。その歩みを誰も止めることは出来ない

 

「とにかく無事な様でなによりです」

 

「後はマギルゥだけだが……何処に居るのだろう?」

 

「マギルゥならなんだかんだで生きて、その内ひょっこりと顔を出すだろう」

 

「それよりも問題はベルベットだ」

 

 2人の安否の確認が出来てエレノア達はホッとするが、肩の力はまだ抜けない。

 虚ろな瞳で歩いていくベルベットに付かず離れずの距離をアイゼンは取り、私達と今後について話し合う。

 

「ああなってしまうのは予想外だ……あいつはもうまともに戦えん」

 

「今は戦うべき時じゃない」

 

「それは分かっている。だが、此処は地脈。カノヌシの領域の中と言っても過言ではない……ライフィセット、前の時のように出られるか?」

 

「ううん、出られない」

 

「恐らくだがオレ達が見た大地の記憶はカノヌシがわざと見せている可能性がある。敵の狙いは……」

 

「ベルベットだね……」

 

「正確にはベルベットの内にある2つの穢れだ」

 

「2つ……2つ?」

 

 ここで私が引っかかる。ベルベットの内になにかしら特殊な質の穢れはあってもおかしくはない。

 アルトリウスに対して激しい憎悪を燃やしているのだから。だが、それがカノヌシの求める穢れの質として……もう1つはいったいなんだ?

 

「ベルベットに対してなにかをしようとしているのか」

 

 穢れの質が分からないが今のベルベットから分かるのは激しい憎悪だけだ。それ以外の感情は今のところは見られない。

 そう考えると……まだなにかがある。私達が知らない、知ろうとしなかったナニかが大地の記憶の中に存在している。それを見せつけようとしているのだろうか。

 

「ベルベットになにがあっても僕が守る……」

 

「守る……」

 

 これから迫りくる脅威に対して警戒をしつつ地脈の中を歩き、マギルゥを探す。

 ベルベットとは付かず離れずの距離を保ちつつ歩く。誰も今のベルベットに言葉をかけられない。

 

「また、か……」

 

 地面から泡が飛び出す、3度目となる大地の記憶。

 私達が歩いている中で出てきたという事は狙ってやってきたもの……ベルベットは直ぐに破壊しようとはせずに過去の幻を私達と一緒に見る。

 

『ただいま、セリカ。家の周りの柵を補強してきたよ』

 

 再び登場したアルトリウス。

 さっき見た弱りきった姿が嘘の様に元気になっておりベルベットの姉であるセリカさんに報告をしていた。

 

『ありがとう、アーサー。最近、野盗の被害が酷いって村長さん達が心配していたけどこれで安心ね』

 

『いや、もし野盗が業魔化していたらこの程度では……』

 

『え?』

 

『なに心配いらないよ。大工仕事には自信があるんだ。ベルベット達は?』

 

『多分、また岬よ。危ないって何回言っても聞かないんだから』

 

『ライフィセットがせがんだんだろう。なにベルベットはしっかりとした子だ』

 

 仲睦まじい夫婦の会話をしているアルトリウスとセリカさん。本当に羨ましいと思える程に仲睦まじい。

 

『……そうね。この子もあの子みたいに強く育ってくれたらいいけど』

 

『え……』

 

 少しだけ顔を赤らめながらお腹を擦るセリカさん……まさか……。

 

『喜んでくれる?』

 

 セリカさんはアルトリウスの子供を妊娠している!?

 

『決まっているだろう。ああ、世界にこんな幸せがあるだなんて!!』

 

 アルトリウスはセリカさんの妊娠を知るとセリカさんに抱き着いた。

 心の底から幸福を噛み締めている……これがアルトリウスの過去……ならば、何故、どうして……

 

『しかしまいったな。こんな事ならばもっと高価な物を用意すべきだった……』

 

 色々と謎が深まっていく中でも夫婦の時間は続く。

 アルトリウスはペンダントの様な物を取り出してセリカさんに見せるとセリカさんは喜んだ

 

『貴方が作ってくれたのね!!』

 

『君のために、心を込めて』

 

『一生大切にするわ。今日の幸せの記念に』

 

『誓うよ。命に賭けても君達を守ることを』

 

 手と手を取り合い笑い合うアルトリウスとセリカさん。ベルベットは温かい大地の記憶を引き裂いた。

 

「アルトリウス様の過去……」

 

「くくくっ、あははははっ!!笑えるわね。あんな言葉を信じちゃって……全部嘘なのに、笑顔も誓いも、なにもかもも」

 

 ベルベットは過去の幻を嘲笑う。

 あの笑顔があの誓いが嘘……アルトリウスがやろうとしている事と過去のアルトリウスが掛け離れている。だが、あの一面だけならばアルトリウスは本当にセリカさんの妊娠を喜んでいた。

 

「アバルの村の幻影に監獄島討伐の情報漏洩、そして弟の姿をしたカノヌシ……全てはベルベットの中にあるもう1つの穢れを手に入れる為か」

 

 今までの事を振り返るアイゼン。

 なにもかもが聖寮の手のひらの上だった……

 

「……オレ達もそれ相応に腹を括る必要がある様だ」

 

 此処から先、更に残酷な出来事が待ち構えている。

 改めて私達は気を引き締め直して地脈の中を歩いていくと4度目となる大地の記憶が現れる

 

「緋の夜!?ここはベルベットの村の」

 

 更に時計の針は進み、緋の夜と呼ばれる天族達が見る事が出来るようになった日が見れる。

 アイゼン達の話を聞く限りではこの日までは霊力の低い人間は憑魔を見ることは出来ない現代と同じ状態だった。この日から憑魔を見ることが出来るようになった……

 

「あれはセリカさん!?」

 

 崖っぷちに追い詰められているセリカさん。目の前にいるのは何時も相手にしている狼の姿をしている複数の憑魔達だった。

 さっきアルトリウスが言っていたことが当たってしまったのか……

 

『くそぅ、業魔化した野盗がこんなに』

 

 剣を片手に現れるアルトリウス。

 

『セリカっ!今助ける!』

 

『無理よ!ベルベット達と逃げてっ!』

 

『バカを言うな!』

 

 剣を振るいアルトリウスは憑魔を退けつつセリカさんの元へと向かおうとする。

 憑魔はアルトリウスを阻むがアルトリウスは切り捨ててセリカさんの元へと辿り着いた

 

『俺は生きたいんだ!君と俺たちの子と一緒に!』

 

 命を賭けてでも守る。

 そんな強い意思をアルトリウスから感じ取ることが過去の幻からでもわかる

 

「っ、危ない!!」

 

 アルトリウスがセリカさんの方を見ている瞬間に憑魔は襲ってきた。完全に倒すことが出来ずにアルトリウスに襲いかかり持っていた剣を弾き飛ばす。

 

『しま……っ』

 

 アルトリウスは持っていた武器を弾き飛ばされた。

 狼人間の憑魔はアルトリウスを襲いかかるのだが、その瞬間セリカさんがアルトリウスを突き飛ばして攻撃を回避させるのだが代わりにセリカさんが攻撃を受けて崖から転落をする。

 

『アーサーっ!!』

 

『セリカァァッ!!』

 

 互いに手を伸ばすが手は届かない……セリカさんは崖から転落をして死んでしまった。

 

『うぅ……ァああああああッ!!』

 

 セリカさんを助ける事が出来なかった事をアルトリウスは悔やむ。

 そしてアルトリウスは剣を手に取り怒りに身を任せて暴れる。残っている憑魔を一人残さず皆殺しにした。

 皆殺しにしたアルトリウスはもう一度崖の方に向かうとそこにはセリカさんへのプレゼントとして渡したペンダントがあった。

 

『……なぜっ、俺は……何故俺はっ、たった2人の家族すら守れないっ!!』

 

 大事な物を失い悲しむアルトリウス……コレは……

 

『よくわかっていよう、アルトリウス。人が弱く罪深いからだ』

 

「この声は!」

 

「メルキオルのジジイか!!」

 

 聞き覚えのある声がした。悲しみに打ちひしがれるアルトリウスの背後からメルキオルが現れる。

 

『この村がお前達一家を業魔化した野盗共に差し出したのだ』

 

「なっ!?」

 

『自分達を見逃す代償としてな』

 

『うそだ……そんな……』

 

 セリカさんは殺された……憑魔にだけでなく村の人達に……コレが、コレが……真実

 

『よくある事だ。人間が背負った業の理は変えられん。だが……』

 

 残酷な過去はまだまだ続く。セリカさんが落ちた穴から天にも昇る勢いの光が飛び出す。

 

『理を整える手段は見つかった』

 

『領域……なんだこの力は。まさか、こんな所に探し求めていた聖主(カノヌシ)が!!』

 

 目当ての物が見つかり驚くアルトリウス。

 眩い光に視線を奪われているとアルトリウスの側に2人の人が……ライフィセットと見知らぬ女性が現れる。

 

『こ、この聖隷は……』

 

『転生したか。姿は同じでも別の存在だ……どうやらカノヌシの復活は不完全の様だ。その原因を明らかにし聖主を導かなければならない。この聖隷どもは貰っていくぞ』

 

『っ、待て!!』

 

 2人の側に歩み寄ろうとするメルキオルだがアルトリウスが止めに入る。

 

『……約束を守れなくてごめんよ。償いはする。今から俺は俺を捨てる!!』

 

 決意を新たにするアルトリウス……私達が見てきたアルトリウスの目に変わった……そんな……こんな事が……

 

『名も無き聖隷よ、契約を交わしてもらうぞ……私は世界の痛みをとめなければならないのだ』

 

『できるのか?我が友の理想を投げ捨てた貴様に』

 

『亡き師と妻子の魂にかけて、今度こそ成し遂げる』

 

 コレがはじまり……私達が見届けなければならないはじまり……なんて残酷なんだ。

 

 

 

 

『我が名はアルトリウス・コールブランド。先代筆頭対魔士クローディン・アスガードの力を引き継ぐ者だ』

 

 

 

 アルトリウスは契約を交わす。天族へと生まれ変わったセリカさんと。

 

『……よかろう。今宵の悲劇、救世の宿縁に変えてみせよ』

 

 アルトリウスの過去を……知らなかった真実を知ってしまった私は言葉を失った。




今回はスキット無しです

番外編

  • 続 異世界プルルン転生記
  • ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
  • ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
  • まゆゆんの貧乏くじ
  • スペシャルスキットの続き
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