「ったく、お前等揃いも揃って……まぁいいか。オレがおかしいだけだからな」
メルキオルが私達の果たし状を受けると言ってから珍しくゴンベエはやる気を出した。
修行をつけてくれるというので戦ったのだが……まぁ、その……ゴンベエは強すぎたとしか言えない。特等対魔士や導師を相手にする以上は今よりも更に強くならなければならず、既にその領域を越えているゴンベエが修行の相手なのは実に有意義な事だがゴンベエが強すぎてまともにダメージを与える事が出来ない。それどころか勝つイメージが湧かない。
「通名賢氣、骨禎枸根、黄考建中。通名賢氣、骨禎枸根、黄考建中」
ダメージが残っている私達に治癒功を施すゴンベエ。
ライフィセットやマギルゥよりは劣るものの、ダメージが素早く抜けていき私達は動けるようになる。
「……月が、赤いな」
今日は満月の日だった。
生まれてから今まで何度も綺麗な満月を私は見てきたが今日の満月は違っている。緋の夜と言われるだけあって空ごと真紅に染まっている。
一見綺麗かもしくは不気味と思わせる空は今から起きる大きな戦いを暗示しているのかもしれない。
「こういう時こそ戦いがある……AreyouReady……って、聞くまでもないか」
ゴンベエから受けたダメージを回復した私達は立ち上がる。戦う覚悟はとっくに出来ている。
痛みも取れてきたのでキララウス火山に向けて出発をしようとしたがロクロウがこの場に居ない事に気付く。
「すまん、待たせたな」
「いや、ちょうどだ……その様子、成功と見ていいな」
「ああ……クロガネはキッチリと仕事を果たしてくれた」
背中の太刀にチラリと視線を動かすロクロウ。
クロガネが文字通り自身の全てを注ぎ込んで征嵐を作り上げた……一度、頭を小太刀にして折られてしまったがあの頃よりもクロガネの腕は上がっており、更には信念を込められている。
「シグレと號嵐は俺とクロガネがやる……コレがアイツと最後の勝負になる」
「そう……勝ちなさいよ」
「ああ」
「メルキオルのクソジジイはオレが殺らせてもらう……あのクソジジイの事だ、未完成か完成版かは知らねえけど神依を使ってくるだろうし何らかの対策はしてくる……それら全てを打ち破って絶望の底へと叩き落としてやる」
「ま、あんたなら絶対に負けることは無いわよね……でも、油断するんじゃないわよ」
「バーカ、あの程度の雑魚を慢心してでも倒せるんだよオレは」
特等対魔士と戦うと意気込むロクロウとゴンベエ。
この二人ならば、ロクロウならばきっと勝つことが出来るだろう。
「エレノア、絶対に帰ってきてね!!」
「ええ……生きて帰ってきます」
エレノアが遠いところに行ってしまう事をモアナは感じ取っている。
ホントは遠くに行ってほしくないのをグッと堪え、エレノアを見送ろうとしている。エレノアはそんなモアナに微笑みを向ける。
「マギルゥ、しっちゃかめっちゃかに場を掻き乱しなさい」
「うむ!言われるまでもなく乱してみせよう」
「アイゼン、あんたには悪いけどメルキオルはゴンベエが殺して私が喰らうわ」
「構わん……ゴンベエには大きな借りがある」
「アメッカ……最後まで見届けなさい。例え結果がどうなろうとあんたはそれを見るのよ」
「ああ、最後まで見届けさせてもらう」
ベルベットは私達一人ずつに声をかけて最後の確認をする。例えこの先、地獄を作り上げるとしても見届ける、それこそが私の役目だ。
「ベンウィック達は頃合いを見てバンエルティア号に向かいなさい」
「アイアイサー!」
「ライフィセット……」
「うん……行こう」
「特等対魔士達を殺して世界を混乱の炎に包み込むわよ!!」
私達はキララウス火山に向かって歩き出す。特等対魔士との戦いに決着をつける為に。
メイルシオの極寒の地にホントにこんな灼熱地帯があるのかと思えるかの様な暑さの地帯に入った。
「メルキオルは果たし状を受け入れたがシグレの奴は来ているのか?」
「あいつならば来るさ。堂々と正面からな」
唯一の不安要素をアイゼンは口にする。
メルキオルはやってくるがシグレが来るとは一言も言っていない。万が一億が一がアイゼンの死神の呪いで起こりうるので心配をするがロクロウは信じている……あの性格ならばきっとシグレはやってくる筈だ。
「暑いから着替えとかないとな」
何時もの緑色の衣装から赤色の衣装に着替える。青色は海の中に泳ぐもので、赤色は……こういった暑い地域で着るものだろうか。赤色の服に着替えるとゴンベエは汗をかかなくなった。
「おぉ、ホントに正面に居おった!!」
キララウス火山を進んでいくとそこにはシグレが胡座をかいて座っていた。
アイゼンの心配は杞憂に終わっており、シグレは私達を待っていたようで心水が入った酒瓶を持ち上げる。
「よう、待ち侘びたぞ!」
「ああ……俺もこの日が待ち遠しかった」
何時戦闘になるのか緊迫した空気が生まれる、それだけシグレが脅威的な存在だ。
戦うのかと身構えるベルベット達が居る中でロクロウはシグレの前に座った。
「……おおっ!」
背中の太刀をロクロウはシグレに差し出す。
シグレは太刀を抜くと刃は黒く、今までに見た、それこそゴンベエが頼んで打ち直したオリハルコンの刀と逆刃刀よりも凄まじいもので力と強さを感じ取ったシグレは声を上げる。
「大した奴だな。自分を刀にしやがるとはな」
「……ああ、その刀はクロガネの数百年全てが注ぎ込まれている。號嵐に対する憧れを、憎悪を……この一本に」
「クロガネ征嵐か、面白え」
「いや、違う。コレはまだただのクロガネだ、號嵐を征する刀だから征嵐だ……コレをクロガネ征嵐にする方法は1つ、號嵐に打ち勝つ」
ロクロウはシグレが持ってきた心水を一杯飲む。シグレはクロガネ征嵐を鞘に戻し、ロクロウへと返した。
ロクロウはクロガネ征嵐を背にし、私達のところへと戻ってくる。
「気をつけなさいよ、神依を使ってくるかもしれないわ」
「シグレの戦い方からして恐らくは火の神依を使ってくるだろう」
この戦いはロクロウの戦いだ。手を出せばロクロウがキレて逆に襲いかかってくる。
ならばとベルベットと私は助言を送る。シグレに合う神依は大剣を振るう火の神依しかない。ここは灼熱の火山地帯なのできっと火の神依の力が増すだろう。
「おいおいおい、なにを言い出すと思えば神依だと……確かにありゃ強えがよ、
「だろうな、お前ならそう言うと思っていた……ゴンベエから聞いたぞ、お前真の力を隠してるそうじゃないか」
「ああ……ムルジム、枷を外せ」
「ええ」
猫型の天族であるムルジムが頷くとシグレから溢れんばかりの霊力が湧き出る。
今までの私なら発するシグレの力から感じる威圧感に怯んでいたが、違う。ゴンベエが修行をしてくれたおかげで怯える事はない
「この力、一人の人間がなんの術も使わずにここまでいけるだと……」
話には聞いていただけで実際に目にするのははじめての為にアイゼンは言葉を失う。
シグレは天族のムルジムから一切の力を受け取っていない。それどころか逆に枷をつけていて今まで戦っていた……遥かなる高みにいる。
「人間頑張れば出来ねえ事はねえんだ……って、言いたいけどよ。世の中、上には上がいるもんだ」
「生憎とオレの取り柄はそれしかねえんだよ」
「奇遇だな、俺も剣を振るしか取り柄がねえんだ……そこで待ってろ」
「ほう、もう俺に勝った気でいるのか」
ゴンベエに対して挑発的なシグレ。ロクロウを倒せば次はお前だと抜き身の號嵐をゴンベエに向ける。
「お前だけが枷をつけてきたと思うなよ。お前が本気を出していないと知って俺も自分に枷をつけた」
ロクロウは体から紐にくくりつけたれた複数の鉄の板を降ろす。地面に落ちる鉄の板はメシィと鈍い音をたてる。
倒す前提で言っている事にカチンと来たのかロクロウは小太刀を取り出して二刀流の構えを取った。
「おいおい、背中の征嵐は使わねえのか」
「使うさ……俺の剣とクロガネの征嵐、両方を合わせてお前に打ち勝つ!!」
ロクロウはシグレに向かって走り出す。
「ネールの愛」
ゴンベエは私達に攻撃が飛んでこない様に私達にバリアを貼る。
手を出してはいけない一戦でどちらも圧倒的な強さを持っている。この勝負、どうなるか本当に分からない。シグレとロクロウは撃ち合う。ロクロウの小太刀は號嵐と打ちあっても砕けていない。前よりも成長している。
「ここまでは前と同じだ、アレからどれだけ強くなった?」
「こんな事を出来る様になったぞ」
「アレは骸骨の騎士に教わった技!!」
ロクロウが残像を残しながらシグレの周りをグルグルと回転をする。
骸骨の騎士に教わった技を今ここで使った。ランゲツ流とは異なる流派でシグレも戸惑いを見せるのだが、直ぐに攻撃に転じる。しかしロクロウはそれを容易く回避してみせる。
「こりゃあ……水を斬ってるみてえだな」
「流水の動きだ……他人から教わった技なのはちと残念だが、捉えられるかな」
「あ、ヤバい」
ややロクロウの方が有利に戦いは進んでいると思えばゴンベエは声を出す。
「ロクロウ、そのまま」
「捉えた!」
「ああ、俺がな!!」
ゴンベエが言葉を言おうとする前にロクロウは動いた。
体を回転させながら斬り込む回転剣舞・六連の体制に入ろうとするのだが、一太刀目をシグレが防いでロクロウの動きを封じる。
「その動き、水みたいで捉える事は今の俺には出来ねえ。だが、水ってのは自然の流れに身を任せて動いているもので自分から動いちゃ隙だらけだぜ」
「どういう意味?」
「あの動きは捉えるのが難しい動きなんだけど、攻めに転じる際に僅かな隙が生まれて動きを捉える事が出来るんだ……とはいえ極々僅かなんだが」
完全に見切られて仕組みも理解したシグレ。
なにが起きているのかよくわからないライフィセットはゴンベエに解説を頼み、あの動きの弱点を教える。ゴンベエの言うことが確かだとしてもシグレがロクロウのランゲツ流とは異なる歩法を見るのははじめての筈だ。初見でロクロウの動きを見抜いたというのか!?
「どうした、もうおしまいか」
回転剣舞・六連が破られると一旦ロクロウはシグレと距離を取った。
まだまだやる気に満ちているロクロウをシグレは挑発するがロクロウは攻めに来ない。
「来ねえなら、こっちからいかせてもらう!」
そう言うとシグレは號嵐を振り上げて構える。
「いかん、ロクロウ!」
あの構えから放たれる技を知っている。
マギルゥはどうにかする様に言おうとするのだがロクロウは笑みを浮かびあげている。
「避ける必要はねえ!何処にいたって同じだ!」
「ああ、だから迎え撃つ」
小太刀をしまい、ロクロウは背中のクロガネ征嵐に手を触れる
「嵐月流・荒鷲!」
「九の型・絶刑!」
シグレの振り下ろされる號嵐に対してロクロウはクロガネ征嵐を振り上げた。
凄まじい剣のぶつかりに衝撃波が発生してロクロウとシグレの足場が凹む
「折れてない」
正真正銘全力のシグレが放った號嵐の一撃をロクロウはクロガネ征嵐で受け止めた。
並大抵の武器ならばその時点で折れて砕け散るがクロガネが全てを注ぎ込んで作り上げたクロガネ征嵐は傷一つついていなかった。クロガネの征嵐が遂に號嵐を捉えた。
「っ、やるじゃねえか」
「ああ、これこそがクロガネの全てだ……だがまだ俺の全てはお前に叩き込めていない」
「なら、休んでる場合じゃねえな」
お互いの剣圧に吹き飛ばされるロクロウとシグレ。
今見せたのはクロガネの全て、これから見せるのはロクロウの全てだが……今以上があるのか
「シグレ」
「ムルジム、余計な邪魔をすんじゃねえぞ……今が最高にいい時なんだよ」
クロガネ征嵐と號嵐のぶつかり合いで僅かながらシグレはダメージを受けた。
そんなダメージなんてお構いなしだとシグレは立ち上がる。
「ロクロウ、この人はまだ力を」
「ああ、分かっている。こいつはシグレ・ランゲツだ」
まだ底を見せていないと言おうとするライフィセット。
シグレの強さを直に感じ取っているロクロウはその事に気付いている。まだ更に上がある……どうやってシグレに勝つつもりなんだ。
「二刀でいいのか?」
背中のクロガネ征嵐を使わずに小太刀を構えるロクロウ……きっとなにか勝算がある。私達はそれを信じて見届けるだけだ。
「確かめてみろ、命を賭けてな」
「上等だ!!」
そう言うとシグレは私達の目の前から消え去り、一瞬の内にロクロウの背後を取った。ロクロウは直ぐに背後を取られた事に気付き、斬りかかるシグレの一閃を避けるがシグレは追撃の手を緩めず號嵐を手に襲いかかり、ロクロウはそれに応えるかの様に小太刀二刀流でシグレに挑む。
シグレと激闘を繰り広げるロクロウだが……ダメだ。まだなにかが足りない。シグレという強者を倒すには、まだ一手が足りない、そう感じる。凄まじい剣のぶつかり合いに呼吸をするのが忘れそうだ。
小太刀二刀流と太刀の一刀流、時にはロクロウは足で攻撃をしようとしてくるのだがシグレはそれを避けて攻撃する。ロクロウはその攻撃を小太刀で受け流す
「もうすぐだな」
ゴンベエはそう呟いた。激しい激闘を繰り広げる2人の戦いの均衡はそう長くも続かない。後もう少しでこの均衡が崩れる。ゴンベエの言っていた事は的中し、シグレが一旦ロクロウと間を置くとシグレはロクロウに向かって飛びかかり號嵐を振り下ろそうとする。
あの一撃は強烈だ。ロクロウはそう感じ取ったのか小太刀をX印に交差させて號嵐の一撃を防いだ
「噴!!」
「雄ぉおお!!」
力と力をぶつけ合うシグレとロクロウ。 腕を大きく振るうとロクロウの小太刀とシグレの號嵐は宙を舞った。 シグレには號嵐しかない。ロクロウには小太刀以外にももう1つの刃が、クロガネ征嵐がある。
「斬っっっ!!」
ロクロウは背中のクロガネ征嵐を抜いてシグレを切り裂いた。
胴体を抉るかの様に切り裂かれたシグレは満足げな笑みを浮かべ、地面を背に倒れた。
「三刀……コレがお前の剣か」
嵐月流の表である太刀と裏である小太刀二刀流、2つを合わせて3つの剣としてロクロウはシグレに挑んで制した。
今回はスキット無しで短めです。
番外編
-
続 異世界プルルン転生記
-
ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
-
ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
-
まゆゆんの貧乏くじ
-
スペシャルスキットの続き