「な、なに言ってるんだよ!!」
アリーシャの烈火空裂斬は見事な物だった。
ぶっつけ本番で魔法剣みたいなのをやるとは諦めずに足掻いた甲斐があった。ずっと暴走した状態だったテオドラがオレ達に向かって話しかけてくれた。もういいともう殺してくれとザビーダに向かって頼み込んだ。
意識が戻った事を喜び、叫んでいたザビーダは戸惑うしかない。必死になって生かそうとしているテオドラ自らが殺してくれと言っているのだから。
「テオドラ、聞いてくれよ!コイツ等、業魔になった人間を元に戻す力を持っているんだ。お前も意識を──」
「口を動かすな、体を動かしやがれ!」
テオドラに嬉しそうに報告しているザビーダだが肝心のテオドラはまたまた意識を奪われたのかザビーダに向かって火の球を吐いた。
流石にザビーダが死んでしまうのはマズイと鞭を取り出して、ザビーダをぐるぐる巻きにして火の球から助け出す。
「もう一度だ、もう一度今のをぶつけてくれ。テオドラがあんな事を言うわけがねえ、ドラゴン化して気が狂っちまって」
「いい加減にしろ!!」
鞭から脱け出して、もう一度烈火空裂斬をしようと提案するザビーダ。
与えたチャンスは一度だけで傍観していたアイゼンはザビーダをぶん殴った。
「お前等、無事……じゃないよな」
「ライフィセット、苦しければ私の中に戻ってください」
「だい、じょうぶ……せめて最後まで見届けさせて」
烈火空裂斬なんて無茶な真似をしたからか、元々使いこなせていない白銀の炎を無理矢理引き出した為にライフィセットが限界が来ている。
エレノアは器である自分の中に戻るように勧めるがライフィセットは最後まで見届けたい……例えそれが最悪な結果だとしても。
「ゴンベエ」
「マスターソードは返してもらうぞ」
アリーシャはやれるだけのことはやった。だが、それでも助けることは出来なかった。
意識を一瞬だけとはいえ元に戻すことが出来ただけで、それ以上は……多分やり方が違うかなにかが一手、足りないかのどっちかだ。最初で最後のチャンスを掴めなかったがこればかりは仕方がないことでアリーシャからマスターソードを返してもらう。
「子供を襲い、助けようとする奴すら殺そうとする……あの白角のドラゴンは誰だ?」
「……テオドラだ」
「なにがあろうとも生きる事を諦めないのがお前の流儀だ……足掻いて藻掻くのも1つの生き様なのかもしれない。だが、今のお前は生きていると言えるのか?」
ザビーダはなにがなんでもテオドラを助けようと必死になっている。その姿を1つの生き様と捉えるかそれとも醜い姿と捉えるか、少なくともアイゼンには今のザビーダが生きているというよりはテオドラという枷に縛られて動くことが出来ていないように見える。
「今のお前はオレから見れば生きているようには見えない……テオドラもその事を理解している、だから言ったんだ」
「なんだと……」
自分という存在に縛られないでほしい……2人の死神に出てくる母親も似たような事を思っていた。テオドラも似たような思いをしている。
アイゼンはザビーダからジークフリートを奪い取り自分のこめかみに向けて発泡するとアイゼンの力が増した。
「ゴンベエ、もう見守る必要はない……思う存分にやれ」
「ま、少しぐらいはマジメにやるか」
アイゼンは殺る気満々だが相手はドラゴン、ジークフリートのパワーアップを持ってしても殺せないかもしれない。
暴力で物事を解決しないといけないのは心が痛むがザビーダとテオドラ、両方を助けるには……誰かが汚れ役を引き受けないといけない。アイゼンはテオドラがザビーダにとってどれだけ重要な存在なのか知った上で殺す、汚れるつもりだ。
「黒龍二重の斬」
どういう原理で空を飛んでいるかは不明だが、翼はあるので翼を剥いでおく。
2回軌道が変化する無明斬りこと黒龍二重の斬でテオドラの穢れで出来た翼を斬り落とした。
「下がっていろ」
地面に落ちるテオドラ。
ベルベット達が加担しようと武器を取り出すのだがアイゼンが武器を納める様に言う。
「よせ、テオドラを殺したらテメエを一生許さねえ!」
「だろうな」
ザビーダが許さないことぐらい、アイゼンは百も承知だ。
それでもアイゼンは殺すと拳を構えて、テオドラに強烈な一撃をお見舞いした。
「あああああっ!アイゼン、テメエ……」
会心の一撃と言っていい程の一撃がテオドラに叩き込まれた。その一撃はテオドラを殺すには充分な一撃でザビーダはアイゼンを強く睨みつけながら近付くのだが、最後の悪足掻きなのかテオドラは強い穢れを周囲に発する。
「ぐ、ぁああああ!!」
「アイゼン!」
「来るんじゃ、ねえ!」
「ったく、締りが悪いな」
穢れに飲み込まれるアイゼンとザビーダ。ライフィセットは白銀の炎を出そうとするのだがガス欠な事には依然として変わりはない。
ここはオレが動くしかないとアイゼンとザビーダの間ぐらいに入って地面を強く叩く
「ディンの炎」
ライフィセットとはまた異なるドーム状の浄化の炎を広げる。
浄化の炎はアイゼンとザビーダを焼いて2人に纏わりついていた穢れを取り祓った。近くにいたテオドラにも命中し、テオドラは光の粒子となって消え去っていった……これ、オレがトドメを刺したとか言われねえよな?
「何故死神の呪いを解こうとしなかった?」
「オレにあいつの心臓を食わせたかったのか?」
「質問に質問で返すんじゃねえ」
「……死神はオレにかかった呪いだ。そしてドラゴン化は全ての聖隷にかかった呪いだ」
「さっきの穢れ……アレはお前の穢れか」
「ああ、オレの呪いの進行はもう既にはじまっている」
アイゼンは自覚している、このまま行けばドラゴンになることを。
「海賊達と離れればちっとはマシになるだろう」
「オレはアイフリード海賊団副長アイゼンだ。呪いに舵を奪われるくらいならばドラゴンの道を選ぶ」
それでもアイゼンは流儀を曲げない。それがアイゼンだから……でも、それで悲しむ人は1人いる。
「ただ、大切に想う者がドラゴンになった自分に囚われるのは……怖い」
「大事なものに気付けなくなったテオドラを、俺を救ってくれたんだな……殺すことで……なによりも人を傷付ける事を嫌い、誰よりも人を愛していた優しい女だった」
「……そうか」
「殺すことが救いになるヤツがいる……認めたくねえよ……でも、それでしか助からない……あんたにも自分の命を捧げて救いたい守りたい奴が居るんだな」
「……妹だ」
「エドナ、様……」
オレとアリーシャは知っている。アイゼンがどうなるのかを、アイゼンの妹であるエドナがどんな道を選ぶのかを。
エドナは……多分、アイゼンの思いを知らないだろうな。手紙で色々とやり取りはしているけど、ホントは側に居てほしいと望んでいるのだから。
「いい女か?」
「早咲きの花の様に賢いしっかり者でな。よくオレをからかいやがる……ホントは泣き虫で根はしっかりとした子だ」
「そうか……仲良くしたいもんだ。俺の嫁候補にしたいもんだ」
「テメエ!!」
「心配するな、全部あんたを殺した後だ……殺すことが救いになるかもしれねえ。そう割り切ったってよ、俺はテメエを許すことが出来ねえ。テオドラの敵討ちだ。ドラゴン化したテメエを……殺す」
「情けないな、おい」
「なに?」
「そこはよ、ドラゴン化したアイゼンを元に戻すって言ってやれよ。解けない筈の呪いを解除して、嘲笑ってやれよ。お前は流儀だなんだと自分勝手な事を抜かして助ける道を諦めさせようとした、助けれた筈の命を救わずに見捨てたクソ野郎だって……まぁ、オレが1番言っちゃいけないことか」
あくまでも見るだけに徹していたオレが本当にどの口からどの目線から言ってるんだよ状態だ。
それでもまぁ言っておかないといけない。最低な言葉だけどそれでも言わないと……諦めるなと。
「ゴンベエ……ありがとよ」
「なにがだ?」
「殺すことも救いかもしれねえ、最初からコレしか道がねえってお前は知っていた。それでもお前は俺に足掻くことを許してくれた、アメッカに力を貸してくれた……」
「別に恩義を感じるものじゃねえし、お前はきっとこういう。なんであの時にこの力を貸してくれなかったって……それでもオレに恩義を感じているなら、オレにも足掻く時間と権利をくれよ」
「ゴンベエ、それは……」
「殺すことが救いになる?馬鹿を言っちゃいけねえ、殺してしまえばそこで終わる。負の連鎖を食い止める為に見えて、より鎖を強固にしてしまう。ならば誰かが救いの手を差し伸べて笑うしかねえ……手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔するなんて事を何処かのヒーローが言っていたからな」
オレはめんどくさがっていてなにもしないクソ野郎だ……ホントにどうしようもないぐらいに、秩序を持った悪人だ。
「アイゼン、あんたがあんたでなくなったとき、俺はあんたを嘲笑いに来てやるよ」
「……いいのか?」
「ああ、フィルク=ザデヤ【約束のザビーダ】の名にかけてな」
「ウフェユムー=ウエクスブ……それがオレの真名だ」
「覚えておく」
アイゼンはザビーダにジークフリートを返した。真名を交換し合った2人には奇妙な絆が生まれている。
「足掻くのも藻掻くのも生きること、でも殺すのも1つの答え……生きるって難しくて哀しい事なんだね」
「悟りを開く為に深く考えるのならそこで悩めと言う。でもお前はお前の考えがある筈だ……その道を歩めばいい。それが生きるって事だからな」
ドラゴン化も殺さない道ももしかしたら何処かにあるのかもしれない。
生きることの意味について改めてオレやライフィセット、アリーシャは考えさせられた。この喧嘩があったからこそザビーダは殺すことが救いになると思っている……まぁ、諦めたとも取れるがな。気分はどちらかといえば最悪だってのにこんな時に綺麗に虹が掛かっている。
「じゃあな」
「何処に行くの?」
「風が教えてくれる……ああ、そうだ。シルバの事を伝え忘れてた……あいつは何時かお前等に恩を返したいから早くアルトリウスをぶっ飛ばしてくれってよ」
アルトリウスをぶっ飛ばしたら、オレとアリーシャは元いた時間に帰るからそれは無理っぽそうな話だな。
ザビーダは少しだけ悲しそうな背中を向けてオレ達の元を去っていく……恐らくだがこの時代ではもう出会う事は無いだろう。
「少し休んでから帰るぞ」
風のオカリナを吹けばメイルシオへとひとっ飛び出来るが色々とありすぎて疲れてしまった。
ここから1番近い街であるストーンベリィに向かい、一休みをするのだが血翅蝶の一員がオレ達のところにやってくる。
「アイゼンさん、異大陸から奇妙な宝箱が打ち上がったみたいです」
「奇妙な宝箱だと?」
「鍵がついているわけでもないのに開かなくて、力を失っていない一等対魔士達が数人力づくでこじ開けようとしたらしいのですが開かないそうで」
「……その宝箱は何処にある?」
「マーナン海礁です」
「ゴンベエ、ひとっ飛び頼めるか」
「行けるけど、開けられませんでしたのオチだけは勘弁してくれよ」
人使いが荒い死神だこと。
オレ達は風のオカリナの力を使い、マーナン海礁へと向かうとあっさりと噂の宝箱を見つけた。
「ふん!!……ダメだ、ビクともしない」
アリーシャが宝箱を開けようとするもビクともしない。
どちらかといえば力のある方のアリーシャがビクともしないとなるとこの宝箱はなにかしらの術かなにかが施されている。
「イフタム・ヤー・シムシム……違うか」
「その宝箱は言葉を聞かせると開く仕組みになっている……前に開けた時と同じで、異大陸の言葉で【富】を現す言葉……バンエルティア」
「開いた!……中には、本が入ってる」
「なんじゃ。異大陸の宝箱と言うに、もっとぶっ飛んだ物でも入っておると思ったぞ」
ぶっ飛んだものって、仮面ライダーの変身ベルトでも入ってるのか。
ライフィセットは宝箱の中に入っていた本のページをペラペラと開いて内容を読んでいると驚く。
「これ、ジークフリートの研究成果だ!」
読めなくもない古くて汚い字だが、本にはジークフリートについて書かれていた。
「アヴァロスト時代の遺物と思われるジークフリートは内蔵された術式によって霊力の操作を可能とする。一般的には撃ち抜いた対象の霊力を増幅させる装置として認知されているが、これは正規の機能を起動・補助する為の能力に過ぎない」
「おいおい、パワーアップするだけでも充分な力だってのにそれはおまけって……他になにがあるんだ?」
「えっと……そもそもでジークフリートは対ドラゴン用の兵器だと推測されてるみたい」
「……まぁ、うん」
ジークフリートって名前だから、
「その本来の機能は意志の弾丸を撃ち込み特殊な効果を発動することである。霊体結晶の弾丸は込められた込められた意志によって異なる複数の効果を発揮する。力の結び付きを断つ弾丸や一時的に穢れの影響を断つ弾丸等が確認されている」
「……そうか。ライフィセット、今度ザビーダに会ったらこの事を教えてやれ」
「いいのですか?穢れを断つ弾丸なんてそれこそ貴方に必要な物で」
「オレには必要はない……なによりもジークフリートはもうザビーダの物なんだ」
「そっか……うん、ザビーダに会ったらこの事を伝えるよ」
「伝えるのは良いけど、肝心のその弾が何処にあるのかわかってるの?ジークフリートって異大陸の物なんでしょう」
「アイツならば見つけるさ、何十年何百年かけてでも」
「……まぁ、見つかったら見つかったで酷い使い方をするがな」
ザビーダは恐らく力を断つ弾や穢れを断つ弾を手に入れる。
そしてアイゼンの様に殺すことで救う道を選ぶ。きっとザビーダは今日から現代に至るまでに酷い地獄を見てしまった、だから救える力があったとしても汚れ役となって殺す道を選んだ……生きることが流儀の奴を殺すことが救いと言わせるとはどんな地獄を歩んだのか、気にはなるがそれを知るのは現代に帰ってから。ともあれこれで現代で起きた過去のオレ達がやった事の殆どが回収出来た……まだ謎が残ってるけど、それもその内解けるだろう。
スキット やるかやらないか
アリーシャ「ここであの時の話を……何時かはライラ様にこの話を話して、ライラ様は私達にお伝えするのか」
ライフィセット「なんの話をしてるの?」
アリーシャ「ゴンベエがしてくれた話を前に聞いたことがあったんだ。あの時は意味がよく分からなかったが、今ならば話の意味が深く分かる」
ライフィセット「そっか……でも、僕あんな終わりは嫌だな。医者も子供も母親も誰一人報われないなんて酷い、もう一人の殺す医者だって」
アリーシャ「酷いか……あるべき形や摂理を無理矢理曲げてしまっているのが人間の背負いし業かもしれない……だが、何時かは私達も似たような状況に迫られるかもしれない」
ライフィセット「似たような状況?」
アリーシャ「例えばベルベットの心臓が病に侵されてしまった。治す薬は存在しないが、自分の心臓を移植すれば治ると言われて……どうするか」
ライフィセット「……僕は……3つ目の答えを探す!」
アリーシャ「3つ目の答え?」
ライフィセット「自分もベルベットも助かる、そんな答えが世界の何処かに僕が知らないだけである筈だよ!だから僕はその答えを探す」
ゴンベエ「何処ぞの科学者が言っていた答えと似たような答えを出したか……その道が1番険しい道で、残酷な現実だらけだぞ。いいのか?」
ライフィセット「うん……僕は逃げたくないし、諦めたくもない。もしその時が来たのなら絶対に見つける」
ゴンベエ「結局のところ、やるかやらないかか……オレには選べない道だな」
スキット 先導者と笑顔。
アリーシャ「……ザビーダ様は生かす流儀を持っている。その思いは間違いではない……でも、現代では殺すことで救われる奴も居るという考えに至った……アイゼンと色々とあったが、それでも……良くも悪くも変わってしまうものなのか」
?????「なんや暗い顔しとるな」
アリーシャ「な……なんて格好をしているんだ!?」
?????「これは俺の仕事衣装や」
アリーシャ「殆ど裸じゃないか!」
?????「もう男の裸を見た程度で赤くなったらアカンで……それよりもえらい暗い顔をしとるな。暗い顔をしとったら運気まで悪くなる、もっと楽しそうにしとかんと」
アリーシャ「楽しそうに……今日ここに至るまでに色々とあった。私は成長する事が出来た筈だが、代わりに大事ななにかを失った気がする」
?????「なら取り戻せばエエやん」
アリーシャ「口で言うのは簡単だが、私が失ったものは」
?????「だからこそや、これから険しい道を歩むんやろ。だったらソレは持っとかんとアカン。前を走って先導者になったりする人間が険しい顔をしとったら自分が歩んでいる道が苦しいもんやと思われる……笑顔は大事やねんで」
アリーシャ「笑顔……
黛「次回、サブイベント 姫騎士アリーシャと導かれし愚者達その6」
ゴンベエ「またとんでもねえ人が飛ばされてきたな……」
番外編
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続 異世界プルルン転生記
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ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
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ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
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まゆゆんの貧乏くじ
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