テイルズオブゼ…?   作:アルピ交通事務局

163 / 229
生きる者 マオテラス

 オレは願った。アルトリウスは死に、ベルベットとカノヌシもまた死のうとしている。誰一人報われない終わりにオレは不満を抱いた。

 本人的にはもう充分に満足しているのだがオレは満足していない。それこそオレのエゴだろう……でも、思ってしまった。ベルベットになにかに縛られる事なく自由に幸せを掴んでほしい。カノヌシが、ライフィセットが決断を追い込まれない様にしてほしい。

 

「え!?」

 

 この状況をどうにかする方法はたった1つ、世界の理を弄る事が出来るトライフォースの力を借りることだ。

 トライフォースに2人に幸せになってほしいと願いを込めた……その結果背中のマスターソードが勝手に動き出してベルベットとカノヌシ、両方が貫かれた。ご丁寧に心臓を貫いている

 

「な、なにをしているんだ!?これでは本当に死んでしまっているぞ!」

 

「待て、待ってくれ。頭の、状況の整理が追いつかない!」

 

 ベルベット達に幸せになってほしいと願った筈なのにベルベット達がマスターソードで心臓を貫かれた。

 流石の事にオレも意識が宙を浮くのだが直ぐ隣りにいたアリーシャがオレの肩を掴んでグワングワンと揺らしてくるので意識が現実に戻る。

 オレもどうなっているのかイマイチ理解出来ていない。手の甲にはトライフォースが宿っているが相変わらずうんともすんとも言わない。こうトライフォースの超常的な神秘の力でベルベット達を……ヤベえ。願っておいてなんだけどベルベット達が具体的にどんな感じになるのかを一切イメージしていない。

 

「ど、どうなるんだ?」

 

 カノヌシが死ねばベルベット達も連鎖的に死ぬ。

 だからベルベットは自分を喰わせてカノヌシに喰らわれるウロボロスの無限ループを選んだのだが……

 

「真っ白になっていくぞ!!」

 

 心臓を貫かれたベルベットは血を一滴も流していない。体の何処かが赤くなるどころか段々と真っ白になっていく事にロクロウは気付いて声を上げる……この状態、何処かで見たことがあるような無いような

 

「きゃあ!?」

 

「な、なんじゃあ!?」

 

 ベルベットに巻き起こる異変に動揺していると地震が起きてエレノアは尻餅をつき、マギルゥは驚く。

 この場所が崩壊するのかと慌てていると赤、青、緑、黄色の4本の光る柱が4方に出現する。この最後のダンジョンになにか仕掛けがあるのか!?

 

「なんだコレは……聖主を封じ込めているぞ」

 

「シグレの声?あの野郎、化けて出やがったのか!?」

 

「落ち着け……恐らくコイツ等は四聖主だ」

 

「四聖主……何故、ここに?」

 

 最終決戦を終えたのか今頃になって四聖主が出てきた事をアリーシャは疑問に思う。

 聖主の声と教えてくれたアイゼンの視線はベルベットとカノヌシの方を向いた。

 

「カノヌシを殺したからお前達に大きな影響を及ぼしたのか?」

 

「その通り……しかし、少しだけ違う」

 

「曖昧に答えるな。ベルベットとカノヌシはどうなっている?」

 

 アイゼンは光る赤色の柱を睨みつける。

 ベルベットとカノヌシになんか起きているのは確かだがそれが分からない。

 

「我等にもどうなっているかは分からない。カノヌシの力を我等とは根底から異なる力で抑えつけられ、作り変えられている」

 

「いや、分かっておるではないか!」

 

「それしか分からない。災禍の顕主が生きているのかも、カノヌシが死んでしまったのかさえも分からぬ」

 

 よく分からない根底が異なる力というのはトライフォースの事だろう。

 カノヌシを作り変えているというのは些か気になる事だがそれがどういうことを意味しているのかは四聖主にも分からない。

 

「じゃあ、この地震はなんだ?カノヌシがカノヌシじゃなくなったからこのダンジョンが崩壊してしまう前触れか?」

 

 分からない事を尋ねてもコイツラは知らぬ存ぜぬで通す奴等なので分かりそうな事から聞いてみる。

 ここがピシピシと切れ目が入ったり嫌な音が鳴ったり地震が起きたりと厄介な事になっている。入ってきたところがあるから多分そこが出口なんだろうが、間に合うのか?

 

「此処がカノヌシの力で出来た場所ならばカノヌシの消滅と同時に消え去る」

 

「待ってください。カノヌシの消滅と同時に消えるならばカノヌシの一部であるライフィセットも」

 

「無論死ぬ……しかしどういうわけか我等と異なる力が働いていて死なぬ」

 

「そう、ですか」

 

「案ずるな人の子よ。ここが消えれば同時にここに来る際に乗った術式の元に自動的に戻る様になっている」

 

「また随分と都合がいいことだが、今はそれがラッキーだと喜ぶか」

 

 とにかくここが今にでも崩壊しそうな事には変わりはない。

 脱出は自動的にやってくれるのならば変に焦って何処かに行こうとしなくていい……とまぁ、普通ならばそう考えるのだろうが、そうそう上手くいかないのが世の中だ。

 

「で、お前等なんで出てきたんだ?」

 

「カノヌシが我等と根底から異なる力により作り変えられている。よって、カノヌシの存在が消えてなくなり我等四聖主とカノヌシの均衡は崩れた」

 

「あ~……やっぱそういう感じの展開か!くそ、常に警戒してたのに最後の最後でヘマをやらかした」

 

 曲がりなりにも神様的な存在だ、殺したりすれば世界に何らかの影響を及ぼしてしまう。だから今まで殺すことを躊躇っていた。

 具体的にどうなっているかは分からないがカノヌシはカノヌシでなくなり地水火風の4つの聖主の力が高まる。

 

「ん?結局どうなるんだ?カノヌシは俺達人間が手遅れなくらいに行き止まった時にリセットをする抑止力的な存在だろ?」

 

「抑止力が、歯止めが効かなくなり我々4人の力がぶつかり合う。我等4人の力はぶつかり合い数万年を掛けてこの世界を新しくする」

 

「数万年!?待ってくれ、それでは今生きている人達はどうなってしまうんだ?」

 

「地殻変動や飢餓の余波に巻き込まれて死滅する可能性が高い」

 

「そんな、どうにもならないのですか!?」

 

 このままだと世界を文字通り滅ぼしてしまう。

 どうにかしようにもオレはどうすることもできない。なんでも出来る権利をたった今、使ってしまった。トライフォースを使えば秩序を取り戻す事が出来るが……今、ベルベット達がどうなっているのか、作り変えられているとは言っているものの具体的にどうなるのかが分かっていない。

 エレノアはどうにかすることが出来ないのかを四聖主達に尋ねる

 

「方法は1つだ……誰かがカノヌシの代わりとなればいい。力と強い意志を持った聖隷が」

 

「おまっ、それはねえだろう」

 

 メルキオルのクソジジイの声で語りかける。聖主の名前は分からないがメルキオルのクソジジイの声なのでイラッと来る。

 この中でカノヌシの代わりになる事が出来る聖隷は……天族はたった1人だけ。オレ達はライフィセットに視線を向ける。

 

「なるよ。僕が代わりに」

 

「貴様はカノヌシの一部だ。力に不足はない」

 

「だが、問題は意志だ」

 

「汝はこの世界になにを望み、なにをもたらす?」

 

 四聖主達はライフィセットに語りかける。ライフィセットはリンゴを一噛りすると掲げて高らかに宣言をする。

 

「僕はこの世界にもたらしたい!心を溢れさせてしまった人達がやり直す事が出来る明日を作りたい!何処までも飛ぼうとする人達が翼を休められる時を、強くて弱い人間が……怖くて優しい人間達が何時か空の彼方に辿り着く事が出来るように!!」

 

「また随分と抽象的……」

 

 だが、悪くはない。ライフィセットがベルベット達との長い長い旅の果てに辿り着いた1つの答えとしては充分すぎる。

 四聖主達もライフィセットの意見を気に入ったのか柱の光を一本に集束する。

 

「「「「もたらしてみるがいい!!新たな聖主よ!!」」」」

 

 ライフィセットから眩い光が放たれると光は形を炎に変えるとオレ達の元に飛んでくる。

 この炎はただの炎じゃない。浄化の炎……試しにとロクロウを見てみるがロクロウは憑魔のままだった。浄化の炎が効いていないというわけじゃなさそうだ。ライフィセットから放たれる浄化の炎はオレ達だけでなく世界中に飛んでいき、世界各地から感じ取る事が出来ていた穢れが全体的に減った。

 

「浄化の炎を、齎した……っ!?」

 

 このことについてアリーシャは心当たりがあるのか放心状態になっているがそんな事は知ったことじゃないと更に眩い光をオレ達を飲み込む。

 この光はなんだと思っているとダンジョンから抜け出して聖主の御座の転移術式があったところに戻ってくる。

 

「地上に戻った……光のドラゴン!?」

 

 地上に戻ることが出来たと自覚したエレノアは大きな影に気付く。

 オレ達と一緒に振り向けばそこにはドラゴンがいた。テオドラの時と違って穢れの様なものは一切放っていない……コレは……

 

「ライフィセット、お前なのか?」

 

 見た目も雰囲気も一瞬にして大きく変わってしまったが氣で分かる。この白い光のドラゴンはライフィセットだ。

 

「やれやれベルベット譲りの無茶をしおったの、ライフィセット」

 

「ホントに……ホントにライフィセットなのですか?何故、その様な姿に」

 

「ライフィセットは聖主となった……覚悟を決めた姿なんだろう」

 

「まさか、誓約でドラゴンになったのですか!?」

 

 アイゼンの言葉からエレノアは自らの意志でライフィセットがドラゴンになった事に驚く。

 ドラゴンになったライフィセットはコクリと頷いた。

 

「うん……怖い?」

 

「……いいえ、男振りが上がりましたね!」

 

「キレた時のベルベットの方が怖えよ!」

 

 ライフィセットはちょっと心配した声を出す。

 巨大なドラゴンの厳つい見た目をしているが何時も通りの可愛らしい声を出されるとギャップの様な物を感じる。見た目と声があってない。

 

「相変わらずだね、ゴンベエは」

 

「オレは変わる事を拒むからな……なにを貰ったんだ?」

 

 誓約を結んでドラゴン化したライフィセットだが、ドラゴン化する程の誓約を結んだのならばそれ相応の力を得たはず。

 なにか変わった事があるのかと思っているとライフィセットは手のひらから白銀の炎を出した。

 

「それがお前の聖主としてのカか」

 

「穢れを焼き払う力か……」

 

「うん。モアナやダイル達に向けて飛ばしたよ」

 

「世界中の穢れを焼き払ったのですか?」

 

「いや、俺は業魔のまんまだ」

 

 世界の至るところに浄化の炎を齎したライフィセットだったが、間近にいたロクロウは元に戻せていなかった。

 

「僕のこの力は溢れる穢れを焼き祓って業魔から元の人間に戻すだけの物なんだ。斬りたいってロクロウの業を、心を変える力じゃないんだ」

 

「やり直す事が出来るようになる力なんですね」

 

 なんともライフィセットらしいとエレノアが微笑むが……アリーシャは横で俯いている。

 

「すまんな、俺の業は深すぎたみたいだ」

 

「いいんだよ。ロクロウから業を取ったらそれはもうロクロウじゃない……今のロクロウがロクロウなんだよ」

 

「優しいな、お前は」

 

「しかし、問題は山積みじゃぞ。カノヌシは居なくなった為に聖隷を見える人間は激減、希望である導師様は災禍の顕主に討たれ聖寮には殆どなにも残っておらん。今まで国に抑えつけられていた反動で欲に溢れかえっておる。人の世は混乱と混沌に包まれておる。先は混沌で困難じゃのー」

 

「そうだね……でも、大丈夫だよ。未来を思う願いは、祈りは続いていく」

 

「それは……」

 

 アリーシャはライフィセットの言っている事を否定する事が出来る。いい感じの終わりを迎えようとしているので色々と言いたそうな顔はしているけれども言葉を飲み込む。マギルゥの言うとおり……コレから困難と混沌が待ち構えてる。平和な世の中を作り上げるのは難しいだろうな。でも、それを承知の上でアリーシャはどうにかしたいと思っている。

 

「聖隷に意思が戻った今、お前の理想に力を貸す者達も出てくるだろう」

 

「私も人々に伝えます……聖主ライフィセットの加護があることを」

 

「ライフィセット教……いや、違うか」

 

 コレから広がり、ライラに繋がるのか。

 アリーシャは他の人達には聞こえない声量で呟くがオレは地獄耳なので聞こえている。現代においてライフィセット教なんてものは存在していない。

 

「えっと、その名前はこの姿には似合わないと思うな」

 

「……ベルベットがくれた名前ですものね」

 

「まぁ、その見た目でライフィセットって名前だと違和感を感じるな」

 

 もっとこうアーゼウスとかオシリスとかのカッコいい名前がいい。

 

「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」

 

 ライフィセット呼びを断るライフィセット。当然フィー呼びはダメ……あれもまたベルベットがライフィセットに付けた名前だ。

 その辺りの事もロクロウは分かっているのでライフィセットにどう呼べばいいのかを尋ねる。

 

「エレノアが付けてくれた真名で呼んで」

 

「おいおい、いいのか……それって結構大事なものじゃなかったか?」

 

「うん……でも、コレからはライフィセットじゃないって意味も込めてこの名前で生きていくんだ。生きる者、ライフィセットを古代語にした僕の真名……」

 

 ライフィセットは翼を仰ぐと浄化の力が世界中に……いや、この星一帯に広まっていく

 

「マオテラス」

 

「っ……やはり、そうだったか……」

 

「くくく……ハハハハハ……アーッハッハッハッハッハ!!」

 

「な、なにがおかしいの!僕の名前、そんなにおかしかった!?」

 

「いや、違う、違うんだライフィセット……いや、マオテラス様」

 

 浄化の炎を出した時からアリーシャはもしかしてと気にかけていた。

 オレも薄々そうじゃないかと勘づいていたがその予感は的中した……ライフィセットこそが現代の五大神で浄化の炎を齎したとされるマオテラス……オレ達は見事に浄化のシステムの始まりに至る事が出来た。世界の仕組みを知ることが出来た

 

「ちょ、ちょっとやめてよアメッカ。マオテラスはいいけど様呼びなんてむず痒い」

 

「なーにを言っておるか。コレからお主は聖主マオテラスとして祀られるんじゃぞ。マオテラス様呼びじゃ」

 

「そうですね。コレからはライフィセットは、いえ、マオテラス様を祀らないとなりません」

 

「も〜!エレノアまで、僕は別に呼び捨てで構わないよ!」

 

「こういうのは形が大事だ。マオテラス様、お前の意志に賛同する聖隷達と共に頑張れよ」

 

 様呼びにムズムズするマオテラス。エレノアやアイゼンも便乗してニヤニヤしている。

 コレから大勢の人々に崇め称えられるんだ。オレ達で恥ずかしがってたらキリが無い……!

 

「……そうか……」

 

 やっと分かった。ヘルダルフを徹底的にシバき倒して一時的な封印を施した際に誰かの声を聞いた。

 なにかに対して謝っているその声をあの時は然程気にしていなかったものの今ならば分かる

 

「お前だったんだな、マオテラス」

 

 あの時に声をかけてきたのはマオテラスだった。

 現代ではヘルダルフに捕らえられている捕らわれの身……ヘルダルフに捕まってしまっているのか。となれば何時か撃ったインディグネイションもマオテラスの技だった。マオテラスからパクったものだって言っていたからな。

 

「コレで全てが繋がった、のか……」

 

「いや、まだだ……まだ1つだけ残っている」

 

 過去に来て全ての始まりを知ることが出来た。

 ダークかめにん、フェニックス、ザビーダ、ノルミン・アタック、そしてマオテラスの浄化の力と色々と知ることが出来たがまだ1つだけ残っている

 

「あのレコードを誰が作ったのか、それがまだ謎だ」

番外編

  • 続 異世界プルルン転生記
  • ちょっと昔のゴンベエ達(地獄)
  • ザレイズ 総力戦 決戦KCグランプリ
  • まゆゆんの貧乏くじ
  • スペシャルスキットの続き
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。